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第一六六国会に政府が提出した労働契約法案に関する質問主意書
衆議院 第166回 第180号承知していない ×4個別の事案 ×1
質問本文
第一六六国会に政府が提出した労働契約法案に関してお尋ねする。
一 第一条(目的)について
第一六六国会に政府が提出した労働契約法案(以下「法案」という)の第一条の文言と、労働政策審議会労働条件分科会の平成一九年二月二日付厚生労働大臣宛答申の対象とされた労働契約法案要綱(以下「法案要綱」という)の第一の文言とを対比したとき、次の傍線を付した部分に相違がある。
【法案要綱】
第一 目的
この法律は、労働契約の成立及び変更等に関する基本的な事項を定めることにより、労働者及び使用者が円滑に労働契約の内容を自主的に決定することができるようにするとともに、労働者の保護を図り、もって個別の労働関係の安定に資することを目的とすること。
【法案】
(目的)
第一条 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係等を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
そこで、法案第一条の趣旨と意味内容を確認するため、以下の1ないし6のとおり質問する。
1 法案の第一条の傍線部分の文言の意味内容と法案要綱の第一の傍線部分の文言の意味内容とは同一か。
2 (前掲1項に関して「意味内容が同一である」というなら)なぜ、法案要綱の文言を変更する必要があるのか。
3 法案第一条の文言に関して、「合意の原則」と「労働契約と就業規則の関係」との関係について、労働契約の内容が「合意の原則」に基づかずに決定される場合があるとの解釈(具体的には、�@「合意の原則」と「労働契約と就業規則の関係」とは並列・対等な関係にある、又は、�A「労働契約と就業規則の関係」については「合意の原則」に含まれない、又は、�B「労働契約と就業規則の関係」については「合意の原則」に含まれない場合がある等の解釈)がなされる可能性はないか。
4 日本の法律の中に、契約内容が法律、労働協約、就業規則の最低基準効、又は、当事者間の合意のいずれにも基づかずに決定されることを肯定するものは、存在するか。存在するならば、当該条文を摘示されたい。
5 日本の大学教員であるか又は大学教員であった民法学者の著作の中に、契約の内容が法律、労働協約、就業規則の最低基準効、又は、当事者間の合意のいずれにも基づかずに決定される場合のあることを肯定するものは、存在するか。あるならば、著者名、著作名、該当箇所を摘示されたい。
6 法案第一条の全体の趣旨に関して、「従来、日本の契約制度においては、『合意原則』が支配し、『契約内容が法律、労働協約、就業規則の最低基準効、又は、当事者間の合意のいずれにも基づかずに決定されることはない』との考え方をとってきたが、労働契約法の制定によって、労働契約に関しては『合意原則』に修正が加えられ、労働契約法に『労働契約と就業規則との関係』に関する条項が創設されたことにより、契約の一方当事者である使用者が、労働者の合意を得ることなく一方的に制定する就業規則によって、労働契約内容を一方的に決定することを、法律によって可能とした。」と解釈される可能性があるのではないか。
二 第四条(労働契約の内容の理解の促進)について
法案第四条の文言と法案要綱第三の二の文言とを対比したとき、次の傍線を付した部分に相違がある。
【法案要綱】
第三 労働契約に関する原則等
二 使用者は、労働者に提示する労働条件及び締結された労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとすること。
【法案】
(労働契約の内容の理解の促進)
第四条 使用者は、労働者に提示する労働条件及び締結し、又は変更した後の労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
そこで、法案第四条の趣旨と意味内容を確認するため、以下の1ないし6のとおり質問する。
1 法案第四条の傍線部分の文言の意味内容と法案要綱第三の二の傍線部分の文言の意味内容とは同一か。
2 (前掲1項の質問に関して、「意味内容は同一である」というのであれば、)なぜ、法案第四条に「又は変更した後の」という文言を加える必要があるのか。
3 法案要綱第三の二にある「締結された労働契約の内容」との文言の意味内容は、「使用者と労働者の意思の合致(黙示の合意も含む)のあった労働契約の内容」というものではないか。
4 法案第四条にある「変更した後の労働契約の内容」との文言の意味内容に関して、「使用者と労働者の意思の合致(黙示の合意も含む)のあった労働契約の内容」だけに限定されず、「使用者と労働者との間で意思の合致がなく、使用者が一方的に契約内容を変更した場合における、変更後の労働契約の内容」をも含むと解釈される可能性はないか。
5 (前掲4項の質問に関して、法案にある「変更した後の労働契約の内容」との文言の意味内容に関して、「使用者と労働者との間で意思の合致がなく、使用者が一方的に労働契約内容を変更した場合における、変更後の労働契約の内容をも含む趣旨である」というのであれば、)労働政策審議会の答申した法案要綱の内容と異なる内容を新たに盛り込んだ理由、必要性は何か。
6 法案第四条の全体の趣旨に関して、「使用者は、労働者の理解を得ることなく、一方的に就業規則変更によって労働条件変更を行うことができ、労働条件変更をした後に労働者の理解を得られるように努力すれば足りる。それなるが故に、法案第四条では『使用者は、…………変更した後の労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。』との条文が設けられた。」と解釈される可能性があるのではないか。
三 第五条(労働者の安全への配慮)について
法案第五条の文言と法案要綱第三の五の文言とを対比したとき、次の傍線を付した部分に相違がある。
【法案要綱】
第三 労働契約に関する原則等
五 使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、労働契約に伴い必要な配慮をするものとするものとすること。
【法案】
(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約により、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
そこで、法案第五条の趣旨と意味内容を確認するため、以下の1ないし6のとおり質問する。
1 法案第五条の傍線部分の文言の意味内容と法案要綱第三の五の傍線部分の文言の意味内容とは同一か。
2 (前掲1項の質問に関して、「意味内容は同一である」というのであれば、)なぜ、法案第五条の文言を「労働契約により」とする必要があるのか。
3 法案要綱の「労働契約に伴い」という文言の意味内容は、「使用者と労働者の間で労働契約が締結される際に安全への配慮に関する合意が存在しなかったり、契約書等に安全への配慮に関する明文規定が存在しない場合であっても、使用者と労働者での労働契約の締結それ自体を原因として、使用者は労働契約に伴う信義則上の義務(民法第一条二項)として安全への配慮をするものとする」と解されるが、いかがか。
4 法案第五条の「労働契約により」という文言の意味内容に関して、「使用者が安全への配慮をするべき根拠」に関して、「使用者と労働者との間の労働契約の締結」だけでは足りず、「配慮に関する労働契約上の合意」を必要とする趣旨であるとの解釈がなされる可能性はないか。
5 (前掲4項の質問に関して、「法案の「労働契約により」という文言は「使用者が安全への配慮をするべき根拠」として「安全への配慮に関する労働契約上の合意」を必要とする趣旨である」というのであれば、)労働政策審議会の答申した法案要綱の内容と異なる内容を新たに盛り込んだ理由、必要性は何か。
6 法案第五条の全体の趣旨に関して、「労働契約法に基づき使用者が、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるように必要な配慮をする義務を負うのは、労働契約上に当該配慮に関する当事者間の合意が存在する場合に限られる。」と解釈される可能性があるのではないか。
四 第七条(労働契約の内容と就業規則との関係)について
法案第七条の文言と法案要綱第四の一(二)の文言とを対比したとき、次の傍線を付した部分に相違がある。
【法案要綱】
第四 労働契約の成立及び変更
一 労働契約の成立
(二) 使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則の労働条件によるものとするものとすること。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意した部分については、三(一)に該当する場合を除き、この限りでないものとすること。
【法案】
(労働契約の内容と就業規則との関係)
第七条 使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
そこで、法案第七条の趣旨と意味内容を確認するため、以下の1ないし7のとおり質問する。
1 法案第七条の傍線部分の文言の意味内容と法案要綱第四の一(二)の傍線部分の文言の意味内容は同一か。
2 (前掲1項の質問に関して、「意味内容は同一である」というのであれば、)なぜ、法案第七条の文言を「周知させた」とする必要があるのか。
3 法案要綱にある「周知させていた場合」の意味内容について、「既に就業規則が存在しており、既にこれが周知されていた場合」を意味し、「新たに就業規則が制定されてこれの周知がなされた場合」については含まないと解されるが、いかがか。
4 法案第七条にある「周知させた場合」の意味内容に関して、「既に就業規則が存在して既にこれが周知されていた場合」に限定されず、「新たに就業規則が制定されてこれの周知がなされた場合」をも含む趣旨であるとの解釈がなされる可能性はないか。
5 (前掲4項に関して、法案の「周知させた場合」の意味内容について、「新たに就業規則が制定されてこれの周知がなされた場合をも含む趣旨である」というのであれば)労働政策審議会の答申した法案要綱の内容と異なる内容を新たに盛り込んだ理由、必要性は何か。
6 これまでに就業規則に関する判例が多数集積されてきているが、これらの判例が対象としている事案は、すべて、就業規則が既に存在している事業場において、就業規則が変更されたか、又は、就業規則の性質を持つ新たな規則が制定された事案ではないか。また、過去の判例の中に、就業規則が存在していなかった事業場において新たに就業規則が制定されこの新たに制定された就業規則の定める労働条件が従来の労働条件を不利益に変更する事案に関するものは存在しないのではないか。もし、かかる判例が存在するというのであれば、摘示されたい。
7 法案第七条の全体の趣旨に関して、「労働者数が十人未満であって就業規則作成義務がなく就業規則が作成されていなかった事業場において、使用者は、従前の労働契約が定める労働条件を切り下げるために、新たに就業規則を制定してこれを周知させる方法をとることができ、この場合、新たに制定された就業規則が合理的な労働条件を定めているのであれば、従前の労働契約の内容は、新たに制定された就業規則の定める労働条件に変更される。労働者数が十人以上であり、就業規則作成義務があるにもかかわらず、就業規則を作成していなかった事業場においても同様である。」と解釈される可能性があるのではないか。
五 第十四条(出向)について
法案第十四条二項には、「前項の『出向』とは、使用者が、その使用する労働者との間の労働契約に基づく関係を継続すること、第三者が当該労働者を使用すること及び当該第三者が当該労働者に対して負うこととなる義務の範囲について定める契約(以下この項において『出向契約』という。)を第三者との間で締結し、労働者が、当該出向契約に基づき、当該使用者との間の労働契約に基づく関係を継続しつつ、当該第三者との間の労働契約に基づく関係の下に、当該第三者に使用されて労働に従事することをいう。」とあるので、この条項の趣旨と意味内容に関して、以下の1ないし9のとおり質問する。
1 従来の労働法学説及び判例が扱ってきた「出向」の概念においては、出向元が業として第三者に労働者を出向させること、すなわち、労働者を出向させることにより出向元が出向先から経済的利益を得ることは想定していなかったのではないか。
2 法案の「出向」の定義では、出向の概念として、出向元が業として第三者に労働者を出向させることを含むと解されるが、いかがか。
3 法案第十四条二項と職業安定法との関係に関して、「法案第十四条二項の定める『出向』の定義と、職業安定法第四条六項の定める『労働者供給』の定義(供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法に規定する労働者派遣に該当するものを含まない)とは異なっているから、法案第十四条二項の定める『出向』の中には、それが業として行われるものであっても、必ずしも総てが職業安定法第四条六項の『労働者供給』に該当せず、同法第四十四条による禁止の対象とはならないものがある。」との解釈がなされる可能性があるのではないか。
4 法案第十四条二項でいう「(労働者と)当該第三者との間の労働契約」に関して、その成立要件が法文上記載されていないが、この「(労働者と)当該第三者との間の労働契約」なるものは、労働者と当該第三者との間での労働契約締結の合意によって成立するのか。それとも、労働者と当該第三者との間で労働契約を締結させる合意がなくとも、「(労働者と)当該第三者との間の労働契約」が成立するのか。
5 (前掲4項に関して、もしも仮に、労働者と当該第三者との間で労働契約を締結させる合意がなくとも、「当該第三者との間の労働契約」が成立する場合のあることを肯定するのであれば)かかる契約の成立原因は何か。
6 労働政策審議会労働条件分科会では、「在籍出向」の定義について、議論がなされていなかったのではないか。
7 出向を巡る判例の中に、法案第十四条二項の規定と同様の「出向」の定義を行った例はあるか。あれば、具体的に摘示されたい。
8 出向を巡る学説の中に、法案第十四条二項の規定と同様の「出向」の定義を行った例はあるか。あれば、具体的に摘示されたい。
9 今日、客観的には労働者派遣であるにもかかわらず、労働者派遣法による規制を免れるため、請負や業務委託を装う『偽装請負』『偽装委託』が横行していることは周知の事実である。法案第十四条二項は、『偽装請負』『偽装委託』以外に新たに『偽装出向』の手口を広めるのではないかと危惧される。かかる事態を防ぐためには、少なくとも、出向の定義の中に「業として行うものを除く」旨を明記する必要がある。にもかかわらず、法案第十四条二項に「業として行うものを除く」との文言を入れていない理由は何か。
六 第十七条(「第四章 期間の定めのある労働契約」関係)について
法案第十七条の文言と民法第六百二十八条の文言とを対比したとき、次の傍線を付した部分に相違がある。
【民法】
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
【法案】
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
そこで、法案第十七条の趣旨と意味内容を確認するため、以下の1ないし6のとおり質問する。
1 雇用期間の定めのある労働契約が締結された労働者を使用者が雇用期間途中で解雇しようとする場合において、民法第六百二十八条の傍線部分の意味内容と法案第十七条の意味内容とは同一か。
2 (前掲1項に関して、意味内容が同一であるとすれば)なぜ、敢えて、法案第十七条を設ける必要があるのか。
3 民法第六百二十八条に基づき使用者が雇用期間の定めのある労働者を期間途中で解雇しようとする場合、条文にある「解除をすることができる」という法的効果により利益を受けるのは使用者であるから、その法的効果を生じさせる要件たる「やむを得ない事由がある」ことについての証明責任は使用者が負うと解されるが如何か。なお、ここでいう証明責任とは、訴訟手続で当事者が裁判所に証拠を提出する責任を意味するのではなく、ある事実の存在について裁判官がグレー(存否不明)の心証形成の場合において当事者が受ける敗訴の危険や負担を意味するものとする。
4 法案第十七条に基づき使用者が雇用期間の定めのある労働者を期間途中で解雇しようとする場合、条文にある「労働者を解雇することができない」という法的効果により利益を受けるのは労働者であるから、この法的効果を生じさせる「やむを得ない事由がない」ことについて証明責任を負うのは労働者であるとの解釈がなされる可能性はないか。
5 (前掲4項に関して、「やむを得ない事由がない」ことについて証明責任を負うのは労働者であるとの解釈が肯定される場合)法案第十七条は民法第六百二十八条の特例を定め、証明責任分配を労働者に不利に逆転させたものであるとの解釈がなされる可能性はないか。
6 民法第六百二十八条の法的性質に関して、判例学説の一部には、使用者側からの契約解除及び労働者側からの契約解除のいずれに関しても任意規定(当事者間の契約で法律の規定とは異なる別の内容の契約を締結することが可能であり、その場合には、当事者の合意によって適用を排除することが可能な法律上の規定)であると解するものが存在する。
民法第六百二十八条に関するかかる解釈の余地を排除し、民法の特例法たる労働契約法によって、使用者からの契約解除(解雇)については強行法規(当事者間の合意によって適用を排除することができない法律上の規定)であることを条文上明快に定め、かつ「やむを得ない事由」の存在について使用者が証明責任を負うことについても条文上明快に定めるのであれば、条文は「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。ただし、やむを得ない事由がある場合にはこの限りでない。」とされるべきである。
右のように趣旨が明快な条文を採用せず、任意規定か強行法規かが曖昧であり、また、証明責任分配に疑義のある条文を敢えて採用した理由は何か。
七 法案の全体の構造について
1 使用者の労働契約上の権利に関して、使用者がその権利の行使を濫用してはならないことについては、民法第一条三項で定められており、法案の第十四条一項(出向)、第十五条(懲戒)に関する権利濫用無効の条項は、民法第一条三項による従前の規制に新たに何らかの規制を加えたものではなく、従前の民法第一条三項に基づく規制の内容を具体的に再確認し、使用者に注意を喚起する条項にすぎないと解させるが、かかる解釈で宜しいか。
2 法案の中に、使用者の労働契約上の権利の発生又は行使を規制する条項は、権利濫用に関する条項以外には存在しないのではないか。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
意味するところは、同一であるものと考える。
一の2について
本年三月十三日に国会に提出した労働契約法案(以下「法案」という。)の第一条においては、「労働契約の成立及び変更」について規定している法案第二章の内容をより分かりやすく示すことが適当であると考えたことから、「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係」という文言にしたものである。
一の3について
御指摘の法案第一条の文言は、法案第二章の内容を表しているものであることから、同条の当該文言が同章の規定の解釈に影響を与えるものではなく、労働契約の内容については、同章の規定に沿った解釈がなされるものと考える。
一の4について
御指摘の「契約内容が法律、労働協約、就業規則の最低基準効、又は、当事者間の合意のいずれにも基づかずに決定されること」の意義が必ずしも明らかでないが、契約の一方当事者が法律上認められた形成権を行使することにより、契約内容が変更されることがあると承知しており、例えば、借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十二条の規定により建物の借賃増減請求権を行使した場合がこれに該当するものと考える。
一の5について
御指摘の事項については、承知していない。
一の6について
法案第一条の「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係」という文言に関しては、一の3についてで述べたとおりであり、法案第二章は、判例法理に沿った内容であることから、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。
二の1について
意味するところは、同一であるものと考える。
二の2について
労働契約は、その締結後に労働契約の内容が変更されることもあり得るが、労働契約の内容が変更された場合であっても、その変更された内容について労働者の理解を深めることが重要である。しかしながら、「締結された労働契約の内容」という文言では、締結の際に理解を深めればよく、変更後の労働契約については理解を深める必要がないと誤解されるおそれがあると考えたことから、法案第四条第一項においては、「締結し、又は変更した後の労働契約の内容」という文言を用いたものである。
二の3から5までについて
本年一月二十五日に厚生労働大臣が労働政策審議会に対し諮問した労働契約法案要綱(以下「諮問要綱」という。)の第三の二における御指摘の文言については、法案第六条及び第八条の規定により合意によって決定された労働契約の内容のほか、法案第七条及び第十条によって決定された労働契約の内容も含むものであり、法案第四条と内容が異なるものではない。
二の6について
労働契約の内容の変更については、法案第八条から第十条までの規定が適用されるものであって、法案第四条はそれらの規定の特例を定めたものではないため、同条が法案第八条から第十条までの規定の解釈に影響を与えるものではなく、法案第四条の規定により、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。
三の1について
意味するところは、同一であるものと考える。
三の2について
法案第五条は、判例を参考に、使用者は、労働契約に基づいてその本来の債務として賃金支払義務を負うほか、労働契約に特段の根拠規定がなくとも、労働契約に付随して当然に安全配慮責任を負うことを規定したものであり、これを示す表現として、「労働契約により」という文言を用いるものである。これについては、諮問要綱第三の五においても、同様の趣旨により「労働契約に伴い」という文言を用いていたところであるが、「労働契約に伴い」では、その意味するところが適切に表現できていないと考えたことから、「労働契約により」という文言を用いることとしたものである。
三の3から6までについて
諮問要綱の「労働契約に伴い」という文言の意味内容については、御指摘のとおりである。また、法案第五条に規定する使用者の安全配慮責任の根拠としては、「使用者と労働者との間の労働契約の締結」のみで足り、「配慮に関する労働契約上の合意」を必要とするものではないと考えており、諮問要綱と内容が異なるものではない。したがって、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。
四の1について
意味するところは、同一であるものと考える。
四の2について
諮問要綱第四の一の(二)における「就業規則を労働者に周知させていた場合」という文言では、いつの時点から「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」という効果が生ずるのかが定かでなく、法案第七条においては、法的効果が発生する時点を明確にする必要があるため、「就業規則を労働者に周知させた場合」という文言に改めたものである。
四の3から5までについて
諮問要綱第四の一の(二)における「就業規則を労働者に周知させていた場合」という文言を用いた場合には、どの時点から「労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」という法的効果が生じるのかについては明らかでないものの、新たに就業規則が制定されて、その周知がなされた場合も含まれると考える。
また、法案における御指摘の文言についても、新たに就業規則が制定されて、その周知がなされた場合も含む趣旨であり、法案において新たな内容を盛り込んだものではない。
四の6について
御指摘の事案に関する判例の存在については、承知していない。
四の7について
就業規則の制定前に労働者の労働契約の内容が何によって決定されていたのかは、個別具体的に判断されるものであり、慣行によって一律に労働条件が決まっていた場合もあれば、個別に労働者及び使用者が合意して労働条件を決定していた場合もあるものと考えられ、これらの場合にも法案第七条の規定は適用されるものである。
この場合において、法案第七条本文と同条ただし書とのいずれが適用されることになるのかは、個別具体的な事情に照らして判断されるものであるが、御指摘の「従前の労働契約が定める労働条件を切り下げる」場合であっても、同条ただし書により労働者及び使用者の合意が優先されるときもあるものと考えるため、当然に御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。
五の1について
従来の労働法学説及び判例による「出向」の概念において、労働者を出向させることにより出向元が出向先から経済的利益を得ることについて議論したものについては、承知していない。
五の2、3及び9について
法案第十四条第二項に規定する「出向」を使用者が労働者に命じ、労働者を第三者に使用させて労働に従事させることは、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)第四条第六項に規定する「労働者供給」に含まれると考える。
したがって、出向が使用者により業として行われる場合には、職業安定法第四十四条が適用され、禁止されることから、出向の定義から業として行われるものを除く必要はないと考える。
五の4及び5について
法案第十四条第二項の規定は、出向について、出向元である使用者、出向先である第三者及び出向する労働者の三者間の関係を定義したものであり、「(労働者と)第三者との間の労働契約」の成立要件を規定しているものではなく、いかなる場合に成立するのかに関しては、事案ごとに個別に判断されるものであると考える。
五の6について
労働政策審議会労働条件分科会においては、「在籍出向」の定義自体についての具体的な議論はなされておらず、従来の労働法学説及び判例上の概念としての「在籍出向」を念頭に置いて議論がなされたものと認識している。
五の7及び8について
出向をめぐる学説及び判例において、法案第十四条第二項と全く同様の「出向」の定義を示した例については承知していないが、出向は、「出向元会社の従業員である身分を保有しながら、すなわち休職という形のまま、出向先会社で勤務する雇傭状態であって、指揮命令権の帰属者を変更すること」とした最高裁昭和四十八年十月十九日第二小法廷判決や、「出向は、甲企業における従業員としての地位を保持したまま、乙企業においてその労務に従事させる人事異動」であり、「それを実現するためには、まず甲企業と乙企業において甲企業の従業員の出向・転籍を乙企業が受け入れること(および受入の仕方)についての合意(受入契約の締結)を必要とする」(菅野和夫著「労働法第七版」)とした学説が存在することは承知しているところであり、法案においては、できる限り多くの出向について同条第一項の権利濫用法理の保護の対象とする趣旨から、出向を定義したものである。
六の1及び2について
民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百二十八条において、契約期間途中であっても「やむを得ない事由」があるときは直ちに契約の解除をすることができる旨が定められているところであるが、契約期間の満了前の解雇事由を労働契約においてあらかじめ定めていた場合に、当該解雇事由に基づく解雇を有効に行うことができるのか否かは、裁判例においてもその判断は必ずしも統一されていなかったものと承知している。
また、期間の定めのある労働契約について、契約期間の満了前の解雇をめぐる紛争を未然に防止する必要があることから、法案第十七条第一項において「やむを得ない事由がないとき」の取扱いを明確にすることとしたものである。
六の3から6までについて
法案第十七条第一項は、「解雇することができない」旨を規定したものに過ぎないものであり、解雇の根拠自体を定めた規定ではないことから、使用者がその契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇しようとする場合においては、民法第六百二十八条がその根拠規定になるものであり、「やむを得ない事由がある」ことに関する証明責任は、使用者が負うものと解している。
したがって、今般、法案第十七条第一項を設けたとしても、使用者が解雇を行う場合には、民法第六百二十八条は、従来どおり、解雇という効果を生じさせるための根拠規定となるものであり、そうした効果を生じさせるための要件である「やむを得ない事由がある」ことについての証明責任の分担に変更を加えるものではないと考えており、御指摘のような解釈がなされるおそれはないものと考える。
また、法案第十七条第一項を設けることによって、「やむを得ない事由」の証明責任の分担に変更を加えるものではないことから、御指摘のような条文とする必要はないと考える。
七の1について
法案第十四条及び第十五条は、出向の命令及び懲戒について、それらを使用者が行うことができる場合であっても、民法第一条第三項と同様に権利の濫用が許されないことを明らかにするとともに、権利の濫用に該当するか否かの判断に当たっての考慮要素を示すことにより、使用者が権利の濫用に該当する出向の命令及び懲戒を行うことを未然に防止し、もって出向の命令及び懲戒に係る紛争の未然防止等に資するようにするための規定である。
七の2について
御指摘の「使用者の労働契約上の権利の発生又は行使を規制する条項」が何を想定しているのか必ずしも定かでないが、法案第九条等は、使用者の合理的な行動を促すこととなると考える。
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件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。