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トリブチルスズ化合物の規制に関する質問主意書

衆議院 第118回 第13号お答えすることは困難 ×1

提出者
衆議院
提出日
1990年6月22日
内閣転送 1990年6月26日
答弁書受領日
1990年7月17日
提出から25日
答弁の項目数
9
質問 2,989字/答弁 2,375字

質問本文

衆議院議長 櫻内義雄 殿

トリブチルスズ化合物の規制に関する質問主意書

船底塗料などに用いられているトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)について欧米では使用禁止等の規制がすでに行われてきている。しかしながら我が国においては、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)によってビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)だけが第一種特定化学物質に指定され、その製造、輸入、使用が全面的に禁止されたものの、その他のTBT化合物十三種については未だに指定化学物質のままである。即ち、TBTO以外のTBT化合物十三種はその製造、使用が禁止されておらず、実質的には野放し状態にある。TBTOとその他のTBT化合物とをなぜ別々に分けて規制するのか、その根拠となる資料の提出を私は再三求めてきた。昨年秋の臨時国会開会中にこの件に関する質問主意書を二度提出し、今国会においても去る六月十四日の衆議院決算委員会の場で質問したが、私の求める明確な回答は得られていない。

そこで改めて質問する。次の事項に明確かつ詳細に答えられたい。

一 十四種のTBT化合物について行った魚類蓄積性試験の結果について、個々のTBT化合物毎に、(一)試験時期(その期間の年月日)、(二)試験実施機関名、(三)具体的かつ詳細な試験方法、(四)具体的かつ詳細な試験結果、(五)「化審法」上の取扱い(例えば高蓄積性、中蓄積性など)の判断基準となる数値及びその根拠、またこれらに関連して通産省の関知するもの全てを明らかにされたい。

二 十四種のTBT化合物のうちTBTOだけが「高蓄積性」と判定され、現在、第一種特定化学物質に指定されている。TBTOだけが「高蓄積性」と判定された根拠となる具体的かつ詳細な試験結果及びその判断基準を示されたい。また、「高蓄積性」の判断基準は何を根拠にしてどのように定められたのか。

三 「高蓄積性」の判断基準はその蓄積性が一〇〇〇〇倍(濃縮係数が1OOOO)以上かどうかであると聞いているが、これは事実か。また、そのように判断基準を定めた根拠は何か。

四 去る六月十四日の衆議院決算委員会における私の質問に対し、通産省化学品安全課が六月十五日付で届けた資料によれば、トリブチルスズ=ヒドロキシド(以下「TBTOH」という。)0.4μg/1溶液中でコイを八週間飼育したときのコイへのTBTOHの蓄積率(濃縮係数)は8280〜9210であり、一方、TBTO0.4μg/1溶液中では8230〜8580であるとされていた。この結果を見ると、TBTOHはTBTOと同程度かやや上回る蓄積性を有している。厳密に言えば、試験に用いられたコイの脂質含有量の差の補正がなされていない点、TBTOHの蓄積性においてみられる濃度依存性、八週目の時点でもその蓄積性は平衡に達していない点など、この蓄積性試験には問題点が少なくないのだが、いずれにせよこのような試験結果からTBTOだけが「高蓄積性」であると言えるのか。人体への跳ね返りを考えると、TBTOだけが「高蓄積性」という判定は人の健康への影響を軽視した姿勢ではないか。また、TBTOHは指定化学物質にも指定されていないが、これはなぜか。

五 欧米ではTBTOとその他のTBT化合物とを分けずに、ひとまとめにTBT化合物として使用禁止、販売禁止などの規制を行っている。一方、我が国では通産省がその「蓄積性」に差があるとしてTBTOとその他のTBT化合物とに分けて規制を行っている。ところが、去る六月十四日の衆議院決算委員会における私の質問とそれに対する通産省の答弁から、両者を別々に分けて規制する明確な根拠は存在しないものと考えられた。この件についてはいかがであろうか。こうした解釈に問題があるかないか、具体的な根拠となる資料を提示しながら答弁されたい。特に、両者を別々に分けて規制する明確な根拠が存在すると言うのであれば、一との関連において、その根拠となる全ての試験結果を具体的かつ詳細に示されたい。

六 運輸省に問う。TBTOとその他のTBT化合物とを別々に分けて扱い、規制する「根拠」がなくなったとき、即ち、通産省がこれらを分けて規制する「根拠」があいまいであることが明らかになったとき、TBT化合物を含んだ船底塗料を使用する側の監督官庁としてどのように対応するか、答えられたい。

七 農林水産省に問う。水産生物に対してはTBTOだけでなく全てのTBT化合物が極めて毒性が強いと考えられている。TBTOとその他のTBT化合物とを別々に分けて扱い、規制する意味があると考えるか。その根拠とともに答えられたい。また、通産省がこれらを分けて規制する「根拠」があいまいであることが明らかになったとき、運輸省同様、TBT化合物を含んだ船底塗料を使用する側の監督官庁として、また一方で、水産資源に対する悪影響という被害を受ける側の監督官庁としてどのように対応するか、答えられたい。

八 環境庁に問う。生物モニタリング調査の中では、TBTOとその他のTBT化合物とを別々に分けずにひとまとめにTBT化合物による汚染として扱っているはずである。個々の化合物毎に分析・測定することが現時点では不可能であり、また環境や生物への悪影響という点では、これらを別々に分けて考えることにほとんど意味がないことによるのではないのか。現在のようなTBTOとその他のTBT化合物とに分けた規制は、国際的な潮流に逆行するとともに環境行政として片手落ちになるのではないか。環境庁としての考え方を示されたい。また、通産省がこれらを分けて規制する「根拠」があいまいであることが明らかになったとき、環境庁としてどのように対応するか、答えられたい。

九 厚生省に問う。魚介類の汚染を通してやがて人体にもそれが跳ね返って来るという点では、TBTOもその他のTBT化合物も汚染物質として、また毒性の点で同じではないのか。TBTOだけでなくその他のTBT化合物も併せて規制すべきではないか。

十 「化審法」に基づく魚類蓄積性試験ではコイという淡水魚を用いて真水で蓄積性試験を行い、その結果からその化学物質の蓄積性について判断・評価が行われている。こうして現在、「高蓄積性」のTBTOと「中蓄積性」のその他のTBT化合物とが別々に分けて規制されている。しかるに、TBT化合物による汚染問題は海洋汚染問題である。前記の質問事項から現行の魚類蓄積性試験についても問題点が少なくはなく、明らかにされるべき点が多いことがわかるが、本質的に淡水魚の試験結果が現実の海洋汚染問題に対処する上でどの程度役に立つのか。マダイを用いた蓄積性試験では、海水からマダイへのTBTの濃縮係数が10000を超えるとの報告があり、また、実際の海域に生息する天然魚介類(スズキ)では、海水からのTBTの濃縮係数が90000であるとの報告がある。現実の海洋汚染の実態と「化審法」上の判定・評価とのズレの大きさを認めよ。そしてこのズレを埋めるために法体系について、また現実にこの問題を解決するためにそれぞれ政府としてどのように対応するか、具体的かつ明確に答えられたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一及び二について

十四種類のトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)のうち、ビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)については同化学物質を被験物質として用い、また、TBTO以外のTBT化合物十三物質については、基本的にはそれらの水中変化物である水酸化トリブチルスズを用いて、濃縮度試験が実施されている。

試験時期は、TBTOに係る濃縮度試験については昭和五十九年十月一日から昭和六十年三月二十六日までの期間であり、水酸化トリブチルスズに係る濃縮度試験については昭和六十年一月二十五日から同年三月二十六日までの期間である。

試験実施機関は、財団法人化学品検査協会である。

試験方法については、新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める命令(昭和四十九年総理府・厚生省・通商産業省令第一号)等によって定められている魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験の方法を用いており、当該方法は、経済協力開発機構(OECD)が公表している化学物質テスト・ガイドラインにも合致しているものである。

これらの試験の結果は、厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会において、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号。以下「化審法」という。)の上で、TBTOについては生物の体内に蓄積されやすいものであり、TBTO以外のTBT化合物についてはそれに該当しないものであるとの判定を受けている。なお、このような判定は、化審法の立法趣旨が、ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)による環境汚染等に類似した問題の再発を防止するものであることにかんがみ、PCBの濃縮度との比較考量によって得られたものである。

三について

一及び二についてにおいて述べたとおり、生物の体内に蓄積されやすいものであるか否かの判定は、PCBの性状との比較考量によって行われており、御指摘の濃縮倍率が一つの目安となっている。

四について

TBTO等の蓄積性については、一及び二についてにおいて述べたとおりの判定を受けている。

化学物質の人の健康への影響については、化審法上は、生物の体内に蓄積されやすいものであるか否かとは別に、当該化学物質が継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれがあるか否かの観点から判断することとされており、PCBと類似した蓄積性を示さないものであっても、継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれがある化学物質に該当する疑いのあるものについて指定化学物質として指定する等必要な措置を講じることとしている。したがって、TBTO等の蓄積性の判定が人の健康への影響を軽視した姿勢であるというようなことはない。なお、TBTO以外のTBT化合物十三物質については、既に指定化学物質に指定されているところである。

また、水酸化トリブチルスズは、他のTBT化合物から水中での変化物として生成することはあるものの、製造され、又は輸入された実績がなく、化審法に基づく既存化学物質名簿にも収載されていないため、同化学物質自体は、化審法に基づく指定化学物質に指定されていない。

五について

TBTO等の蓄積性については、一及び二についてにおいて述べたとおりの判定を受けている。

六について

TBT化合物を含有する船底塗料の取扱いについては、化審法に基づきTBT化合物を審査した省庁の判断を踏まえ対処しており、TBT化合物を含有しないもの又は低含有率のものを使用するよう指導しているところである。

七について

TBT化合物の取扱いについては、化審法を所管する省庁の判断を踏まえ対処しており、従来から、漁船の船底塗料については、TBT化合物を含有しないもの又は低含有率のものを使用するよう指導しているところである。

八について

環境中のTBT化合物の測定に当たっては、個々のTBT化合物を分離し、測定することが極めて困難であることから、生物モニタリング調査では全TBT化合物として分析しているところである。化審法上は、TBTOとその他のTBT化合物とに分けて規制しているが、その根拠は一及び二についてにおいて述べたとおりである。

九について

TBTO以外のTBT化合物については、TBTOのような高蓄積性は認められなかったものの、TBTOと同様な毒性を有する疑いがあると認められ、継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある化学物質に該当する疑いがあることから、化審法に基づき指定化学物質に指定したところである。

十について

化学物質の濃縮度試験における試験魚の設定は、多数の化学物質の濃縮度試験を順次早急に実施するとともに、蓄積性を客観的に判定するため試験条件を標準化する観点から必要なものである。経済協力開発機構(OECD)においても、淡水魚を用いた濃縮度試験の方法をテスト・ガイドラインとして公認しており、我が国においても、新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める命令等により化学物質の濃縮度試験に淡水魚であるコイを用いることとしている。

TBT化合物の海洋汚染問題については、化審法上は、既に指定化学物質に指定されているTBT化合物十三物質について、環境での残留状況や長期毒性からみて必要な場合には第二種特定化学物質に政令指定し、所要の規制措置を講じていくこととしている。また、政府としては、今後ともTBT化合物による海洋汚染状況を監視するとともに、TBT化合物を含有する船底塗料等について、その製造、使用等の面で、環境汚染を防止するためのマニュアルの普及、製品中のTBT化合物の含有率の低減、可能な限りの使用の自粛等を指導することとしている。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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