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臨床研究法案における被験者の人権の保護と研究の公正性の確保等に関する質問主意書

参議院 第190回 第142号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×6検討してまいりたい ×1

提出者
参議院
提出日
2016年5月30日
内閣転送 2016年6月1日
答弁書受領日
2016年6月7日
提出から8日
答弁の項目数
15
質問 3,616字/答弁 3,309字

質問本文

厚生科学審議会科学技術部会第二回臨床研究の倫理指針に関する専門委員会(平成十九年九月十三日)では光石参考人が「国会が本来、法律をもって定めるべき国民の権利義務にかかわる事項を無限定に行政立法に委ねるとすると、立法機関としての国会の責務放棄になるだけではなくて、行政府の権限を過大にして、三権分立に反する」と述べている。

また「治験のあり方に関する検討会」第十六回(最終回)平成十九年九月十九日では、加藤良夫委員から「ICH-GCPには冒頭のイントロダクションのパラグラフに「被験者の人権保護」について明記されている」との指摘があり、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(以下「GCP省令」という。)には「被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図り」と明記されている。

さらに財団法人日弁連法務研究財団「ハンセン病問題に関する検証会議最終報告書」(平成十七年三月)では、「公衆衛生等の政策等におけるこのような人権侵害の再発を防止するための核とされるべきは、患者・被験者の諸権利を法制化することである」とされ、その提言に基づくハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会「ハンセン病問題に関する検証会議の提言に基づく再発防止検討会報告書」(平成二十二年六月)では「患者・被験者の権利擁護のあり方」に対する国民的な合意を速やかに形成することの必要性が強く認識された」とある。

加えて薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」(平成二十二年四月二十八日)には、「治験以外の臨床試験と治験を一貫して管理する法制度の整備を視野に入れた検討を継続すべきである。その際、被験者の人権と安全が守られることは絶対条件であるため、被験者の権利を明確に規定すべきである」と明記されている。

このような、公衆衛生・薬事行政に関わる重大な過誤に引き続いて起こったのが、ディオバン臨床試験をめぐる不正事案であって、臨床研究の新たな法律は、被験者の人権の保護と研究の公正性の確保を、二本の柱としてしっかりと築いた上で立法されるべきものと考える。

以上を踏まえ、第百九十回国会に内閣から提出された臨床研究法案(以下「本法案」という。)について、以下質問する。

一 研究対象者の人権の尊重について、本年五月十九日の参議院厚生労働委員会において、神田厚生労働省医政局長は、「過度な規制は研究の萎縮を招きかねないことから、全ての臨床研究に一律の法規制を課すことは妥当でない」と答弁したが、臨床研究における「人権の尊重」は、研究対象者に対するリスクの軽重を問わず、一律に法律で規定すべきであって、そのような規定のない本法案は、自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)第七条の趣旨に反しているのではないか。

二 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)下のGCP省令で明記できた「被験者の人権の保護」が、なぜ臨床研究について規定する本法案には明記できないのか。本法案だからこそ、被験者の人間の尊厳、人権の尊重を明記すべきではないか。

三 厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会「薬事法等制度改正についてのとりまとめ」(平成二十四年一月二十四日)において「法制化を含めた臨床研究の在り方については、平成二十五年七月を目途とした臨床研究指針全般の見直しの議論(厚生科学審議会科学技術部会)において、引き続き検討されること」とされ、「「最終提言」が求めた被験者の権利の確立が必要であり、治験以外の臨床研究と治験を一貫して管理する法制度の整備を視野に入れた検討を望む」とされたことが、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」策定に向けた厚生科学審議会科学技術部会疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会・臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会審議の第一回で課長補佐より紹介されたにもかかわらず、同審議会で一度も議論されなかったのはなぜか。ハンセン病、薬害肝炎という、公衆衛生・薬事行政に関わる重大な歴史に学んでいないことになるのではないか。

四 本年五月十九日の参議院厚生労働委員会において神田局長は、「他の製薬企業を経由して自社製品に対する資金提供を行う場合についても、特定臨床研究に関し研究対象者への説明義務が掛かる」と答弁しているが、これはA社がB社と結託し、B社医薬品の特定臨床研究にA社が資金を提供し、A社医薬品の特定臨床研究にB社が資金提供した場合でも、それぞれの研究責任者はそれらの資金提供について、研究対象者への説明義務がかかるという理解でよいか。

五 製薬企業が自社の医薬品を用いる臨床研究費に充てられることを想定しないで特定の大学の教室に奨学寄附金等の形で資金提供しているときに、当該教室の一職員が自主的に行う臨床研究は、特定臨床研究に該当するか。言い換えれば、研究者が自発的にある医薬品の臨床研究を実施しようとするときには、その医薬品の製薬企業から当該研究者の所属する教室に対して当該臨床研究を目的としない資金提供がないことを確認しなければならず、もしそのような資金提供があった場合には契約を締結しなければならないことになると解してよいか。

六 大学のある教室が行う臨床研究に用いる医薬品の製薬企業から、同じ大学内の異なる教室に対して奨学寄附金等、当該臨床研究に充てることを想定しない資金提供があった場合、ある教室が行う臨床研究は特定臨床研究に該当するか。

七 臨床研究に用いる医薬品の製薬企業以外からの、例えば公的資金や大学の自己資金、同業他社からの奨学寄付金や原稿料、顧問料などを臨床研究に充てた場合、その研究計画やUMIN臨床試験登録システム等への登録(以下「登録」という。)時に公表、及び被験者に提示する必要はあると考えているか。またその研究費には充てず、他の目的に使用した場合でも、当該臨床研究の研究計画や登録時に公表、及び被験者に提示する必要はあると考えているか。このことについて特定臨床研究とそれ以外の臨床研究で違いがあるのか。

八 データ原本、論文で使用したデータ、研究プロトコル及び研究が途中で変更された場合の変更承諾書の開示請求を被験者が行った場合、請求を受けた側はどのような対応が求められるのか。

九 臨床研究の登録上の不正や結果の未公表は、本法案では規制していないという理解でよいか。また研究データの改ざん、患者データの使い回しなど研究の中身の問題は、法制定後に策定する第三条の「臨床研究実施基準」で規制し、第十九条に基づく緊急命令の対象となり、違反した場合には、第三十九条に基づく罰則の対象となるという理解でよいか。

十 本法案における「臨床研究」とは「(前略)当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究」ということであるが、薬物の動態や作用メカニズムを探索することを目的とする研究は臨床研究に該当するのか。探索的試験なら該当するが検証的試験は該当しないという規定をどこかで設けるつもりか。

十一 本法案における「臨床研究」は、臨床研究中核病院において実施される臨床試験の全てを含むと理解してよいか。

十二 体外診断用医薬品は本法案の対象外とのことだが、体外診断用医薬品であっても、企業が不適切な資金提供をして歪んだ結果を広告することにより保健衛生上の危害や医療費の無駄遣いが拡大することも考えられるが、これを除くことはディオバン事件に学んでいないといえるのではないか。体外診断用であればそのような危険性はないと言い切れる根拠は何か。

十三 本法案における臨床研究においては、いわゆる混合診療は禁止され、先進医療Bないし患者申出療養として実施しない限り、保険併用はできないと解してよいか。

十四 本年五月二十五日の衆議院厚生労働委員会における郡和子議員の質問に対して、中垣厚生労働省医薬・生活衛生局長は「通常の医療の一環として医薬品が処方され、適正に使用されている患者を対象にその医薬品に関する臨床研究を行う場合につきまして、その医薬品の副作用被害が生じれば、原則として医薬品副作用被害救済制度の対象になる」と答弁しているが、これは研究に用いる医薬品の製造企業から資金提供を受けて実施される特定臨床研究においても、適用されると理解してよいか。

十五 同じく本年五月二十五日の衆議院厚生労働委員会において、本法案とこの四月に始まった患者申出療養制度の関係について議論があったが、本法案の施行前に開始された未承認医薬品に関する患者申出療養についても、施行後は特定臨床研究として認定臨床研究審査委員会による実施計画の審査を求めることになるのか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)第七条は、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない旨を規定するものであり、御指摘の「人権の尊重」について一律に法律で規定することを求めるものではない。なお、第百九十回国会に提出した臨床研究法案(以下「法案」という。)においては、法案第二条第二項に規定する特定臨床研究(以下「特定臨床研究」という。)を実施する者は、当該特定臨床研究の対象者からの同意を得なければならないこととする等、特定臨床研究の対象者の保護に資する規定を設けている。

二について

御指摘の「被験者の人間の尊厳、人権の尊重」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法案においては、特定臨床研究の対象者の保護を図るため、具体的な措置として、特定臨床研究を実施する者は、厚生労働大臣の定める臨床研究実施基準(法案第三条第一項に規定する臨床研究実施基準をいう。以下同じ。)に従ってこれを実施しなければならないこと、当該特定臨床研究の対象者の同意を得なければならないこと等を規定している。なお、臨床研究実施基準の内容については、今後定めることとしているが、特定臨床研究の実施に当たり、臨床研究(法案第二条第一項に規定する臨床研究をいう。以下同じ。)の対象者の保護が必要である旨を明示することについては、臨床研究実施基準において規定することを検討してまいりたい。

三について

お尋ねが、仮に、いわゆる臨床研究についての法規制について御指摘の疫学研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会・臨床研究に関する倫理指針の見直しに係る専門委員会合同委員会において議論されなかったことについての御質問であるとすれば、同委員会の議事に関することであるためお答えすることは困難であるが、同委員会は疫学研究に関する倫理指針(平成十九年文部科学省・厚生労働省告示第一号)及び臨床研究に関する倫理指針(平成二十年厚生労働省告示第四百十五号)の見直しについて議論を行うためのものであったことから、議論されなかったものと考えられる。なお、いわゆる臨床研究についての法規制については、高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会が平成二十六年四月に取りまとめた高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(報告書)において、「法制度についての検討に当たっては・・・様々な影響等を十分考慮の上、本年秋を目処に検討を進めるべきである」とされたことから、厚生労働省に設置した臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会において検討を行ったものである。

四について

A社が製造販売(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「医薬品医療機器等法」という。)第二条第十三項に規定する製造販売をいう。)をし、又はしようとする医薬品等(法案第二条第三項に規定する医薬品等をいう。以下同じ。)を用いた臨床研究の実施のための資金をA社が提供し、当該臨床研究が特定臨床研究に該当する場合は、当該特定臨床研究を実施する者は、法案第九条の規定による説明等を行わなければならないこととなる。

五について

医薬品等製造販売業者(法案第二条第四項に規定する医薬品等製造販売業者をいう。以下同じ。)又はその特殊関係者(同条第二項第一号に規定する特殊関係者をいう。以下同じ。)から研究資金等(同号に規定する研究資金等をいう。以下同じ。)の提供を受けて実施する臨床研究に該当しない場合は、同号に該当する特定臨床研究ではない。また、臨床研究を実施する者は、当該臨床研究が特定臨床研究に該当するかを確認するため、研究資金等の提供者について調査を行う必要がある。なお、御指摘の「契約」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、法案第三十二条に規定する契約を締結しなければならないこととなるかについての御質問であるとすれば、同条の規定は、医薬品等製造販売業者又はその特殊関係者に関する規定である。

六について

法案第二条第二項第一号に該当する特定臨床研究は、医薬品等製造販売業者又はその特殊関係者から研究資金等の提供を受けて実施する臨床研究であり、これに該当しないとすれば、同号に該当する特定臨床研究ではない。

七について

お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、法案においては、御指摘の臨床試験登録システム等への登録時の公表等については規定していない。また、これらは政府が運営しているものではないため、これらの運営規約等において御指摘の公表が求められるかについてお答えすることは困難である。

八について

御指摘のような場合については、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)等の規定に基づき適切な対応が求められるものと考えている。

九について

御指摘の「臨床研究の登録」については、その意味するところが必ずしも明らかではないのでお答えすることは困難である。また、御指摘の「結果の未公表」については、法案においては臨床研究の結果の公表については規定していない。なお、臨床研究実施基準の内容については、今後定めることとしているが、御指摘の「研究データの改ざん、患者データの使い回し」等の防止の観点も含め、臨床研究の対象者の保護を図るために必要な事項を規定することを検討している。なお、特定臨床研究を実施する者に対し、法案第十九条においては、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための応急の措置をとるべきことを、法案第二十条第一項においては、法案第二章の規定等に違反していると認めるときは、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができることとしている。

十について

御指摘の「探索的試験」及び「検証的試験」の意味するところが必ずしも明らかではないが、医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性又は安全性を明らかにする研究(当該研究のうち、当該医薬品等の有効性又は安全性についての試験が、医薬品医療機器等法第八十条の二第二項に規定する治験に該当するものその他厚生労働省令で定めるものを除く。)であれば、臨床研究に該当する。

十一について

御指摘の「臨床試験」の意味するところが必ずしも明らかではないが、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第四条の三第一項に規定する臨床研究中核病院においては、臨床研究以外の研究も実施されるものと考えられる。

十二について

医薬品医療機器等法第二条第十四項に規定する体外診断用医薬品については、人の体に直接使用されることのないものであることから、研究の対象者の生命及び身体に対する危険性は低く、法案においては、それらに係る研究については規制していない。

十三について

法案は健康保険法(大正十一年法律第七十号)等の医療保険各法について改正するものではなく、法案により同法等に基づく評価療養、患者申出療養及び選定療養として保険外併用療養費の支給対象となる療養の範囲が変更されるものではない。

十四について

通常の医療の一環として独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成十四年法律第百九十二号)第四条第六項に規定する許可医薬品を適正に使用して臨床研究を行った結果、当該許可医薬品の副作用による健康被害が生じた場合には、原則として医薬品副作用被害救済制度の対象になるものと考えている。

十五について

法案の施行の際現に特定臨床研究を実施している者が実施する当該特定臨床研究については、法案の施行の日(以下「施行日」という。)から起算して一年を経過する日までの間(当該期間内に当該特定臨床研究の実施計画(法案第五条第一項に規定する実施計画をいう。)を提出した者については、当該提出の日までの間)は、同項の規定は適用されないため、施行日前に開始された特定臨床研究については同条第三項の規定による法案第二十三条第五項第二号に規定する認定臨床研究審査委員会の意見の聴取は不要である。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×6検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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衆議院 第180回 第398号

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