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船底塗料などに使用される有機スズ化合物に関する再質問主意書
衆議院 第116回 第12号承知していない ×4
質問本文
衆議院議長 田村 元 殿
船底塗料などに使用されている有機スズ化合物に関する再質問主意書
先に提出された「船底塗料などに使用される有機スズ化合物に関する質問主意書」に対する答弁書(以下「答弁書」という。)の中で、その答弁内容が不十分であると思われる事項等について、改めて質問する。
次の事項に、明確かつ詳細に答えられたい。
一 一九八九年十一月十五日付日本経済新聞の報道によれば、ビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)が十二月にも、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下「化審法」という。)」に定める第一種特定化学物質に指定されるという。TBTOが第一種特定化学物質となれば、その製造、輸入、使用が原則として全面的に禁止されるので、TBTOが今後も環境中に放出されることはなくなるはずであるが、他のトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)はなくならない。一方、水棲生物等に対して、TBT化合物が極めて強い毒性をもつことはよく知られているが、その毒性は(C4H9)3Sn+(以下「Bu3Sn+」とする。)の部分にある。従って、TBTOがなくなっても、他のTBT化合物が存在し、船底塗料などとして、海域などの環境中に放出され続ける限り、水中のBu3Sn+も依然として存在し続け、生物に対し、脅威となり続ける。いったい、TBTO以外のTBT化合物をこのまま“放置”し続けるのか。政府の姿勢を示されたい。
二 Laughlin et al.(1986)によれば、海水中でのTBTOは、その六〇%がトリブチルスズ=クロリド(以下「TBTCl」という。)の形で存在しているという。第一種特定化学物質として、製造、輸入、使用が全面禁止となるTBTOが、海水中ではTBTClとして六〇%が存在するならば、現在、指定化学物質となっているTBTClもTBTO同様、第一種特定化学物質に指定されるべきではないか。蓄積性の試験などに何か問題はなかったか。あるいはそうした試験におけるモデル系そのものに欠陥はないか。根拠を共に説明されたい。
注 Laughlin et al.(1986):Environ・Sci・Technol.20,201 ― 204
三 すべてのTBT化合物並びにトリフェニルスズ化合物(以下「TPT化合物」という。)の、個々の化合物毎にその生産量、輸入量、国内向け出荷量、輸出量を用途別、輸出入相手国別に詳しく答えられたい。
四 「答弁書」の中に、「TBT化合物やTPT化合物を含有する船底塗料等については、(中略)製品中のTBT化合物等の含有率の低減、可能な限りの使用の自粛等を指導しているところである。」とあるが、製品中のTBT化合物及びTPT化合物の含有率を具体的に何%以下とするよう指導しているのか。TPT化合物については当時の指導内容を、TBT化合物については現在の指導内容を、船底塗料及び漁網防汚剤の製品それぞれに対して答えられたい。また、そうした指導内容は完全に守られているものと考えてよいか。
なお、製品中のTBT化合物等の含有率について、具体的に何%以下にせよという指導がなされていない場合、その理由を答えられたい。また、その場合、実際の含有率を何%と見なせばよいか。根拠と共に示されたい。
五 我が国の船舶の総トン数について、�@種類別(例えば、ヨット・レジャーボート、漁船、観光船、観光船を除く商業用船舶など)及び�A材質別(例えば、鉄鋼製、アルミ製、FRP製など)に答えられたい。
また、このうち、有機スズ化合物を含んだ船底塗料(以下「有機スズ系船底塗料」という。)を使用している船舶はどのくらいあるか。その割合を�@�Aのそれぞれの項目別に答えられたい。なお、有機スズ系船底塗料には、モノマー系とポリマー系があるので、これらについても同時に別々に分けて示されたい。
六 政府は、我が国の周辺海域(例えば、領海内と考えてよい)を航行する船舶のうち、有機スズ系船底塗料を使用している船舶について、その全量を把握しているか。把握しているのであれば、それについて詳しく示されたい。
七 国内法では規制対象外である外航船について、日本の港に一年間に入港する総トン数を国別(即ち船籍別)、種類別、材質別に示されたい。また、同時にこれを、滞留日数別にも分けて示されたい。さらに、有機スズ系船底塗料を使用している船舶について、その占める割合についても個々の項目毎に併せて詳述せよ。
八 何らかの形で、有機スズ系船底塗料の使用が規制された場合、我が国の周辺海域を航行する、有機スズ系船底塗料を使用している船舶のうち、何割が規制の対象となるか。考えられるすべての場合について、答えられたい。
九 「答弁書」の中に、運輸省が昭和六十三年度に、東京湾の港内及び航路内の五箇所について実施したTBT化合物による汚染状況の調査結果が示されているが、調査地点である「東京湾の港内及び航路内の五箇所」とはどこか、はっきりと示されたい。即ち、調査地点の明示と各調査地点での水質及び底質の調査結果を一覧表として示されたい。示すことができない場合、それはなぜか。また、この調査における分析方法、検出限界、底質の分析値の単位は湿重量当たりか、乾重量当たりか、水質及び底質の分析値はTBTcl換算か、TBTO換算か、あるいは他のTBT化合物換算か、についても併せて示されたい。
十 フランス、イギリス、アメリカなど諸外国では、すでに、有機スズ系船底塗料などの使用禁止等の規制措置がとられている。各国の規制状況について、現在、政府が把握している内容のすべてを詳しく示されたい。また各国が、有機スズ化合物に対して設定している水質基準(淡水域・海域別)についても併せて示されたい。
十一 「答弁書」の中に「国際海事機関(IMO)の海洋環境保護委員会において、船底塗料における有機スズ化合物の使用に関する問題について検討を行っているところであり、我が国としては、同委員会における検討結果を踏まえ、今後適切に対処してまいりたい。」とある。IMOの海洋環境保護委員会における、船底塗料への有機スズ化合物の使用問題に関する検討は現在どうなっているか。詳しく報告されたい。
十二 伊奈(一九八九)によれば、ワサビの成分である「ベンジルイソチオシアネート」が海藻や貝類を寄せつけない効果をもち、有機スズ化合物の代用品になり得るという。政府はこのことをどのように受け止めているか。
また、このような、天然に存在する物質を用いて、かつ付着生物を致死させるのではなく忌避させるという発想での研究及び有機スズ化合物の代替品の開発に対し、積極的にこれを推進するべく、予算措置を講ずる考えがあるか。ない場合、その理由は何か。
注 伊奈(一九八九)中部化学連合会秋季大会講演要旨集
右質問する。
政府答弁書
一について
ビス(トリブチルスズ)=オキシド(以下「TBTO」という。)以外のトリブチルスズ化合物(以下「TBT化合物」という。)については、十三物質が化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年法律第百十七号。以下「化審法」という。)第二条第四項に規定する指定化学物質に指定されている。
TBT化合物による環境汚染の状況については、平成元年九月に環境庁が中央公害対策審議会の審議を経て発表した「昭和六十三年度生物モニタリング(トリブチルスズ化合物)結果の概要」において、「直ちに危険な状況にあるとは考えられない」とされているものの、同時に「現在のTBT化合物の使用状況を勘案すれば、本化合物に関する調査を継続することにより、今後とも環境汚染の状況を監視していくことが必要である」とされている。政府としては、今後とも、TBT化合物を含有する船底塗料等について、その製造、使用等の面で、環境の汚染を防止するためのマニュアルの普及、製品中のTBT化合物の含有率の低減、可能な限りの使用の自粛等を指導し、環境汚染状況の監視を継続するとともに、化審法上必要な場合には同法に基づく規制を行う等環境汚染対策を推進していくこととしている。
二について
化審法に基づく化学物質の試験については、その項目等が新規化学物質に係る試験及び指定化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める命令(昭和四十九年総理府・厚生省・通商産業省令第一号)等によって定められている。その内容は、厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会の審議を経て定められたものであり、経済協力開発機構(OECD)が公表している化学物質テスト・ガイドラインにも合致している。
この試験方法に基づいて実施された試験の成績に基づき、厚生省生活環境審議会及び通商産業省化学品審議会で審議した結果、トリブチルスズ=クロリドについては、昭和六十三年に化審法第二条第四項に規定する指定化学物質に該当すると判定され、一方、TBTOについては、今般、同法第二条第二項に規定する第一種特定化学物質に該当すると判定されたものである。
三について
TBT化合物及びトリフェニルスズ化合物(以下「TPT化合物」という。)の製造数量等については、先の内閣衆質一一六第一号(平成元年十月二十日付け)の答弁書の一についてにおいて述べたとおりである。
なお、TBTOを除くTBT化合物十三物質及びTPT化合物七物質を各々一括して答弁したのは、環境中での残留状況を各々一括して調査していることを勘案したものである。
四について
船底塗料や漁網防汚剤の製品中のTBT化合物及びTPT化合物(以下「TBT化合物等」という。)の含有率について、御指摘の「具体的に何パーセント以下」という指導ではなく、可能な限り抑制する旨の指導としたのは、これらの製品中のTBT化合物等の含有率が一律でなく、また、製品の基本的効能を維持しつつ製品中のTBT化合物等を低減することの可能な範囲が製品により異なることを勘案したことによるものである。
なお、最近におけるTBT化合物の製品中の含有率は、指導を踏まえ、一割程度に抑制されていると承知している。
五について
我が国の船舶の種類別及び材質別の総トン数の合計については、別表一のとおりである。
なお、有機スズ化合物を含有する船底塗料(以下「有機スズ系船底塗料」という。)を使用している船舶の種類別及び材質別の割合並びにモノマー系の有機スズ系船底塗料を使用している船舶とポリマー系の有機スズ系船底塗料を使用している船舶の割合は、把握していない。
六について
我が国の周辺海域を航行する船舶のうち有機スズ系船底塗料を使用している船舶の量については、把握していない。
七について
昭和六十三年の港湾統計によれば、我が国の港湾に入港した外航船(日本船舶であるものを含む。)の総トン数の合計は、十三億七千九百八十六万七千トンである。
なお、外航船についての船籍別、種類別、材質別及び滞留日数別の総トン数の合計並びに有機スズ系船底塗料を使用している外航船の割合については、把握していない。
八について
有機スズ系船底塗料の使用が規制された場合に、何割の船舶がその対象となるかは不明であるが、政府は、現在、有機スズ系船底塗料の使用の自粛等を指導しており、今後、汚染の状況を勘案しながら、引き続き必要な対策について検討することとしている。
九について
昭和六十三年度に東京湾において実施したTBT化合物による汚染状況の調査結果は、別表二のとおりである。
当該調査の分析方法はガスクロマトグラフ法であり、検出限界は〇・〇〇〇〇〇五PPmとなっている。また、水質の分析値はトリブチルスズ=クロリド換算したものであり、底質の分析値はトリブチルスズ=クロリド換算した乾重量当たりのものである。
十について
各国の規制状況について現在把握している内容は、別表三のとおりである。
各国の有機スズ化合物に関する水質基準の設定例については、現在のところ承知していない。
十一について
船底塗料における有機スズ化合物の使用に関する問題については、国際海事機関(IMO)海洋環境保護委員会の第二十六回会合(昭和六十三年九月五日から同月九日まで開催)において提起され、第二十七回会合(平成元年三月十三日から同月十七日まで開催)において作業計画に取り入れられた。これを受けて、第二十九回会合(平成二年三月十二日から同月十六日まで開催予定)以降議題として取り上げられることとなっている。
十二について
わさびの成分である「ベンジルイソチオシアネート」は海藻や貝類を寄せ付けない効果を有しているという報告があることは承知しているが、水中における長期安定性がない、大量生産をする手法が開発されていない等の理由から、直ちに有機スズ化合物の代替品となるものでないと理解している。
なお、付着生物の忌避等の機構に関する研究については、政府機関においても行われているところであるが、このような研究の蓄積は有機スズ化合物の代替品の開発にも資するものとなると考えている。
別表一 日本船舶の種類別及び材質別総トン数の合計
別表二 TBT化合物による東京湾の汚染状況の調査結果
別表三 海外における有機スズ化合物の規制状況
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