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非人道的な兵器である核兵器に関する質問主意書

衆議院 第101回 第46号

提出者
衆議院
提出日
1984年8月7日
内閣転送 1984年8月8日
答弁書受領日
1984年8月21日
提出から14日
答弁の項目数
3
質問 1,291字/答弁 804字

質問本文

衆議院議長 ※(注)永健司 殿

非人道的な兵器である核兵器に関する質問主意書

広島、長崎に原子爆弾が投下されて、未曾有の大量殺戮がなされて以来三十九年を経過したが、いま、全人類を滅亡させる全面核戦争の危機は切迫している。この危機を回避して、人類永久の平和と繁栄を確保するには、あらゆる核兵器の全面禁止と完全廃棄の国際協定の締結が必要であり、唯一の原爆被爆国である我が国の政府が、国際舞台において右の協定締結促進の先頭に立つべきである。

以上の見地に立つて、左の事項について質問する。

一 昭和二十年八月六日、広島に米軍の原子爆弾が投下された。これに対し八月十日、日本政府はスイス政府を通じて、米国政府へ強い抗議文を提出した。この抗議文のなかで日本政府は、米軍の使用した新型爆弾は、「その性能の無差別かつ残虐性において、従来かかる性能を有するが故に使用を禁止せられをる毒ガスその他を遥かに凌駕しをれり」と指摘し、「従来のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性、残虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪状なり」と断定している。

原子爆弾の使用が人類文化に対する犯罪であるとの、昭和二十年八月の日本政府の立場は、いまも変ることはないと思うが、どうか。

二 昭和二十年八月十四日の詔書によつて、日本はポツダム宣言を受諾して無条件降伏することとなつた。この詔書のなかで、天皇は、「敵は新に残虐なる爆弾を使用して頻に無辜を殺傷し惨害の及ふ所真に測るへからさるに至る」と述べられている。この天皇のお言葉は、原子爆弾の使用が人道に反する暴挙であることを指摘されたものであり、しかも、当然のことながらこの詔書には当時の各国務大臣の副署がなされている。

昭和二十年八月十四日の詔書で示された原子爆弾の非人道性の糾弾は、いまの政府の立場に受け継がれていると思うが、どうか。

三 広島、長崎での原爆被爆者五人が、国を相手に損害の賠償を求めて提起した訴訟に対して、昭和三十八年十二月七日、東京地裁が下した判決は、被爆者は米国に対しても我が国に対しても損害賠償を求める道がないとの判断とともに、原爆の投下はそれ自体国際法に違反するとの判断を示した。そしてこの判決は、原告(被爆者五人)からも被告(国)からも控訴されることなく確定して現在に至つている。

このことは、我が国政府もまた、核兵器の投下は国際法違反とみなしていることのあらわれと思うが、どうか。

四 本年六月二十日、本院外務委員会における、核兵器が人道と国際法に違反する兵器であることについての私の質問に対し、外務省小和田条約局長は、「現段階において純粋に厳密な実定法上の問題としてこの核兵器というものが実定国際法に違反するものであるという法的な認識が国際社会の認識として固まつているとは言いかねる」との趣旨の答弁を行つた。

確かに現状はこのとおりであろうが、それならばなおさら、核兵器が実定国際法に違反するものであるとの国際社会の法的な認識を確立するため、日本政府こそ最大限の努力をすべきであると思うが、どうか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一及び二について

広島市及び長崎市に対する原子爆弾の投下は、老幼婦女子を含む広い範囲にその害が及ぶ人道上極めて遺憾な事態を生ぜしめたものであり、国際法上の観点からも問題となり得る点があつたので、交戦状態にあつた当時これに強く抗議したものであり、また、ポツダム宣言受諾を表明した詔書においても、これについて人道上の観点からの見解を表明したものであり、これらは当然であつたと考えている。

なお、原子爆弾の投下は、国際法違反であるとはいい切れないが、国際法の根底にある基本思想の一たる人道主義に合致しないものであるとの意味において国際法の精神に反するというのが、従来からの政府の見解である。

三について

御指摘の訴訟は、原子爆弾投下によつて被害を受けたとする原告らが国の平和条約の締結によつて米国に対する損害賠償請求権を喪失するという損害を被つたことを理由として、国家賠償法に基づく損害賠償ないしは憲法に基づく損失補償等を求めたものであつたが、原告等の請求を棄却するとの判決が出された。このため、被告国側としては、判決理由の一部に政府の見解と異なるものがあつたとしても、訴訟法上、上訴することが許されず、また、原告側が上訴しなかつたために、本件判決は確定するに至つたものである。したがつて、国が上訴しなかつたからといつて、国が御指摘の原子爆弾の投下行為は国際法に違反するとの判断を認めたということではない。

四について

政府としては、核の惨禍が再び繰り返されるようなことがあつてはならず、核兵器の廃絶は人類共通の究極目標であると認識している。同時に、現在の国際社会の平和と安全が核を含む抑止力により保たれていることも否定できない現実である。かかる現実を踏まえれば、実効ある具体的な核軍縮措置を着実に積み重ねていくことが肝要であり、政府としては、今後とも、このための積極的な努力を続けていく所存である。

右答弁する。

衆議院の原文

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