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国際協力銀行が融資を決定したベトナム・バンフォン第一石炭火力発電事業に係る国際ルール違反等に関する質問主意書
参議院 第198回 第48号お答えすることは困難 ×1
質問本文
日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)が支援を決定したベトナム社会主義共和国カインホア省のバンフォン第一石炭火力発電事業(以下「当該発電所事業」という。)は、六百六十メガワットの超臨界圧の発電所を二基建設するというものである。当該発電所事業には、超々臨界圧ではなく超臨界圧という低効率の技術を利用すること、大気汚染の悪化への懸念、パリ協定に基づく気候変動対策との矛盾、経済協力開発機構(OECD)公的輸出信用アレンジメント付属書の石炭火力発電セクター了解(以下「OECDルール」という。)などの国際ルールからの逸脱、違反といった問題があるのではないかと考えるので、以下、質問する。
一 石炭火力発電事業への国際協力にあたり、政府はOECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則として世界最新鋭である超々臨界圧以上の技術の発電設備について導入を支援するとしている。またOECDルールでも、五百メガワット超の石炭火力発電所については公的支援の対象を超々臨界圧もしくは温室効果ガスの排出が七百五十g-CO2/kWh未満のものに限ると規定している。しかし、当該発電所事業はこのどちらにも当てはまらないのではないか、政府の見解を明らかにされたい。
二 JBICは、当該発電所事業に係る最初の環境社会影響アセスメント(ESIA)が二〇一一年に完了し、ベトナム当局により承認されていたことから、当該発電所事業には経過措置が適用可能であり、OECDルールの対象外であると、これまでJBICが問合せを受けた国会議員事務所や国際環境NGOに説明していると聞いている。確かにOECDルールには経過措置が設けられており、二〇一七年一月一日よりも前に「技術フィージビリティスタディーおよび環境影響評価が完了」しており、迅速に申請手続きがなされたものに限り、例外を認めている。しかし、当該発電所事業に係るESIAは二〇一五年の改訂後、二〇一七年十一月に再改訂されているのではないか。また、二〇一七年十一月のESIAは二〇一五年のものに比べて倍のページ数がある。二〇一七年のESIAには様々な情報の追加が行われているのではないかと考えられるが、二〇一五年のESIAに追加された情報を明らかにされたい。
三 ESIAが二〇一七年十一月に再改訂されたことが事実であれば、当該発電所事業への融資判断及び実際の建設作業にあたり用いられるのは当然、二〇一七年十一月のESIAであるのではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
四 当該発電所事業への融資判断及び実際の建設作業にあたり用いられるESIAが二〇一七年十一月のESIAである場合、当該発電所事業をOECDルールの経過措置の対象とみなすのは不適切ではないか。JBICが融資の検討を開始し、自身のウェブサイトにESIAを掲載したのが二〇一九年二月四日であることからも、当該発電所事業をOECDルールの経過措置の対象とみなすのは不適切ではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
五 日本の化石燃料関連事業への国際協力、なかでも石炭火力発電事業への公的支援は、海外から厳しい目で見られている。とりわけ当該発電所事業に関しては、国際環境NGOが英国フィナンシャル・タイムズに意見広告を出し、JBICに対し石炭火力発電所事業への融資供与を停止するよう求めていることを、政府として承知しているか。
六 OECDルールや、原則として世界最新鋭である超々臨界圧以上の技術の発電設備について導入を支援するという日本政府の方針と照らし合わせれば、JBICは当該発電所事業への支援を見直すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
七 当該発電所事業の事業地収用に伴う非自発的な住民移転をめぐり、現在、ベトナム国内において、地域住民が訴訟を起こしていることを、政府として承知しているか。
八 「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)では、非自発的な住民移転の回避が可能でない場合には、対象者との合意の上で実効性ある対策が講じられなくてはならない旨が規定されている。つまり、地域住民が合意しない以上、当該発電所事業はガイドラインに明らかに違反していることになる。ガイドラインに照らし、地域住民が起こした訴訟の結果が明らかとなり、地域住民が合意するまで、JBICは当該発電所事業に対する融資を決定するべきではなかったと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
九 国連気候変動枠組条約の前事務局長であるクリスティアナ・フィゲレス氏が今年二月の会見において、日本の海外における超臨界圧の石炭火力発電所事業への投融資が日本の国際的評判に傷をつけるだろうと警告したことを政府として承知しているか。
十 前記九に挙げたような外交上のリスクに鑑みて、日本は海外の石炭火力発電事業への公的投融資を止めるべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一及び六について
御指摘の「バンフォン第一石炭火力発電事業」(以下「本事業」という。)に対する株式会社国際協力銀行(以下「JBIC」という。)の融資については、「エネルギー基本計画」(平成三十年七月三日閣議決定。以下「基本計画」という。)において、海外の石炭火力発電事業への公的支援は「OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭であるUSC(超々臨界圧)以上の発電設備について導入を支援する」としており、「OECD公的輸出信用アレンジメント・石炭火力発電セクター了解」(以下「セクター了解」という。)を踏まえ行うこととなる。
セクター了解においては、御指摘のように五百メガワット超の石炭火力発電所については公的支援の対象を超々臨界圧又は一キロワット時当たりの二酸化炭素の排出量七百五十グラム未満のものに限る旨の規定が存在するものの、セクター了解の施行の日(以下「施行日」という。)前から検討が進められていた案件には当該規定は適用されない旨の経過措置も設けられている。
その上で、本事業は施行日前から検討が進められていた案件であり、当該経過措置を踏まえると、本事業に対するJBICの融資については、当該規定に拘束されず、基本計画とも齟齬を来すものではなく、公的支援として許容されると考えている。
二及び三について
本事業に係るベトナム社会主義共和国(以下「ベトナム」という。)における環境社会影響評価(以下「ESIA」という。)は、平成二十三年五月にベトナム政府の承認を受けた後、平成二十七年三月及び平成二十九年十二月に更新されており、平成二十九年十二月の更新では、温排水の海洋に対する影響の分析手法に関する説明の追記等が行われたと承知している。
その上で、JBICは、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)にのっとって、適切に融資を決定しているものと承知しており、本事業の建設作業についても、事業者がベトナムの関係法令に基づき適切に対応するものと理解している。
四について
平成二十三年五月に承認されたESIAが有効なものであり、更新後もその有効性が引き継がれていることについて、JBICはベトナム政府に確認しており、本事業に対するJBICの融資は適切に行われていると認識している。
五について
お尋ねの意見広告が平成三十一年三月十九日付けフィナンシャル・タイムズ紙に掲載された意見広告であるならば、その内容については承知している。
七について
本事業に関連して地域住民が訴訟を提起していることは承知している。
八について
JBICは、ベトナムの関係法令に基づき適切な土地収用手続が実施されていることなどガイドラインにのっとった非自発的住民移転等に係る環境社会配慮が行われていることを確認の上、適切に融資を決定しているものと承知している。
九について
お尋ねについては、対象となる会見が特定されておらず、お答えすることは困難である。
十について
お尋ねの海外の石炭火力発電事業への公的支援については、基本計画において「パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素なども含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、その選択に応じた支援を行う。その際、我が国としては、再生可能エネルギー・水素の促進に積極的に取り組む。こうした提案・支援を含めた低炭素型インフラ輸出を積極的に進める中で、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、当該国から、我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、原則、世界最新鋭であるUSC(超々臨界圧)以上の発電設備について導入を支援する。また、CCS(炭素固定化)の実用化の状況を踏まえつつ、段階的にCCS付の石炭火力輸出を増加させていく。」としており、これに基づき取り組むべきものと考えている。
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