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我が国における条約難民の認定体制に関する質問主意書

衆議院 第154回 第195号

提出者
民主党・無所属クラブ
提出日
2002年7月31日
内閣転送 2002年7月31日
答弁書受領日
2002年8月27日
提出から27日
答弁の項目数
8
質問 1,256字/答弁 2,297字

質問本文

瀋陽事件をきっかけに、難民問題に関する国民の関心は高まっているが、我が国における、特に条約難民を対象とした認定体制については、人権政策上・外交政策上見直すべき点が多いと考える。

トルコ国籍を有するB氏(東京地方裁判所平成十三年(行ク)第百八十八号事件原告)は、我が国に対し難民の地位に関する条約、難民の地位に関する議定書所定の難民(以下「条約難民」という。)として認定するよう求めていたところであるが、最終的に政府は不認定という判断を下し、その判断に対する異議申出についても理由がないという旨の裁決がなされた(二〇〇一年十月一日)。

同氏は退去強制令書に基づく収容を受け、二〇〇二年四月二十五日に一度は放免されたものの、本日(二〇〇二年七月三十一日)、東京入国管理局に再度収容された。

しかしながら同氏については、国連難民高等弁務官事務所より条約難民であることが認められており、二〇〇二年三月十四日付けでその証明書が交付されている。国際的にも権威ある機関で条約難民として認定される者が、日本では難民として認定されていなかったわけである。

従来より日本は、条約難民の受け入れについて、認定者数・認定率ともに低く、認定に関する審査体制が不十分であることが指摘されていたが、今回の事例は、改めて日本の審査体制を早急に充実させる必要があることを明らかにしたものと考える。

従って、次の事項について質問する。

一 今回、政府の判断と正反対の結果を国連難民高等弁務官日本・韓国地域事務所が下しているが、この事実について、政府としての見解を問う。

二 通常、難民不認定者に対しては、退去強制令書とともに収容令書が発布される例が多いが、その根拠規定である「出入国管理及び難民認定法」第五十二条第五項では収容することが「できる」と定められており、必ずしも、収容が強制されているわけではない。今回、B氏を収容する理由は何か。

三 難民審査に従事する担当官の人数が少なすぎることが、十分な難民審査を行ううえで支障となっているのではないか。

四 難民審査における、難民の出身国の状況の判断資料について収集・研究の体制を充実させること、また集めた資料の公正性を担保するためにそれらを公開することが必要と考えるがどうか。

五 我が国における難民認定の審査基準を明らかにすべきと考えるがどうか。

六 国連難民高等弁務官事務所が難民であるとの判断を下し、証明書を交付した者について、出身国への送還を執行した事例はあるか。このような者は難民の地位に関する条約第三十三条による迫害国への送還禁止が適用されると考えるがどうか。

七 退去強制令書発付後のある外国人に対し、国連難民高等弁務官事務所が難民であるとの判断を下して証明書を交付した場合、これを新たな事実として、在留特別許可の可否について再吟味する必要はないか。

八 政府として、難民認定の審査体制を、今後充実させる必要性は認めるか。また、具体的に今後体制を充実する予定はあるか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)上の「難民」とは、難民の地位に関する条約(昭和五十六年条約第二十一号。以下「難民条約」という。)第一条の規定又は難民の地位に関する議定書(昭和五十七年条約第一号)第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいい、これは、国籍国を有する者の場合、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」と定義されているところ、入管法第六十一条の二が規定する難民の認定とは、当該難民認定申請者がこのような難民に該当するか否かを判断するものである。

これに対して、国際連合難民高等弁務官(以下「UNHCR」という。)が行う難民の認定は、UNHCRによる自主帰還、第三国定住、種々の物的援助等の各種保護を必要とする者をUNHCR事務所規程所定のUNHCRの権限の及ぶ対象者として認定するものであり、これは、難民条約所定の保護を与えることを目的とする難民条約締約国による難民の認定とは目的及び対象を異にする。

したがって、UNHCRが難民の認定を行った者について、入管法上の難民の認定が行われるとは、必ずしもいえないものと考える。

二について

入管法第五十二条第五項に規定する退去強制令書の執行としての収容は、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときに、同人の送還を確実に実施するため、その身柄を確保するとともに、同人の本邦における在留活動を禁止することを目的とするものである。

お尋ねのB氏についても、このような目的から収容したものであるが、右に述べた以上に収容の具体的理由と必要性を明らかにすることについては、個人の権利利益が害されるおそれ等があるため、答弁を差し控えたい。

三について

十分な難民審査を行うことができるかどうかは、担当官の数の多少のみで決まるものではないと考える。

平成十四年七月一日現在、入管法第二条第十二号の二の難民調査官に指定されている者は全国で四十四名(うち専従者四名)、難民調査官の補助に専従している入国審査官は四名である。難民の認定に関する事実の調査に従事する難民調査官は、難民認定申請者の国籍国等の人種、宗教、社会、政治等の国内情勢や日々刻々と変化する国際情勢について専門的な知識や情報を収集し、これらを十分理解することが必要であるところ、法務省においては、入国審査官の中から、このような職務を行うのにふさわしい資質を備えた者を難民調査官に指定しているところである。

政府としては、現在、難民審査に支障が生じているとは考えていないが、最近の難民認定申請数の増加傾向にもかんがみ、これに十分対応できるよう、今後とも難民認定の審査体制の充実に努めてまいりたい。

四について

難民認定申請者の国籍国等における人種、宗教、社会、政治等の諸情勢については、的確な難民認定に資するよう、難民調査官のみならず法務省入国管理局難民認定室においても、外務省や外国政府等の関係機関、一般書籍、報道、インターネット等から必要な情報を収集し、これを地方入国管理局に送付するなどしているほか、専門家を講師として招くなどして担当官に対する各種研修を開催しているところであり、今後とも的確な難民認定のためにこれら情報の収集及び分析体制の充実に努めてまいりたい。

これらの情報については、その大部分は既に公になっているものであること、公になっていないものを公開すると、関係機関等当該情報の入手先との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から、政府として公開することは考えていない。

五について

入管法第六十一条の二が規定する難民の認定とは、当該難民認定申請者が一についてで述べた難民条約の適用を受ける難民に該当するか否かを提出された証拠や各種資料等に基づいて判断するものであって、一についてで述べたところ以上に具体的な審査基準はない。

六について

UNHCRが難民であると認定し証明書を交付したことが判明した者について、退去強制手続により、国籍又は市民権の属する国への送還を執行した事例はない。

また、右の者を含め退去強制を受ける者は、入管法第五十三条第三項により、法務大臣が日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除き、難民条約第三十三条第一項に規定する領域の属する国に送還されることはない。

七について

入管法第五十条が規定する在留特別許可は、在留を希望する理由、家族状況、生活状況、素行、内外の諸情勢のほか、我が国における他の不法残留者等への影響その他諸般の事情を考慮し、人道上の観点をも踏まえて総合的に判断して個別に決定しているものであり、UNHCRが難民であると認定したことをもって、直ちにこれが在留特別許可を与える事情となるものではないことから、一般には、右認定があったからといって在留特別許可の可否を改めて検討することはしていない。

八について

難民認定の審査体制については、最近の難民認定申請数の増加傾向や難民の認定に関する事実の調査の高度化及び困難化にかんがみ、今後ともその充実に努めてまいりたい。

現時点で具体的に予定していることとしては、難民調査官等に対する専門的な知識を涵養するための研修の継続的な実施などがある。

衆議院の原文

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