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パンデミック条約及び国際保健規則改正案に関する質問主意書
参議院 第213回 第11号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×4
質問本文
世界保健機関(以下「WHO」という。)と加盟国の間において、パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(WHOCA+:WHO convention, agreement or other international instrument on pandemic prevention, preparedness and response)(以下「パンデミック条約」という。)の作成と国際保健規則(二〇〇五)(以下「IHR」という。)の改正が協議されており、我が国も交渉に参加している。
外務省も、「WHOCA+作成とIHR改正に向けた作業は、二〇二四年五月の第七十七回WHO総会での提出及び採択を目指して、同時並行で作業が進められています。」と外務省のウェブサイトに記載しており、二〇二四年五月のWHO総会に向けて時間が残されていないことが伺える。
右のパンデミック条約作成とIHR改正について質問する。
一 我が国の憲法第九十八条によると、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とある。仮に、パンデミック条約が「条約」であれば、憲法の文言からはパンデミック条約は「条約」として遵守する必要が生じる。ところが、いわゆるパンデミック条約の正式名称は「パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書」であり、現時点で条約、協定又はその他の文書となるのかは定かではないというのが外務省の見解である。仮に、本条約が協定又はその他の文書になった際に、我が国はそれらの契約を我が国憲法の上位として位置づけるのか。
また、我が国におけるIHRの位置づけはどうなっているのか。また、WHO憲章と我が国の憲法はどちらが上位にあるのか。WHOが国際機関であるため、「国際法規」として位置づけられるのか、否か。政府見解を示されたい。
二 我が国からWHOに対して提出又は提出予定のパンデミック条約の修正案及びIHR改正案は何一つ公開されておらず、国民と国会議員の「知る権利」を侵害している。それらを全て公開し、内容とプロセスの透明性を高めることが民主主義国家としてのあるべき姿だと考えられるが、政府の見解を示されたい。
三 我が国の憲法第七十三条において「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」となっており、同条第三号によると、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」とある。ところが、このパンデミック条約の内容について、これまで国会で内容を審議されたことはない。
パンデミック条約作成及びIHR改正は、我が国の政府が取り組む公衆衛生管理との兼ね合いや憲法で保障された我が国の国民の人権にかかわる問題であるため、その内容については、事後ではなく、余裕をもって事前に審議すべきものと考えられるが、政府の見解を示されたい。
四 我が国からWHOに対して提出されるパンデミック条約の修正案やIHR改正案の責任は外務大臣にあるのか。それとも厚生労働大臣か。政府見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの「本条約が協定又はその他の文書になった際に、我が国はそれらの契約を我が国憲法の上位として位置づけるのか」については、その意味するところが明らかではなく、また、御指摘の「パンデミック条約」については、現在交渉中であるため、お答えすることは困難である。また、お尋ねの「WHOが国際機関であるため、「国際法規」として位置づけられるのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「WHO憲章」については、憲法第九十八条第二項の「日本国が締結した条約」に該当するものである。その上で、我が国における憲法と「条約」との間の国内における適用上の効力の優劣関係については、一般には憲法が「条約」に優位すると解される。
また、お尋ねの「我が国におけるIHRの位置づけ」の意味するところが必ずしも明らかではないが、世界保健機関憲章(昭和二十六年条約第一号)第二条(k)においては、世界保健機関の任務として、「国際的保健事項に関して、條約、協定及び規則を提案し、並びに勧告を行うこと並びにこれらの條約、協定、規則及び勧告がこの機関に與え且つこの機関の目的に合致する義務を遂行すること」と定められ、また、同憲章第二十一条において、「保健総会」は、「疾病の国際的まん延を防止することを目的とする衛生上及び検疫上の要件及び他の手続」等に関する「規則を採択する権限を有する」と定められており、国際保健規則は同条にいう「規則」に該当し、当該規則そのものは「条約」ではない。
二について
御指摘の「それらを全て公開し、 内容とプロセスの透明性を高めることが民主主義国家としてのあるべき姿」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「パンデミック条約」及び「IHR改正案」については現在交渉中であり、御指摘の「我が国からWHOに対して提出又は提出予定のパンデミック条約の修正案及びIHR改正案」について、これらに関する交渉への影響に鑑み、現時点では御指摘のように「公開」していないところではあるが、当該交渉に関する「内容とプロセス」に係る正確な情報について、外務省及び厚生労働省のホームページへの掲載等を通じて国民に対して適時に情報提供を行ってきており、引き続き、こうした取組を進めていく。
三について
御指摘の「余裕をもって事前に審議」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、御指摘の「パンデミック条約」については、現在交渉中であることから、「パンデミック条約」に係るお尋ねについてお答えすることは差し控えたいが、憲法第七十三条第三号について、一般論として申し上げれば、同号において、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする」と定められているところに従って、政府として、採択等された条約を締結すること、すなわち当該条約に拘束されることについての我が国の意思を最終的に確定することについて、「国会の承認」を求めてきており、緊急を要するため「国会の承認」を得る時間的余裕がないなど合理的な理由がある場合を除いては「事前に」、すなわち当該条約の締結の前に国会の承認を得るように従来から努めてきているところである。
また、国際保健規則の改正については、一についてでお答えしたとおり、同規則は世界保健機関憲章上の規則に該当するものであり、同規則そのものは条約ではなく、「国会の承認」を要するものではないが、国会においては、令和五年十二月六日の衆議院厚生労働委員会においてこれに関する交渉の現状について答弁している。なお、御指摘の「パンデミック条約」についても、例えば同日の衆議院外務委員会において「パンデミック条約」に関する交渉の現状について答弁している。今後とも、これらに関連する質問があれば丁寧にお答えしていく。
四について
お尋ねの「我が国からWHOに対して提出されるパンデミック条約の修正案やIHR改正案の責任」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、政府としては、パンデミック(新型コロナウイルス感染症等の世界的な大流行をいう。)を予防し、それに対する備え及び対応を強化することが重要であるとの観点から、外務省及び厚生労働省が中心となって、御指摘の「パンデミック条約」の作成及び国際保健規則の改正について、これらに関する交渉に、積極的かつ建設的に参加し、対応してきている。