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九州新幹線建設に伴う文化財保護に関する質問主意書

衆議院 第151回 第54号お答えすることは困難 ×2承知していない ×1

提出者
日本共産党
提出日
2001年4月2日
内閣転送 2001年4月4日
答弁書受領日
2001年5月15日
提出から43日
答弁の項目数
12
質問 3,586字/答弁 3,920字

質問本文

小沢和秋    赤嶺政賢

九州新幹線建設に伴う文化財保護に関する質問主意書

熊本県八代市に熊本県指定無形民俗文化財「八代神社祭礼神幸行列」がある。地元では「妙見祭」の名で知られており、江戸時代のはじめから伝わる祭りで、かつては長崎県諏訪神社・福岡県筥崎宮の祭りとともに、九州三大祭りといわれる盛況を呈していた。この神幸行列は、行列の道具立てと運行を含めたすべてが文化財として、一九六〇年に熊本県指定無形民俗文化財になった。

行列の先頭から最後部までの長さは二キロメートル近くまで及び、この行列は八代市内の塩屋八幡宮から八代神社までと、八代神社から砥崎の河原までを合わせた約六キロメートルの道路をねり歩くが、行列の最終盤を分断する形で、建設予定の九州新幹線が二箇所にわたってほぼ南北に縦断していくことになる。

そこで、次の事項について質問する。

(一) 熊本県文化財保護条例第二十九条には、重要民俗文化財に関する事前協議の義務が明記され、届け出を行わず工事に着手すれば同条例違反となる。

新幹線の縦断はこの行列、すなわち無形民俗文化財の現状を変え大きな影響を与えると考えられるが、国と鉄道建設公団は新幹線の路線を決定するに際し、条例にもとづいて同県教育委員会に対し「八代神社祭礼神幸行列」の中を新幹線が通るという事前の届け出をいつ行い、いつ事前協議をしたのか。協議したのであれば、どういう結果になったのか具体的に答えられたい。

(二) 江戸時代初期から伝わる古式に則った祭りの最終場面を、新幹線高架橋が二箇所も縦断していくことになるが、文化財保護に支障をきたさないようにどのような対策を講じるのか。

(三) 文化財に指定されている行列の中に橋脚が立ち、それによって行列の運行に支障をきたすようになれば、文化財の「指定解除」となると文化庁から説明を受けた。指定文化財の保護のため最大限努力すべきなのに新幹線建設のために「指定解除」するという立場は全く本末転倒である。今後新たな区間の工事も予定されているので、事前協議を厳しく守らせることが必要ではないか。

(四) 日本考古学上の貴重な発見、優れた文化遺産の発見は、新幹線建設をはじめとする開発事業に伴う発掘調査の成果が大勢を占めているが、開発至上主義のもと、皮肉にもほとんどの遺跡が消え去っていく運命にある。一九九九年度の統計によれば、全国の埋蔵文化財緊急発掘調査の件数は六千七百七十二件あったが、建設工事等に伴う調査のため大多数が保存されることなく消滅している。開発優先の立場から、円滑化と称して発掘調査は開発の妨げとならないように迫られ、埋蔵文化財は保護ではなく「処理」されているのが実態である。

一九七五年、山陽新幹線は博多まで伸びたが、その建設工事に伴って当時の国鉄から委託を受け発掘調査を行った福岡県教育委員会は、調査報告書第一集の序文の中で、国鉄側との事前協議がきわめて不十分なまま調査を始めさせられたことを縷々つづっている。今後進められていく予定の九州新幹線建設工事に伴って発見される貴重な埋蔵文化財も、今のままでは調査終了後は消え去っていくことが懸念される。

新幹線建設工事をめぐる埋蔵文化財の取り扱いに関しては、一九六六年に鉄建公団と当時の文化財保護委員会との間で交換された「日本鉄道建設公団の事業施行に伴う埋蔵文化財包蔵地の取扱いに関する覚書」がある。九州新幹線鹿児島ルートと、同長崎ルートの路線決定に際し、国と鉄道建設公団がこの覚書にもとづいて、事前に文化庁や関係各県の文化財担当部署との間でいつどのような協議を行い、その結果はどうであったか。すべて具体的に答えられたい。

(五) 九州新幹線建設に伴う調査中及び調査予定の各々の埋蔵文化財について、調査終了後その取り扱いはどうなるのか。

また、その根拠となる協議、覚書の類はどういうものか。すべて明らかにされたい。

(六) 国と鉄道建設公団は、新幹線路線を周知の埋蔵文化財包蔵地からできるだけ避けて考えたとのことだが、埋蔵文化財はこれまで何もないと思われている所から突然発見されることが少なくない。机上で作った路線の公開後に発掘調査の日程だけを協議して「協議済み」というのであれば、前記の覚書や「鉄道建設等に伴う史跡、名勝、天然記念物及び埋蔵文化財包蔵地等の保護について」の趣旨が守られているとは考えられない。文化財行政側とはほとんど協議もなく路線が決定され、公表されているのが実状ではないか。

(七) 発掘調査の過程で予想もされなかった遺物・遺構の発見がされた場合、特に史跡指定級のものが発見された場合、路線の変更も検討しなければならないことが起こりうる。どのように調整するのか。路線を決定する段階から文化財行政側の意見を十分に聞くことが必要ではないか。

(八) 新幹線建設工事に伴う発掘調査の委託契約書に、「発掘調査を行う教育委員会は、鉄建公団が行う九州新幹線建設工事と工事工程に支障のないよう努めるものとする」という条文がある。発掘調査は埋蔵文化財という性質上、調査途中で状況も変わりうるが、この委託契約書のように終了期限を定められた調査では、文化財行政側はとにかく調査を早く終わらせることが課題となり、保存が必要と考えられる重要な発見があっても、文化財行政側から保存の声を出せないのではないか。

(九) 調査終了を急がされ十分な時間のない中での発掘調査では、現場での十分な検討もできないまま調査作業が進み、重要な所見を見落とすことにもつながりかねない。現場で十分な検討が加えられないまま作業が進められてしまえば、後で疑問点を解決しようとしても記録した写真や図だけでは不可能となる。

十分な調査期間を保障するためにも、また、場合によっては遺跡の保存も考慮して、前記の発掘調査委託契約書の中から、「工事と工事工程に支障のないように」という条文は削除すべきであり、むしろ保存についての協議項目を追加すべきではないのか。

(十) 事業認定が行われてしまえば早期完成が優先され、このままでは文化財行政側の実態は発掘調査の早期終了が優先課題となる。文化庁の通知「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化について」の基本的事項を踏まえ、十分な試掘、場合によっては本調査の結果を待って路線の決定をすることも考えるべきではないか。

(十一) 新規着工予定の博多〜船小屋間は、路線決定に際し文化財保護の観点からの協議が不十分であり、路線の位置の見直しが必要である。財源上の問題も大きい。拙速な着工は止めるべきではないか。

また今後予定されている長崎ルートについても、今のままでは文化財保護の観点が抜け落ちたまま事業が始められることが懸念される。事前に文化財行政側の十分な調査結果を待って、路線の位置を再度検討し直すべきではないか。

(十二) 新幹線建設工事に伴う発掘調査事業費は「原因者負担の原則」により、事業者である鉄道建設公団が全額負担しているが、これは文化財保護法のどこにも明記されておらず、国の予算措置の考え方にすぎない。文化財保護の立場から強い指導力を発揮させるため、少なくとも国や国の機関が行う事業に伴う発掘調査は、文化財保護を主管する文化庁が、自ら予算を計上し事業主体となるべきではないか。

(十三) 発掘調査は本来文化財保護の目的で行うものであり、遺跡破壊の免罪符ではないはずである。調査を建設工事等の工程の一部ではなく文化財保護のために行う以上、国は保護したものについて正確に把握しているはずだ。発掘調査の終わった全国の埋蔵文化財が、どのような形態で保存されているか正確に把握するため、国は具体的にどのような手を打っているのか。

また、直近から過去十年間、国や国の機関が行った公共事業に伴う発掘調査の結果、保存された埋蔵文化財の状況はどのようなものか、具体的に答えられたい。

(十四) 文化財行政側と鉄道建設公団や道路公団等の開発事業者側との間での埋蔵文化財をめぐる協議結果には、しばしば「その取り扱いは記録保存とする」と書かれている覚書が存在する。しかし、遺跡を写真や実測図などの色々な手段を使っても、記録して保存するなどということは理論的にもありえない概念で、現実には遺跡はどこにも保存されない。文化財保護法のどこにも「記録保存」という言葉はなく、開発等事業を円滑に進めるためにつくりだされた行政上の造語にすぎない。それによって文化財行政側は結果的に遺跡破壊を容認しており、「記録保存」の考え方は撤回すべきではないのか。遺跡はそれ自身が立地している場所に保存されてこそ真の保存である。形のある埋蔵文化財がなぜ記録によって保存できるのか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

(一)について

御指摘の熊本県指定無形民俗文化財「八代神社祭礼神幸行列」は、熊本県指定重要無形民俗文化財「妙見宮祭礼神幸行列」(以下「行列」という。)のことであると考えられるが、行列は、無形の民俗文化財であるため、有形の民俗文化財である県指定重要民俗文化財について規定した熊本県文化財保護条例(昭和五十一年熊本県条例第四十八号)第二十九条第一項の規定は適用されないことから、日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)は、同項の規定に基づく届出を行っていない。なお、同項には、事前協議に関する規定はない。

(二)について

御指摘の新幹線高架橋は、行列が通る道路をまたぐ構造となっており、その道路面からの高さについては行列の通行に十分な高さが確保されること等、現在、公団と八代市教育委員会との間で祭の進行に支障を来すことがないようにするべく話合いが行われているところである。

(三)について

(一)についてで述べたとおり、熊本県文化財保護条例には、無形の民俗文化財について事前協議を義務付ける規定はない。

なお、国及び地方公共団体は、文化財が我が国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであることを認識し、その保存が適切に行われるよう努めなければならないものであり、各地方公共団体の文化財保護条例等に基づき指定された文化財の保存については、当該地方公共団体が、条例等に基づき適切に対処すべきものと考える。

(四)について

昭和四十一年四月一日に文化財保護委員会と公団との間で取り交わされた「日本鉄道建設公団の事業施行に伴う埋蔵文化財包蔵地の取扱いに関する覚書」(以下「覚書」という。)においては、公団の事業に関係のある埋蔵文化財包蔵地(以下「包蔵地」という。)の取扱いについて、事業が実施される前に公団が文化財保護委員会(現在では、都道府県教育委員会)に協議することとされており、路線の確定後の当該協議において、包蔵地は(イ)事業地区に含めないもの、(ロ)事業地区に含めるが保存を図るもの及び(ハ)埋蔵文化財の発掘調査(以下「発掘調査」という。)を行って記録を残すものの三種類に区分して取り扱われている。

公団は、九州新幹線(鹿児島ルート)については、鹿児島県教育委員会とは平成四年から平成十二年までの間に、熊本県教育委員会とは平成四年から現在に至るまで、福岡県教育委員会とは平成十年から現在に至るまで、覚書に基づく協議を行っており、その結果、現在までのところ、(イ)又は(ロ)に該当する包蔵地はなく、(ハ)に該当する包蔵地については、工事の着手前に発掘調査を行い、記録を残すこととしたところである。

なお、九州新幹線(長崎ルート)については、いまだ路線の確定には至っていないが、今後、路線が確定し公団が事業を実施する場合には、覚書に基づき、当該事業の実施前に、公団と長崎県教育委員会及び佐賀県教育委員会との間で包蔵地の取扱いについて協議が行われることとなる。

(五)について

九州新幹線(鹿児島ルート)の建設に伴う発掘調査は、覚書に基づき公団が熊本県及び鹿児島県に委託して実施しているが、公団と両県との間の埋蔵文化財包蔵地発掘調査委託契約(以下「委託契約」という。)に基づき、発掘又は発見された出土品については、公団に代わって両県により、法令上の諸手続が執られ、適切に保管されることとなる。さらに、両県は、受託業務が完了したときは、発掘調査報告書を公団に提出するとともに、公団に代わって同報告書を両県の教育委員会に提出することとされているため、調査終了後の埋蔵文化財の記録についても適切に保存されることとなる。

また、両県の教育委員会は、文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号。以下「法」という。)第五十七条の三第四項及び第九十九条第一項第六号の規定に基づく勧告として、公団に対し、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、その保存について別途両県の教育委員会と協議するよう、あらかじめ通知しており、重要な遺跡の保存については、公団が関係する県教育委員会と協議して定めることとなる。

(六)及び(七)について

新幹線の路線が確定されるに当たっては、公団はその候補ルート上の土地につき事前に文献等により埋蔵文化財の分布状況を調査して、新幹線建設が包蔵地に与える影響を評価し、その結果について地元自治体及び地元住民の意見を十分に聴取した上で、できる限り包蔵地を避けて候補ルートを選定するよう配慮しているところである。

なお、路線の確定後であっても、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、(五)についてで述べたとおり、公団は、関係する都道府県教育委員会と必要に応じ路線の変更も含めて協議を行うこととなる。

(八)及び(九)について

委託契約は単年度契約であり、そこでは発掘調査の期間は年度末までとされているが、仮に調査期間が不足する場合には、次年度以降に改めて委託契約を締結し、発掘調査を継続することが可能である。

また、委託契約における受託者たる熊本県及び鹿児島県は、現地における埋蔵文化財発掘の専門的知見を有する者として、九州新幹線建設に伴う事前の発掘調査を円滑に行い、公団に代わって出土品についての法令上の諸手続の実施や発掘調査報告書の提出等を行うものであり、行政上の立場とは異なることから、委託契約に遺跡の保存についての協議項目を定めることはなじまない。

一方、熊本県教育委員会及び鹿児島県教育委員会は、(五)についてで述べたとおり、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、その保存について別途協議するよう、あらかじめ公団に対して通知している。

このように、両県の教育委員会は、法令に基づき、埋蔵文化財の保護上必要な措置を採ることができることとされている。

(十)について

(六)及び(七)についてで述べたとおり、新幹線の路線が確定されるに当たっては、公団は事前に文献等により、埋蔵文化財の分布状況を調査し、できる限り包蔵地を避けて候補ルートを選定するよう配慮しているところである。

一方、新幹線建設に伴う発掘調査については、土地の大幅な形質変更をもたらすことから、通常、当該土地の買収が必要となるが、限りある財源の有効利用を図る観点から、路線の確定後、事業用地の範囲を確定した上で、当該用地において実施することが現実的であり、路線の確定前に発掘調査を行うことは困難であると考えている。

なお、発掘調査の結果、重要な遺跡が発見された場合には、(六)及び(七)についてで述べた協議を行うこととなる。

(十一)について

九州新幹線博多・船小屋間については、本年四月二十五日に同区間を含む博多・新八代間の工事実施計画が認可され、同区間の路線が確定したところであり、今後は(四)についてで述べたとおり、公団は佐賀県教育委員会及び福岡県教育委員会と包蔵地の取扱いについて協議を行うこととなる。また同区間の着工は、平成十二年十二月十八日の政府・与党申合せに基づき、安定的な財源見通しを確保した上で行われているものであり、拙速な着工ではない。

また、九州新幹線(長崎ルート)については、現在その候補ルートについて、地元自治体及び地元住民の意見等を踏まえ、最終的な検討を行っているところである。

(十二)について

埋蔵文化財は、貴重な国民的財産であり、可能な限り現状で保存することが望ましいものである。しかしながら、開発事業によりやむを得ず現状のまま保存できない場合には、少なくとも当該埋蔵文化財の記録を保存するため、法令に基づき、当該埋蔵文化財の現状による保存を不可能とする原因となった開発事業の事業者に対し発掘調査の実施を指示し、その発掘調査の経費についても、当該開発事業が個人の住宅建設である場合等を除いて、当該事業者に負担を求めることとなっている。

このことは、事業者が国の機関等である場合も同様であり、文化庁が自ら予算を計上し発掘調査の事業主体となることは考えていない。

(十三)について

文化庁では、毎年度、都道府県等の教育委員会が発掘により文化財を発見した場合の法第五十九条第二項の規定による通知及び都道府県等の教育委員会が行う法第六十一条第一項の規定に基づく出土文化財の鑑査についての事務処理状況の調査を通じて、埋蔵文化財の保存状態を把握しているが、このうち国の機関が行った公共事業に伴う発掘調査の結果、保存された埋蔵文化財のみを対象とした調査はしておらず、お尋ねの状況については把握していない。

なお、平成十二年十二月、都道府県教育委員会の担当者に対し、都道府県における埋蔵文化財調査体制と遺跡の実態に関するアンケート調査を実施し、その中で、平成五年以降、国の機関が行った公共事業に伴う発掘調査の結果により保存された遺跡についても記入を依頼したところであり、現在、取りまとめ中である。

(十四)について

全国には膨大な数の埋蔵文化財包蔵地が存在しており、また、土地の利用関係と密接に関係していることから、すべての埋蔵文化財を現状で保存することは現実的に困難である。このため、やむを得ず現状のまま保存できない場合には事前の発掘調査を行い、その埋蔵文化財が有している歴史的・文化的意義を明らかにし、遺構を中心にその記録を作成して、出土遺物とともに将来のために保存しているところである。

なお、法においても、第五十七条の二第二項で、発掘調査による「埋蔵文化財の記録の作成」が定められているところである。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×2承知していない ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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