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血液製剤による血友病患者へのエイズ感染の現状と安全確保に関する質問主意書
衆議院 第103回 第5号お答えすることは困難 ×1
質問本文
衆議院議長 坂田道太 殿
血液製剤による血友病患者へのエイズ感染の現状と安全確保に関する質問主意書
我が国のエイズ認定患者は十一名に及び、そのうち血友病患者が五名を占めている。しかも血友病患者の中にエイズ抗体保有者が五割以上いるとの報告もあり、今後一層拡大しようとしている。
血友病患者にエイズが感染したのは、血友病の治療薬である血液凝固因子製剤の九割近くが米国からの輸入で賄われている結果である。
昭和五十年に血液問題研究会が政府に、「医療に必要なすべての血液製剤は献血により確保すべきである」と対策を求めていたにもかかわらず、有効な手がうたれないまま輸入血液製剤の使用量だけが増えていつた。
また、エイズが問題となつた昭和五十八年の時点でも、血友病患者が献血で血液製剤を製造するよう要求していたがまたも無視され、輸入血液製剤を使い続けたため、血友病患者にエイズが感染していつたのである。
研究会の意見や患者の要求を無視して今日の事態を招いた政府の責任は、極めて大きいといわざるを得ない。
血友病患者の要求である献血での血液製剤の製造は緊急を要する課題であり、そのための計画を早急に具体化し明らかにする必要がある。
本年八月の血液事業検討委員会の中間報告では、「献血で血液凝固因子製剤を製造するため民間製薬会社の製造能力を一時活用することも考慮すべきである」としているが、献血を民間製薬会社に渡すことについては国民の十分なコンセンサスを必要とすることはもちろんのことであり、できるだけ日赤が責任をもつて製造するのが望ましいといえる。日赤が乾燥濃縮凝固因子製剤の製造能力をもつていない現在、血液が少なくてすむ乾燥非濃縮製剤の製造能力を高め、濃縮、非濃縮の両製剤を併用すべきであると考える。
エイズ感染のこれ以上の広がりを防ぐためには、以上述べた点のほか、献血時の抗体検査、血液製剤の加熱処理の促進を早急に実施する必要がある。
政府は、四百ミリリッター採血及び成分採血を来年度から実施しようとしているが、その際なによりも必要なことは、国民に対して国内の必要とする血液量とそれがどのように使われるのかを明らかにするとともに、採血時及び使用時に安全性を確保することである。このことなしに国民の理解と協力は得られないものと考える。
以上の立場にたつて、次の事項を質問する。
一 血液製剤の使用によるエイズ感染の実状について
1 血友病患者のエイズ罹患者数及びエイズ抗体保有率(保有者数)並びにエイズ関連症候群(ARC)の状態にある患者数はどれくらいか。
2 エイズ罹患及びエイズ関連症候群状態にある患者にいかなる対策がとられているか。
二 血液製剤の安全確保について
1 我が国において血液製剤からのエイズ感染がいわれた昭和五十八年頃から今日まで、血液製剤使用によるエイズ感染防止のためどのような施策がとられてきたか。
2 諸外国で輸入禁止措置をとつた例もあるが、我が国ではなぜそのような措置がとれなかつたのか。
3 輸入血漿及び輸入製剤のエイズ感染防止の安全基準が設けられたことがあるか。あるとすればその内容と履行状況はどうか。
4 エイズ対策として国内血液(献血も含む。)を原料とする製剤の供給拡大の措置をとつたことがあるか。
5 血液製剤の投与によるエイズ発症及び関連症状について、医薬品による「副作用」として報告を求めること及び医薬品副作用被害救済基金による救済は考えられないか。
三 加熱処理製剤の安全確認について
1 加熱処理製剤によりエイズ感染率が低下するとされているが、安全性はどのように確認されているか。現在までのデータで加熱処理で製剤中のエイズウイルスは完全に不活化が確認されているのか。また蛋白変性などによる副作用についてはどうか。
2 B型血友病患者のための加熱処理凝固因子製剤の審査状況はどうなつているか。いつごろ認可となるか。
四 エイズの抗体検査及び治療について
1 エイズ抗体保有検査試薬の審査の状況と認可の見通しはどうか。
2 エイズ抗体検査試薬の薬価基準の収載とエイズ関連項目の健康保険適用については、どのように考えているか。
3 エイズ発症患者に対する治療並びに治療法の研究についてどのような措置がとられているか。過去三年間の予算額はどれくらいか。
五 血液製剤の国内自給について
1 昭和六十一年度以降五ヵ年間の献血目標量及び全血製剤、血液成分製剤、血漿分画製剤として使用する量の年次ごとの計画を明らかにされたい。
2 血友病治療薬の国産化の早期実施のための具体的年次計画を明らかにされたい。また乾燥非濃縮製剤と乾燥濃縮製剤の割合はどのように考えているか。
3 日本赤十字社に対し、現在厚生省は製剤の供給に関しどのような指示をしているか。
4 製剤の製造のため民間製薬会社の能力の一時活用についてどのくらいの量をどのような方法でと考えているか。また国民及び献血者の理解が得られると考えているか。
六 献血の安全性の確保について
1 献血のエイズ坑体検査を実施すべきだと思うがどうか。
2 成人T細胞白血病ウイルス(ATL)の感染の現状と対策はどのようになつているか。ATL坑体検査も実施すべきだと思うがどうか。
七 四百ミリリッター採血と成分採血について
1 四百ミリリッター採血が安全であるという論拠を明らかにされたい。
2 国民の協力を得るためには十分な説明が必要と考えるがどのようなことを考えているか。
3 四百ミリリッター採血及び成分採血を安全に実施するためには、医師をはじめとするスタッフの充実が必要だと思うが、具体的にどのように考えているか。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
昭和六十年十月末までに厚生省のAIDS調査検討委員会が後天性免疫不全症候群(以下「エイズ」という。)と判定した患者は十一人であり、このうち血友病患者は五人であつた。
また、昭和六十年六月までに約四百人の血友病患者について行つた調査によれば、エイズ抗体の保有率は約三十パーセントであつた。
なお、エイズ関連症候群の定義については、いまだ確立していない状況にあるが、いわゆるエイズ関連症候群の状態にある者の数は、エイズ抗体の保有者の数より少ないものと考えられる。
一の2について
昭和五十九年度から、都道府県及び医療機関の協力を得て、エイズの疑いのある患者の情報を収集し、AIDS調査検討委員会の判断を踏まえ、都道府県等に必要な指示を行つている。
また、昭和六十年七月には、都道府県及び医療機関の参考に資するため、患者発生時の感染防止等に関する留意点を都道府県に通知したところである。
二の1について
血液製剤によるエイズ感染防止のために、これまでに次のような施策を講じてきている。
(一) 昭和五十八年度において、厚生省に後天性免疫不全症候群(AIDS)の実態把握に関する研究班を設置し、同研究班がエイズ診断基準を定めた。
(二) 昭和五十八年八月に、血液製剤の輸入販売業者に対し、エイズウイルスによる汚染のおそれのない旨の証明のある血液製剤のみを輸入するよう指導した。
(三) 昭和五十八年十一月に、血液製剤の製造業者及び輸入販売業者に対し、エイズウイルス不活化のため加熱処理した凝固因子製剤の開発について要請を行つた。
なお、加熱処理第VIII因子製剤の製造・輸入申請については、優先審査を行い、昭和六十年七月に承認を行つた。
(四) 昭和六十年十月に、日本赤十字社及び都道府県に対し、男性同性愛者等エイズハイリスクグループからの採血を避けるため、献血時における問診の強化を指示した。
(五) 昭和五十九年十月から、血液事業検討委員会において、エイズ対策を含む我が国の血液事業の諸問題について検討を行い、昭和六十年八月に中間報告を出した。
二の2について
血液製剤は医療上不可欠なものであり、国内における自給が十分でない現状を考慮して、輸入禁止措置は採らなかつたものである。
二の3について
原料血漿及び血漿分画製剤の輸入に当たつては、加熱処理されることが明らかな一部の血漿を除き、エイズウイルスによる汚染のおそれのない旨の証明があつたもののみを輸入させることとしており、現に証明書の添付がすべてなされている。
二の4について
昭和六十年三月に、日本赤十字社に対し、乾燥抗血友病人グロブリンの製造承認を行つたところであり、国内血液を原料とする製剤の供給拡大を図つている。
二の5について
血液製剤の投与によつて発症するエイズ及び関連症状については、エイズウイルスにより汚染された血液を原料とする製剤を用いた結果であり、医薬品の副作用ではないと考えている。
なお、エイズの疑いのある者の情報については、厚生省に報告されることになつている。
三の1について
加熱処理製剤(第VIII因子製剤)については、中央薬事審議会において十分審議を行つた結果、製剤中のエイズウイルスの不活化が確認されている。
また、たん白変性等による副作用については、動物試験及び臨床試験の結果から、非加熱製剤と差はないことが明らかにされている。
三の2について
血友病B患者のための加熱処理凝固因子製剤については、現在、中央薬事審議会において審査を行つているところであり、本年中に承認される見通しである。
四の1について
エイズ抗体検査試薬については、現在、中央薬事審議会において審査を行つているところであるが、新規の検査試薬であるため、承認の時期の見通しを現段階で明らかにすることは困難である。
四の2について
エイズ抗体検査試薬が、患者の診断、治療に有効なものとして薬事法上承認されることとなれば、健康保険法上の療養の給付の対象にしてまいりたい。
四の3について
現在、エイズについては、根治療法は確立されておらず、抗生物質、免疫賦与剤等による対症療法が行われている段階にあり、厚生省のエイズに関する研究班等において治療法を含む諸外国の情報の収集に努めているところである。
これらの研究班等に係る予算は、昭和五十八年度約四百五十万円、昭和五十九年度約八百五十万円であり、昭和六十年度については、昭和五十九年度とほぼ同額を予定している。
五の1及び2について
血液製剤の国内自給を高めるための年次計画については、血液事業検討委員会の中間報告の提言を踏まえ、現在、関係者と協議を行いつつ検討を進めているところである。
五の3について
現在、血液事業検討委員会の中間報告の提言を踏まえ、関係者と協議を行いつつ検討を進めているところであり、この結果を待つて、日本赤十字社に対し、必要な指示を行うこととしている。
五の4について
民間製薬会社の能力の一時活用の規模及び方法については、現在、関係者と協議を行つているところであるが、血漿分画製剤の国内自給体制の早期確立のため必要な措置であり、国民及び献血者の理解が得られるものと考えている。
六の1について
献血された血液のエイズウイルス抗体に関する調査研究では、これまで抗体陽性者は発見されておらず、現段階では献血の血液を検査する必要はないと考えているが、なお、今後の推移を慎重に見守ることとしている。
六の2について
昭和五十八年度に行われた全国の供血者における成人T細胞白血病ウイルスの抗体保有状況調査によれば、その陽性率は九州で約三パーセント、その他の地方で〇・〇八から〇・三パーセントと推定されている。
その対策としては抗体検査によるスクリーニング等が考えられるが、検査の方法及び体制の確立、陽性者への保健指導等なお検討すべき問題があり、現在検討を進めているところである。
七の1について
厚生省血液研究事業において、六年間にわたり多数の供血者の協力を得て四百ミリリットル全血採血を実施し、専門家による検討を行つたところ、副作用及びその発生率は、二百ミリリットル全血採血の場合と差はなく、安全に行えることが明らかにされている。
七の2について
四百ミリリットル採血及び成分採血を実施するため、国、地方公共団体及び日本赤十字社が一体となつて、その意義及び安全性について、普及啓発活動を行い、国民の理解と協力を得ることとしている。
七の3について
四百ミリリットル採血及び成分採血に従事する医師、看護婦等に対し、採血技術の研修等を行うことを考えている。
右答弁する。
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