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シベリア抑留者に関する質問主意書
衆議院 第141回 第9号
質問本文
抑留者に関連する政府解釈が曖昧であり、懸案解決に支障がある。速やかに政府の統一見解を示す必要がある。よって、次の事項について質問する。
一 詔書渙発後敵の勢力下に入った者の身分に関する質問
大本営の終戦当時の命令文の中に「詔書渙発以後敵軍の勢力下に入りたる帝国陸軍軍人軍属を俘虜と認めず」とある。海軍にも同様の命令があった。
旧憲法下では大本営命令は天皇の命令であり、法令に相当する。よって日本では、八月十五日以降敵軍の勢力下に入った者は捕虜ではない。しかるに過去の国会における政府答弁は曖昧である。この際明確にしてもらいたい。
国内的には捕虜でないことは前述のとおりと存ずるが、対外的にはどうか。
ポツダム宣言は、日本が受け入れたことによって成立した当事国間の国際条約である。条約は、当事国間では他の国際条約に優先して適用される。したがって、シベリア抑留者もこの宣言の9項に照らして、対外的にも捕虜ではないと考える。
ポツダム宣言を受け入れて終戦となる以前に敵の勢力下に入った者は、終戦までの間は「捕虜」であるが、ポツダム宣言受け入れ後は捕虜ではない。ソ連以外の軍隊の勢力下に入った者は、捕虜の扱いを受けていない。
ソ連抑留者だけが、ソ連側に捕虜と扱われるいわれはないと考えるが、政府の明確なる見解を伺いたい。
ソ連の言うごとく、終戦は降伏文書に調印したときだとか、平和条約が締結されるときだとかいうことを肯定するのかどうか。
もしソ連の軍隊の勢力下に入った者を捕虜というなら、何時までを捕虜というのか、降伏文書に調印するまでなのか、調印後もずっと捕虜なのかについて、明確な政府の統一見解を示していただきたい。
二 日ソ共同宣言の解釈に関する質問
千九百五十六年の日ソ共同宣言の六項に、次のような条項がある。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。
日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。
この共同宣言は、特に日ソ両国の国会批准を経たもので、条約に相当する。条約の締結は国家権力の行使であり、私権を制限できる。この条項から、国家権力により個人の権利を放棄していることは明白である。どの国もそう理解するであろう。
しかるに、政府は我々に対し「国といえども個人の権利まで放棄する権限はない、だから個人の請求権はある、ただ外交保護権を放棄しているので、国として個人に協力できない」と国会において答えてきたが、国内法でも、土地収用法のごとく公益のためなら国家権力により個人の権利を制限できる法律がある。
条約は国内法に優先する。私権は制限される。この共同宣言も同様であると考えられる。この際、対外的にも通用する政府の明確なる回答をお願いしたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
昭和二十年八月十八日付けの大陸命第千三百八十五号は、「詔書渙発以後敵軍ノ勢力下ニ入リタル帝国陸軍軍人軍属ヲ俘虜ト認メス」と述べており、同月十九日付けの大海令第五十号も同旨を述べている。
この「俘虜ト認メス」ということに関しては、当時の参謀次長から発した電報には、「我方ノ国内的見解ニシテ敵側ノ見解ニヨリテ形式上俘虜タルノ取扱ヲ受クルモ帝国トシテハ道義上及軍律上共ニ俘虜トシテ取扱ハサルハ勿論自ラモ俘虜トシテ処スルノ要ナキ旨ヲ明示セラレタルモノナリ」と書かれている。
したがって、国内的には、敵の権力下に入った我が国軍人・軍属は、当時の戦陣訓等により軍人として道義上及び軍律上非難を受けるべき俘虜の取扱いを受けなかったものと考えられる。
国際法上の問題としては、敵の権力下に入った軍人・軍属は一般に捕虜として扱われ、捕虜としての待遇を受け得るものであり、ポツダム宣言受諾後に旧ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「旧ソ連邦」という。)の権力下に入った我が国軍人・軍属も捕虜としての正当な人道上の待遇を受ける権利を旧ソ連邦の権力下にある間有していたものと考える。
旧ソ連邦による当時の我が国軍人・軍属に対する不当な抑留は、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」とするポツダム宣言第九項に違反したものであったと考えるが、これをもって旧ソ連邦の権力下に入った我が国軍人・軍属が国際法上その捕虜としての待遇を受ける権利を失うものではない。
また、法的な戦争状態の終了は、一般に平和条約の締結によって行われる。我が国と旧ソ連邦との間の法的な戦争状態は、昭和三十一年十二月十二日に発効した日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言(昭和三十一年条約第二十号。以下「日ソ共同宣言」という。)により終了した。
二について
日ソ共同宣言の第六項の規定による請求権の放棄については、国家自身の請求権を除けば、いわゆる外交保護権の放棄であって、日本国民が個人として有する請求権を放棄したものではない。
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件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。