Kurage 質問主意書アシスト

ことばで探す › 参議院 第150回

地球温暖化とメタンハイドレードに関する質問

参議院 第150回 第5号

提出者
参議院
提出日
2000年11月6日
内閣転送 2000年11月8日
答弁書受領日
2000年12月8日
提出から32日
答弁の項目数
9
質問 2,671字/答弁 3,549字

質問本文

地球温暖化とメタンハイドレードに関する質問主意書

メタンと水分子からなるガス水和物の一種であるメタンハイドレードは、火を付けると燃焼する低温高圧で安定する構造をもつ氷状固体物質である。

日本近海に存在するメタンハイドレード層のうち、将来資源開発が可能とみられるメタン総量は、七兆四〇〇〇億立方メートルとも言われ、これは国内の天然ガス消費量の約一四〇年分にも及ぶと見られる。この点からもメタンハイドレードは二一世紀の天然ガス資源として注目され始めている。

一方、メタンハイドレードは、圧力や温度の変化に極めて敏感であり、温度を上げたり圧力を下げたりすれば、メタンハイドレードの構造が急速に崩壊し、気体と水とに分解する。一立方メートルのメタンハイドレードはガス化することによって約一六四立方メートルにもなり、結果としてメタンが大気中に放出され、メタンが二酸化炭素の四〇倍以上もの温室効果をもつことから、温暖化を助長することとなる。そして、温暖化が進めば、メタンハイドレードの崩壊は更に進むという悪循環に陥っていく。

例えば、八〇〇〇年前にノルウェー沖で起きた一連のブロウアウト(海底でのメタンの爆噴)では、埋蔵量の三パーセントに当たる三五〇〇億トンが大気中に放出され、海底には一〇〇個以上のクレーターが一〇〇〇キロメートルにわたって広がっている。この量が現在の大気中に一気に放出されたら、地球の平均気温は一〇年間で四度以上も上昇するとの研究もある。

これらの問題点が明らかになるまで安易な開発は行うべきではなく、メタンハイドレードの形成・崩壊のメカニズム解明のため、調査研究を先行すべきである。

このような観点から以下、質問する。

一 メタンの発生状況と温暖化対策に係るメタン発生対策について

メタンは一九九七年一二月の第三回国連気候変動枠組条約締約国会議(以下、「COP3」という。)において採択された京都議定書においても規制対象ガスとして取り上げられ、削減に向けての取組がなされている。政府はメタンについての温室効果についてどのような認識を持ち、発生対策としてどのような施策を実施しているのか。

二 メタンハイドレードの研究・開発の現状について

1 通産省は一九九五年度からの第八次国内石油及び可燃性天然ガス資源開発五カ年計画に基づく基礎調査において初めてハイドレード層の研究に着手し、一九九九年一一月から静岡県御前崎沖で石油公団が世界初の海上試錐掘を始めたと聞いているが、今後の我が国の超長期的なエネルギー政策において、メタンハイドレードをどのように位置付けているのか。また、これまでのメタンハイドレードに関する調査・研究の実績はいかなるものか。年度ごとに予算額と予算項目及び概要を示されたい。

2 一九九八年、二〇〇〇人以上の被害者を出したパプアニューギニアの大規模な津波は、地震のエネルギーに比較して非常に規模が大きく、ハイドレード層の急激な分解による海底地滑りが原因とも指摘されている。その他、一七七一年の八重山大津波(死者推定一万二〇〇〇人)、一九九三年の奥尻島の大津波(同約二四〇人)についてもハイドレード層の崩壊を指摘する研究者もいる。これらの指摘について、政府の見解を示されたい。

3 このような不可逆的、かつ甚大な被害が生ずる可能性のあるメタンハイドレードの開発は安易に行うべきではなく、逆に温暖化の進展に伴い生じると考えられるメタンハイドレード起源の大規模災害を考慮して、メカニズム解明のための調査研究を先行すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 メタンハイドレードと地球温暖化促進との関係性の認識について

1 メタンハイドレードは地球温暖化に対していかなる影響があると考えているか。また、これについて政府としては、どのような調査・研究を行ってきているか。

2 ハイドレード層から供給されるメタンの温室効果ガスとしての役割や、グローバルな炭素収支におけるメタンハイドレードの貢献などは、グローバルな気候変動モデルの中において取り入れられていないとも言われている。この点について、政府の認識を示されたい。

3 他方、日本の開発している気候変動モデルにおいて、これらの効果をどのように織り込んでいるのか。また、織り込んでいないとしたら、その理由は何か。気候変動モデルにおけるメタンハイドレードの関与について今後更なる研究を重ねる必要があると思われるが、政府の見解を示されたい。

4 地球全体のメタンハイドレードの埋蔵量は七兆トンとも言われ、この挙動により地球温暖化の進展が加速度を増すことも考えられる。したがって、国際的な取組である気候変動に関する政府間パネル(以下、「IPCC」という。)の調査・研究課題としてメタンハイドレードを含めるべきであり、温暖化対策を推進する政府の立場からするとIPCCに進言すべきである。政府の見解を示されたい。

5 現在、国連海洋法条約に基づいて深海底鉱物資源を管理するために「国際海底機構」が設置されているが、従来から対象となっている資源について、その開発に係る「環境ガイドライン」の作成を検討し、十全な管理を進めるべきである。さらに温暖化対策を主導し、環境大国を目指すべき我が国としても、積極的にガイドライン作りに取り組むことは当然として、当該ガイドラインの中でメタンハイドレードの調査・研究や開発の在り方について、一定の制限をかけるよう働きかけるべきと考える。政府の見解を示されたい。

四 メタンハイドレードの開発制限及び禁止などに係る国際条約の推進と日本のイニシャティブについて

1 COP3を主導した我が国として、温暖化に大きな寄与があると思われるメタンハイドレードの開発・利用を見直し、温暖化対策の視点からメタンハイドレード形成・崩壊のメカニズム調査研究にのみ限定することを国際的にも呼び掛け、例えば「特定海洋生成物開発制限条約」作りと締結推進などの取組にイニシャティブを発揮すべきと考える。政府の見解を示されたい。

2 地球の持続的成長を担保することを考えると、メタンハイドレードは地球公共財的なものと言えるのではないか。メタンハイドレードをそのままの状態にしておくことが炭素循環の平衡性を保つことにもなり、種々の議論があるものの、人類全体の共有財産との位置付け、開発しないことこそがサスティナビリティを維持するものと考えるが、政府の見解を示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

気候変動に関する国際連合枠組条約(平成六年条約第六号)第五回締約国会議で採決された「年次目録に関する報告書のための指針」によれば、メタンは、単位重量当たり二酸化炭素の二十一倍の温室効果を有し、同指針に基づく算定によれば、平成十年度における我が国のメタンの排出量を二酸化炭素に換算した量(温室効果ガスたる物質の排出量に、当該物質の温室効果の二酸化炭素の温室効果に対する比率を乗じて得た数値をいう。以下同じ。)は、我が国のすべての温室効果ガスの排出量を二酸化炭素に換算した量の合計の約二パーセントを占めている。なお、同指針は、当該算定にメタンハイドレートの崩壊によるメタンの排出を含めていない。

政府としては、メタンが高い温室効果を有することから、その排出の抑制等を図ることが重要であると考えており、このため、未焼却の廃棄物の分解によって、メタンが排出されることから、その直接埋立ての縮減を廃棄物を処理する者に働き掛けるとともに、メタンの排出源となる家畜について、その適切な飼養管理技術の確立に努めるなどの対策を推進している。

二の1について

我が国のエネルギー供給構造については、主要先進国と比べて一次エネルギー供給に占める石油の比率が高く、石油供給に占める輸入比率が高いなどの脆弱性が指摘されているところである。政府としては、我が国のエネルギー供給構造の多角化及び国産エネルギーの開発を図る等によってエネルギーの安定供給を確保する観点から、我が国周辺海域で相当の量が賦存すると試算されているメタンハイドレートを将来のエネルギー資源として期待している。

なお、平成六年六月に取りまとめられた石油審議会答申においても、「我が国周辺海域では、南海トラフ、オホーツク海、日高・十勝沖、西津軽沖、北海道西部沖等において、メタンハイドレートの存在を示唆する地震探鉱記録が得られ、相当の量が賦存するとも試算されていることから、将来の国内エネルギー資源として期待されている。」と提言されているところである。

また、通商産業省においては、石油公団等の関係機関とともに、メタンハイドレートの賦存状況の把握や採取技術等に関する基礎的な調査及び研究を実施してきており、その一環として行われた平成十一年度御前崎沖の南海トラフでの試掘の結果、その存在を確認したところである。

これまでのメタンハイドレートに関する調査及び研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要は、別表のとおりである。

二の2について

御指摘の大規模な津波の原因については、様々な見解が示されているところであり、現時点において、ハイドレート層の急激な崩壊による海底地滑りによって、それらが引き起こされたと確定的に判断することはできないと考えている。

二の3について

メタンハイドレートについては、我が国のエネルギー供給構造の脆弱性を克服するため、将来の国内エネルギー資源として期待しているが、その安全性等についても十分配慮していく必要があると考えている。このため、メタンハイドレート層の形成及び崩壊の仕組みの解明を含めて、環境保全に配慮した採取技術等に関する調査及び研究を行っていく必要があると考えている。

三の1について

メタンハイドレートの崩壊によるメタンの排出量については、国際的にも科学的知見が乏しい状況にあり、地球温暖化に対するメタンハイドレートの影響については、十分に明らかになっていない。

なお、地球温暖化による気温上昇がメタンハイドレートに与える影響について申し上げれば、メタンハイドレートは、海底下又は凍土下部に存在することから、気温上昇による影響を直ちに受けることはなく、メタンの排出量をほとんど変化させないと考えられ、それが地球温暖化を更に助長する可能性は小さいと考えている。

メタンハイドレートの地球温暖化に対する影響について、政府として調査及び研究を実施した例はないが、通商産業省においては、メタンハイドレートの賦存状況についての調査や実験室内における安定性の解明など、関連した調査及び研究を実施しており、また、環境庁においては、凍土上部に気泡として含有されているメタンが凍土の融解に伴い大気中へ放出される現象について、調査及び研究を実施しているところである。

三の2及び3について

メタンハイドレートの崩壊によるメタンの排出量については、国際的にも科学的知見が乏しい状況にあるため、我が国を始め世界各国で開発されている全地球規模の気候モデルでは、メタンハイドレート層から排出されるメタンによる気候変動への影響及び全地球規模の炭素収支におけるメタンハイドレートの役割について考慮されていない状況にある。

気候モデルにおいて、メタンハイドレート層から排出されるメタンによる気候変動への影響及び全地球規模の炭素収支におけるメタンハイドレートの役割を考慮することについては、メタンハイドレート層からのメタンの排出の仕組みやその排出量の推定などの基礎的な研究を実施し、科学的な知見を得た上で検討すべきであると考えている。

三の4について

気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」という。)は、新たな調査や研究を行うのではなく、気候変動に関する最新の科学的知見を取りまとめて評価し、各国政府に助言することを目的として設立されたものである。

なお、メタンハイドレートについては、IPCC第二次評価報告書において、将来的かつ潜在的なエネルギー資源として記述されているが、地球温暖化への影響という観点からの評価は行われていない。このため、メタンハイドレートに関する国際的な調査、研究及び開発の進ちょく状況を逐次確認しながら、必要に応じて、メタンハイドレートの気候変動に対する影響評価の実施について、IPCCに働き掛けてまいりたい。

三の5について

海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号)においては、国際海底機構(以下「機構」という。)が、深海底(国の管轄権の及ぶ区域(排他的経済水域又は大陸棚)の境界の外の海底及びその下をいう。以下同じ。)における概要調査、探査及び開発といった資源の商業利用に関する活動(以下「活動」という。)について、活動が環境に与える影響等を考慮した上で、規則及び手続を作成することとされている。しかしながら、深海底の各種の資源は、その性質、賦存状況、活動に関連して使用される技術及び機器等に相違があり、その活動が環境に及ぼしうる影響についても一様ではないことから、機構においては、具体的な活動の対象となりうる資源について優先的に規則及び手続が作成されることとなっている。

メタンハイドレートについては、国際的にも科学的知見が乏しい状況にあるため、現在のところ、深海底においてその活動を行うという動きはない。今後、科学的知見が蓄積され、関連する技術が進歩し、深海底においてメタンハイドレートに係る活動について、機構において規則及び手続の作成が必要となれば、政府としても、環境の保護及び保全の必要性等を踏まえ、その作成に積極的に参画してまいりたい。

四について

メタンハイドレートは、世界的にも相当量の賦存が確認されており、国際的な観点からみても今後の重要なエネルギー資源として利用される可能性があるものと考えているが、メタンハイドレートの崩壊によるメタンの排出が地球温暖化に与える影響については、国際的にも科学的知見が乏しい状況にあり、十分明らかになっていない。

このため、関係諸国と共同研究を行うなどの連携を図りながら、メタンハイドレート層の形成及び崩壊の仕組みの解明を含めて、環境保全に配慮した採取技術等に関する調査及び研究を行っていく必要があると考えている。

別表 これまでのメタンハイドレートに関する調査研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要 1/7

別表 これまでのメタンハイドレートに関する調査研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要 2/7

別表 これまでのメタンハイドレートに関する調査研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要 3/7

別表 これまでのメタンハイドレートに関する調査研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要 4/7

別表 これまでのメタンハイドレートに関する調査研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要 5/7

別表 これまでのメタンハイドレートに関する調査研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要 6/7

別表 これまでのメタンハイドレートに関する調査研究に係る年度ごとの予算額と予算項目及びその概要 7/7

参議院の原文

似た質問主意書

件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。

提出 2012年2月13日 馳 浩(自由民主党・無所属の会) 答弁 2012年2月21日
衆議院 第180回 第67号お答えすることは困難 ×1
提出 2012年7月13日 橘 慶一郎(自由民主党・無所属の会) 答弁 2012年7月24日
衆議院 第180回 第341号
提出 2010年11月29日 横山 信一 答弁 2010年12月7日
参議院 第176回 第132号
提出 1999年8月12日 但馬 久美 答弁 1999年9月14日
参議院 第145回 第31号お答えすることは困難 ×2

この論点で次の質問を書くなら

アシストで並べる