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法律条文の過誤訂正の法的性格に関する質問主意書

参議院 第161回 第23号趣旨が明らかではない ×1

提出者
参議院
提出日
2004年12月2日
内閣転送 2004年12月3日
答弁書受領日
2004年12月14日
提出から12日
答弁の項目数
5
質問 1,594字/答弁 1,546字

質問本文

政府は、平成一六年八月一〇日付けの「法律条文の過誤訂正の在り方に関する質問に対する答弁書」(以下「本答弁書」という。)において、法律条文の過誤訂正について一定の見解を示しているが、憲法第四一条は、国会は「国の唯一の立法機関」であると規定するところ、国会が議決した法律を政府限りで訂正し得るとする政府の見解は未だ説得力に欠ける。

憲法第九九条により、公務員は憲法尊重擁護の義務を負うのであって、政府が行う行為の憲法上の疑義については、国民に対する不断の説明責任を果たすべきものと考えられる。

このような観点から、標記について以下質問する。

一、政府は、本答弁書において、官報正誤について「法文の表記上の誤り」を訂正するものとしており、これは法文の表記を実質的な法規範の内容を変更しない範囲で変更できるとの立場を採るものと思われる。そうであれば、憲法第五九条は「法律案は両議院で可決したとき法律となる」と規定するところ、ここにいう「法律」とは、実質的な法規範の内容を表現した文書に止まるようにも思われる。同条にいう「法律となる」とは、法律の条文が形式的にも確定することをいうのではないかと考えるが、政府の見解はどうか。

二、官報正誤は公布のため官報に掲載された法律の条文を訂正する手続きだが、本答弁書によると、憲法第七条にいう「公布」とは、法文の表記を実質的な法規範の内容に即したものに訂正する機能も有すると政府は考えるようである。しかし、「公布」とは天皇の国事行為であり、憲法所定の手続きにより既に成立している法形式を公衆に知らしめる表示行為と一般に理解されており(佐藤幸治著「憲法」にこれと同文が掲載されている。)、憲法第五九条により形式的にも確定した法律の条文を国民に周知する表示行為なのではないか。そうであれば、国民に適用される法律の条文は国会で確定した法律の条文であって、官報に掲載された条文ではないと考えられるが、政府の見解はどうか。

三、本答弁書によると、憲法第七三条にいう「法律を誠実に執行」との規定は、内閣に国会で確定した法律の条文に表記上の誤りがあった場合、その法律の条文を内閣限りで訂正しうる権限を付与したものと考えられるが、このような理解に相違ないか。

四、政府は「表記上の誤り」について、「実質的な法規範の内容と法文の表記との間に形式的な齟齬があることが客観的に明らかであると判断されるもの」としている。政府は、国民年金法等の一部を改正する法律(平成一六年法律第一〇四号。以下「今回の改正法」という。)に関し、その実質的な法規範の内容をどのように国会に示したのか。「国民年金法等の一部を改正する法律案要綱」がそれに当たるものであるのか。

また、「形式的な齟齬」及び「客観的に明らか」の基準を明確にした上で、今回の改正法については、いつ、だれが「表記上の誤り」を判断したのか明らかにされたい。

五、政府は、法文の表記上の誤りについて、官報正誤で訂正する場合もあれば、改正法案を提出する場合もある。どのような基準においてそれを区別して行っているのか明確にされたい。また、今回の改正法について、第一六〇回国会に誤りを訂正する法律案を出すのではなく、官報正誤で対応したのはなぜか、その理由と、いつ、だれが判断したのかを明らかにされたい。

六、本答弁書で示された政府見解によれば、「法文の表記上の誤りの訂正」という国家行為は、憲法第七三条により、内閣(行政権)の権限に属するとともに、それは当然議員立法でもなし得るのだから憲法第四一条により国会(立法権)の権限にも属するものとなる。三権分立を建前とする憲法が規定する我が国の統治機構において、このように二権の権限に属する国家行為は、憲法に明文規定があるものを除くとどのようなものがあるか。政府の解釈を示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

法律案が憲法第五十九条にいう「法律となる」とは、具体的な法文によって表現された「法律」として、その法規範の内容が確定することをいうと考えるが、当該法律が公布された場合において、「法文の表記上の誤り」、すなわち、実質的な法規範の内容と法文の表記との間に形式的な齟齬があることが客観的に明らかであると判断されるもの(以下「形式的齟齬」という。)については、内閣において法文の表記を実質的な法規範の内容に即したものに「正誤」の官報掲載の形式により訂正することが許されないわけではないと考える。

二及び三について

憲法第七条にいう法律の「公布」とは、憲法第五十九条にいう「法律」となったものを公表して国民に知らせる行為をいい、また、国民に適用される法律は、憲法第五十九条にいう「法律」となり、公布されたものであると考える。

他方、公布された法律に、形式的齟齬があることにより、実質的な法規範の内容が正確に表現されていない場合には、法律の公布について責任を負い(憲法第三条及び第七条第一号)、また、法律を誠実に執行することを職務としている(憲法第七十三条第一号)内閣において、法文の表記を実質的な法規範の内容に即したものに「正誤」の官報掲載の形式により訂正することができると考える。

四について

国民年金法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百四号。以下「改正法」という。)の実質的な法規範の内容は、内閣が平成十六年二月十日に国会に提出した国民年金法等の一部を改正する法律案及び同法律案による改正後の国民年金法等の規定の総体によって国会に示し、それに加え、国会における審議の結果によって示されているものである。

また、「正誤」の官報掲載の形式により訂正することができる形式的齟齬に該当するかどうかについては、それぞれの条項に即して判断せざるを得ないが、平成十六年六月十一日官報号外第百二十四号をもって公布された改正法において訂正を要した箇所は、例えば条項の移動を正しく反映させていないことなどにより、実質的な法規範の内容と法文の表記との間に形式的な齟齬が生じていることが客観的に明らかであることから、憲法上、法律の公布について責任を負い、また、法律を誠実に執行することを職務としている内閣において、その判断により、「正誤」の官報掲載の形式によって、法文の表記を実質的な法規範の内容に即したものに訂正したものである。

五について

形式的齟齬を訂正する場合には、「正誤」の官報掲載の形式によることができると考えているが、当該形式的齟齬が判明した法律に関連して、別途実質的に法律の改正を要する事項があり、当該法律の改正案を内閣として提出する機会に、当該形式的齟齬の訂正を当該法律の改正案に加えるという方法によることも許されると考えてきており、これまでにもそのような方法によった例があるところである。

今回の改正法については、最初の施行期日までの間において、改正法に関連して別途実質的に法律の改正を要する事項がなく、形式的齟齬が生じたままでは実質的な法規範の内容が正確に表現されていないため、内閣において、法文の表記を速やかに実質的な法規範の内容に即したものに訂正し、それを広く国民に知らせることが必要であると判断し、「正誤」の官報掲載の形式により訂正したものである。

六について

お尋ねの「二権の権限に属する国家行為」とはどのような国家行為の意味か必ずしも明らかではないが、形式的齟齬について、内閣において法文の表記を実質的な法規範の内容に即したものに「正誤」の官報掲載の形式により訂正する行為と、国会において憲法第四十一条の「立法」という形式により訂正する行為とは異なるものであると考える。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

趣旨が明らかではない ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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