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沖縄県における「米軍用地収用特措法」に基づく強制使用の二十年間の延長に関する質問主意書

衆議院 第103回 第24号

提出者
衆議院
提出日
1985年12月17日
内閣転送 1985年12月21日
答弁書受領日
1986年1月17日
提出から31日
答弁の項目数
8
質問 4,536字/答弁 1,699字

質問本文

衆議院議長 坂田道太 殿

沖縄県における「米軍用地収用特措法」に基づく強制使用の二十年間の延長に関する質問主意書

本年八月五日、政府・防衛施設庁は、所有者が自分の土地を基地として使用することに反対し、契約を拒否しているその土地について、いわゆる「安保条約第六条に基づく米軍用地収用特措法」を適用し、引き続き強制使用するための採決申請を沖縄県収用委員会に提出した。

しかも重大なことは、沖縄県民の土地を米軍用地収用特措法に基づき現行の強制使用期限の切れる一九八七年五月十五日以降、二十年間にわたつて強制使用するというものである。

米軍用地収用特措法による土地の取り上げは、沖縄の基地をアジア、太平洋地域最大の侵略基地として機能強化することと緊密に結びついたものであり、県民の平和の願いを踏みにじる暴挙と断ぜざるを得ない。

私は、この不当な土地取り上げに反対するとともに、強制使用の採決申請の撤回と地主への土地の返還を求め、以下の点について、政府の見解をただしたい。

一 広く知られているように、これら沖縄県民の土地は、アメリカの全面占領支配の下で、米軍が軍事基地構築のために問答無用で、「囲い込み」あるいはまた「銃剣とブルドーザー」で、田畑はもちろん、墓まで掘り起こし何百年も安らかに眠る祖先の頭蓋骨まで踏み砕き、強奪したものである。

この米軍の土地強奪は、国際法であるハーグ陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則が定める「私有財産の尊重」、「没収、掠奪の禁止」の原則に明白に違反するものであつた。

従つて、政府は、一九七二年の沖縄「施政権」返還に当たつて、米軍が不法、不当に取り上げたこれらの土地を取り戻し、県民に返還すべき当然の責務があつたのである。

しかも、多くの学者や法律家をはじめ、国会でも、わが党などがこの土地取り上げを憲法の財産権の尊重、法の下の平等、恒久平和主義に反するとして、厳しく批判してきた。

しかるに、政府は、同年五月これらの批判に真つ向から挑戦し、希代の悪法である「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」(以下「公用地法」という。)を強行制定し、米軍の土地強奪を追認し、政府自らの手で県民の広大な土地を五年間にわたつて取り上げたのである。

更に七七年五月、広範な反対世論の高まりによつて、公用地法の延長手続が十四日の期限切れに間に合わず、強制使用の権原を失効した際に、本来、政府は、所有者に土地を返還すべきであつたにもかかわらず、それを無視し、四日間の不法占拠のあと五年間の再延長を図つたのである。そして八二年五月には、米軍用地収用特措法を適用し、五年間の強制使用(八七年五月十五日期限切れ)を行い、事実上の永久使用に道を開いたのである。

こうして沖縄県民の土地は、米軍と日本政府によつて今日まで、四十年間の長期にわたつて取り上げ続けられている。

政府が、いかなる法律をもつて取り繕うとも、県民の土地を取り上げてきた歴史的汚点である強奪の事実を隠しおおすことはできない。

1 防衛施設庁は、今回の強制使用について「公共の福祉のために憲法上も個人の財産権は制約される」旨、強弁している。

しかし、これは私が再三指摘してきたように、国家権力による土地の強奪とも言うべきものであり、憲法が保障する財産権の尊重等に明確に反するものである。まして、基地の存在によつて四十年間、県民に言い知れぬ犠牲を強いてきたこの土地取り上げが「公共の福祉のため」などと言えるものでないことは明白である。

これについて政府の見解を求める。

2 全面占領支配下の米軍の土地強奪は、ハーグ陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則が定める「私有財産の尊重」、「没収、掠奪の禁止」の原則に違反するものであつた。政府はこれについてどのような認識をもつているのか。

3 政府は、このような不法、不当な土地取り上げの歴史的事実を謙虚に受けとめ、採決申請を撤回し、所有者に直ちに土地を返還すべきである。少なくとも政府が、今日、この問題について、歴史の教訓を導きだそうと言うのであれば、これは、当然のことではないのか。

二 今回の米軍用地収用特措法による二十年間の強制使用は、歴史的にも全く類をみない事実上の強制収用である。

まさに、これは公用地法とともに政府の法に名を借りた問答無用の土地取り上げであり、全面占領支配下の米軍の土地強奪と本質的になんら変わるところがない。

政府自身は公用地法による五年間の強制使用でさえ、「五年というのも(中略)確かに長い」(昭和四十六年十二月四日衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会 高辻内閣法制局長官答弁)と答えざるを得ず、ましてや、それ以上の長期の強制使用などは、これまでなし得なかつたのである。

それは、講和発効後の一九五二年から一九六二年の十年間に、沖縄県以外で米軍用地収用特措法に基づいて、強制使用が発動(六二年以降は行われていない)された四十五件のほとんどが、一年の強制使用期間(二年以上が八件で、そのうち最高は二年五ヵ月)であるという事実が証明している。

更に、許しがたいのは、政府は二十年間の強制使用の理由について「基地の安定的使用」、「土地所有者の合意使用が困難」だという趣旨のことを述べているが、こうした理由で強制使用するなどは、言語道断である。

去る十二月十日の衆議院内閣委員会で、私は、二十年の期間設定の根拠について政府の見解をただした。

これに対して、佐々防衛施設庁長官は「民法第六百四条に最高二十年という賃借期間があるので、それを参考にした」という趣旨の答弁をし、また、「土地収用法では、四十年、五十年の使用もある」などと述べ、あたかもそれが合理的根拠を持つかのような印象を与えようとしている。

1 民法第六百四条の規定は、貸借人双方の合意を前提としたものであつて、地権者の側が断固として賃貸借を拒否している場合に、民法の規定を参考とすること自体不当であり、通用するものでないと、私は指摘した。政府は、それでもなお参考にしたと言いはるのは、どういう理由か。

2 佐々長官は「土地収用法には四十年、五十年の使用もある」と答えたが、しかし、それは、土地収用法に基づいて、電力会社が、高圧線を架設するために必要とした用地(高圧線下の民有地)等を強制使用した例であつて、自衛隊用地とは全く関係のないものと考えるが、どうか。

3 周知のように、収用制度の基本法である土地収用法は、自衛隊用地の収用、使用を前提にしていない。昭和三十九年五月二十二日、衆議院建設委員会で、当時の河野建設大臣は「軍施設を『公共の』範囲に入れるということは適当でない。これはもう社会通念ではなかろうかと私は思います」と明確に答弁している。つまり、現行の土地収用法第一条の「公共の」の範囲に自衛隊用地は、入らないのである。従つて、自衛隊用地を確保するために土地収用法を適用することはできない。しかるに佐々長官が、このことを承知の上で、あえて土地収用法に基づく一般の用地(自衛隊用地でない)の使用例まで持ち出して、米軍基地にかかる二十年間の強制使用の根拠にしようとするのは、国民を欺くものであり、絶対に容認できない。

私は、この際、改めて二十年間の根拠について、政府の具体的な説明を求めるものである。

4 沖縄県以外の都道府県では、過去において米軍用地収用特措法に基づく強制使用の期間がほとんど一年であつた。それは何故なのか。

その理由と根拠を明らかにされたい。

三 沖縄の米軍基地として取り上げている土地の多くは、正確な所在、面積、形状、隣地との境界が不明である。

従つて、現在、「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法」に基づく、土地所有者全員の集団和解によつて、地籍の確定を行おうとしているのである。

特に嘉手納基地をはじめとするこれらの土地は、いまだ土地所有者全員による集団和解は成立しておらず、地籍は明確になつていない。

この地籍不明土地について、そもそも米軍用地収用特措法を適用することはできないとする指摘もある。

現に、昭和五十七年三月三十一日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会で、当時の防衛施設庁の伊藤施設部長は米軍用地収用特措法の適用について「一筆一筆の地籍が明確に」なることが必要だと答弁している。

1 伊藤施設部長が、地籍が明確にならなければ適用できない旨、答弁していたことと、矛盾するのではないか。これについて、納得のいく説明をされたい。

2 米軍用地収用特措法は、その執行に当たつて関係土地の調書や図面等の作成を義務付けている。

そのためには、土地所有者の合意はもちろんのこと、法的にも地籍の確定が完了していることが、不可欠ではないのか。

3 防衛施設庁は、土地所有者の確認や合意を得ないまま、土地の所在、地籍、数量、形状、隣地の境界についての調書や図面を作成し、これに基づいて採決申請を行つている。

これは米軍用地収用特措法の規定からすれば、無効ではないのか。もし有効と言うならば、その理由を具体的に説明されたい。

四 政府は、安保条約目的達成のため米軍が沖縄県民の土地を基地として強制使用することは「適正且つ合理的」である旨、述べている。

しかるに今日、沖縄の米軍基地はレーガン政権の世界戦略の下で、アメリカのアジア、太平洋地域の前進防衛の礎石として、強化され、第七艦隊をはじめ空軍や海兵隊の出撃拠点となつている。更に、核部隊が存在し核通信施設の機能強化も図られ、核基地化の様相を呈している。

八六年の米軍事情勢報告は、日本をはじめ沖縄の基地が「米国の地域的安全保障努力の作戦拠点としての死活的役割を果たしている」と述べている。

かつて、ベトナム戦争において、日本、特に沖縄の米軍基地が最大の出撃、中継、兵站、補給基地として利用され、いかに多くのベトナム人民を殺戮したか、いまだ記憶に新しいところである。

米軍基地がアメリカの侵略基地としての危険な役割を一段と強めているこの現実に対して、平和で基地のない豊かな沖縄を願う県民が、基地撤去の要求を掲げ、不当な土地取り上げに反対するのは当然のことである。

基地が存在するがゆえに、国土は破壊され、基地被害が続発し、米兵による殺人、暴行などの凶悪犯罪も絶えない。まさに基地は、国民に犠牲を強いる以外のなにものでもない。

これが安保条約下の実態である。

1 政府は、それでもなお安保条約の目的のためには、国民の生命や財産を踏みにじつてもよいという考えなのか。

2 政府は、さきに指摘した土地取り上げの歴史的事実並びに沖縄の米軍基地の現実を直視するならば、今回の強制使用が「適正且つ合理的」などと、強弁することはできないはずである。

これについて、政府の見解を求める。

3 私は、重ねて米軍用地収用特措法による土地取り上げに強く反対するものであるが、強制使用の採決申請の撤回と土地所有者への土地の返還、基地撤去等について政府の答弁を求める。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一の1及び四の1について

米軍は、日米安全保障条約に基づき、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、我が国に駐留しているものであり、かかる目的を有する米軍の駐留は、我が国の生存と安全の維持という国益を確保する上で重要であり高度の公共性を有するものである。したがつて、米軍の駐留の用に供するため土地を使用することは、憲法第二十九条第三項の「公共のために用ひる」ことに該当することは明らかである。

一の2について

米軍の占領下の沖縄における行動について陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則との関連での問題の指摘があることについては承知している。

一の3及び四の3について

裁決の申請は、憲法に基づき財産を公共のために用いる手続等を定めた日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和二十七年法律第百四十号。以下「駐留軍用地特措法」という。)に基づき適法に行つたものであり、これを撤回する考えはない。

二の1について

本件裁決の申請に係る土地は、施設及び区域の運用上、賃貸借契約を締結している他の土地と有機的に一体として使用しており必要欠くべからざるものであり、今後相当長期間使用されると考えられるが、民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条が貸主保護の観点から賃借権の存続期間を制限していることを考慮し、これを参考の一つとして当該土地の使用期間を設定したものであり、本件が公用使用であることをもつて、これが不当であるとの御指摘は当たらない。

二の2及び3について

御指摘の防衛施設庁長官の答弁は、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)により「使用」した事例の一部についてその使用期間を例示したものであるが、自衛隊用地との関係については、防衛庁設置法(昭和二十九年法律第百六十四号)の規定によつて防衛庁が所掌事務の遂行に直接必要な施設として設置する自衛隊の施設が、土地収用法第三条第三十一号の施設に含まれることは、同号の解釈上明らかである。

なお、御指摘の当時の建設大臣の答弁は、特定公共事業の政令委任について定める公共用地の取得に関する特別措置法(昭和三十六年法律第百五十号)第二条第八号についての発言であり、自衛隊の施設に関する土地収用法の適用関係について触れたものではない。

また、裁決の申請において使用期間を二十年としたのは、日米安全保障条約の地位及びこれに伴う米軍の駐留、施設及び区域の今後の長期間の安定的使用の必要性、沖縄県に所在する施設及び区域の見通し得る将来の返還の見込み並びに土地所有者との合意による使用の著しい困難性等の事情・経緯を総合的に判断したことによるものである。

二の4について

過去において、沖縄県以外の都道府県に所在した施設及び区域の中には、米軍が土地や個人の住宅を一時的に施設及び区域として使用したものも多く、また継続的に使用する施設及び区域に係る土地についても駐留軍用地特措法による使用期間満了時までに賃貸借契約の締結又は買入れが可能であると判断されたからである。

三について

昭和六十年八月五日裁決の申請を行つた土地のうち、その大部分は沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法(昭和五十二年法律第四十号)による手続を完了しており、同手続を完了していない一部の土地についても位置境界明確化作業を通じ、現地に即して特定できる状態となり、駐留軍用地特措法の適用が可能となつているので、駐留軍用地特措法に基づき適法に手続を執り、裁決の申請をしたものであり、御批判は当たらない。

四の2について

今回裁決の申請をした土地は、日米安全保障条約第六条に規定する目的達成のため駐留する米軍が施設及び区域としてこれを使用することについて、その必要性が客観的に認められるので、駐留軍用地特措法第三条にいう「適正且つ合理的であるとき」に該当すると考える。

右答弁する。

衆議院の原文

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