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東京大学の研究不正の調査のあり方に関する質問主意書
参議院 第192回 第8号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×2
質問本文
平成二十八年八月、東京大学の医学部と分子細胞生物学研究所に所属する教授六人がそれぞれ発表した計二十二本の論文データについて、不自然な点が多数あるとする匿名の告発があり、同年九月、東京大学は研究不正の有無について本格的な調査をはじめたと報道されている。また、同年八月には、東京大学循環器内科の教授が、いわゆる一連のディオバン事件の臨床研究論文に関して撤回に追い込まれたことが報道されている。
東京大学は日本における最も権威ある大学であり、その医学部で発生した研究不正の調査を適正に行わなければ、日本の科学・医学そのものに対する信頼を失う事態に陥ると考える。
研究不正とその調査のあり方に対する社会の目は非常に厳しく、過去には、理化学研究所が小保方氏によるSTAP細胞の問題において、問題を矮小化し、厳しい調査を避け続けたことで、組織の構造的な欠陥を指摘され、CDBの再編につながった。
しかし、これまでの東京大学の対応を見ると、調査委員会の委員の選考や研究不正の調査を実施する範囲について、不十分であると考える。
そこで、以下の通り質問する。
一 東京大学では、今回告発のあった二十二本の論文について本調査を進めるとしているが、告発されていない論文についての調査は実施しないとしている。さらに、二十二本の論文のなかでも、疑義が指摘されたデータに限って調査を行うべきとする意見もあると言われている。
しかし、過去に東京大学が調査を行った同大学分子細胞生物学研究所の研究不正においては、同研究所が発表した百六十五本の論文すべてを調査した結果、告発された二十四本の論文を上回る、三十三本の論文で不正が見つかったとされている。
このような前例があることから、今回の研究不正の調査において正確な結論を得るためには、疑義が指摘された論文の全データに加え、該当の研究者の過去の論文すべてを調査すべきだと考えるが、いかがか。政府の見解を示されたい。
二 東京大学では現在、調査委員会の委員の選考を行っているが、早急に調査結果を出すために、委員は東京近郊の研究者に限るという方針が示されている。しかし、東京近郊には東京大学医学部の関連病院が多く、実質的に内輪の調査と変わらない状況になりかねない。文部科学省は調査結果の信頼性を高めるためにも、大阪大学や京都大学といった、東京大学医学部の影響が少ない地域の研究者を委員に加えるよう指導すべきだと考えるが、いかがか。
三 国民に対する説明責任を果たし、内部の学生や研究者の不安に答えるとともに、被告発者の名誉を回復(不正が否定されたらいち早く発表)するためにも、東京大学は調査の進捗について中間報告を行うべきだと考えるが、いかがか。政府の見解を示されたい。また、文部科学省は東京大学に対し、そのような指導を行うつもりはあるかどうか明らかにされたい。
四 文部科学省には、度重なる研究不正をうけて研究公正推進室が作られたが、研究公正推進室が作られる以前と比較してなにがどう変わったのか、根拠とともに示されたい。
五 今回の調査で、東京大学の研究不正はすべて明らかになると考えるか、政府の見解を示されたい。また、研究不正がすべて明らかにならない場合、文部科学省の責任が問われると考えるが、いかがか。
六 一般的に、研究不正の調査において、被告発者と利害関係にある人物は調査委員会に入れるべきではないと考えるが、いかがか。
七 一般的に、研究不正の調査委員会の委員や調査の内容は明らかにされるべきであると考えるが、いかがか。
八 東京大学における研究不正の調査のあり方をめぐっては、今回告発対象となっている六名の教授のうち二名について、過去の研究不正の調査にも問題があるという指摘がある。
二名のうちの一人、糖尿病・代謝内科の教授による過去の研究不正の調査については、大学側の予備調査で、問題なしと結論付けられている。しかし、調査委員の名前や調査の内容は全く明らかにされていない。また、調査の責任者は被告発者である同教授と親しい医学部の研究者が務めたと言われている。このような、透明性に欠いた内輪の委員のみで調査を終えてしまったことは問題であり、文部科学省が研究不正の調査に対する指導を行うべきであったと考えるが、いかがか。
一方、循環器内科の教授による過去の研究不正の調査については、調査委員会に、疑義を指摘された論文を掲載した雑誌の編集担当者が入っている。被告発者の利害関係者とみなすべき人物は研究不正の調査委員会から外すべきだと考えるが、いかがか。政府の見解を示されたい。また、同教授は本年八月に自らが実施した臨床研究(VART研究)の主論文の撤回に追い込まれた。既に同教授の前職場の千葉大学が「本研究は臨床研究の基本的なルールから逸脱したものである」と断定する調査報告書を出しているにも関わらず、同教授は撤回の理由を「honest error」と強弁している。このVART研究問題は、今国会で審議される臨床研究法案(いわゆるディオバン法案)の立案に至った中心的な事件であるが、東京大学では十分な調査が行われていない。ディオバン事件に関係した他大学が行ったように、東京大学は学内メンバーに加えて第三者を含むコンプライアンス委員会を設置して真相解明を図るとともに、責任者の適切な処分を行うべきと考えるが、いかがか。政府の見解を示されたい。また、厚生労働省は、このVART研究問題に関してどのような指導を東京大学に行ったか明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一から三まで及び五から八までについて
御指摘の「糖尿病・代謝内科の教授による過去の研究不正の調査」、「循環器内科の教授による過去の研究不正の調査」及びVART研究「問題」に対する東京大学による「調査」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないため、これらの「調査」に関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、大学等の研究機関における研究活動の不正については、平成十八年二月二十八日に総合科学技術会議(当時)が決定した「研究上の不正に関する適切な対応について」において、「関係府省等における対応」として、「国による研究費の提供を行う府省及び機関は、不正が明らかになった場合の研究費の取り扱いについて、あらかじめ明確にする。また、研究費の配分先となる組織に対して、研究上の不正に関する規定の策定及び不正の防止に向けた対応を求める」とされている。文部科学省としては、同省の予算の配分又は措置により行われる研究活動(以下「研究活動」という。)における不正行為に対する対応に関しては、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成二十六年八月二十六日文部科学大臣決定。以下「ガイドライン」という。)において、その基本的な考え方や研究機関(所属する研究者が研究活動を行っている機関をいう。以下同じ。)による特定不正行為(故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用をいう。以下同じ。)に対する調査等について定めている。具体的には、研究活動における不正行為に対する対応については、「まずは研究者自らの規律、及び科学コミュニティ、研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない」とし、特定不正行為の告発に係る事案の調査を行う研究機関が設置する調査委員会の調査委員については、「全ての調査委員は、告発者及び被告発者と直接の利害関係(例えば、特定不正行為を指摘された研究活動が論文のとおりの成果を得ることにより特許や技術移転等に利害があるなど)を有しない者でなければならない」とし、調査の対象となる研究活動については、「告発された事案に係る研究活動のほか、調査委員会の判断により調査に関連した被告発者の他の研究活動も含めることができる」とし、調査の中間報告については、「調査機関が研究機関であるときは、告発された事案に係る研究活動の予算の配分又は措置をした配分機関等の求めに応じ、調査の終了前であっても、調査の中間報告を当該配分機関等に提出するものとする」とし、調査の内容の公表については、「調査機関は、特定不正行為が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結果を公表する」とするとともに、「公表する調査結果の内容(項目等)は、調査機関の定めるところによる」としているところである。
その上で、お尋ねの「今回告発のあった二十二本の論文」に係る東京大学の「調査」については、調査の対象とすべき「過去の論文」の範囲の決定を含め、同大学が設置する調査委員会において、ガイドライン等に基づき適切に行われると考えており、お尋ねの同大学が設置する「調査委員会の委員」やお尋ねの「研究不正の調査」における調査委員会の調査委員の選定及びお尋ねの「研究不正の調査委員会の委員や調査の内容」の公表については、同大学や調査を行う研究機関において、ガイドライン等に基づき適切に行われると考えており、お尋ねの同大学の「中間報告」については、現段階では、同大学が設置した調査委員会において調査を開始した直後であることから、それを求めるか否かについての判断は困難である。
また、お尋ねの厚生労働省による同大学に対してのVART研究に関する「指導」は、同研究自体が同大学で行われていないことから、行っていない。
四について
お尋ねの「研究公正推進室が作られる以前と比較してなにがどう変わったのか、根拠とともに示されたい」の意味するところが必ずしも明らかではないが、文部科学省においては、平成二十七年四月に、文部科学省組織規則(平成十三年文部科学省令第一号)第四十九条第一項及び第四項の規定に基づき、科学技術に関する研究者に関する基本的な政策のうち研究開発の公正な実施の推進に係るものに関する企画及び立案並びに推進に関すること等の事務をつかさどる研究公正推進室を設置し、新たに、同室において、研究機関におけるガイドラインを踏まえた体制整備の状況等を適切に把握するための定期的な履行状況調査や研究倫理教育に関するプログラムの開発推進等を実施している。
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