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労働分野における規制改革に関する質問主意書

参議院 第154回 第10号承知していない ×5

提出者
参議院
提出日
2002年2月18日
内閣転送 2002年2月20日
答弁書受領日
2002年4月12日
提出から53日
答弁の項目数
11
質問 3,091字/答弁 4,003字

質問本文

二千年十二月十二日に行政改革推進本部規制改革委員会「規制改革についての見解」(以下「見解」という。)が公表され、二千一年十二月十一日には総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第一次答申」(以下「答申」という。)が公表された。右の二文書の示す規制改革の方向は、物の製造の業務についての派遣の解禁、期間制限の緩和など、労働分野における更なる大幅な規制緩和を求めるものである。

そこで、以下質問する。

一、「官民の関係」について

見解は、有料職業紹介事業の取扱職業がネガティブリスト化され、「官民が労働市場という共通のフィールドにおいて競争しあう環境が従前に比べ、格段に整備された。」(二百二頁)とするが、ILO百八十一号職業紹介条約は、「官民の関係」について、「協力関係」でなく、「競争関係」ととらえていると解するか。

また、見解がいう「競争」とは、どのような趣旨であるか。

二、派遣労働者の「職業選択の自由」について

答申は、「派遣労働者にも、他の労働者と同様に職業選択の自由が認められるべきであり」、職種や機会が制限されていることは問題であるから、「対象業務や派遣期間の制限については、これを原則として撤廃することが望ましい」(二十八頁)と述べているが、業務や機会の制限を撤廃すれば、職業選択の自由が保障されるという趣旨か。

また、労働者が派遣という就業形態を任意に選択するとしても、その際、法による規制を前提として選択していると思われるが、この点を職業選択の自由の観点からどのように考えるのか。

三、物の製造に係る業務を適用除外業務とすることについて

物の製造に係る業務を適用除外業務とすることについて、見解は「ILO百八十一号条約に抵触するおそれがあるとの意見もある」と指摘するが、そのような指摘はILOの公式見解か。

また、そのような指摘をなしている論者の氏名、職業、出典を明らかにされたい。

答申が「他国の状況も踏まえながら、これを解禁することも含めて検討すべきである。」(二十八頁)としているのは、対象業務の解禁のみをいうのか、それとも常用代替を防止し、労働者の雇用及び労働条件を確保するための規制の在り方を広く検討する趣旨かも併せて確認したい。

四、派遣を通した雇用機会の拡大について

見解が「『物の製造』の業務について派遣事業が認められるならば、これによって派遣を通した雇用機会の拡大が期待できるという一面もある。」(二百六頁)とする根拠は何か。

五、「期間制限三年の派遣対象業務の拡大」等について

答申は、「現下の深刻な雇用情勢にかんがみ」、「緊急措置として現在三年の派遣が認められている業務(旧適用対象二十六業務)の範囲を拡大する」ことについて今年度中に検討・結論を得るべきである(二十九頁)としているが、「三年の派遣が認められている」とする法的根拠は何か。

また、新たに期間制限三年の派遣対象業務を拡大すれば、現下の深刻な雇用情勢が改善されるかのように受け止められるが、その根拠はどこにあるか。

六、「法見直しの趣旨」について

見解は、労働者派遣(臨時的・一時的派遣)の一年の期間制限を緩和する必要について、派遣会社の売上実績が当初の予想を下回ったとするアンケート回答が多いこと、そのうち大多数が一年制限がネックになっていると回答していることに触れている(二百六頁~二百七頁)が、これは派遣会社の売上が予想を下回る実績となったことを問題ととらえる趣旨か。

また、派遣会社の売上実績が予想通りに確保できるようにすることが法見直しの趣旨と解してよいか。そうであれば、その根拠は何か。

七、「契約期間の短期化」の傾向について

見解は、派遣労働者の「一年では雇用について不安、生活設計ができない」、派遣先の「一年だと仕事を覚えた頃には終了し、戦力にならない」という意見に耳を傾ける必要がある(二百七頁)とする。派遣労働者の「一年では雇用について不安、生活設計ができない」との意見に耳を傾けるべきだとするのは、派遣労働者の雇用安定のためにも期間制限を緩和すべしとする趣旨と解してよいか。

また、派遣先の「一年だと仕事を覚えた頃には終了し、戦力にならない」という意見にも耳を傾ける必要があるとするが、そのような声の反面で、労働者派遣期間が短期化している傾向があることについてどのように考えるか。この「契約期間の短期化」の傾向について、見解の中で指摘しなかった理由は何か。

八、派遣労働者のデータについて

見解は、労働力調査特別調査によると派遣社員の数はせいぜい「三十八万人であることから、労働者派遣法の改正による雇用拡大効果は、せいぜい数千人規模にとどまるものと推定される。つまり、規制緩和(ネガティブリスト化)の効果が、現実にはほとんど見られない」(二百七頁)と述べているが、労働力調査特別調査の派遣労働者数は実態をどのように反映していると考えるか。

また、労働者派遣法に基づく平成十二年度事業報告の集計結果(平成十三年十二月二十八日厚生労働省発表)によると、派遣労働者数の飛躍的な増大、派遣料金の低下の反面で事業収入が伸びていることなど、経費削減を目的とした常用代替労働者派遣の活用が拡大している傾向を示すデータもあるが、これについてはどのように考慮したのか。

さらに、いわゆる「構内下請け」といわれる労働者の受入れ形態や、請負・委託を偽装した違法派遣については、統計データに反映されないが、このことについてどのように考えるか。

九、「常用代替」について

見解が、パートと一般労働者との間でもミクロの事業所レベルでは代替現象があまり生じていないという平成十二年度版労働白書の指摘に基づいて、労働者派遣について常用代替を問題にするのは大袈裟であると評価する根拠は何か。

また、見解は、「『労働力調査特別調査』によれば、派遣の規模はせいぜいパートの二十分の一に過ぎない(三十八万人/七百五十三万人)。常用代替を問題にすること自体がいかに大袈裟かがこのことからも分かる。」(二百八頁)としているが、この指摘は、前述の物の製造にかかる業務を派遣対象とすれば、見解が「派遣を通した雇用機会の拡大が期待できるという一面もある」とし、あるいは答申が現下の深刻な雇用情勢にかんがみ三年までの派遣が認められている業務を緊急に拡大する措置を採るべきだとすることと齟齬すると考えるがどうか。

十、派遣先からの通知について

見解が、「一年制限」に関連した派遣先からの通知を「書面」とする現行制度から、「口頭」でも認める(二百九頁)とする根拠は何か。

また、答申が派遣先事業主から派遣元事業主に対する通知をなすについて「電子媒体による」ことも可能である(二百九頁)とする根拠は何か。

十一、見解及び答申取りまとめの考え方について

「ハローワークもいらない組織」、「人材派遣や職業紹介などの仕事は民間に任せて欲しい」、「ハローワークに比べて情報の質量が違う」、「仕事の紹介は情報サービスなのだから情報料を戴くのは当然」、「百万円でも安いと感じるかもしれない。そういう部分に行政がいちいち介入しないで欲しい」という総合規制改革会議委員のマスコミ発言(平成十三年十一月二十二日夕刊フジ「トップ直撃」)は、既に日本が批准しているILO百八十一号条約の趣旨に照らして容認できないものと考えるがどうか。

また、このような発言の趣旨に基づいて、見解及び答申が取りまとめられたと受け止めてよいか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

民間職業仲介事業所に関する条約(第百八十一号)(平成十一年条約第九号。以下「条約」という。)は、前文において、「労働市場において民間職業仲介事業所が果たし得る役割を認識し」て条約を採択すると定め、また、第十三条において、「加盟国は」「公共職業安定組織と民間職業仲介事業所との間の協力を促進するための条件を策定し、確立させ及び定期的に検討する」と定めている。このことから、条約は、民間職業仲介事業所の労働市場における役割を積極的に位置付け、公共職業安定組織及び民間職業仲介事業所の両者は、相互の協力の下に、それぞれの特性をいかしたサービスを労働市場に提供すべきであるという考えに基づいて採択されたものであると理解している。

また、平成十二年十二月十二日に行政改革推進本部規制改革委員会が公表した「規制改革についての見解」(以下「見解」という。)における官民の労働市場における「競争」とは、労働市場において、職業安定機関及び職業紹介事業者の両者がそれぞれの特性をいかしたサービスを提供し、それらが求職者及び求人者に選択されることを指したものと理解している。

二について

平成十三年十二月十一日に総合規制改革会議が公表した「規制改革の推進に関する第一次答申」(以下「答申」という。)における御指摘の部分は、労働者派遣制度における対象業務や派遣期間の制限について、これを原則として撤廃することが望ましいとの考え方に留意することを求めたものであり、対象業務や派遣期間の制限を撤廃すれば、職業選択の自由が保障されるという趣旨ではないと理解している。

また、派遣労働者は、労働者派遣について公共の福祉のために設けられた規制を前提とした上で、多様な就業形態の中から派遣就業を選択していると考えられ、派遣労働者にも職業選択の自由はこのような規制の枠内において保障されていると考えている。

三について

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「労働者派遣法」という。)において物の製造の業務が労働者派遣事業の対象業務から除かれていることについて、国際労働機関(ILO)が条約に違反する旨の見解を示したことはないと承知している。

見解における御指摘の部分は、規制改革委員会の委員等によりなされた議論等の結果形成された同委員会としての認識に基づき記述されたものであると承知しているが、当該部分に係る具体的な議論等の内容については承知していない。

また、答申における御指摘の部分は、物の製造の業務を労働者派遣事業の対象業務とすることについて検討することを求めたものであると理解しているが、このような検討については、雇用就業形態の多様化に対応した雇用の場の確保や労働者保護措置の在り方等にも留意しつつ行う必要があるものと考えている。

四について

見解における御指摘の部分は、規制改革委員会の委員等によりなされた議論等の結果形成された同委員会としての認識に基づき記述されたものであると承知しているが、当該部分に係る具体的な議論等の内容については承知していない。

五について

労働者派遣法第四十条の二第一項各号に掲げる業務については、一年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けることができることとされているものの、派遣先における常用雇用の機会が不当に狭められることを防止する観点から、労働者派遣事業関係業務取扱要領(平成十三年十二月二十一日付け職発第七百六十四号・能発第五百六十号厚生労働省職業安定局長、職業能力開発局長通達別添二)において、合理的な理由なく同一の派遣労働者について同一の業務に対する労働者派遣が三年を超えて行われることのないよう、派遣元事業主に対して指導すること等としているところである。

また、答申の「現下の深刻な雇用情勢にかんがみ、上記の法改正に至るまでの緊急措置として現在三年の派遣が認められている業務(旧適用対象二十六業務)の範囲を拡大する」という部分は、総合規制改革会議の委員等によりなされた議論等の結果、一年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けることができる業務の範囲を拡大することは、多様な形態による雇用就業機会の確保により労働力需給調整機能の強化が図られ、雇用情勢の改善に資するものであるという認識に基づき記述されたものであると承知している。

六について

見解が、社団法人日本人材派遣協会の調査結果を引用したのは、平成十一年の労働者派遣法の改正により新たに労働者派遣事業を行うことが可能となった業務に係る労働力の需要を表すためであり、派遣会社の売上げが予想を下回る実績となったことを問題ととらえる趣旨ではないと理解している。

また、平成十三年八月三十一日から労働政策審議会において調査検討を開始している労働者派遣制度全体の見直しについては、労働力需給調整機能の強化を図ること等を目的として進められているものであり、派遣会社の売上実績を予想どおりに確保できるようにすることをその趣旨とするものではない。

七について

見解が、派遣労働者の「一年では雇用について不安、生活設計ができない」といった意見に耳を傾けるべきであるとしたのは、そのような意見も含め、様々な関係者の意見を聴いて、派遣期間の制限緩和について検討することを求めたものであると理解している。

また、派遣契約に基づく派遣期間については、平成九年五月から六月に労働省が行った労働者派遣事業実態調査においては、六か月以内の者が四十八・七パーセント、六か月超一年以内の者が三十七・一パーセント、一年超の者が十四・二パーセント、平成十三年一月に厚生労働省が行った同調査においては、六か月未満の者が三十九・三パーセント、六か月以上一年未満の者が四十五・一パーセント、一年以上の者が十五・六パーセントとなっており、これらの調査からは派遣労働者の派遣期間が短期化している傾向があるとはいえないと考えている。

見解において派遣労働者の派遣期間の傾向について記述しなかった理由については承知していない。

八について

平成十二年八月の労働力調査特別調査は、平成十二年八月二十五日から同月三十一日までの間の就業状態を調査したものであり、その間に就業しなかった者については就業者数に計上されないため、同調査における労働者派遣事業所の派遣社員数は、実際に派遣労働者として就業を行うことを常態としている者の数よりも少ないものと考えている。

見解が取りまとめられたのは平成十二年十二月であり、平成十三年十二月に取りまとめられた平成十二年度における労働者派遣法第二十三条に基づく事業報告書の集計結果については考慮されていないものと承知している。

製造業の工場内において請負等と称して行われている事業の中には、適法に行われているものがある一方、実態として労働者派遣事業に該当するものもあり、こうした事業に従事している労働者数は、各種統計において派遣労働者数として計上されていないものと認識しているが、こうした違法な労働者派遣事業については、今後とも指導監督等を行っていく必要があると考えている。

九について

見解の「マクロ的には代替現象が生じていると見られるパートと一般労働者との間においても、ミクロの事業所レベルでは、代替現象があまり生じていないことを、労働白書は明らかにしている。」及び「「労働力調査特別調査」によれば、派遣の規模はせいぜいパートの二十分の一に過ぎない(三十八万人/七百五十三万人)。常用代替を問題とすること自体がいかに大袈裟かがこのことからも分かる。」という部分は、規制改革委員会の委員等によりなされた議論等の結果形成された同委員会としての認識に基づき記述されたものであると承知しているが、当該部分に係る具体的な議論等の内容については承知していない。

また、見解の「派遣の規模はせいぜいパートの二十分の一にすぎない(三十八万人/七百五十三万人)。常用代替を問題とすること自体がいかに大袈裟かがこのことからも分かる。」及び「「物の製造」の業務について派遣事業が認められるならば、これによって派遣を通した雇用機会の拡大が期待できるという一面もある」という部分並びに答申の「現下の深刻な雇用情勢にかんがみ、上記の法改正に至るまでの緊急措置として現在三年の派遣が認められている業務(旧適用対象二十六業務)の範囲を拡大する」という部分は、物の製造の業務を労働者派遣事業の対象業務とすることや一年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けることができる業務の拡大が直ちに「常用代替」を生じさせるものではないという認識に基づき記述されたものであると理解している。

十について

見解における御指摘の部分は、規制改革委員会の委員等によりなされた議論等の結果形成された同委員会としての認識に基づき記述されたものであると承知しているが、当該部分に係る具体的な議論等の内容については承知していない。

答申における御指摘の部分は、総合規制改革会議の委員等によりなされた議論等の結果、派遣先から派遣元事業主に対して行う通知については、電子媒体による場合であっても、書面による場合と同一の内容を確実に通知することができるとの同会議の判断に基づき記述されたものであると承知している。

十一について

御指摘の報道に係る総合規制改革会議委員の発言は、私人としてのものであり、政府としてこれに対し意見を述べることは適切でないと考えている。

また、見解又は答申は、規制改革委員会又は総合規制改革会議における広範な審議を経て、様々な有識者の考え方を踏まえて取りまとめられたものと理解している。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

承知していない ×5

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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