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血友病患者のエイズ感染による薬害補償に関する質問主意書

衆議院 第112回 第20号

提出者
衆議院
提出日
1988年3月25日
内閣転送 1988年3月30日
答弁書受領日
1988年4月5日
提出から11日
答弁の項目数
8
質問 2,986字/答弁 1,174字

質問本文

衆議院議長 原 健三郎 殿

血友病患者のエイズ感染による薬害補償に関する質問主意書

血友病患者のエイズ感染問題については、最近の国会質疑及びマスコミの報道等によつても、昨年九月私が提出した質問主意書で指摘したように、「日本政府は、エイズ混入血液製剤の輸入停止及び医療現場からの回収もしないままアメリカより遅れること二年間、一九八五年まで加熱処理製剤の認可を放置してきた」ことで、「安全な血液対策を怠つてきた政府の責任は明確」になりつつある。

しかし、政府は「血液凝固因子製剤によつてエイズに感染した」ことは認めるが、薬害として医薬品の製造許可・承認したという責任、また危険を排除するための回収等をしなかつたという責任を認めず、「不可抗力」であつたとして「政治的救済」ですまそうとしている。

この政府の政治姿勢に対して、血友病でエイズに感染した小学生をもつ母親の方から、「治療に使つた製剤で感染したのにどうして薬害ではないのでしようか。これ以上ひどい話はありません。国はもつと患者のことを真剣に考えて下さい。血友病のエイズ感染を薬害と認め、国は補償してください。それが私達に答える唯一の道です」と、竹下総理の政治救済発言に対する怒り、薬害としての国とメーカーの責任、そして血友病患者の実情が寄せられている。

日本共産党は、「汚染血液製剤による感染の責任は、輸入血液製剤に依存して安全な血液製剤の国産化に背をむけつづけてきた自民党政府にあります」(六十二年七月、エイズに対する不安をどうとりのぞくか)と政府の責任を厳しく指摘し、「政府が緊急にとりくまなければならないのは、国の責任でこの人たちの健康管理、生活保障をおこなうことです」と主張してきた。

国は、薬害の予見ができたにもかかわらず、「医薬品の有効性と安全性の確保」をせず、製剤の検査や使用患者の追跡調査・汚染製剤の回収等の薬務行政をおろそかにしてきたことは重大であり、血友病患者の生命と生活を守るための完全な救済は緊急を要すると考える。

従つて、次の事項について質問する。

一 血液製剤によるエイズ感染の予知問題について

厚生省は、六十年五月にエイズと認定した血友病患者をすでに五十八年六月当時認知していながら「証拠不十分」として認定しなかつたし、また五十九年六月に米国でエイズの感染判定をしていたにもかかわらず認定を遅らせ、結局六十年五月の加熱製剤認可まで黙認し血友病患者のエイズ感染の拡大をまねいた。厚生省の責任は重大である。そこで次の点を伺いたい。

1 日本で非加熱血液製剤によるエイズ感染の恐れがあると厚生省が認知したのは、五十八年六月ごろ発表された症例によるといわれるが、それは何処の大学の患者で、どんな症例であつたのか。

2 厚生省エイズ研究班は、五十八年七月「帝京大の例」を「証拠不十分」としてエイズ認定しなかつたが、それはどんな患者であつたのか。認定しなかつた具体的理由は何か。

3 厚生省は、六十年五月帝京大の二名の血友病患者をエイズと認定したが、それはどんな患者であつたか。また何を根拠にエイズと認定したのか。

4 五十九年十一月東京の血友病治療国際シンポジウムで安部英帝京大副学長は、「二名の日本人の血友病のエイズ感染」を明らかにしており、第一の患者は四十八歳の男性で血友病Bをもち五十八年六月死亡している。第二の患者は六十二歳の男性で血友病Aをもち五十九年十一月死亡していると報告している。このことを厚生省は承知していたか。

5 同シンポジウムで安部副学長は、「血友病患者でのエイズは血液製剤により感染する」「特に血友病におけるエイズの発現は日本の行政当局の関心をひいた」と明確に述べるとともに、五十九年六月に二人の患者のエイズ判定を依頼した「米国国立がん研究所のギャロ博士の価値ある協力に大変感謝している」としているが、厚生省は承知していたか。

二 カッター社のB型肝炎ウイルス混入問題について

昨年十二月カッター社製の加熱濃縮製剤にB型肝炎ウイルスが混入していたことで、厚生省はカッター社にプールプラズマの検査及び使用患者の追跡調査を指示したうえで、薬事法第五十六条違反で処分し、感染患者への補償を指導した。そこで次の点を伺いたい。

1 カッター社に対して、何を根拠にプールプラズマの検査及び使用患者の追跡を指示したのか。

2 カッター社の場合は厚生省がプールプラズマの検査及び使用患者の追跡調査を指示しているが、ならばどうして非加熱濃縮製剤にエイズウイルスの混入を認知したとき、同様の措置及び製造輸入の停止・回収等の措置がとられなかつたのか。

3 エイズウイルスの抗体検査法は、五十九年五月許可されており、安部副学長も判定を依頼している。かたやB型肝炎ウイルスはカッター社が製品検査をしたがマイナスで国立予防研究所でもマイナスになり、米国マイルス社のサンプルテストでプラスを確認した。それではカッター社はB型肝炎ウイルスの混入で薬事法違反で補償を命ぜられ、かたやエイズウイルスが混入していたにもかかわらず何の責任も問われないのは問題ではないか。

4 加熱濃縮製剤にウイルスが混入していた事実は、信用しきつていた患者家族の信頼を著しく損ねたが、問題は、原料血液の検査及び加熱処理方法であり、さらに輸入時にもプール血漿の検査がやられていなかつたことにある。従つて、安全な血液製剤の国産化を基本にしながら、原料血液及び輸入時のプール血漿のHBs抗原検査を行い、乾燥加熱方式から信頼性の高い液状加熱方式に早急に切り換えるよう指導すべきではないか。

三 血友病患者の薬害補償による完全救済について

サリドマイド裁判やスモン訴訟の教訓から五十四年「薬事二法」を成立させ、薬事法の第一条の目的に「医薬品の品質、有効性及び安全性を確保すること」を規定し、医薬品の製造又は輸入の承認基準や厚生大臣の緊急命令、回収、承認の取消等の監督権限を盛り込み、万やむをえず発生した被害に対しては「救済基金」をあてることにした。そこで次の点を伺いたい。

1 いま問題になつている血液製剤による血友病患者のエイズ感染は、この「医薬品の有効性と安全性の確保」に反して、責任を回避するため予見可能性を認めず、承認の取消や回収等の責任をとらないなど、これまでの薬害訴訟の教訓や法改正の趣旨を生かしていないではないか。

2 血友病患者の母親の訴えにもあるように、メーカーと国の責任を棚上げして不可抗力だと称して、政治救済などではなく、輸入血液製剤に依存して安全な血液製剤の国産化に背をむけてきた政府の責任をとり、患者に対する健康管理、生活保障をふくむ完全な救済を行うべきではないか。

また、完全救済を行うために汚染血液製剤の供給及び使用の実態調査を行うべきではないか。

3 スモンの賠償は、国の三分の一、メーカーの三分の二の責任ということで、賠償一時金、健康管理手当、遺族弔慰金、介護費用などを支払つているが、エイズ感染者に対しても十分な救済内容を検討すべきではないか。全国ヘモフィリア友の会は「血友病患者のエイズ感染は明白な薬害であり、国・製薬会社による責任ある完全救済」を求めており、これに答えるべきではないか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一の1及び2について

昭和五十八年六月に発足した厚生省の後天性免疫不全症候群(AIDS)の実態把握に関する研究班において、非加熱血液製剤によるエイズ感染の疑いがあるものとして一症例(帝京大学の症例)が報告されたが、検討の結果、同年八月、ステロイド投与による可能性もあるとして、疑似ないし非典型的と決定された。

一の3について

昭和六十年五月に帝京大学から厚生省エイズ調査検討委員会に提出された症例は、四十八歳で亡くなつた血友病の男性及び六十二歳で亡くなつた血友病の男性であつたが、委員会に提出された資料を専門家が総合的に判断してエイズであると認定したものである。なお、このうち四十八歳で亡くなつた症例は、後天性免疫不全症候群(AIDS)の実態把握に関する研究班で検討され、昭和五十八年八月に疑似ないし非典型的と決定された症例であるが、新たにエイズウイルスの抗体検査の結果が提出されたことから、当時の最新の知見に照らして、エイズと認定したものである。

一の4及び5について

御指摘のシンポジウムにおいて安部副学長が行つた報告については、厚生省としては承知していなかつた。

二の1について

カッター・ジャパン株式会社より、同社が輸入した特定ロットの血液凝固第IX因子製剤の投与によると考えられる肝炎症例が報告され、当該ロット製品との関連が推定されたことから、原因解明等のため指示したものである。

二の2及び3について

カッター・ジャパン株式会社の場合は、採血の際HBs抗原検査を行い、陽性の血液を排除することによつて、B型肝炎ウイルスの混入を防止できる方法が確立しており、かつ、肝炎の発症に関連する製品が相当程度特定できたことから、追跡調査及び行政処分という措置を採つたものである。

一方、血液凝固因子製剤によるエイズ感染の場合は、エイズウイルスの混入を確認する方法がなく、また、感染から発症までの期間が数年に及ぶことから、原因となる製品を特定することが困難であつたこと等事情が異なる。

二の4について

血液凝固因子製剤については、採血時のみならずプール血漿についてもHBs抗原検査を行うよう指示しているところであり、また、関係企業には、ウイルス不活化効率のより高い製品の開発を指導しているところである。

三の1について

血液凝固因子製剤の安全性の確保については、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)の趣旨を踏まえ、その時点における科学技術の水準に照らし、最善の努力を尽くしてきたところである。

三の2及び3について

血液凝固因子製剤によるエイズ感染者のための対策については、国において発症予防・治療研究事業及び相談事業を行うこととし、必要額を昭和六十三年度予算に計上している。さらに、ほかにどのような対策が考えられるか検討を行つているところである。

衆議院の原文

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