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「少年審判への検察官関与」と少年えん罪に関する質問主意書

衆議院 第147回 第35号個別の事案 ×1

提出者
衆議院
提出日
2000年5月25日
内閣転送 2000年5月29日
答弁書受領日
2000年6月2日
提出から8日
答弁の項目数
8
質問 3,301字/答弁 2,533字

質問本文

今国会に付託された少年法「改正案」は、検察官の少年審判への関与と合議制等を定めるものであるが、しかし最高裁判所(以下、最高裁)で実質的に無罪判決が出された「草加事件」のようなケースは、この「改正」法案ではまったく解決に寄与するものではない。最高裁による「草加事件」判決は、この「改正」法案とはまったく逆の教訓を示している。「草加事件」は、最初から無実を示す血液型のAB型物証があったにもかかわらず捜査機関は虚偽自白を強要し続け、さらに、この無実を裏付ける物証を検察官は家庭裁判所へ送っていない。弁護士がついた段階で物証との矛盾が判明したものだが、警察・検察側は「AとBが混じったもの」「他の機会についたもの」と証拠をねじ曲げ強弁する報告書を出す有様であり、警察・検察の証拠隠しと証拠のねじ曲げが、えん罪を生むきっかけになったものである。また「綾瀬母子殺害事件」にも自白強要の疑いと、少年のアリバイを証言した証人に対して「監禁」状態にして「アリバイ証言を撤回するよう」常識を疑う警察・検察の捜査があった。捜査側のこれらのやり方は「捜査側のための真実発見」の姿勢であり、客観的な真実発見の姿勢に欠けたものである。そのため、検察官関与の真実解明への実効性と、検察官の姿勢・能力について疑問を持たざるを得ない。よってそうした立場から以下のとおり質問するものである。

一 「草加事件」では、少年審判の抗告裁判所及び民事裁判での一、二審とも合議制がとられたが、今回の最高裁民事判決と同じように少年らの自白に疑問を呈し「無罪」判決を出したのは民事における一審判決のみで、少年審判の抗告裁判所も民事二審の東京高等裁判所という合議体も、警察・検察の主張をそのまま取り入れたことが、えん罪を生じさせたという指摘がある。こうして、無実の少年たちの貴重な時間を奪い、かつ被害者遺族に対しては、真実の解明の機会を永久に失してしまった。この事件について、捜査と取り調べに落ち度があったと認めるか。

「草加事件」のえん罪の原因は、このような虚偽自白を強い、客観的証拠を隠した捜査機関の姿勢にあるのではないか。それらを防止する制度的保障が必要ではないかと考えるが、どう考えるか。

二 捜査と取り調べが、慎重かつ十分適切に行われるためには、国選弁護と弁護人立会い・録音などといった制度的な保障が必要ではないか。また、裁判官が自白に囚われないための制度的保障が必要ではないか。それらがないまま、「検察官関与」をすれば、弁護士がついていたとしても対等な関係ではなく、えん罪を生む可能性を増大させると認識せざるをえないのではないか。

えん罪を生むきっかけとなりその最大の原因となるのは、捜査段階での虚偽自白なのではないか。少年法「改正」で問題とされる、山形や調布、草加、綾瀬での事件は全てそうではないのか。捜査段階で自白したが、審判になって虚偽自白だと主張されるので、現在の問題が生じていると思われる。少年が容易く虚偽自白をすることは各方面から指摘されている。

たとえば弁護士の分析の他、裁判官の次のような分析がある。東京家庭裁判所における一九八五年度から一九八九年度までの五年間にわたる一二七件の非行事実なしとされた裁判例を分析した下村芳晴判事補の研究によれば、「特別な要因が捜査官側と少年側双方に潜んでいるように思われる」として、少年側の問題として精神的な未熟さや脆さなどから取り調べに対しては抵抗力が弱く、捜査官が激しい取り調べをしたと意識しない程度の取り調べでも簡単に萎縮しあるいは諦め、また迎合する傾向にあることがしばしば指摘されているところである。捜査官から現場にいて他の者の行動を止めなかったのだから同罪であるとか、共同責任があるといった形で誘導や追及がされた場合に、これに安易に乗ってしまう傾向があるとしている。捜査官側の問題としては、現場にい合わせただけでその少年を安易に共犯として扱っていないか、共犯とされた者の意思連絡の有無、その具体的内容について捜査が十分に尽くされていないのではないか、実行行為を分担していない少年に対しても同罪であるとの観点から安易に少年を誘導していないか、あるいは共犯者の供述を鵜呑みにして少年に対する追及が性急になされていないか、がうかがわれると指摘している。

これを防止することこそ、今最大にして必要急務なことではないか。この防止のためには、何より当初から国費・公費による弁護人を選任することではないか。特に少年の場台、防御力が弱いので、特にこの制度が求められると思うが、この制度を設けることは考えていないか。

三 「草加事件」をここまで引きずらせた、その端緒となり最大の原因となったのは、捜査側の証拠隠しである。少年法では、全記録を送付すべき義務を検察官に課しているが、今後、このようなことのないよう再発防止策をどのように考えているか、その制度的保障について見解を示されたい。

四 「綾瀬母子殺害事件」の容疑者とされた少年によれば、当初、無関係を主張しながら、「おまえのうそは聞きたくない」などと取調官に拒絶され、「他の者はお前と一緒にやったと言っている」など虚偽の取り違え尋問をしたり、犯行現場の見取り図など捜査官から示され、捜査官の誘導のままそれを認める形で供述し、捜査官に対する「恐怖感」と、その場から逃れたい思いから認めてしまったという。少年が容易く虚偽自白をすることはよく認められているところであるが、少年事件における取り調べでは、誘導尋問とならないよう、あるいは虚偽自白を防止するため、どのような配慮がなされているか。

五 少年に対する取り調べにおいて、とってはならない取調官の態度、取り調べ方法とはなにか。少年警察活動要綱九条では、「やむを得ない場合を除き、少年と同道した保護者等その他適切と認められる者の立会いの下に行うこと」とある。この保護者等とは弁護人も該当するか。この規定は現在、どの程度、遵守されているか。草加や山形等みな保護者の立会いがない。保護者よりも本来は弁護人の立会いが必要だが、弁護人が立会いを求めても、まずほとんど拒否され、認められていない。防御力のない少年の取り調べには、弁護人の立会いが重要であると思われるが、どう考えるか。

六 少年事件の真実の解明で、警察・検察に求められる能力とはなにか。また少年事件でのえん罪を防ぐために、警察・検察に求められる姿勢とはなにか。

七 取り調べ室での様子は、英国では全会話の録音、また米国のいくつかの州では、ビデオによる録画が行われ、弁護人の立会いによる封印が行われ録音の編集を防止しているという。取り調べの密室性排除のために、少年と取調官の会話は、調書採用部分とかかわらず、ビデオ録画か録音などが行われるべきではないか。また弁護人の立会いが必要ではないか。

八 取り調べを受ける少年たちは、取り調べ期間、弁護人・付添人の選任、少年法の下での処遇、逆送年齢、刑事罰年齢などといった自分たちの権利についてどの程度理解しているか、調査を行っているか。過去十年において行われていないならば、現在、各都道府県警察、各検察において取り調べを受けている殺人、放火、強姦、強盗といった兇悪事犯について取り調べを受けている少年たちの、自らの権利の理解について報告されたい。

九 取り調べを受ける少年たちにおいては、警察官、検察官、裁判官、弁護士(付添人)の役割について理解していない者がいるという。弁護士(付添人)に、真実を話した場合も、内容が取調官に伝わり、「うそをついた」などと追及されると思い躊躇する例があるという。また、弁護士も罰を与える側であると理解する場合もあるという。取り調べや、審判に入る前に、それぞれの役割について、告知は行われているか。

十 真実の解明において、家庭裁判所調査官の役割の重要さについて認識しているか。家庭裁判所調査官は、検察官関与が定められた場合、どのような役割の変化があるのか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

御指摘のいわゆる草加事件の捜査の当否については、個別の事件の捜査の内容にかかわる事項である上、少年審判及び民事訴訟事件における裁判所の判断にかかわる事項であるので、答弁を差し控えたい。

一般論として申し上げれば、捜査当局においては、少年の特性を念頭に置きつつ、証拠の収集、収集された証拠の検討、自白の吟味等、真相解明のため必要な捜査を実施し、的確な事実認定とこれに基づく適切な処理を行うよう努めているものと承知している。

二及び七について

公的な被疑者弁護制度の導入については、司法制度改革審議会等における議論も踏まえつつ、法務省において、最高裁判所及び日本弁護士連合会との間で、同制度に関連する諸問題について議論を行っているところである。

現在の刑事訴訟の実務上、適正な取調べによって得られた被疑者の供述が事案の真相を解明する上で極めて重要な役割を果たしていることにかんがみると、取調べに際しての弁護人の立会いや取調状況の録音・録画等被疑者の取調べの在り方については、最大限二十三日間という限られた被疑者の身柄拘束期間の中で迅速に捜査を遂げて実体的真実を追求する必要があること等を考慮しつつ、広く刑事訴訟制度全体の枠組みの中で慎重に検討すべきものであると考える。

少年審判における自白の取扱いについては、家庭裁判所においては、送付された一件記録や裁判所において実施した証拠調べ等の結果を踏まえ、非行事実の有無を判断しており、その審理の過程において、自白調書の信用性についても慎重な吟味がなされているものと承知している。

少年審判への検察官の関与については、今国会において審議されている少年法等の一部を改正する法律案(以下「少年法改正法案」という。)において、一定の事件について、これを可能としているが、これは、少年審判における証拠の吟味等に関して多角的な視点を確保し、その事実認定の適正に対する国民の信頼を確保するとともに、争われる事件において裁判官と少年が対立するような状況に陥ることを回避して円滑、適正な審判の実現を図ることを目的とするものである上、検察官が関与する場合に、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人が付されることとされており、的確な事実認定に資するものと考える。

三について

書類、証拠物その他家庭裁判所の審判の参考となる資料については、少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)等の規定に基づいて、可能な限り速やかに家庭裁判所に送付されるべきものであり、捜査当局においては、今後ともその趣旨を徹底していくものと承知している。

四及び六について

少年事件の捜査においては、少年の特性を考慮し、捜査の時期、場所、方法等について慎重に配慮するとともに、成人の事件と同様、客観的な証拠の収集を十分に行い、これらの証拠に基づいて事実の存否を的確に判断することが重要であると考えている。

捜査当局においては、少年の取調べに際し、少年法の精神を踏まえ、言動に十分注意するなど、少年の特性に配意して事案の解明に当たってきたものと承知しており、例えば、本人の年齢、性格、経歴等を念頭に置きながら、無用の緊張を与えないよう配慮しつつ、その主張も十分聞くよう努めているところであると承知している。

五について

少年の取調べに際しては、四及び六についてでお答えしたとおり、少年法の精神を踏まえ、その特性に配意して事案の解明に当たることが必要であると考えている。

少年警察活動要綱(昭和三十五年警察庁次長依命通達第六号)は、第十二条第三号において、少年と面接する場合においては、やむを得ない場合を除き、少年と同道した保護者等その他適切と認められる者の立会いの下に行うこととしているが、これは、少年に無用の緊張を与えることを避け、真実の解明のための協力や事後の効果的な指導育成の効果を期待するという趣旨に基づくものである。適切と認められる者であるかどうかは、あくまで少年の保護及び監護の観点から判断されるものであり、少年を保護又は監護する者とは通常言えない弁護人を念頭に置いているものではない。また、各都道府県警察においては、少年事件の捜査等に当たっては、個別の事案に即し、この趣旨に沿って対応しているものと承知している。

捜査段階における取調べに際しての弁護人の立会いについては、二及び七についてでお答えしたとおりである。

八について

御指摘のような調査は行っていないが、御指摘のような凶悪事犯を含め、捜査当局においては、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)及び犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)の規定に基づき、成人の場合と同様、少年の取調べに際しても、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げ、また、逮捕した少年被疑者については、弁護人を選任することができる旨を告げた上で弁解の機会を与えており、さらに、これらの権利の告知に際しては、個々の少年がその内容を十分に理解できるよう、分かりやすい言葉で行うように努めているものと承知しており、自己の権利保護のために必要な事項の理解は図られているものと考えている。

九について

捜査当局においては、刑事訴訟法及び犯罪捜査規範の規定に基づき、成人の場合と同様、少年の取調べに際しても、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げ、また、逮捕した少年被疑者については、弁護人を選任することができる旨を告げた上で弁解の機会を与えており、さらに、刑事手続等についても必要に応じて告知をしている場合もあるものと承知している。また、家庭裁判所においても、審判の前までに、少年審判手続等について説明がなされていると承知している。

十について

家庭裁判所調査官は、家庭裁判所における少年等の行状、経歴、素質、環境等の調査に関し重要な役割を果たしているものと認識している。また、少年法改正法案において、一定の事件について、少年審判の非行事実認定手続への検察官の関与を可能としているが、少年法改正法案における検察官関与が実現した場合においても、家庭裁判所調査官の役割に変更はないと考えている。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

個別の事案 ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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