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イラクのクルド人地域に住むヤジディ教徒への支援に関する質問主意書

参議院 第196回 第193号

提出者
参議院
提出日
2018年7月18日
内閣転送 2018年7月20日
答弁書受領日
2018年7月27日
提出から9日
答弁の項目数
4
質問 1,555字/答弁 934字

質問本文

昨年十二月のイラクのアバーディー首相によるイスラム過激派組織「ISIL(イラクとレバントのイスラム国)」からのイラク全土の解放宣言から半年以上が経過した。以後、ISILの脅威は縮小傾向にあるとされるが、これまでISILにより多くの被害を受けてきたイラク国民の傷跡は深く、依然として癒えていない状況にある。

特に、ISILはイラク北部に住むクルド系少数派のヤジディ教徒を異教徒であるとして、侵略・虐殺行為を繰り返してきた。二〇一四年以降、約五千人とも言われるヤジディ教徒が殺害されるとともに、多数の子どもや女性を奴隷や戦闘員として拉致したこと等が報じられてきた。現在も、ヤジディ教徒の住民の多くが住居や故郷を追われたままの状況であることに加え、未だに先の生活が見えない状況にあり、深刻な人道被害が続いている。

以上を踏まえ、以下質問する。

一 日本政府の、ISILによるヤジディ教徒の虐殺等に対する見解とイラクにおけるヤジディ教徒の現状に対する認識をそれぞれ伺いたい。

二 これまで米国政府を始め、欧州連合、イギリス、カナダ、フランス等の議会は、ISILによるヤジディ教徒への虐殺を公式に認知する声明を出している。日本政府も同様の声明を発出し、国際社会と緊密に連携して、ISILによるヤジディ教徒虐殺問題に対処するとの強い姿勢を示すべきではないか。

三 ISILに拉致・拘束されているヤジディ教徒は、今もなお、三千人以上いるとされる。クルド自治政府及びイラク中央政府によるヤジディ教徒の救出を促進するため、日本政府として、より積極的な働きかけを行い、国際世論の喚起を強めていくべきではないか。

四 二〇一七年一月、日本政府はイラク北部のクルド人地域のエルビル市に領事事務所を開設した。この領事事務所を開設した目的は何か。ヤジディ教徒の難民支援のために、この領事事務所をどのように活用できると考えているのか。

五 ISILの勢力拡大を受け、日本政府は、二〇一四年二月に表明したISIL対策・周辺国支援を目的とする総額約二億ドルの支援など、多額の支援を実施している。これまでに行ったISIL対策・周辺国支援の金額を明らかにされたい。また、政府はイラクに対して、難民・国内避難民への人道支援等を行っているが、その中にヤジディ教徒への支援は含まれているのか。含まれているとすれば、どのような支援をどのような金額で行ってきたのか。

六 難民・避難民となったヤジディ教徒は、住む場所も仕事もないことに加え、食糧、衣類、医療など生活に最低限必要なものが圧倒的に不足しており、先の生活に大きな不安を抱えている。また、警察機構や学校等の生活基盤はISILにより破壊され、現在もこれらの復興は不十分な状況となっている。ヤジディ教徒の難民・避難民のため、日本政府としてどのような支援が可能と考えるか。

七 ISILから逃れた女性の受けた被害や心の傷は極めて深い。こうした人々に対して、例えば、ドイツでは、ヤジディ教徒の女性を受け入れ、治療やトラウマ軽減のための支援に加え、住居の提供を行う特別プログラムを実施し、これまでに千人以上のヤジディ教徒の女性やその家族を救ってきているとされる。日本政府も身体的・精神的な苦痛を経験したヤジディ教徒の女性を積極的に受け入れ、治療やトラウマ軽減のための支援を行うべきではないか。

八 本年四月に行われた「イラクの治安改善のための経済開発に係る東京会議」において、安倍総理は、「真の勝利は(中略)今後二度と暴力的過激主義組織の台頭を許さない豊かで安全な国をイラクに作り上げること」と訴えたが、過激主義を生み出さない国際社会の構築に向け、政府は今後具体的にどのように取り組んでいくのか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一から三までについて

国連機関やイラクのクルディスタン地域政府等の調査や発表によれば、平成二十六年以降に多数のヤジディ教徒がいわゆるISILによる人権侵害に直面したとされており、ヤジディ教徒約五十五万人のうち約三十六万人が避難を余儀なくされたとのことであり、現在、イラクでは、同教徒に対するものも含め、深刻な人道危機が継続していると承知している。

これまで、我が国としては、少数民族を含め、イラクの無辜の人々を標的にしたテロ行為を断固として非難する旨の談話の発出等を通じ、国際世論の喚起に努めてきたところであり、人道支援などの我が国の知見や強みを活かす支援を通じ、いわゆるISILにより傷を負った人々の社会復帰を助け、イラク復興に尽力してまいりたい。

四について

我が国は、平成二十九年一月、イラクのクルディスタン地域に駐在する邦人の安全確保及び同国との多角的な関係強化を目的として、エルビル市に領事事務所を設置しており、今後も、人道危機への対応において、最大限、同事務所を活用してまいりたい。

五から七までについて

我が国は、平成二十七年に表明した、御指摘の総額約二億ドルの支援のほか、人道支援のみならず、中長期的な観点から、中東地域の復興や開発を後押しするため、平成二十八年に開催されたG7伊勢志摩サミットにおいて、中東地域安定化のための包括的支援として、平成二十八年から平成三十年までの三年間で総額約六十億ドルの支援を表明し、これらを含む支援を着実に実施してきている。

イラクにおける難民や国内避難民への人道支援等においては、ヤジディ教徒の居住地域を支援対象に含むものもあり、例えば、国連人間居住計画による都市復旧促進事業に対し、平成二十八年に約六億円を拠出した。我が国としては、引き続き、国際社会と協力しつつ、女性に対する支援を含め、難民や国内避難民への人道支援等を実施していく考えである。

八について

暴力的過激主義を生み出さない国際社会を実現するためには、平和的な生計手段を確保できる機会が重要であり、その実現に向け、平成三十年四月五日に開催した「イラクの治安改善のための経済開発に係る東京会議」に参加した国や機関を含め、国際社会と広く連携してまいりたい。

参議院の原文

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