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九州新幹線工事と第三セクター経営に関する質問主意書
衆議院 第154回 第50号お答えすることは困難 ×2承知していない ×3
質問本文
小沢和秋 赤嶺政賢
九州新幹線工事と第三セクター経営に関する質問主意書
現在、九州新幹線は、新八代−西鹿児島間開通に向け沿線全域で工事が進められつつある。そして、並行在来線の第三セクター化の準備も大詰めを迎えている。
平成八年十二月二十五日の政府与党合意「整備新幹線の取扱いについて」は、「建設着工する区間の並行在来線については、従来どおり、開業時にJRの経営から分離する」として、地域の通勤、通学、貨物輸送の大事な動脈を地元負担の第三セクターで経営させることとした。しかし、今日、自らの財政状況も悪化している地方自治体がこうした負担をすることは無理があり、九州でも深刻な矛盾が生じている。
また、工事の進捗にともない、沿線周辺の環境に対する影響についても懸念をよんでおり、一部地域では紛争も生じている。
そこで、次の事項について質問する。
一 南九州で新幹線建設にともなって経営分離・第三セクター化される在来線は、八代−川内間とされ、同じく並行在来線でありながらその南端部分の川内−西鹿児島間については、JRに残される。利用客が多く、利益があがる路線であるからといって、この部分だけを「飛び地」のようにJRに残し、沿線が過疎化している八代−川内間を自治体主体の第三セクターに経営させるというやり方は、鉄道路線の連続性からいっても、政府与党合意の立場から見ても不合理ではないか。また、このようなJRの「いいとこどり」は、第三セクター鉄道の経営に悪影響を及ぼしかねないのではないか。
二 八代−川内間の第三セクター化については、検討経過の中で大幅な赤字試算となったことから経営が危ぶまれたため、鹿児島県ではこれをとりやめ、バスなどによる代替輸送への切替えが検討された。これにあわてた国土交通省は、一転して「今後十年間は黒字にできる」との「支援策」を提示した。この経過は、かえって関係自治体の間に不信を広げた。鹿児島市はこれについて、「十分に信頼するに足りるものではない」と昨年十二月、「市議会だより」で第三セクター不参加を市民にも公表した。そして、鹿児島市をはじめ二市四町が鹿児島県並行在来線鉄道対策協議会から離脱した。こうした経過について、どのように受け止めているか。
三 鹿児島市が第三セクター不参加を決定した要因として、国や県の情報が充分に公開されないため、判断材料が少ないことが指摘されている。自治省の「第三セクターに関する指針」の中でも、「議会への説明・情報の開示をすること」が示されている。国が自ら改善すると共に、県やJRに対して指導すべきではないか。
四 「支援策」で従来大幅赤字だった第三セクターの経営が十年間にわたって黒字になる根拠として、運賃収入が年間一億七千万円も増収になることが示されている。これについて同省は、一般的算出方法から鉄道利用客実態調査による計算に切り替えたためと説明している。それならば、なぜ当初の試算で、実態調査による計算を採用しなかったのか。
五 農産物などの輸送に欠かせないJR貨物路線の維持のためには、電化が不可欠であるため、これがより安価なディーゼル化への選択肢を妨げ、第三セクターの採算性確保のネックとなっていた。しかし、「支援策」に基づく試算では、電気関係の設備を三セクに移すことでJR貨物から新たに使用料として一億五千万円が入り、経営上の負担が軽減されるという。それならば、なぜ当初からこの仕組みにしなかったのか。
六 「支援策」では、第三セクター運営要員の全員をJRからの出向で賄うとしている。これは、人件費の相当部分を十年間にわたりJRが負担することと思われるが、実際にどの程度の負担をする予定か。また、十年たった後には、運営要員はその人材確保、人件費負担ともにどのように賄われるのか。
七 以上のような様々な「支援策」を講じて、ようやく年間一億円の黒字にしかならないなら、第三セクター鉄道の経営は十一年目にしてすぐに赤字転落するのではないか。中、長期的見通しを含めて、具体的に示されたい。
八 「支援策」では、軌道や路盤敷その他のJR資産の取得経費を六十三億円から一挙に十億円まで引き下げ、鹿児島県の初期投資額を約半分の三十一億円まで圧縮するとしている。しかし、この試算ではこの分の償却まで見込むことはできないのではないか。
九 昨年十一月二十一日、沿線四県からなる九州新幹線建設促進期成会は「第三セクターによる経営が成り立つよう、事業用資産無償譲渡、税制上の優遇措置」を要望した。新幹線建設にともなって並行在来線が経営分離されるのは、「このままでは経営が成り立たない」とのJR側の都合も背景となっているのだから、促進期成会の要求は当然のものと考える。また、旧国鉄時代には事業用資産を第三セクターに移譲する場合、無償譲渡してきた実績もある。新幹線建設にともなって並行在来線を第三セクターに移行するなら、旧国鉄時代と同様に事業用資産は無償譲渡させるべきではないか。
十 新幹線建設に付随した駅やその周辺整備の財政負担も、自治体にとって大問題である。出水市と川内市では、新幹線駅の建設にともなう駅前広場や周辺の道路整備などの負担区分がJR、国、県、市のそれぞれの間で未だにはっきりしていない。地元自治体は負担が大きくなるのではないかとの不安をかかえているが、具体的な検討状況はどうなっているのか。自治体の負担軽減のために、どのような措置が考えられるのか。
十一 熊本県における新幹線トンネル工事では、各地の地下水脈が分断され、その補償工事やその後の維持運営費が問題になっている。国の補償基準では、こうした場合補償措置に要する経費十五年分を先渡しし、それを基金運用して得た利子で対策を講ずるとされているが、今日の低金利状況では必要な運用経費の確保がおぼつかないのではないか。また関係自治体は、新幹線工事にともなう渇水対策のための交付税措置をもとめているが、これに応ずるべきではないか。
十二 過去の新幹線建設では、路線の両側に広く側道や環境施設帯を兼ねた緑地・公園が建設され、騒音・振動被害の軽減につとめてきた。しかし、南九州地域で建設中の工区では、何らこうした措置がとられず水俣市などでは、住居にすぐ隣接して高架が建設され沿線住民の抗議をよんでいる。また、新幹線建設にともなって実施される熊本駅南口区画整理事業では、住宅の換地をわざわざ新幹線高架の際にもってきて対象住民の反対を受けるなど、住民に対する配慮が著しく欠けた事業が進められようとしている。新幹線建設について従来行われてきた環境対策が、九州新幹線建設事業で実施されないのは、明らかに不公平である。博多−熊本間の新幹線工事においては、環境施設帯等の建設はどのように図られるのか。熊本県以南の路線建設でも環境施設帯の建設などが実施されるよう、国として支援策を含めて検討すべきではないか。
十三 長崎新幹線の建設にともない、肥前山口−諌早間の並行在来線を第三セクター化することになっている。ここも現状では赤字確実といわれており、計画を再検討すべきではないか。
十四 長崎新幹線建設の総工事費は、スーパー特急方式で約四千億円といわれている。しかし、長崎県の新幹線推進室によれば「現在の博多−長崎間で最速の特急は『かもめ』で、所要一時間四十七分。新幹線は、これを若干短縮する程度」という。これでは、巨額の工事費をかけて新幹線を建設しても、沿線住民にとっては第三セクター化など新たな負担が増えこそすれ、利便性はほとんど向上しないのではないか。在来線の複線化を図り、輸送力の増強と特急の増便の方が地域経済の活性化にも好影響を与えると思われるので、計画を再検討すべきではないか。
十五 長崎県の広報紙「ながさき情報通信」三月一日号は、「長崎新幹線には一日一万五千人以上が乗車すると予測」と述べている。しかし、平成七年度の在来線の利用実績が一日八千八百人であることを考えるなら、新幹線だけでこの倍以上の利用予測はあまりに過大ではないか。過大な利用予測に基づく事業推進は、将来の莫大な赤字の要因になると考えるが、どうか。この予測の根拠について、政府はどう考えるか。具体的に示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
整備新幹線の並行在来線については、従来から、新幹線の開業時に旅客鉄道株式会社(以下「JR」という。)の経営から分離することとされており、その具体的な分離区間については、全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号。以下「法」という。)に基づく新幹線の工事実施計画の認可前に、新幹線沿線の地方公共団体とJRとが合意した上で確定されているところである。
お尋ねの九州新幹線(鹿児島ルート)新八代・西鹿児島間の並行在来線については、当該区間に係る法に基づく工事実施計画の認可前に、熊本県、鹿児島県及び九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)の三者間において、JR九州から経営を分離する区間等並行在来線の取扱いについて十分に協議した結果、鹿児島線八代・川内間をJR九州の経営から分離し、両県が中心となって設立する第三セクターにより運営することについて、合意がなされたものと承知している。
二について
御指摘の経過については、平成十三年四月に公表された熊本県及び鹿児島県が独自に行った収支試算では、鹿児島線八代・川内間を引き継ぐこととされる第三セクターは将来にわたって赤字となる見通しとされたが、国土交通省から両県に対し、JR九州からの支援措置を含めた収支試算に係る助言を行ったところ、同年八月、鹿児島県がこの助言を考慮して再度収支試算を行い、その結果について鹿児島市を含めた関係市町に対し十分に説明を行った結果、同年十一月、第三セクターによる同区間における鉄道の維持の方針が決定されるに至ったものと承知している。
三について
総務省(旧自治省)では、地方公共団体に対し平成十一年五月に「第三セクターに関する指針」を通知し、第三セクターの事業や公的関与の内容について、積極的な情報開示に努める必要があることを示して適切な対処を要請しているところである。
鹿児島線八代・川内間の第三セクターによる運営については、熊本県及び鹿児島県が中心となって対処すべき問題であり、今後、第三セクターの設立に当たり、同指針に沿って両県において適切に情報公開がなされるものと考えている。
四及び五について
お尋ねの収支試算の方法については、国土交通省から熊本県及び鹿児島県に対し助言を行った経緯はあるが、御指摘の「当初」の試算は両県が独自に行ったものであり、両県が「なぜ当初の試算で、実態調査による計算を採用しなかったのか」、「なぜ当初からこの仕組みにしなかったのか」については、承知していない。
六から八までについて
鹿児島県が再度行った収支試算においては、開業後十年間はJR九州から第三セクターに出向する職員を八十一名とし、当該職員に対する人件費について、第三セクターの負担額を一人当たり年間二百五十万円とすることとしていると承知しているが、JR九州の具体的な負担額については承知していない。また、当該収支試算において、開業後十一年目以降は、JR九州による支援を考慮していないため、赤字になると承知している。いずれにしても、開業十一年目以降の具体的な運営要員の確保及び人件費負担などの収支予測については、今後、熊本県及び鹿児島県において適切に検討がなされるものと考えている。
なお、減価償却の取扱いについても、今後、両県において第三セクターの経営計画全体の中で適切に検討がなされるものと考えている。
九について
JR九州は、旧日本国有鉄道と異なり、民営化された株式会社であることから、国がJR九州に対して、その資産の無償譲渡を求めることは適切ではないと考えられる。
なお、整備新幹線の並行在来線を第三セクターにより運営する場合には、JRから第三セクターへ譲渡される鉄道の用に供される資産について、固定資産税等で税制上の優遇措置が講ぜられている。
十について
出水市及び川内市における新幹線駅の建設に伴う駅前広場や周辺の道路の整備については、JR九州が費用の一部を負担することとなっているものと承知しており、また、国は地元地方公共団体の要望に基づき国庫補助事業によりこれらの整備を支援しているところである。
十一について
新幹線建設のトンネル工事に伴う渇水による地域住民の生活環境に係る損害に対し、日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)は、他の公共事業の場合と同様に、「公共事業に係る工事の施行に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理について」(昭和五十九年九月十九日中央用地対策連絡協議会理事会決定)により、井戸等水利施設の新設及び改造に要する費用や維持管理費の増加分等を負担することとしている。このうち、維持管理費の増加分については、費用負担対象期間(おおむね十五年間)における各年の維持管理費の増加分につき、過去一定期間の金利水準を考慮して複利現価法によって割り引いて得られた額の合計額を最初の年に一括して支払うこととしており、費用負担対象期間における維持管理費に係る財源は確保されるものと考えている。
なお、新幹線建設工事に係る損失に対する費用負担については、建設主体である公団が行うこととなっており、地方公共団体が別途費用負担する仕組みにはなっていないことから、地方交付税措置を講ずることは困難である。
十二について
新幹線鉄道の列車の走行に伴う騒音及び振動については、公団及びJR九州において、防音壁の設置やバラストマットの敷設等の騒音・振動対策を実施しているところである。
お尋ねの新幹線沿線地域の側道や緑地・公園の整備については、公団及びJR九州が騒音・振動対策として行うことは困難であるが、地方公共団体等において、必要に応じ検討されることとなるものと考えている。なお、これらの整備については、土地区画整理事業、都市公園事業等において、それぞれ補助制度が設けられている。
十三及び十四について
九州新幹線(長崎ルート)については、現在、武雄温泉・長崎間について公団から法に基づく工事実施計画の認可の申請がなされた段階であり、今後、着工するまでの間に、「整備新幹線の取扱いについて」(平成十二年十二月十八日政府・与党申合せ)に基づき、その収支採算性、投資効果等の検証を行うとともに、並行在来線の経営分離についての沿線地方公共団体の同意の取付けの確認を行うこととしている。
十五について
長崎県の広報誌「ながさき情報通信」(平成十四年三月一日号)に掲載された九州新幹線(長崎ルート)の利用予測の根拠については承知していないが、十三及び十四についてで述べたとおり、収支採算性、投資効果等の検証は、今後、着工するまでの間に検討すべき問題と考えている。
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