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大学生の奨学金に関する質問主意書
参議院 第170回 第132号お答えすることは困難 ×2
質問本文
現在、日本において、自国学生向けには「奨学金」という名の実質的なローンしか存在していない。
本来、奨学金とは、親の経済格差に関係なく教育機会を保障し、また将来の社会の納税者として次の世代を担う若者を育てるために学資を給付する公共性の高い政策である。彼ら若者が卒業後、真に社会に貢献するならば、将来の納税や社会保障負担によって就学時に受け取った奨学金以上の価値を社会に還元することになるのであるから、奨学金は国や社会にとって必要な教育への投資と考えられる。日本の教育政策においても、このような考え方を十分に検討し、採用すべきと考える。
現在、国レベルの公的な奨学金事業は、政府の監督の下、独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)が行っているが、機構が問題としている「奨学金」返還の滞納問題の背景には、一九九〇年代後半のいわゆる「就職氷河期」に就職できずに不安定雇用下におかれた若者の存在や、就職ポストを用意せずに大学院生数だけを増加させた大学院重点化政策の失敗があると考えられる。将来、社会を担う若者の教育を支えることが国の繁栄のためであることを無視して、世界有数の経済大国と言われるようになった現在においても「奨学金」という名のローンの貸出を続けている政府の政策判断には、疑問を持たざるを得ない。少なくとも、「奨学金」返還の滞納問題の解決にあたっては、このような過去の経済状況の考慮や教育政策の反省を踏まえて検討すべきであると考える。
よって以下質問する。なお、機構に対する政府の監督責任を踏まえ、誠実に答弁されたい。
一 奨学金は、その理念からして本来給付すべきものである。そもそも奨学ローンを「奨学金」と呼んでいる理由を問う。また、留学生には本来の意味での奨学金があり、日本人学生には奨学ローンしか存在していない。この理由を問う。
二 機構の「奨学金」の貸出総額はいくらか。高校、大学、大学院修士・博士課程の別に示されたい。
三 機構の「奨学金」貸出業務については、各大学(高校)においてもかなりの業務を行っていると認識しているが、各大学と機構のそれぞれの役割分担とその業務内容を示されたい。また、各学校が業務を担う以上、機構は「ただ乗り」しているわけではなく、その事務経費について手当てしているものと考えられるが、各大学にどのようなかたちで支給しているのか、説明されたい。
四 機構の「奨学金」返還の滞納者には、意図的に返還に応じない元奨学生と、就職難で不安定な雇用条件の下で働かざるを得ないがために返還が困難になった元奨学生とがいると考えられる。「就職氷河期」や「ワーキングプア」という言葉が広く流布されている今日、教育行政を担う文部科学省や独立行政法人として公益の一翼を担っている機構は、当然のこととして、安定した収入があり返還可能であるにもかかわらず返還に応じない滞納者と収入がほとんどなく返還が困難なゆえに滞納せざるを得ない元奨学生の実態の調査・推計を行い、後者についての救済策の検討を行っていると考えるが、そのデータや対策の概要を示されたい。
五 新聞報道によると、機構は貸し出した「奨学金」を返還しない、もしくは返還できない学生が多く在籍していた大学名を公表する方針を示している。しかし、奨学ローンは、貸し手である機構と借り手である学生との契約である。したがって大学は本来機構が行うべき業務を肩代わりしているだけで、借り手である学生の卒業後の返還業務まで担うのは筋違いである。この方針には、本来大学の役割ではないローンの取り立てを各大学に押しつけようとしているのではないかという疑念を持たざるを得ない。このような疑念を払拭するために、この大学名公表の目的・意図について説明されたい。また、卒業した学生に対する「奨学金」返還の業務は各大学が行うべきことではないということの確認を求める。
六 もし仮に、前記五の質問に対する答弁が、機構が各大学に返還業務を担わせる方針を示しているならば、それは誤った方針と言わざるを得ないが、その場合には、各大学はローンの返還の督促等のためにかなりの人員と時間を割かなければならない。当然、人件費や事務経費など必要な経費の支給とセットで行うべきものと考えられるが、その予算額と概算の基準を明らかにされたい。
七 機構の年間の事務運営経費を示されたい。また機構の「奨学金」関連の事務運営経費の額と全体に占める割合についても示されたい。
八 機構の職員数と、事務運営経費に占める人件費比率を示されたい。また役員の退職金を含む報酬の比率についても示されたい。
九 独立行政法人になってからのすべての役員の氏名と職歴、在籍期間、役員報酬額および機構を退職した役員ごとの退職金額を示されたい。
十 独立行政法人には、各省庁から多くの国家公務員が出向、転籍、再就職していることが指摘されている。機構では現在、職員の中にどの程度、文部科学省などの各省庁出身者がいるのか。人数、氏名、役職について示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)が行う学資の貸与は、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じることを目的とすることから、従来より一般に奨学金事業と称している。
また、同事業においては、奨学金の返還を通じて学生等の自立心や社会への還元意識の涵養等の教育効果が期待され、また、返還金を再度原資とすることにより、限られた財源で、より多くの学生等に奨学の措置を講ずることができることから、学資を貸与することとしている。他方、国費外国人留学生制度等においては、途上国に対する人材育成を通じた国際援助等の観点から、学資を支給することとしているものと承知している。
二について
平成十九年度中の機構による学資の貸与額は、高等学校については五億六千九百八十五万六千円、大学院を除く大学については六千百十億六千四百六十八万八千円、大学院については九百六十九億八千八百六万五千円である。
三について
文部科学省としては、奨学金事業の実施主体は、機構であり、各大学等により行われている貸与基準を満たす者の推薦、学生等に奨学金の返還意識を持たせるための指導等は、大学等による学生に対する支援業務の一環であることから、機構から各大学等に対して事務経費は支給されていないものと承知している。
四について
機構が平成十九年度に実施した「奨学金の返還に関する調査」によると、返還金を延滞している理由は、本人の低所得が二十一・六パーセント、親の債務返済が十九・七パーセント、本人の借入金の返済が十二・六パーセント、延滞額の増加が十一・六パーセント、本人の無職・失業が十・五パーセント、家族の病気療養が六・三パーセント、本人の病気療養が六・二パーセント、本人の在学・留学が一・七パーセント、生活保護受給が一パーセント、災害が○・四パーセント、その他が八・四パーセントとなっている。また、機構においては、奨学金の返還が困難な者に対しては、一定期間返還を猶予する措置を講じているものと承知している。
五及び六について
文部科学省としては、機構においては、返還金の延滞率の改善が進まない学校名を公表することにより、大学等が在学中の学生等に返還意識を持たせるための指導を強化し、延滞率の改善が図られることが期待されると考えているものと承知している。
また、奨学金の返還金回収業務は、機構において実施するものである。
七について
機構の運営に係る経費である、一般管理費や業務経費等(以下「一般管理費等」という。)の平成十九年度の決算額は計二百五十億五千二百万四千三百九十七円である。このうち、貸与事業業務経費は、四十七億九千百二十二万千四百四十一円であるが、人件費等を含む奨学金事業に係る業務経費の総額等については、これを区分して整理していないことから、お答えすることは困難である。
八について
平成十九年四月一日現在の機構の職員数は、五百名である。一般管理費等に占める人件費の比率は約十九・九パーセントであり、このうち、退職金を含む役員の報酬の比率は約○・四パーセントである。
九について
機構からの報告によると、役員の氏名、職歴、在籍期間については、次のとおりである。
北原保雄理事長 元筑波大学長 平成十六年四月から平成二十年十月まで
板橋一太理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十六年十一月まで
藤田貢理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十八年七月まで
大浦道徳理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十八年十二月まで
沖吉和祐理事 元特殊法人日本育英会理事 平成十六年四月から平成十九年三月まで
坂本幸一理事 元国立国会図書館専門調査員 平成十七年一月から平成十八年一月まで
安江國浩監事 元特殊法人日本育英会監事 平成十六年四月から平成十九年三月まで
中野陽一非常勤監事 公認会計士 平成十六年四月から現在に至るまで
長谷川裕恭理事 元独立行政法人大学評価・学位授与機構理事 平成十八年二月から平成二十年七月まで
簑島則和理事 元ニッセイアセットマネジメント株式会社常任監査役 平成十八年七月から現在に至るまで
大貫賢一理事 元独立行政法人日本学生支援機構参与 平成十九年一月から現在に至るまで
矢野重典理事 元国立教育政策研究所長 平成十九年四月から現在に至るまで
佐藤正行監事 元学校法人慶應義塾塾監局参事 平成十九年四月から現在に至るまで
梶山千里理事長 元国立大学法人九州大学長 平成二十年十一月から現在に至るまで
尾山眞之助理事 元文化庁文化部長 平成二十年七月から現在に至るまで
また、機構の役員給与規程及び役員退職手当規程によれば、俸給月額は、理事長が八十九万円から百万円までの範囲内で理事長が定める額、理事が七十七万円から八十八万円までの範囲内で理事長が定める額、監事が六十五万円から七十六万円までの範囲内で理事長が定める額とそれぞれされており、また、役員の退職手当は、在職一月につき、退職の日におけるその者の俸給の月額に百分の十二・五の割合を乗じて得た額を基準とした額とされているものと承知している。
十について
平成二十年十二月一日現在の機構の管理職のうち各府省からの出向者は七人であり、その氏名及び役職は次のとおりである。
桒原靖 政策企画部長
増子則義 政策企画部総合計画課長
香川徹 財務部長
畠中祐二 財務部資金管理課主幹
小見夏生 留学生事業部長併任学生生活部長
谷川敦 学生生活部特別支援課長
有松正洋 日本語教育センター長
また、国家公務員の退職後における再就職の状況については、公務から離れた個人に関する情報であり、一般に政府が把握すべき立場にないことから、お尋ねのすべてにお答えすることは困難であるが、各府省の職員で平成十六年四月一日から平成二十年八月十五日までの間に企画官相当職以上で退職したものの再就職状況については、「公務員制度改革大綱」(平成十三年十二月二十五日閣議決定)に基づき、既に公表しているところであり、このように公表されている範囲において調べた限りでは、平成二十年十二月一日現在機構に職員として再就職している各府省出身者は、梶原憲次参与一人である。
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