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血液製剤による感染被害の救済に関する質問主意書
衆議院 第145回 第37号
質問本文
我が国における、医薬品による被害の救済制度としては、薬害スモン事件を契機として設けられた医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法(昭和五十四年法律第五十五号)(以下、同法という)に基づく制度がある。同法では、血液製剤は適用除外医薬品の一つとして定められているが、血液製剤によるHIV感染被害についてはエイズ予防法制定経緯の中で、一九八九年一月から同法附則第八条を設けて、財団法人友愛福祉財団が同機構に対して、血液製剤によるHIV感染者等のための救済事業を委託実施するという枠組みで一定の給付が支給されるようになった。その後、製造物責任法(平成六年法律第八十五号)制定時の附帯決議では衆参両院いずれも、裁判によらない迅速公平な被害救済システムの有効性に鑑み裁判外の紛争処理体制の整備を図るべきことと決議し、特に参議院では「六、輸血用血液製剤による被害者の救済については、その特殊性にかんがみ、特別の救済機関等の設置に努めること」と決議され(平成六年六月二二日参議院商工委員会)、これを受けて厚生省内においても救済制度に関する非公開の検討委員会が設置されたと聞く。
また、米国のIOM勧告及びカナダのクレーバー委員会報告など、諸外国では血液製剤によるHIV感染被害についての国会レベルの原因究明・再発防止の為の調査を実施しており、その報告書中では裁判による解決には限界があることが指摘され、国として無過失救済制度を早急に確立すべきであるという提言が為されている。日本においても、中央薬事審議会企画・制度改正特別部会における血液新法に関する審議において、患者諸団体から血液製剤による被害についての無過失救済制度の早期設置を求める意見書が提出されていると聞く。
血液製剤には各種肝炎、HIV、CJDなど未知のウイルスとの戦いの歴史があり、多くの場合、被害を受けた患者には過失の有無及び所在を関知しえず、また長期間の裁判による心身の消耗は著しく、解決を見ることなく、何らの救済もないまま亡くなっていく場合も多い。社会正義のうえからも、かかる被害者の救済のため、無過失救済制度の設置はこれ以上、放置すべからざる急務である。
従って、以下、血液製剤による感染被害の救済について、質問する。
一 輸血用血液製剤によるHIV感染被害の実態について
輸血用血液製剤によるHIV感染被害について国はどのような実態調査体制を整えているか。また、現在までの実態調査結果を具体的に明らかにされたい。
二 輸血用血液製剤によるHIV感染被害救済の現状について
1 輸血用血液製剤によるHIV感染被害者に対しては、どのような救済措置が採られているか。
2 右感染被害者に対して、同法附則第八条第一項に定める「許可医薬品(第二条第二項第一号に掲げる医薬品を含む。)に混入した後天性免疫不全症候群の病原体による健康被害の迅速かつ円滑な救済を図るため」として、同機構からの救済給付が支給されているか。支給されているとすれば、その場合の同機構に対する委託者すなわち、同法附則第八条第一項に定める「厚生大臣の認可を受けて、当該健康被害の救済のために必要な事業を行う者」とは、誰を指すか。支給の原資負担者から受給者までの手続の流れを具体的に明らかにされたい。
三 血液製剤によるHCV感染被害の実態について
輸血用血液製剤を含む血液製剤全般によるHCV感染被害について、これまでに国はどのような実態調査体制を整えているか。また、現在までの実態調査結果を具体的に明らかにされたい。
四 輸血用血液製剤を含む血液製剤全般による感染被害の救済制度の設置について
国は、輸血用血液製剤を含む血液製剤全般による感染被害の救済制度の設置について、これまでにどのような検討を行ったか。救済制度設置に関する検討経過、現時点の到達点、今後の方針及び本検討の担当責任者を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねのHIV感染の実態については、厚生省においては、次に述べるように、患者及び感染者の診断並びに医薬品の使用によるものと疑われる感染症の発生の二つの観点から把握しているところである。
第一に、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号。以下「感染症法」という。)第十二条の規定に基づき、後天性免疫不全症候群(以下「エイズという。)の患者及びその病原体を保有している者であって無症状のもの(以下「HIV感染者」という。)(以下「エイズの患者等」と総称する。)を診断した医師から、当該エイズの患者等の年齢、性別、感染経路等について都道府県知事等に届出が行われ、これが厚生大臣に報告されることとされている。また、厚生省においては、「後天性免疫不全症候群(HIV感染症を含む)発生届に係る病状に変化を生じた事項に関する報告について」(平成十一年三月十九日健医疾発第三十号厚生省保健医療局エイズ疾病対策課長通知)により、同条の規定に基づいて報告された症例について病状の変化を診断した医師に対し、都道府県知事等に病状の変化の状況を報告し、都道府県知事等がこれを厚生省に報告するよう求めている。感染症法施行前においては、後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(平成元年法律第二号。以下「旧エイズ法」という。)第五条の規定に基づき、エイズの患者等を診断した医師から、同様に都道府県知事等に報告が行われ、厚生省においては、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律の運用上の留意事項について」(平成元年二月十日健医感発第十四号厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知)により、これについて報告を求めるとともに、報告された症例の病状の変化についても報告を求めていた。また、旧エイズ法施行前においては、「AIDS調査の実施について」(昭和五十九年九月二十日健医発第三百四十九号厚生省保健医療局長通知)により、医療機関に対して、エイズの患者等を診察したときは感染経路等について都道府県に届け出るよう協力を求めていた。
これらの報告又は届出が実施されてから本年六月二十七日までの間に厚生省において報告又は届出を受けた件数は、エイズを発症したと認められる者のうち推定される感染経路が輸血であると報告又は届出がされたものが累積で十五件、HIV感染者のうち推定される感染経路が輸血であると報告又は届出がされたもの(後にエイズを発症したと認められた者が一部含まれる。)が累積で三十一件である。
第二に、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第七十七条の四の二の規定に基づき、医薬品の製造業者若しくは輸入販売業者又は外国製造承認取得者若しくは国内管理人は、その製造し、若しくは輸入し、又は承認を受けた医薬品について、当該品目の使用によるものと疑われる感染症の発生で厚生省令で定めるものを知ったときは、その旨を厚生大臣に報告しなければならないこととされている。また、「医薬品等安全性情報報告制度への御協力について(お願い)」(平成九年五月十五日薬発第六百三十三号厚生省薬務局長通知)により、平成九年七月一日から、すべての医療機関及び薬局を対象に、医薬品の使用によるものと疑われる感染症の発生を知った場合の自発的な報告(以下薬事法第七十七条の四の二に基づく報告と当該報告を合わせて「医薬品による感染症報告」という。)について協力を要請しているところである。
平成九年度及び平成十年度において、厚生省に医薬品による感染症報告においてHIV感染に関し輸血用血液製剤の使用によるものと疑われると報告された件数は四件であったが、このうち投与された血液製剤の原料として使用された血液の保存検体が存在した三件については、核酸増幅検査を行ったところ、HIVの核酸は検出されなかったところである。
二について
お尋ねの輸血用血液製剤によるHIV感染被害者に対する救済事業については、財団法人友愛福祉財団(以下「財団」という。)が行う血液製剤によるエイズ患者等のための救済事業(以下「救済事業」という。)において、薬事法第十二条第一項に規定する医薬品の製造業の許可又は同法第十八条第一項に規定する医薬品の製造品目の変更等の許可を受けて輸血用血液製剤の製造を行う日本赤十字社が製造した輸血用血液製剤(以下「日本赤十字社が製造した輸血用血液製剤」という。)によるエイズ患者等を対象としているところである。
お尋ねの医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法(昭和五十四年法律第五十五号)附則第八条第一項の必要な事業を行う者は財団であり、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(以下「機構」という。)は、同項の規定に基づき、財団の委託を受けて同法第二十八条に規定する救済給付に準ずる給付の事業(以下「給付の事業」という。)を行ってきているところである。
財団が行う救済事業のうち日本赤十字社が製造した輸血用血液製剤によるエイズ患者等に係る給付に要する費用は、日本赤十字社が財団に対し拠出を行っており、財団から委託を受けた機構は、給付を受けようとする者の請求に基づき、厚生省医薬安全局に設置するHIV感染被害判定委員会に、給付の請求を行った者が輸血用血液製剤によるエイズ患者であるかどうかその他医学的判定を求めた上で、支給を決定している。
三について
お尋ねの血液製剤によるC型肝炎ウイルス(以下「HCV」という。)の感染の実態については、厚生省においては、一についてで述べた医薬品による感染症報告により把握しているところである。
医薬品による感染症報告によれば、平成九年度及び平成十年度において、HCVの感染に関し血液製剤の使用によるものと疑われると報告された件数は、百二十三件であった。このうち九十件は、患者の再検査等を行ったところ、HCVに感染していないこと又は当該血液製剤の使用前からHCVに感染していたことが判明したもの及び投与された血液製剤の原料として使用された血液の保存検体の核酸増幅検査等を行ったところ、HCVの核酸が検出されなかったもの又は保存検体のHCVの遺伝子型等と患者が感染したHCVの遺伝子型等とが一致しなかったものであった。
四について
お尋ねの血液製剤全般による感染被害の救済制度の検討については、平成六年十二月に当時の厚生省薬務局が設置した「血液問題検討会」において、その下に「健康被害専門委員会」を設置して同月から平成七年十一月まで六回にわたり、輸血用血液製剤による健康被害及びその対策についての現状説明及び意見交換を行ったが、具体的な対策に関する事項についての議論には至らず、その後平成八年十月に当時の厚生省薬務局が設置した「血液行政の在り方に関する懇談会」においても、今後の血液行政の新たな展開に向けての在り方について幅広く議論を行ったが、血液製剤による感染被害の救済制度の創設についての特段の議論はなかった。また、中央薬事審議会企画・制度改正特別部会においては、平成十年三月以降十五回にわたり今後の血液事業の在り方について審議しているが、この過程において、一部の委員から血液製剤による感染被害の救済制度の創設について今後検討すべきであるとの意見が述べられているところである。
お尋ねの今後の方針及び担当責任者については、同特別部会の審議の結果を踏まえつつ、適切に対処していきたいと考えている。
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