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教科書検定基準における近隣諸国条項及び中立性の確保に関する質問主意書

参議院 第217回 第154号趣旨が明らかではない ×3

提出者
参議院
提出日
2025年6月6日
内閣転送 2025年6月11日
答弁書受領日
2025年6月17日
提出から11日
答弁の項目数
3
質問 3,265字/答弁 1,808字

質問本文

教育は国家と社会の担い手を育てる上で極めて重要な基盤であり、特に歴史や国際情勢を学ぶ中で、日本の在り方を理解し、自らの使命や生き方を考える力を育むことは教育において欠かせない要素である。このため、使用する教科書が正確な知識に基づき、教育の目的に即して適切に作成されていることが求められる。

しかし、現行の歴史教科書や公民教科書には、自国に対する誇りや主体性を育てる視点が十分に示されていない例も見受けられる。例えば、東アジアにおける文化の発展過程を、中国が最古で優れた文化を持つ上位の国、朝鮮半島が中位、日本が最も新しい下位の国であるかのように記述している。また、元寇を「遠征」、文禄・慶長の役を「朝鮮侵略」と記述するなど、日本からの進攻のみを「侵略」と表記して印象付ける記述も一部の教科書で見受けられる。

また、いわゆる「南京事件」について、政府は「被害者数などの具体的数値については様々な議論があり、断定は困難」旨の見解を示している。しかし、多くの教科書には「女性や子どもを含む多数の非戦闘員が日本軍により殺害された」、「捕虜への加害も行われた」など、政府の見解を超える断定的な記述が見受けられる。一方、日本人が被害を受けた「通州事件」に関する記載は限定的である。「慰安婦問題」についても、政府は「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す資料は確認されていない」旨の見解を示し、二〇二一年には、教科書における「慰安婦問題」に関する記述の是正も行われた。しかし、いまだに一部の教科書には、出身地や動員経緯について政府の見解と異なる印象を与える記述が残っているとの指摘がある。これらの点については、日本政府の公式見解や戦後の条約による整理及び不正確な報道により誤った情報が広まった経緯などを併せて、中立的な視点で教科書に記載されることが望まれる。

教科書検定は学習指導要領に基づく検定基準により行われているが、当該基準にはいわゆる「近隣諸国条項」、すなわち、「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」が含まれている。この条項は、一九八二年の誤報を契機として発生した外交問題を受けて、当時の内閣官房長官談話により導入された経緯がある。

しかし、我が国の教科書検定において、他国の意向に一方的に配慮する条項を検定基準に設けることは、内政干渉を許す構造であり、教育の中立性や主権の観点から極めて不適切である。その上、国際関係においては相互主義が常識であるにもかかわらず、我が国のみ配慮を義務付け、他国に対して同様の配慮を求める明確な枠組みが存在しないことは公平性に欠ける。実際に、近隣諸国では反日的な教育が継続されているが、これに対応できる制度は我が国には整っていない。外交的配慮の一環として位置付けるのであれば、むしろ相互主義に基づき、近隣諸国にも同様の配慮を求めることが筋である。

また、尖閣諸島や竹島の領有権に関しては、「近隣諸国条項」に関わる検定基準において「社会科(「地図」を除く。)」との例外規定が設けられている。しかし、これらの島々が日本に帰属する理由を正確に理解させるためには、単なる地理的な位置付けにとどまらず、近現代における歴史的経緯や国際法上の整理に言及せざるを得ず、地図の学習のみでは不十分であると考える。主権や領土に関する教育は、地理と歴史を一体として扱う総合的な学習によって初めて成り立つものであり、現行のような限定的な扱いは、教育の実態にそぐわないものと考える。

自国の歴史を正しく学び理解することは、国際社会で活躍する上で不可欠である。このような教養を身に付けるには、教科書が史実に即して記述されていることが前提である。何が史実であるかは、外交的配慮ではなく、科学的・実証的な根拠に基づいて判断されるべきであり、その判断をゆがめるおそれのある近隣諸国への過度な配慮は、教育の正常化の観点から見直されるべきである。

以上を踏まえて、以下質問する。

一 現行の教科書、特に歴史の教科書には、前記のとおり、日本国と社会の担い手たる日本人を育てるという観点を欠いた記述が多く見られるが、政府として、これらの教科書が日本の学校教育において適切な内容であると考えるか示されたい。また、教育の中立性及び国家観の涵養との整合性について政府の見解を示されたい。

二 政府は、いわゆる「南京事件」について、「非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」とする一方、被害者数などの具体的数値については確定的な見解を示していないと承知している。しかし、現行の教科書には「女性や子どもを含む多数の非戦闘員が日本軍により殺害された」、「捕虜への加害も行われた」など、政府の見解を超える断定的かつ印象的な記述があり、事実上、政府答弁との齟齬が生じていると考える。これらの記述が教科書検定に合格していることについて、教育行政全体としての整合性が取れていると考えているのか、政府の認識を示されたい。また、検定基準がこうした記述を是認しているとすれば、その方針は妥当と考えるか示されたい。

三 通州事件は、多数の日本人が犠牲となった歴史的事実であり、政府としても否定していないと承知している。それにもかかわらず、現行の教科書においては、いわゆる「南京事件」など日本の加害行為に関する記述が多く見られる一方で、通州事件のような日本人被害に関する記述は著しく乏しい。歴史教育として著しい偏りを生じさせているのではないか。教科書検定において、このような事件の選定及び記述の程度の違いがどのような基準で判断されているか明示されたい。また、教育の公平性・歴史的バランスの観点から、是正の必要性はないと考えるのか、政府の見解を示されたい。

四 いわゆる「慰安婦問題」について、政府は「強制連行を直接示す資料は確認されていない」旨の見解を示している。しかし、現行の教科書には、慰安婦が強制的に連行されたかのような印象を与える記述や、慰安婦の大多数が朝鮮半島出身者であったかのような表現が見受けられる。このような記載のある教科書が教科書検定に合格していることについて、政府の見解を示されたい。また、誤報を含む情報が拡散された経緯を踏まえ、事実関係を丁寧に記述するよう指導することは検定制度上の課題であると考えるが、政府の見解を示されたい。

五 我が国に配慮義務を一方的に課す近隣諸国条項は、相互主義に反し、教育の中立性を損なうのみならず、他国からの内政干渉を許す構造となっていると考えるが、政府の見解を示されたい。また、これまでの教科書検定において、当該条項に基づいて教科書記述に修正等がなされた具体的事例の有無及びその内容について示されたい。あわせて、我が国にのみ配慮を求める一方、近隣諸国においては反日的な教育が行われている現状がある中で、政府として、「国際理解と国際協調の見地から必要な配慮」をこれらの国に求める措置を講じてきたのか示されたい。当該措置を講じていない場合、講じる考えがあるか、政府の見解を示されたい。

六 教科書検定制度の中核を担う教科書調査官は、公募によって選考されているが、その任務の影響力及び教育への責任の重大性を鑑みれば、国会の承認や第三者評価を含む透明性の高い選考制度を設けるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

また、教科用図書検定調査審議会の審査過程については、現行の総会議事録や部会の議事要旨では検定意見の具体的内容が明らかにされておらず、制度の透明性としては不十分であると考える。そのため、検定意見や審査の過程をより具体的・詳細に記録・公表すること、議事要旨の充実、検定実務のデジタル化、教科書見本のPDF化及び文部科学省による公開等により、制度の透明性及び信頼性を向上させる必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一から四までについて

お尋ねの「これらの教科書」、「教育の中立性及び国家観の涵養との整合性」、「教育行政全体としての整合性」、「著しい偏り」、「教育の公平性・歴史的バランス」、「このような記載のある教科書」及び「誤報を含む情報が拡散された経緯を踏まえ、事実関係を丁寧に記述するよう指導することは検定制度上の課題である」の意味するところが必ずしも明らかではないが、小学校、中学校、高等学校等における教科用図書については、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十四条等の規定により、文部科学大臣の検定を経た教科用図書等を使用することとされているところ、我が国の教科用図書検定制度は、民間の申請図書の発行者等が著作編集した申請図書の具体的な記述について、教科用図書検定基準等に従い、教科用図書検定調査審議会(以下単に「審議会」という。)が専門的・学術的な調査審議を行い、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施しているものであり、学習指導要領を踏まえどのように記述するかについては、このような欠陥のない範囲において申請図書の発行者等の判断に委ねられており、政府としては、適切に検定が行われているものと考えている。

五について

前段のお尋ねについては、「我が国に配慮義務を一方的に課す近隣諸国条項は、相互主義に反し、教育の中立性を損なうのみならず、他国からの内政干渉を許す構造となっている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いわゆる「近隣諸国条項」については、教科用図書において、近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていることを求める観点から、教科用図書検定基準に定められているものであるところ、我が国の教科用図書検定制度は教科用図書検定基準等に従い、審議会が専門的・学術的な調査審議を行い、検定の時点における客観的な学問的成果や適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施されており、他国の見解によって影響を受けるものではないと考えている。

中段のお尋ねについて、いわゆる「近隣諸国条項」に基づき検定意見が付された例としては、平成三年度に実施された教科用図書検定において、申請図書中の「アジアの諸国の人々との関係においては、・・・第二次世界大戦で大きな被害をあたえるなど、過去に迷惑をかけた歴史をもっていることを忘れてはならない」という記述に対し検定意見が付され、「アジアの諸国の人々との関係においては、・・・第二次世界大戦で大きな被害をあたえるなど、過去にたえがたい苦しみをもたらした歴史をもっていることを忘れてはならない」と修正されたものがある。

後段のお尋ねについては、その趣旨が必ずしも明らかではないが、教科書制度の在り方は各国の判断に委ねられるべきものであると考えており、お尋ねの「配慮」を諸外国に対し求めることは考えていない。

六について

前段のお尋ねについては、令和五年三月九日の参議院文教科学委員会において、永岡文部科学大臣(当時)が「国会の承認を要する人事というのは、ポストの独立性とか、あとは重要性等を鑑みまして、・・・各根拠法に基づきまして定められているものと承知をしております。教科書の調査官は文部科学大臣により任命をされまして、命を受けて、検定申請のあった教科書用図書の調査を行う職でございまして、国会承認事項とするべきものには該当しないと考えております。教科書の調査官の任命におきましては、透明性確保のため、公募による採用ですとか略歴を公表する等の取組を行っているところでございます」と答弁しているとおりであり、お尋ねの「国会の承認」及び「第三者評価」の必要はないと考えている。

後段のお尋ねについては、同日の同委員会において、政府参考人が「教科書検定調査審議会は、行政処分の前提となる審査を行うものであり、外部からの圧力がなく、静ひつな環境の下、委員が自らの識見に基づき、専門的、学術的に審議するとともに、委員が自由闊達に議論することを通して合意形成を図っていくことが重要であることから、議事録ではなく議事要旨を作成し、検定審査終了後に公開をしている」と答弁しているところであり、引き続き教科用図書検定手続の透明性の確保を図ってまいりたい。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

趣旨が明らかではない ×3

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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