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早稲田大学探検部員殺害事件に関する再質問主意書

衆議院 第142回 第14号

提出者
衆議院
提出日
1998年3月5日
内閣転送 1998年3月9日
答弁書受領日
1998年4月10日
提出から36日
答弁の項目数
6
質問 2,215字/答弁 2,153字

質問本文

右事件についての、質問主意書の答弁書に基づき再質問をする。

一 平成九年十二月二十八日の橋本内閣総理大臣の発言の「本意は、二人の有為の青年が殺害された本件事件は本当に残念なことであり、ペルー軍の兵士が殺害したというのであればもってのほかであるとの気持ちとともに、冒険には危険が伴うため、事前に準備をしてその危険を最小限にとどめる必要があることを伝えようとしたところにあり、犠牲者の方を冒とくする趣旨ではなかった」との答弁である。右の答弁は、橋本総理の当時の気持ちではなく、外務省の担当が弁明のために、「総理の気持ち」であったとして答弁書を作成したものと思われる。何故ならば総理は、「二人の有為の青年が殺害された本件事件は本当に残念なことであり、ペルー軍の兵士が殺害したというのであればもってのほかであるとの気持ち」であったにも拘らず、この気持ちを隠して言葉に現さず橋本総理の口から出た言葉とは「被害者において、十分、事前に準備ができていたのか、冒険好きの僕からしても疑問に思う」との言葉である。総理は、右のごとき気持ちでありながらかかる発言をしたとすれば、なおのこと重大な発言であり、死者を冒とくし内心の意思を隠して死者の屍にムチ打つものである。とても容認できるものではない。質問書の時は、総理が何か勘違いがあって右のごとき発言となったのかと、善意に思いながら質問をしたところであるが、答弁書では「甚だ残念もってのほか」と怒りを覚えていたのであれば何故、素直にその気持ちを発言されなかったのであろうか、怒り同情の気持ちを持ちながら、これを隠して死者に説教を垂れるごときは、死者への冒とくそのものであって他に何と言うべきであろう。質問者としては、日本国民を守るべき日本国の総理が、犠牲になった死者に向かって「準備不足など」と発言されることは、総理の資質以上に人間性の問題であると思う。早大生の犠牲者には、何等の過失や不注意もなく、いかなる準備や完全武装をしたとしても犠牲者は、殺害されたのである。激しい怒りを覚えるのは、私一人ではない。この答弁書は総理の気持ちを聞かないで、外務省の担当が勝手に質問書を言い逃れるために作文したものであると確信しているが如何であろうか。橋本総理の率直な気持ちを答弁されたい。

二 答弁書によれば、「本件事件につき、政府は、本件事件へのペルー軍人の関与がペルー軍により確認されたのを受け、平成九年十二月二十七日、小西ペルー大使を通じ、事件の真相の究明や究明後に事件に関与した者への厳正な処罰を行うよう申し入れた。また、同月三十日、小西大使は、橋本総理大臣の意をも踏まえ、政府を代表して、ペルー政府に対し、本件事件に関与した者への厳正な処罰を改めて申し入れるとともに、「本来市民の生命と安全を守るべき立場にある軍人が集団として罪のない青年を殺害したことは極めて遺憾である」旨表明している。」と答弁しているが、十二月二十七日現在、ペルー軍人による公務執行中の犯罪であったということは、橋本総理は既に十分熟知し、小西ペルー大使を通じて真相究明と厳正処罰を申し入れたとあるとおり、そしてその翌日である十二月二十八日の総理の問題発言は、右二十七日の事実を踏まえた上での発言なのである。

総理の言葉は、「本来市民の生命と安全を守るべき立場にある軍人が集団として罪のない青年を殺害したことは極めて遺憾である」との気持ちが総理にあったにも拘らず、その気持ちを日本において記者団に対し率直に表現せずに、死者を冒とくする発言にすりかえて意思と言動が一致していないのである。質問者としては、総理問題発言は不可解の一語につきる。橋本総理は率直な気持ちを語られ、死者への弔いの気持ちを求めたい。

如何。

三 ペルー政府は、犯人達の軍籍を剥奪し軍事法廷でなく、十二月二十九日ペルー国家検察の手によって裁判所に告発したと言われている。軍人の公務執行中の犯行であるので軍事法廷で裁かれるのが通常だと思われるが、軍籍を剥奪した以上は民間人であるから、裁判所で裁かれるのが通常なのであろうか。ペルー政府は、軍籍剥奪により一般裁判所での裁判で軍人の犯行でなかった、公務執行中でない、国の行為でないと国際世論に対処するつもりなのであろうか。

日本政府としては、この対応処置についていかなる見解を持つか問う。

四 十二月三十日、小西大使はペルー政府に対し抗議を行ったが、駐ペルー大使館からの抗議の内容が、日本外務省によって変更されたとの情報もある、事実か。変更前の抗議文と変更後の抗議文を明らかにし、その変更の理由を説明されたい。

五 日本政府は、本件事件に対する予審内容の公表をペルー政府に要求しているか。

もしそれを拒否された場合、日本政府は何らかの外交的処置を講ずるつもりなのか如何。

六 補償問題については、「本件事件の事実関係の解明が進む中で検討がなされるべきものと考える」と、答弁しているが右答弁からみれば、これから一年以上その見通しが立たないのではないかと心配されるところである。補償されたとしても、御遺族の心痛を慰籍できるものではないが、本件はペルー軍人による犯行で公務執行中の犯罪であって、日本政府はペルー政府と外交交渉をするべきであり、その見通しも明らかにする責務があると思われるが右の点について答えられたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

平成九年十二月二十八日の橋本内閣総理大臣の発言は、早稲田大学学生二名の方がアマゾン川で命を落としたという知らせが入っているが、海外での身の安全についてどう考えるかとの質問に答えたものである。本発言は、正確に記録に残っているわけではないが、通信社の記者が作成したメモによると、「その話はしばらく前から情報としては確認している。本当に残念なことだ。よくわからないのは、事前に現地での安全の確保がどのように決められていたのかわからないということだ。冒険というものは危険があり、その危険は事前に準備して最小限にとどめる必要がある。それでも墜落とか転覆とか、蛇やヒルにかまれることがある。二人のいた探検部にきちんとした計画書が出ているのか、連絡がないと捜索を始めるチェックポイントがあったのか、そういうことが今までの報道からでははっきりしないので論評はできない。軍の連中が殺害したならそれはもってのほかだが、ペルーはMRTAだけではなくほかにもテロ組織があって、当然政府軍との間でぴりぴりしている。十分に事前に準備ができていたのか、冒険好きな僕からしても疑問に思う。」という趣旨のものである。

したがって、発言の本意は、二人の有為の青年が殺害された本件事件は本当に残念なことであり、ペルー共和国(以下「ペルー」という。)軍の兵士が殺害したというのであればもってのほかであるとの気持ちとともに、冒険には危険が伴うため、事前に準備をしてその危険を最小限にとどめる必要があることを伝えようとしたところにあり、犠牲者の方を冒とくする趣旨ではなかったというのが、橋本内閣総理大臣の率直な気持ちである。

二について

橋本内閣総理大臣は、平成九年十二月二十八日の時点で、本件事件へのペルー軍人の関与がペルー軍により確認されたことは承知していたが、ペルー軍人がどのように具体的に本件事件に関与したか等の本件事件の詳細については承知していなかったため、詳細なことが判明していないため論評はできないと述べた上で、御指摘の発言を行ったものである。

御指摘の発言の内容は一についてで述べたとおりであるが、その中で、橋本内閣総理大臣は、「軍の連中が殺害したならそれはもってのほか」と述べることで、「本来市民の生命と安全を守るべき立場にある軍人が集団として罪のない青年を殺害したことは極めて遺憾である」との気持ちを伝えようとしたものであり、犠牲者の方を冒とくする趣旨の発言ではなかった。

また、犠牲者の方には衷心より御冥福をお祈りしたいというのが、橋本内閣総理大臣の率直な気持ちである。この気持ちは、犠牲者の方の身元が確認されてから今日に至るまで変わりはなく、例えば、平成十年二月四日、参議院予算委員会においてもその旨発言している。

三について

ペルー憲法第百三十八条は、司法権は司法府が行使する旨規定しているが、同憲法第百三十九条では、軍事裁判は例外とする旨規定している。また、ペルー軍事裁判法は、軍事裁判の管轄となる具体的犯罪を列挙しているが、予審の対象となっていた殺人や非公務員の誘拐は軍事裁判の管轄となる具体的犯罪には含まれていない。一方、ペルー刑事訴訟法第九条は、殺人や誘拐を含む一般犯罪の予審及び裁判は一般の刑事裁判所の管轄になると規定していると承知している。

以上のとおり、本件事件に関する裁判は、ペルーの国内法制にのっとって、軍事裁判ではなく一般裁判として取り扱われているものと認識している。

四について

小西駐ペルー大使は、平成九年十二月三十日(現地時間)に声明を発表し、その中で、「今回の犯行は、冷酷であり、本来市民の生命と安全を守るべき立場にある軍人が集団として罪のない青年を殺害したことは極めて遺憾である。私は、事件に関与した者たちが適正に法の裁きを受けると確信する。」との抗議を行った。右抗議内容を決めるに当たっての外務本省と在ペルー日本国大使館との間における検討に関しては、外交関係の処理にかかわる政府部内の意思決定過程の問題であるので、答弁を差し控えさせていただきたい。

五について

ペルーにおける予審とは裁判に入る前の捜査段階の手続の一つであり、予審はペルー国内法により非公開とされていると承知している。

なお、本件事件に関するペルーでの予審の概要については、予審後公開で行われる裁判において把握することが可能であると承知している。

六について

現在、ペルーにおいては、本件事件に関する司法手続が進められ、予審は既に終了していると承知している。本司法手続終了までの所要期間については、不確定な要素もあり、現時点で確たることは申し上げられないが、これまでは迅速な対応がなされていると考えている。

また、御遺族に対する損害賠償は、基本的には当事者間の問題であると考えている。現時点においては御遺族から損害賠償の請求は行われていないが、御遺族から損害賠償の請求が行われる場合には、政府としても、必要に応じて側面的に協力していくこととしたい。

なお、ペルー政府に対しては、これまでも適切な対応を働きかけてきており、また、御遺族の考えも伝えてきたが、右に述べた点も踏まえ、引き続きしかるべく対応してまいりたい。

衆議院の原文

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