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障害者権利条約の批准に関する質問主意書

参議院 第171回 第79号

提出者
参議院
提出日
2009年3月9日
内閣転送 2009年3月11日
答弁書受領日
2009年3月17日
提出から8日
答弁の項目数
7
質問 2,139字/答弁 1,629字

質問本文

障害者権利条約は、二〇〇六年一二月国連で採択され、二〇〇八年五月に発効した。日本政府は二〇〇七年九月二八日に署名し、批准が待たれている。

障害者権利条約第二四条の内容と、日本の障害のある子どもの教育法の整合性について、以下、質問する。

一 障害者権利条約の第一条で「障害者とは、長期にわたる身体的、精神的、知的、感覚的な損傷によって、他者との平等に基づく、十分かつ効果的な社会参加が、さまざまな障壁の相互作用において阻まれている人たちのことである」とし、障害を社会・環境との関係で規定している。したがって、障害の克服は社会の在り方との相関において捉えるべきであると考える。

しかし、学校教育法第七二条は、「特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする」とし、特別支援学校の教育の目的を機能障害の克服と記載している。

国際的な潮流としても、障害は社会との関係によって生じるという認識になっていることに明らかにそぐわず、学校教育法第七二条は条約に抵触すると考えるが、政府の見解はいかがか。

二 障害者権利条約第二四条2bは「障害のある人が、自己の住む地域社会において、他の者との平等を基礎として、インクルーシブで質の高い無償の初等教育及び中等教育にアクセスすることができること」とされている。

「アクセスすることができる」とは、権利の実現が保障されることである。したがって、障害を持つ子どもが日常的、恒常的に地域の初等中等教育学校に就学できることと理解するが、それで良いか。

三 障害者権利条約第二四条2cは、「個人の必要に応じて合理的配慮が行われること」と定めている。この合理的配慮は、特別支援学校・普通学級ともに行われると理解して良いのか。

さらに、地域の普通学校と普通学級に合理的配慮が行われた場合には、学校教育法施行令第五条第一項第二号の認定就学制度は廃止されると考えても良いのか。

また、各個人のニーズは、だれがどのように判別するのか明らかにされたい。

四 障害者権利条約第七条第三項は、「障害のある子どもが、他の子どもとの平等を基礎として、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を有することを確保する。この場合において、障害のある子どもの意見は、その年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする」と記載し、障害のある子どもの自己の意見表明権の確保を規定している。また、「締約国は、また、障害のある子どもが当該権利を実現するための支援であって障害及び年齢に適したものを提供される権利を有することを確保する」と記載し、意見表明権を行使するための支援の提供についても規定している。以上より、前記の合理的配慮の提供や内容について、障害を持つ子どもの意見表明に基づくべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。また、年齢及び成熟度にそって意見表明を行使するための支援の提供について、どのように考えているのか明らかにされたい。

五 学校教育法施行令第一八条の二は「市町村の教育委員会は、翌学年の初めから認定就学者として小学校に就学させるべき者又は特別支援学校の小学部に就学させるべき者について、第五条(第六条第一号において準用する場合を含む。)又は第十一条第一項(第十一条の三において準用する場合を含む。)の通知をしようとするときは、その保護者及び教育学、医学、心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の意見を聴くものとする」としている。

障害者権利条約第七条は障害のある子どもの意見表明権の確保を規定している。就学に際して子どもの意見を優先的に尊重せねばならないと考えるがいかがか。また、子どもの意見表明を尊重しその行使が可能なように支援すべきと考えるが政府の見解はいかがか。

六 障害者権利条約第二四条2eに記載されている「完全なインクルージョン」とは、アメリカ合衆国では同じ学級で障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶことと理解されており、そのように捉えるべきと考えるが、政府の見解はいかがか。

七 特別支援学校の学校教育費について、子ども一人あたりいくらか示されたい。これに対して、普通学級に通う子ども一人あたりの学校教育費はいくらか明らかにされたい。また、普通学級に障害を持つ子どもが在籍しているにもかかわらず、就学する場によって子どもの学校教育費が異なる教育予算の仕組みについて、政府の見解を示されたい。

八 特別支援教育就学奨励費は、保護者の経済的負担を軽減するために、特別支援学校及び特別支援学級に在籍する障害のある子どもの保護者に支払われているが、普通学級に在籍する障害のある子どもの保護者には支払われておらず、通学や付き添いに際して自己負担をしているという実態がある。これは、同じように障害がありながら、不平等な取扱いと考えるが、政府の見解はいかがか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

障害者の権利に関する条約(仮称)(以下「本条約」という。)第1条の規定の中で、機能障害について、様々な障壁との相互作用により、社会への完全かつ効果的な参加を妨げ得るものとしている。一方、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第七十二条に規定する特別支援学校の目的は、障害のある幼児、児童及び生徒に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることであり、このことを通じて幼児、児童及び生徒の社会への参加が促されることとなるものである。したがって、同条の規定が本条約に抵触することになるとは考えていない。

二について

御指摘の本条約第二十四条2(b)の規定は、同規定に定められているような初等教育及び中等教育を受けることのできる機会を確保するという趣旨であると考えている。

三について

本条約第二十四条2(c)の規定は、同条1の教育についての障害者の権利の実現に当たり、締約国が、個人に必要とされる合理的配慮が提供されることを確保することを定めており、障害者が教育を受けるあらゆる段階の教育の場について適用されるものと考えられている。

御指摘の認定就学制度は、障害の状態に照らして、市町村の設置する小学校又は中学校において適切な教育を受けることができるか否かについての判断を市町村教育委員会が行うものであり、本条約第二条にいう「合理的配慮」に相当する対応も判断の一要素として考慮されることになっている。したがって、合理的配慮の有無のみをもって同制度を直ちに廃止しなければならないとは考えていない。

また、本条約第二十四条2(c)に規定する「個人に必要とされる合理的配慮」の具体的内容は、本条約第二条における「合理的配慮」の定義を踏まえ、障害のある幼児、児童又は生徒の障害の状態等に応じ、各学校の設置者等が判断するものと考えている。

四及び五について

お尋ねの事項に関する障害のある幼児、児童及び生徒の意見については、本条約第七条3の規定に基づき、他の幼児、児童及び生徒との平等を基礎として、その幼児、児童及び生徒の年齢並びに成熟度に従って相応に考慮されることとなる。

また、お尋ねの支援の提供については、本条約第七条3の規定に基づき個別に判断されるべきであると考えている。

六について

米国による本条約の解釈について政府として述べる立場になく、米国は本条約の締約国ではないことから、お答えすることは差し控えたい。

七について

文部科学省が実施した地方教育費調査によると、平成十八年度における幼児、児童及び生徒一人当たりの学校教育費は、盲学校、聾学校及び養護学校(現在の特別支援学校に相当)では八百五十八万六千八百二十二円、小学校では八十八万九千四百四円、中学校では百三万三千八百五十七円である。なお、小学校及び中学校については、特別支援学級以外の学級に在籍する障害のある児童及び生徒のみに係る一人当たりの学校教育費についての統計は存在しない。

特別支援学校に関する予算については、当該学校に在籍する比較的障害の重い幼児、児童及び生徒が十分な教育を受けられるよう、特に配慮をしているところである。

八について

特別支援教育就学奨励費の支給は、遠距離通学、寄宿舎入居など特別支援学校及び特別支援学級への就学に伴って保護者等に特別な経済的負担が生じることにかんがみ、その軽減を目的として行われているものであって、不平等な取扱いに当たるものとは考えていない。なお、小学校及び中学校の特別支援学級以外の学級に在籍する児童及び生徒であっても、在籍する学校以外の学校で学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第百四十条の規定に基づく障害に応じた特別な指導を受ける場合に必要となる交通費については、特別支援教育就学奨励費の対象としているところである。

参議院の原文

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