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薬価改定を含む医薬品の諸問題に関する質問主意書
参議院 第212回 第123号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×2
質問本文
私は、令和四年に「毎年薬価改定の見直しに関する質問主意書」(第二百八回国会質問第四四号)及び「薬価の中間年改定の在り方等に関する質問主意書」(第二百十回国会質問第八〇号)を提出し、薬価改定による薬価の頻繁な引下げが創薬によるイノベーションを阻害する可能性があること、後発医薬品に対する過度な薬価の引下げが後発医薬品企業の製造・供給能力を阻害していること、薬価という公定価格制度の下で多くの後発医薬品企業が昨今の物価高騰に対応する体力がないことなど、現行の薬価制度が引き起こしている諸問題について指摘してきた。
これと同様に、厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(以下「有識者検討会」という。)も、令和五年六月に公表した報告書において、薬価の下落が後発品企業の経営を圧迫し、新規収載品の上市による更なる少量多品目生産や安定供給に資する生産設備等への投資を困難にさせることにつながっていると指摘されていること、企業経営に影響を与える薬価引下げや薬価制度の予見可能性等が外資系企業の日本市場への医薬品上市の敬遠につながっていることが指摘されていること、企業経営に大きな影響を与えるような薬価制度改革が頻回に行われると不確実性が増大し、当初計画していた投資コスト回収が困難となるリスクが高くなることなどを挙げている。
しかしながら、その後、解熱鎮痛薬、鎮咳薬、去痰薬等の不足が顕在化し、国民生活に具体の支障が生じるに至っている。日本製薬団体連合会の調査によれば、令和五年十月時点で、全医薬品の約二十四パーセント、三千九百七十品目が限定出荷又は供給停止となっているなど深刻な状況となっている。厚生労働省は、令和五年十月及び十一月に、製薬企業に対して医薬品の増産を要請しているが、このような一時しのぎの状態を繰り返してはならない。
令和六年度は、診療報酬改定、介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定が重なる、いわゆる「トリプル改定」が行われる年である。加えて政府は、検討中の「こども未来戦略」案において、「次元の異なる少子化対策の実現」のための財源を、「二〇二八年度までに徹底した歳出改革等を行い、それによって得られる公費節減の効果及び社会保険負担軽減の効果を活用」すること等によって、三兆六千億円程度確保する方針を示している。
近年、社会保障関係費の伸びを抑制するための主な財源を薬価改定による薬価引下げに求めることが常態化しており、薬価はいわば財源確保のための草刈り場と化している。しかし、薬価差は、未曽有の原材料価格の高騰等により年々縮小しており、中央社会保険医療協議会において示された調査結果によれば、薬価調査による令和五年度の平均乖離率は令和三年度と比較して一・六パーセントポイント低下している。こうした中、これまでの方法を続ければ、国民に適切な医療を届けるために必要な、我が国における創薬イノベーションの確保や医薬品の品質管理及び安定供給に更なる問題を生じさせ、取り返しのつかない事態になりかねない。また、薬価引下げは医薬品産業における人材育成にも影響を及ぼすほか、岸田政権の方針である賃上げの実現とも矛盾しかねない。医薬・医療機器・医薬品卸・OTC・化粧品関連労働組合政策推進協同協議会(ヘルスケア産業プラットフォーム)が令和五年八月から九月にかけて実施した調査によれば、医薬品卸で働く組合員のうち、退職を考えたことがあると回答した割合は全体で五割を超え、三十歳代以下では約七割に上っており、退職を検討した理由としては、医薬品卸の将来に不安を感じたからが最も多く、次いで給与、賞与等の労働条件に不満があるからとなっている。
以上の問題認識を踏まえ、以下質問する。
一 医薬品の不足が生じている現状及びその原因について、政府の見解を示されたい。
二 政府は、毎年の薬価の引下げが医薬品の安定的な供給を阻害する要因の一つであると認識しているか。
三 政府は、令和五年十一月に閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(以下「総合経済対策」という。)において、二〇二四年度薬価改定において、医薬品の安定的な供給確保に向けた薬価上の措置を検討するとしているが、具体的にどのような検討を行っているか。
四 有識者検討会は、令和五年六月に公表した報告書において、「毎年薬価改定については、そもそも特許期間中に薬価改定が行われ、価格が引き下がることが、日本市場の魅力を引き下げている一因だと指摘されていることや、後発品の価格の下落と採算性の低下の加速により、医薬品の供給不足をさらに助長するおそれがあることを踏まえ、その在り方を検討すべきではないか」と指摘しているが、これを受け、政府として、毎年薬価改定の在り方をどのように検討し、いつ結論を得ようとしているのか。また、令和六年度の診療報酬改定に、当該検討結果を反映させるのか。
五 毎年の薬価の引下げが、製薬企業や医薬品卸等の医薬品産業における賃上げを妨げ、人材流出を招いているとの声が上がっているが、医薬品産業における賃金の状況及び人材流出の状況についての政府の認識を示されたい。また、毎年の薬価の引下げが、医薬品産業における人材育成や賃上げに及ぼす影響について、政府の見解を示されたい。
六 政府は、総合経済対策において、医療・介護・障害福祉分野における人材確保に向けて賃上げに必要な財政措置を早急に講ずるとするとともに、令和五年度補正予算に、医療・介護・障害福祉分野の職員に対する処遇改善に向けた支援のための費用を計上しているが、医療分野の一員である医薬品産業における賃上げの必要性についてはどのように考えているか。
七 薬価を含む医薬品に関する問題の担当部署は、厚生労働省において、医薬産業の振興、医薬品等の生産、流通及び消費の増進等を所掌する医政局、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保等を所掌する医薬局、医療保険制度等を所掌する保険局に分かれており、これらの各局がそれぞれ、検討会等を開催して薬価改定を含む医薬品に関する諸問題について検討している。また、財政の観点から、財務省が財政制度等審議会財政制度分科会等において薬価等についても指摘しているほか、内閣府も、経済財政諮問会議における経済財政運営と改革の基本方針案の議論等を通じて薬価等の問題に関与している。このように、政府内の各部署が医薬品の問題にそれぞれ別個に対応していることが医薬品に関する諸問題を招来している一因ではないか。
八 政府として、今後、薬価を含む医薬品に関する施策を整合的に形成するための対応があれば示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねについては、令和五年十一月十六日の参議院厚生労働委員会において、武見厚生労働大臣が「この後発品の産業、少量多品目生産といった構造的な問題がございます。非効率的な製造が行われておりますので、まず、後発品の医薬品メーカーの薬機法違反を契機とした供給量の低下、これは非常に難しい問題でございました。それから、感染症の拡大等による需要の増加も相まって、現下のこの医薬品の供給不足の事態が生じていると認識しております」と答弁したとおりである。
二について
御指摘の「毎年の薬価の引下げ」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「医薬品の安定的な供給を阻害する」事態については、一についてで述べているとおり、後発医薬品製造業における構造的な課題、後発医薬品の製造販売業者における法令違反を契機とした供給量の減少及び感染症の拡大等による需要の増加が相まって生じているものと考えており、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
三について
御指摘の「二〇二四年度薬価改定において、医薬品の安定的な供給確保に向けた薬価上の措置」については、「令和六年度薬価制度改革の骨子」(令和五年十二月二十日中央社会保険医療協議会了解)において、例えば、「企業指標の導入及び評価」について「安定供給が確保できる企業を可視化し、当該企業の品目を医療現場で選定しやすくなるよう・・・企業の安定供給体制等を評価し、評価結果を・・・薬価制度において活用する」、「基礎的医薬品」について「収載からの経過期間に関する要件について、二十五年から十五年に短縮する」、「不採算品再算定」について「急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、企業から希望のあった品目を対象に特例的に適用する。適用に当たっては、(中略)前回の令和四年度薬価調査における全品目の平均乖離率である「七・〇パーセント」を超えた乖離率であった品目は対象外とする」等とされたところであり、これらを踏まえ、同改定を行うこととしている。
四について
お尋ねの「毎年薬価改定の在り方」の検討については、「令和六年度薬価制度改革の骨子」において、「診療報酬改定がない年の薬価改定の在り方については、引き続き検討することとし、令和六年度速やかに議論を開始すること」とされているところであり、政府としては、これに基づき、令和六年度以降必要な検討を行ってまいりたい。
五の前段について
お尋ねの「医薬品産業における賃金の状況及び人材流出の状況」の具体的に指し示す範囲が必ずしも明らかではないが、例えば、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、「医薬品製造業」を含む「化学工業」及び「医薬品卸売業」を含む「その他の卸売業」における令和四年六月の「きまって支給する現金給与額」は、それぞれ四十一万千三百円及び三十六万千九百円と、令和三年の「年間賞与その他特別給与額」は、それぞれ百五十万千円及び百十六万千七百円となっており、また、同省の「雇用動向調査」によると、「医薬品製造業」を含む「化学工業、石油製品・石炭製品製造業」及び「医薬品卸売業」を含む「卸売業」における令和四年の「入職者数」は、それぞれ二万五千人及び二十四万七千百人と、同年の「離職者数」は、それぞれ三万四千六百人及び二十五万千八百人となっている。
五の後段について
御指摘の「毎年の薬価の引下げ」の具体的に指し示す範囲が明らかではなく、また、医薬品産業における人材育成や賃上げについては、様々な要因を踏まえて行われるものであることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
六について
御指摘の「医薬品産業」についても、他の産業と同様に、必要な人材を確保する観点から、賃上げを行うことは必要であると考えている。なお、「医薬品産業」における賃上げを図るためには、事業者による生産性の向上や海外市場の開拓等を通じた収益性の向上などが重要であると考えている。
七及び八について
御指摘の「薬価を含む医薬品に関する施策を整合的に形成するための対応」の意味するところが必ずしも明らかではないが、医薬品に関するそれぞれの問題への対応に関する事務を所掌する関係府省庁内の関係部署が、当該問題の内容に応じて相互に連携して適切に対応しているところであり、「政府内の各部署が医薬品の問題にそれぞれ別個に対応している」との御指摘は当たらない。