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原子力発電所の「事故の真実」と「負の遺産」等に関する質問主意書
参議院 第187回 第75号お答えすることは困難 ×12趣旨が明らかではない ×3
質問本文
本年五月二十一日、福井地方裁判所(樋口英明裁判長)は関西電力株式会社大飯原子力発電所(以下「大飯原発」という。)の、現在定期検査中の第三号機、第四号機の再稼動を、大飯原発の安全技術や設備を「確たる根拠のない楽観的な見通しで成り立つ脆弱なもの」と厳しく批判し、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の事故での被害・避難状況を念頭に、二百五十キロ圏内の原告百六十六人に対し、「具体的な危険があり人格権が侵害される」とその再稼動差止めの訴えを認容した。
下級審の判決ではあっても、その判示は多数の識者が支持するものであり、九州電力株式会社川内原子力発電所(以下「川内原発」という。)をはじめ、全ての再稼動を計画中の原子力発電所(以下「原発」という。)の、道理に反する計画を真正面から否定する内容である。
しかしながら安倍内閣は右判決や各種の世論調査に示された過半数の、再稼動反対の国民世論に背を向け、とりかえしのつかない愚行に走っている。
右の点を踏まえ、以下質問する。
一 福島第一原発の大事故に関し、現時点における政府の統一見解を以下求める。
1 一ないし四号機について、以下具体的に示されたい。
① 爆発当時、各号機内にはいかなる核物質がどの程度存在したのか。
② 各号機の爆発の主原因はそれぞれ何であったのか。
③ 爆発の結果、各号機から環境に排出された放射性物質の総量及びヨウ素百三十一、セシウム百三十四、セシウム百三十七、ストロンチウム九十、プルトニウム、トリチウムの各量は今日までの間、それぞれどの程度か。
④ 現時点で各号機内の核物質の状態及び放射線量の状態は、それぞれどうなっているか。
⑤ 各号機から、環境に放射性物質が全く放出されなくなるまで最悪の場合、あと何年を要すると推定しているか。
2 福島第一原発から排出された放射性物質による汚染水は地下水脈を通じて関東地域をも汚染しているとの指摘もあることから、以下具体的に示されたい。
① 二〇一一年三月十一日以降二〇一四年九月三十日に至る間に環境に放出された汚染水の総量はどの程度か。
② 東京都区内、埼玉県内、神奈川県内、千葉県内、茨城県内及び福島県内の河川水及び井戸水からそれぞれ測定された最も高い放射線量及びその測定年月日を明らかにされたい。
3 前記一の1及び2に関して、仮に二〇二〇年の直前(例えば二〇一八年三月末)に至っても環境に対する放射性物質の放出及び汚染水の放出がなくならない場合、世界中の識者や一流のアスリート達の中からも東京オリンピックの開催を速やかに他の国に譲ることを求める声が出るような最悪の事態に陥る前に、むしろ日本政府の判断として、世界中のオリンピックを愛する人々に対する最低限の責任として、東京オリンピックの開催を辞退する選択も想定しているのか。
二 国内の原発の稼働が全機停止して以降、今日に至る間に、電力の供給不足が原因で発生した停電があれば、その日時、場所を全て示されたい。
三 ①使用済み核燃料の処理費用、②廃炉費用、③環境汚染の原状回復費用、④苛酷事故における一件百兆円規模の経済的損失、⑤原発周辺住民に与える物質的精神的負担等を正しく計算するならば、営利を目的とする正常な株式会社が正当な経済的利益を発生させる目的では原子力発電事業に手を出せるわけがない、と識者たちは指摘している。
政府は世論の過半数が反対しているにもかかわらず正常な経済活動のルールを無視して再稼動を強行するのであるから、原子力発電に伴って発生する前記①ないし⑤の各コストを一キロワット毎時当たり、各何円と試算しているのかを明らかにした上で、他の電源による発電コストとの比較及び直近のデータによる日・米・独三ヶ国の電源別発電コストはどうなっているか示されたい。
四 福島第一原発の事故では、放射性物質の九割は海側に流れ、陸側を汚染したのは全体の一割に過ぎないと言われている。
1 前述の見方について、政府の見解を示されたい。
右政府見解の根拠となる実測データが有るのか、又は実測データを入力したシミュレーションがあるのか、併せて明らかにされたい。
2 仮に、全ての放射性物質が陸側を汚染していたとすれば、どのような状態になっていたと想定されるか、①避難者の数、②被曝の範囲や程度、③各種被害額について右想定の結果を、根拠を示して明らかにされたい。
3 国の機関である原子力規制委員会の田中委員長は、川内原発の再稼動の審査合格を出すに当たり「安全であるとは申しません」と明確に発言している。そうであれば、川内原発で事故が起った際、最悪の場合どうなるのかを政府は明確に想定していなければならない。川内原発で事故が起きれば、それから発生する放射性物質は福島とは異なって、通常の風向きから考えて大部分は陸側に流れると想定しなければならない。川内原発一号機、二号機が事故を起こし、全て(若しくは九割)の放射性物質が陸側に流れた場合、どのような想定となるかシミュレーションしているのか示されたい。
五 最後に未来世代に対し、私達の世代が残すことになる「負の遺産」について尋ねたい。
1 停止中の全原発を一機も再稼働させない場合、既に存在する使用済み核燃料は各原発の敷地内及びその他の施設内に各何体存在するのか。また、それを人や生物に対して無害なものにするにはおよそ何年の歳月及び処理費を要するのか、具体的に示されたい。
2 「三・一一」以降、福島第一原発を人や生物に対し無害な状態にするために、今日までおよそいくらの費用を要し、さらに今後、どの程度の歳月と費用を要するのか、最悪の場合を具体的に示されたい。
3 政府は福島第一原発の事故発生から三十年後の二〇四一年三月の時点における日本の人口、日本人の健康状態、日本国の経済状態等に関して、最悪の場合、いかなる形でその影響を示すものと予測しているのか。可能な限り数字で示されたい。
4 日本国内の全原発を廃炉にし、人や生物に無害な状態にするには、最悪の場合およそ何年の歳月及び処理費を要するのか。具体的に示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1の①及び③について
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)第一号機、第三号機及び第四号機の原子炉建屋が爆発した時点での放射性物質の総量及び放出量については、燃料集合体の種類等により、燃料集合体ごとに大きく異なるものとなることから、これを推計し、お示しすることは困難である。
一の1の②について
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が平成二十四年七月二十三日に取りまとめた最終報告書によれば、「一号機R/B内に不燃限界濃度を超える水素が蓄積され、金属摩擦や電気設備・機器に接続された電気ケーブルからの漏電又はその他の要因によって着火し、R/B内で爆発が生じたものと考えられる。(中略)二号機R/B内に蓄積する水素の量が抑制され、水素爆発が発生しなかった可能性が高い。(中略)三号機R/B爆発の原因は、主として、三号機R/B内で化学反応によって生じた可燃性ガスによるものと考えられ、かかる可燃性ガスとしては、一号機と同様に、水素以外には考え難い。(中略)四号機R/B爆発の原因となった水素は、三号機の炉心損傷が進行してジルコニウム・水反応により発生したものが、SGTS配管を通じて四号機R/Bへ流れ込んだ可能性が高い。」とされている。
一の1の④について
お尋ねの「各号機内の核物質の状態及び放射線量の状態」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難である。
一の1の⑤について
お尋ねの「各号機から、環境に放射性物質が全く放出されなくなる」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難である。
一の2の①について
お尋ねの「環境に放出された汚染水」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難であるが、建屋等から海洋に流出又は放出した放射性物質によって汚染された水の量については、現時点で把握している限りにおいて、約一万千立方メートルと推定されている。
一の2の②について
政府は、福島第一原子力発電所の事故後、公共用水域及び地下水において、水質における放射性物質のモニタリングを実施し、その結果を公表してきている。
その結果によれば、河川水については、セシウム一三四は、福島県では平成二十三年九月二十六日に測定された一リットル当たり九ベクレルという値が最大値であり、茨城県、埼玉県、千葉県及び東京都では不検出となっている。セシウム一三七は、福島県では平成二十三年九月二十六日に測定された一リットル当たり十一ベクレル、千葉県では平成二十四年八月六日に測定された一リットル当たり一・三ベクレルが最大値であり、茨城県、埼玉県及び東京都では不検出となっている。
地下水については、セシウム一三四は、福島県では平成二十三年十一月七日に測定された一リットル当たり一ベクレルという値が最大値であり、茨城県及び千葉県では不検出となっている。セシウム一三七は、福島県では平成二十三年七月一日に測定された一キログラム当たり一・一ベクレルという値が最大値であり、茨城県及び千葉県では不検出となっている。
ただし、本モニタリングは公共用水域については神奈川県では実施しておらず、また、地下水については、埼玉県、東京都及び神奈川県において実施していない。
なお、避難指示解除準備区域を対象とした放射線モニタリングアクションプランに基づき実施された井戸水の測定結果によれば、福島県では、土状の異物が混入していた検体について、セシウム一三四及びセシウム一三七については、平成二十四年六月二十九日に測定された一リットル当たり三十二・五ベクレル及び五十五・五ベクレルが最大値であった。
一の3について
平成三十二年のオリンピック・パラリンピック競技大会を開催することについて、主催者である国際オリンピック委員会と契約を締結しているのは、東京都及び公益財団法人日本オリンピック委員会であり、政府として大会開催の辞退を判断する立場にないため、お答えすることは困難である。
二について
お尋ねの「電力の供給不足が原因で発生した停電」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十五年九月十五日に関西電力株式会社大飯発電所(以下「大飯発電所」という。)第四号機が稼働を停止して以降、一般電気事業者の供給区域全てに影響を及ぼすような電力供給不足による停電については、一般電気事業者から、実績はないと聞いている。
三について
政府としては、福島第一原子力発電所の事故後の平成二十三年に、コスト等検証委員会(以下「委員会」という。)において、各電源の発電コストについて試算を行い、原子力発電の発電コストについては、キロワットアワー当たり八・九円以上と算出している。
他の電源の発電コストについては、主な電源として、石炭火力はキロワットアワー当たり九・五円、LNG火力はキロワットアワー当たり十・七円、石油火力はキロワットアワー当たり二十二・一円、一般水力はキロワットアワー当たり十・六円、風力(陸上)はキロワットアワー当たり九・九円から十七・三円まで、太陽光発電(メガソーラー)はキロワットアワー当たり三十・一円から四十五・八円までと算出している。
また、お尋ねの「日・米・独三ヶ国の電源別発電コスト」については、各国のエネルギーを巡る状況が異なることから、各国の発電コストと日本における発電コストを単純に比較することは適切ではないが、委員会報告書において、委員会における発電コスト算出の前提とは必ずしも一致しないものの、経済協力開発機構及び国際エネルギー機関による試算を利用し、比較した結果を示すと次のとおりである。
原子力
日本 キロワットアワー当たり四・三円
米国 キロワットアワー当たり四・二円
ドイツ キロワットアワー当たり四・三円
石炭火力
日本 キロワットアワー当たり七・六円
米国 キロワットアワー当たり六・二円
ドイツ キロワットアワー当たり六・〇円
LNG火力
日本 キロワットアワー当たり九・〇円
米国 キロワットアワー当たり六・六円
ドイツ キロワットアワー当たり七・三円
なお、「①使用済み核燃料の処理費用、②廃炉費用、③環境汚染の原状回復費用、④苛酷事故における一件百兆円規模の経済的損失、⑤原発周辺住民に与える物質的精神的負担等」の意味するところが必ずしも明らかではないため、「原子力発電に伴って発生する前記①ないし⑤の各コストを一キロワット毎時当たり、各何円と試算しているのか」を明らかにすることは困難であるが、委員会の試算においては、再処理費用を含む核燃料サイクル費用についてはキロワットアワー当たり一・四円、廃炉処理費用を含む資本費についてはキロワットアワー当たり二・五円と算出している。
四の1について
平成二十三年三月に発生した福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質の陸側及び海側に降下した放射性物質の総量の比率の試算については行っていない。なお、同事故により原子炉から大気中へ放出された放射性物質については、その全てを正確に把握することが困難であるため、原子炉の状態等の解析結果から代表的な三十一核種の放出量等を推定し、その結果を「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について―」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)において記載したところである。
四の2について
お尋ねについては、放射性物質の放出による影響が、放射性物質の放出形態によって大きく異なることから、お答えすることは困難である。
四の3について
政府としては、九州電力株式会社川内原子力発電所(以下「川内原子力発電所」という。)第一号機及び第二号機から全ての又は九割の放射性物質が陸側に放出されたという仮定の下での試算は行っていない。
五の1について
我が国の原子力施設に存在する原子力発電所で発生した使用済燃料の集合体の体数については、平成二十六年八月三十一日時点において、北海道電力株式会社泊発電所においては九百八十一体、東北電力株式会社東通原子力発電所においては六百体、東北電力株式会社女川原子力発電所においては二千四百二十二体、福島第一原子力発電所においては一万千九百九体、東京電力株式会社福島第二原子力発電所においては六千四百七十六体、東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所においては一万三千七百三十四体、中部電力株式会社浜岡原子力発電所においては六千五百七体、北陸電力株式会社志賀原子力発電所においては九百六十体、関西電力株式会社美浜発電所においては九百四十三体、大飯発電所においては三千百十八体、関西電力株式会社高浜発電所においては二千五百五十一体、中国電力株式会社島根原子力発電所においては三千二百三十八体、四国電力株式会社伊方発電所においては千四百二十二体、九州電力株式会社玄海原子力発電所においては千九百六十八体、川内原子力発電所においては千九百四十六体、日本原子力発電株式会社東海第二発電所においては二千百六十五体、日本原子力発電株式会社敦賀発電所においては千五百四十二体、日本原燃株式会社再処理事業所においては一万二千二十二体、日本核燃料開発株式会社においては九体、ニュークリア・デベロップメント株式会社においては三体である。
また、お尋ねの「人や生物に対して無害なものにするにはおよそ何年の歳月及び処理費を要するのか」については、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。
なお、使用済燃料については、再処理に伴い使用済燃料から核燃料物質その他の有用物質を分離した後に残存する物を固型化した物(以下「ガラス固化体」という。)にして、地下三百メートル以上の深さの地層において、人間の生活環境から隔離して安全に最終処分することとしているが、処分の完了までに要する期間は未定である。また、この処分に要する費用については、平成二十五年度末の時点において、ガラス固化体四万本を最終処分する場合に約二・八兆円を要すると見積もっている。
五の2について
お尋ねの「福島第一原発を人や生物に対し無害な状態」については、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。
なお、政府としては、福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策のための予算として、東日本大震災発生後からこれまで約千六百六十一億円を、東京電力株式会社としては、平成二十五年度末時点で合理的な見積りが可能な金額として約九千七百十二億円を計上している。
また、「東京電力(株)福島第一原子力発電所一~四号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(平成二十五年六月二十七日原子力災害対策本部東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議決定)においては、平成二十三年十二月から、三十年から四十年後までに廃止措置を終了させることを目標としている。
五の3について
御指摘の「福島第一原発の事故発生から三十年後の二〇四一年三月の時点における日本の人口、日本人の健康状態、日本国の経済状態等」に対する福島第一原子力発電所の事故による影響についての予測は行っていない。
五の4について
お尋ねの「人や生物に無害な状態にするには、最悪の場合およそ何年の歳月及び処理費を要するのか」については、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。
なお、廃炉に伴い生じる放射性廃棄物(使用済燃料の再処理に伴い生じるものを除く。)については、発電用原子炉設置者により、生活環境に対する放射能の影響を未然に防止することを目標として処分されるべきものである。この処分に要する期間は、それぞれの発電用原子炉に係る放射性廃棄物の種類や放射能レベル等により様々であり、お答えするのは困難である。
また、平成二十五年度末時点において、原子力発電施設解体引当金に関する省令(平成元年通商産業省令第三十号)に基づき承認された原子力発電施設ごとの解体に要する全費用の見積額の合計は、約二・八兆円である。
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