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水産加工団地の排水処理に関する質問主意書
参議院 第70回 第5号検討してまいりたい ×1
質問本文
公害防止と自然環境の保護は、現在最も緊急かつ重要な社会的、政治的課題であり、国民ひとしくその解決を強く要望しているところである。政府は、さきに環境庁を設置し、公害防止、自然環境保全行政の推進にあたつているが、公害の拡散、自然環境の破壊はあとを絶たないところである。これに対する国の責任は極めて重大であり、適切な措置を積極的に取り上げ、強力に推進しなければならない。また一般国民のなかには、公害防止、自然環境保護のために、自ら立ち上つてその推進にあたつている者も数多い。国はこのような国民に対しては、その目的を十分達し得るように協力し、援助を与える責務があることはいうまでもない。
宮城県塩釜市は、古くから漁港として栄え、それとともに自然的派生として水産加工業が発展し、塩釜市の基幹産業を成している。反面塩釜市は悪臭の強い町としても知られている。このため公害防止が世論化し、公害対策基本法も制定されるに及んで、市の要請に応じて、水産加工業者は悪臭から市民を守り、住みよい町をつくり、また松島湾の水質保全のために立ち上つたのである。水産加工業は漁港の生成発展過程として振興した業種であり、家庭工業的な中小企業者であり、工場はいずれも職住一体をなしており、個々の立場で要請される汚水処理施設を設置することは町政的にも困難であるため、市内に散在する二百六十余の業者が一ヶ所に集まり、工場の集約的団地化を図り、汚水公害防止のための共同処理施設を設置し、汚水を共同処理することによつて、宮城県の定めた水質基準以下にして放流しようとしたのである。しかし、いずれも零細業者であり、工場移転公害防止施設建設のためには資力が乏しいため、市及び公害防止事業団と協議の結果、事業団が施設を建設し、市が四億五千万円で譲り受けたのである。しかしこの施設は、事業団が設計にあたり、調査の不十分、設計のミス等により、排水処理施設は完成の時より機能不全となり、この施設は公害防止施設ではなく公害発生施設であると悪評され、水産加工業者が公害から市民を守ろうとした計画は当初より挫折したのである。零細企業の多い水産加工業では、公害防止施設の設置は、団地化を前提とする共同利用施設の設置によつてはじめて可能となるといつてよい。塩釜市の水産加工団地は全国に魁けて行なわれたものであり、これが成功するか否かは全国各地において重大な関心が示されており、今後のあり方の指針をなすものである。よつてこれらの問題について以下の諸点を質問する。
一、塩釜市の水産加工団地の排水処理施設は、完成の時期において既に機能不全をきたし、その機能回復は不可能と断定されている。これは本施設の建設にあたつた公害防止事業団が、本装置の設計にあたつて行なつた排水調査に誤りがあつたのに基づくもので、公害防止事業団のミスであり、その責任は全面的に事業団が負うべきものである。本施設の費用は二年間据置き、年六分、十八年で事業団に償還することになつているが、この費用及びその改善に要した費用は当然事業団で負担すべきものである。
二、塩釜市の水産加工団地は、水産加工業にかかる公害防止を図るため、全国に魁けて建設されたもので、その成果は全国各地の注視の的になつており、今後この種の公害防止対策について極めて重要な指針をなすものである。これは国の公害防止事業の一つの試験的な役割を果すものである。従つて政府は、塩釜市の加工団地建設を国の事業として実施すべきものとすべきではないか。また公害防止事業団が建設した排水処理施設の機能不全のため、処理技術の開発を図るため、四十六年度よりテストプラントの建設を図り、四十七年度に完成している。しかし、このテストプラントの経費が一日約十万円の薬品代を要し、その他維持管理費を含めて年間一億円の費用を要する。塩釜市は排水処理施設の改善、ベト処理及び償還金等により莫大な経費及び負債を生じ、財政的にも行き詰まりをきたしており、またテストプラント建設の経緯よりみても、国の公害防止研究の一環としてその研究費、施設費全額を国の負担において実施すべきものと思うがどうか。
三、テストプラント稼動のランニングコストはどの程度か、明細に説明されたい。またこれより回収される油分、フイッシュソリューブルが良質で流通性があり、商品化され、コストダウンされることが期待されているが、果して回収される有効成分が商品価値があるかどうか。その見通しを明確にするとともに商品価値が得られない場合はいかに措置するか。
四、水産加工排水処理の資料は世界的にも乏しく、わが国でもまだ開発されていないと思うが、各国及びわが国の現状はどうか。塩釜市はこの難解な問題に取り組み、経済的にも精神的にも大きな犠牲を払うに至つている。国の研究開発が進んでいないことが地元に犠牲を強いていることになつている。国が全力をあげて研究開発を行ない、これに基づいて国が指導をしていかなくてはならないものと思うが、政府は、この研究開発にどのように取り組んでいく方針か具体的に説明されたい。
五、公害防止施設の設置費用は、原則的には企業者が負担し、これに対し、国の助成も行なわれることになつているが、大企業については事業者が行なうことは当然である。しかし塩釜の如く中小企業者が行なう公害防止の施設の整備については、公害対策基本法第二十四条によつても特別な配慮をしなければならないことになつている。塩釜の場合は、国が行なうべき公共的な公害防止施設が完備しておれば、中小企業者にこれ程の犠牲を強いることもなかつたのではないか。第二十四条の規定はいかに生かされて運用されてきているか。また中小企業者については公害防止と一方においてその企業の発展を考慮し、単に助成のみでなく、より積極的な施策が必要と思うが、政府はいかなる方針のもとに具体的にどのような施策をとる考えか。
六、水産加工品に対する需要は増加の一途を辿つている。現在、水産物産地流通加工センター形成事業が行なわれているが、対象地域数も少なく予算的にも貧弱である。政府は画期的な水産加工業振興対策を樹立、実施すべきと思うが、具体的にいかなる対策をもち実施していく方針か明らかにされたい。また、それとともに公害防止対策をどのように実施していく方針かあわせて明らかにされたい。
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政府答弁書
一、について
塩釜の水産加工団地の排水処理施設は、当初設計上の排水の水質および量と実際の排水の水質および量との間に大きな差があつたこと等の理由からその機能を発揮することができなかつた。
しかし、その後種々検討を行ない、加圧浮上機およびフロス処理機をつけ加え、さらに処理の方式をバッチ式(回分式)から連続式に改めた排水処理施設を建設した結果、現在では順調に稼動している。
この施設の建設に当たつては、特に国から「水産加工排水中のたん白質回収技術の開発に関する特別研究」のための委託費を支出し、また宮城県もこの建設に対して助成を行なつている。
なお、当初建設した排水処理施設の建設費(四千九百万円)のうち、新しく建設した施設に転用された部分(二千九百万円)以外の部分(二千万円)については、実質的に塩釜市に負担がかからないよう措置した。
二、について
事業活動に伴つて必要となる排水処理施設など公害防止施設の費用は本来事業者が負担すべきものと考える。
しかし、業種によつては、そのコストアップを経営全体の中で吸収できない場合もあり、あるいは価格転嫁が困難な場合もあるなど難しい問題が多いため、今後の産業政策、中小企業対策等において慎重に検討してまいりたい。
なお、最近の産地における水揚げの大量集中化の傾向に対応し、水産物流通上の拠点的産地の流通加工施設の総合的な整備を図るため、国は補助事業として水産物産地流通加工センター形成事業を実施しており、塩釜地域については、昭和四十七年度に調査地域に指定し、二カ年にわたり、流通加工の実態を把握し問題点の指摘など基礎的な調査を行なつて、マスタープランを作成することとしている。
本事業においては、市場施設、冷凍冷蔵施設、処理加工施設とともに公害防止施設も国庫補助の対象としているので、今後の加工団地の形成とこれに関連する公害防止施設の整備については十分配慮してゆく所存である。
三、について
塩釜水産物加工団地における排水処理施設は、現在のところ、原点処理量が少ないため、処理している排水量も少ないが、計画された量の排水を処理する場合には、塩釜水産物加工団地排水処理施設実施委員会の実験結果によれば、魚油およびフイッシュ・ソリューブルの回収施設の運転経費を含め、薬品費、電力費等一日当り二四三千円を要するものと見積られている。
また、魚油およびフイッシュ・ソリューブルは、現在、原魚処理量が少ないので回収は行なわれていないが、これまでの実験結果では、商品価値のある良質なものが得られている。
一日当りランニングコスト明細
薬品費
一五六千円
電力費
二六千円
重油費
四四千円
その他
一七千円
計
二四三千円
四、について
水産加工排水に関するまとまつた資料は、内外ともに乏しいが、最近における水質規制の強化、水産物産地流通加工センターの形成等による要請から一般産業排水および都市下水の処理に関する各種情報を参考に、関係研究機関等で鋭意その研究開発が進められている。
水産加工場は、腐敗しやすい水産物を原料とし、漁獲の時期豊凶による季節的操業が多く、排水も他産業の排水にくらべて塩分を含むものが多く、また産地、加工処理方法によつて水質が大きく変動する等のため、その処理技術に多くの困難性がある。さらに、水産加工経営体は一般に経営規模が零細で工場敷地も狭隘なため、多額の経費を必要とする排水処理に対しては、経済的負担能力に乏しいものが大部分である。
このため、政府においては、水産物産地流通加工センター形成事業による共同処理施設の建設を促進するとともに、公害防止技術対策委託事業による全国水産加工業協同組合連合会の水産加工関係公害防止技術システムの設計研究、財団法人食品産業センターの新技術開発研究事業による社団法人全国冷凍魚肉協会の排水処理装置の開発等により、水産加工業のための効率的経済的な排水処理技術の研究開発を進めているところである。
なお、これら研究開発の効果の一例として、最近、社団法人全国冷凍魚肉協会により、水産加工工場に適した効率的、経済的なコンパクト処理施設である電気凝集浄化法が開発され、近く、すり身工場を中心に設置される見込みである。
五、について
中小企業が公害防止対策を講ずるにあたつては、資金面をはじめとして困難が大きいため、国は公害対策基本法第二十四条の規定にもとづき、中小企業に対し金融、税制、指導等各般にわたる公害防止のための施策を実施しているところである。公害防止事業団の助成においては、助成条件について、中小企業に関して大企業に比べ一段と優遇したものとしているほか、中小企業振興事業団においても、公害防止に係る中小企業の団地化に対しては、昭和四十七年度から融資要件を大幅に緩和するなど、制度の拡充、強化に努めている次第である。
今後とも、諸般の中小企業公害防止対策につき一層の充実に努めてまいりたい。
六、について
国民の生活水準の上昇に伴い、需要が高度化、多様化したことなどにより、魚介類の利用配分における加工比率は約七割に達し、水産加工品の重要性はきわめて高く、加工に伴う公害の防止対策をも含めた振興施策を充実することが必要であると考えられる。
このため、政府としては、中小企業近代化促進法に基づき「水産ねり製品製造業」および「びん詰、かん詰製造業」を業種指定して近代化施策を推進している。
また、産地における流通加工態勢の整備のため水産物産地流通加工センター形成事業を実施しているほか、合理的な商品形態として消費の拡大が望ましい冷凍加工品について水産物産地冷凍加工モデル施設の設置事業に対して助成している。
公害防止対策については、水質汚濁はもとより、大気汚染、騒音、地盤沈下、悪臭、廃棄物対策に加えて、水使用の合理化、原料処理の改善、処理施設のコンパクト化等総合的に対処することが重要であると考える。
当面急を要する排水処理については、公害防止技術研究を全国水産加工業協同組合連合会に委託して実施しているほか、産地加工にあつては、水産物産地流通加工センター形成事業および公害防止事業団等の事業の一環として共同処理施設の設置を促進し、消費地加工にあつては、公共下水道による処理対策を推進してゆくこととしたい。
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