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医師不足問題に関する質問主意書
衆議院 第166回 第186号お答えすることは困難 ×1承知していない ×3
質問本文
大学病院の医師不足、地方病院からの医師の引き揚げ、産科、小児科の医師不足に拍車がかかり、離島、へき地における医療の過疎化は歯止めがかからない。医師不足による病院等の廃院や診療科の閉鎖が相次ぎ深刻な問題となっている。
国においては、医師不足は何故起こったのか、医師不足による病院医療を疲弊させているこれらの問題の本質的な原因は何か、そもそも日本の医療の方向性に誤りはないのか、その原因の究明と検証と根本的な対策が求められている。
従って、以下の事項について質問したい。
一 医師の勤務実態に関する質問
1 北海道大学が、二〇〇四年に行った道内の三〇病院を対象とした調査では、産科医の年間当直回数は平均一二三回、宿直明けの休みを取る病院はゼロということである。これより規模の小さい病院や地理的条件が悪く医師の少ない病院の現状はもっと過酷である。
また、社団法人日本病院会の「勤務医に関する意識調査」では、病院に勤務する医師の九六パーセントが法定時間の週四〇時間を超えて働いている過酷な労働実態が明らかになっている。同調査では、週四八時間以上働いている医師は七割で、週五六時間以上働いている医師は四割を超えている。夜間当直をする医師は七二パーセントで、月三回から四回が四一パーセント、五回以上は一七パーセントという結果である。
医師の七割以上が「過剰な業務のために慢性的に疲労している」、六割以上が「患者が多く一人あたりの診療時間、密度が不足がち」と答えている。しかも多くの医師は、医療ミスの原因として「慢性的疲労」を挙げているとのことである。
この調査は、全国二五三五病院を対象に行い、五三六病院の五六三五人の医師から回答を得てまとめたということである。
更に、日本医労連が、二五都道府県の一五〇の医療機関を対象に行った調査では、勤務医の九五・八パーセントが、月に三回八時間勤務に続いて一六時間の宿直勤務を経て、更に通常の勤務に入る三二時間勤務にある実態が明らかにされた。
週の勤務時間は六五時間以上が三二・七パーセントと三分の一に達し、休日を入れずに続けて勤務する日数の平均は一九・五日で、睡眠時間も休みもとれない「超長時間労働」が常態化している。このような勤務医の過酷な労働実態に対する政府の見解を問う。
2 日本の医療は、医師数が少ないなかで、医師をはじめ医療従事者の使命感と「犠牲的献身」、過重・過酷な勤務により担われており、小児科、産科等の深刻な医師不足の原因にもなっている。勤務医の勤務体制については、�@時間外労働を含め一日の労働時間が長過ぎる�A宿日直の多さと宿直前後の勤務、仮眠もとれない宿日直とは言えない労働実態�B「オンコール」や「呼び出し」などと呼ばれる「拘束」「当番」体制である�C毎日の休憩時間や休日、年休などの休みがとれないとの指摘がある。これに対する政府の見解を問う。
3 各種の調査結果で明らかなように、大学病院をはじめとする病院の勤務医は、過労死寸前の過酷な労働を強いられている。この問題を解決するためには、医療の進歩、高度化に伴う業務量の増大に応じて医師の養成増を早急に行い、勤務医を増やし労働時間、勤務条件の改善を図り医師の業務の負担を軽減するとともに、医療安全の確保の観点からも労働環境を整備すべきではないのか。
特に労働時間については、週四八時間、更には週四〇時間の労働時間を保障できる体制を確立することが緊急の課題ではないのか。併せて政府の見解を伺いたい。
4 厚生労働省が二〇〇五年一一月に行った勤務医師の労働状況調査では、病院常勤医師の週平均労働時間は、六三・三時間で最大一五二・五時間、うち男性医師は、六三・八時間、女性医師六〇・六時間で、有床診療所医師は五四・四時間、無床診療所医師は五〇時間となっている。また小児科医一〇名以上を有する小児科拠点病院二七病院の調査では、時間外勤務は月七〇時間、最大二〇〇時間、宿直、夜勤は平均四・五回で、最大月一〇回となっている。勤務医師の労働実態を改善するためには継続的な労働状況調査を行い、対策を講じていく必要があると考えるが、今後の実態調査の予定について示されたい。
5 大学病院をはじめとする病院の勤務医師の週平均の労働時間、宿直回数、休日の取得状況などの労働実態調査を実施していれば、その最新の調査結果を詳細に明らかにされたい。更にその中で、小児科医及び産科医の労働実態についても、併せて明らかにされたい。
6 小児科医及び産科医不足の問題が深刻化しているが、厚生労働省の調査において、勤務医の小児科医及び産科医数(常勤医師・非常勤医師)は、五年前、一〇年前と比べて現在どのような状況になっているのか、その実態を都道府県別に明らかにされたい。
7 病院及び診療所における小児科及び産科の閉鎖並びに休止が増加しつつあると言われているが、厚生労働省の調査において、現在、閉鎖・休止の状況が五年前、一〇年前と比べてどのようになっているのか、都道府県別(病院及び診療所)にその件数を明らかにされたい。
8 小児科及び産科医の不足並びに病院及び診療所の閉鎖、休止の原因について、政府の認識を詳細に伺いたい。
二 医師の需給見通しに関する質問
1 日本は、医療施設で実際に働く医師数は約二五万九千人で、人口一〇〇〇人当たりで二.〇人、OECD加盟国三〇カ国のなかで、二七位という水準である。フランスやドイツと比べて一八万人、OECD平均と比較しても一四万人も医師が少ない。
OECD加盟国の平均医師数は人口一〇万人当たりでみると二九〇人なのに、二〇〇四年の日本の平均医師数は二一一人である。都道府県別でみても、最も多いところで徳島県の二八二人、最低は埼玉県の一三四人である。千葉、茨城県は一五〇人台、神奈川、岐阜、静岡、新潟、福島、青森、岩手県は一七〇人台である。
厚生労働省の調査でも、常勤の医師が医療法に基づく配置基準を満たしている病院は三五パーセントに過ぎない。
政府は、OECD諸国と比べて、「国土の規模、医療提供体制の仕組みが異なる」旨を述べ、医師数のみでは測れないと言う。しかし、諸国との医療提供体制等の事情が異なるとは言え、先進国のなかで日本の医師数が少ないというのは現実である。にもかかわらず政府は、医師が毎年三五〇〇人から四〇〇〇人増加しているので、それで十分だという理由と根拠は何か。
2 「医師の需給に関する検討会報告書」(二〇〇六年七月)によれば、「平成三四年(二〇二二年)に需要と供給が均衡し、マクロ的には必要な医師数は供給されるという結果になった」との見通しを述べている。二〇二二年に「均衡」に達するとの理由と根拠を詳細に説明されたい。
3 政府は二〇二二年には需給が「均衡」に達するので、現在、医師が不足していても医師の数を、これ以上増やす必要がないという認識なのか。
4 医師の不足数については、調査に基づく推計による将来の医師の需給バランスによるのではなく、医師の過酷、過重な勤務実態調査を踏まえるとともに、医師の勤務を週四八時間、更には四〇時間体制にした場合の不足数も含めて、病院等からあげられたものを積み上げて算出すべきではないのか。
5 当該報告書によれば、一六万四千人の医師について、診察時間のみならず休憩時間や自己研修、研究といった時間も含む医療施設に滞在する時間全てを労働時間と考え、これを週四八時間まで短縮すると、医師の不足は五万五千人になると推計している。これを週四〇時間に短縮すると、医師の不足は何人か。
6 大学病院をはじめ病院に勤務する一六万四千人の医師が、仮に診察を行っている時間のみを労働時間とした場合、これを週四八時間に短縮すると、医師の不足は何人か。また、週四〇時間に短縮すると、医師の不足は何人になるのか。
三 医師不足の原因に関する質問
1 政府は、医師不足の原因が医師の「偏在」にあるという立場をとっているが、「偏在」だということの理由と根拠を詳細に説明されたい。
2 政府は、医師不足の原因が「偏在」にあるというのであれば、当然のこととして「偏在」に係る一定の基準を基にして、それを満たしている地域、そうでない地域を区分していると考えるが、その基準を明らかにされたい。
3 政府は、医師不足の原因が「偏在」にあるというのであれば、「偏在」の実態を地域毎に具体的に示していただきたい。すなわち、2で言う基準を満たしている地域はどこか、基準を満たしていない地域はどこなのかを、都道府県及び市町村別に明らかにされたい。
4 一九九七年六月に閣議決定した「財政構造改革の推進について」では、「医療については、国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内とするとの基本方針を堅持し、今後、医療提供体制及び医療保険制度の両面にわたる抜本的構造改革を総合的かつ段階的に実施する」とし、その上で、「医療提供体制について、大学医学部の整理・合理化も視野に入れつつ、引き続き、医学部定員の削減に取り組む」と述べている。かかる政府の決定に医師不足の根本原因がある。各種調査結果から見ても明らかなように、医師不足の本質的原因は、もはや政府の言うように医師の「偏在」ではなく、医師の絶対数の不足にあり、医師を増やすしか解決の方途はないと考えるが、政府の見解を問う。
四 新医師確保総合対策に関する質問
1 政府は、医師の不足を「偏在」にあるとしているが、医師の「偏在」をどのような対策で解決するのか明確にされたい。また、政府は平成一八年八月三一日に新医師確保総合対策を発表した。この対策によって、医師の「偏在」は根本的に解決すると考えているのか、また、新医師確保総合対策の基本的な考え方も併せて伺いたい。
2 新医師確保総合対策のなかで、特に重要視し緊急に取り組む対策として「小児科・産科をはじめ急性期の医療をチームで担う拠点病院づくり」を打ち出し、そのために都道府県での病院の集約化・重点化を一層推進するとしている。
そこで、同対策に基づき都道府県において集約化・重点化計画の策定及び集約化・重点化が現に進められているところ、すでに集約化・重点化が完了したところなど進捗状況を明らかにされたい(都道府県別)。
3 すでに拠点病院を中心に集約化・重点化した地域があるとすれば、その地域では、小児科医、産科医をはじめとする医師不足問題は解消されたのか、その実例を紹介されたい。
4 新医師確保総合対策は、あくまで緊急対策で小児科医及び産科医をはじめとする医師不足問題を根本的に解決するものではない。政府は、小児科、産科をはじめとする医師不足を解決するために、緊急対策とともにどのような抜本的な対策を考えているのか。
5 新医師確保総合対策を進める場合、国が、都道府県や医師会等と緊密に連携し地域の実状を踏まえて主導的に実施していかなければ進展しないのではないか、政府の見解を伺いたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1から3までについて
病院の勤務医の勤務状況については、宿直・夜勤後に継続して日中に勤務する場合もあるなど、大変厳しいものであると認識しており、医療安全の確保の観点からも、こうした状況を改善していくことは重要と考えている。
政府としては、平成十八年八月に厚生労働省、総務省及び文部科学省で構成する「地域医療に関する関係省庁連絡会議」が取りまとめた「新医師確保総合対策」(以下「新医師確保総合対策」という。)に基づいて、一定の条件の下に医師養成数の暫定的な増加を容認するとともに、急性期の医療をチームで担う拠点病院作りの推進や、病院間や病院と診療所との間の連携の強化を促すための取組を進めるなど、病院の勤務医の負担を軽減し、その勤務環境を改善するための様々な対策を講じているところである。
一の4について
厚生労働省としては、同省医政局長の私的検討会である「医師の需給に関する検討会」(以下「検討会」という。)の委員が行った医師の勤務状況調査(以下「勤務状況調査」という。)等により、必要に応じて、適宜病院の勤務医の労働実態を把握しているところであり、現時点において、御指摘の「継続的な労働状況調査」を行う考えはない。
一の5について
お尋ねについては、勤務状況調査により把握している限りでお答えすると、病院の常勤医師の一週間当たりの勤務時間は、自己研修や休憩に充てた時間も含め実際に病院に滞在した時間としては、平均六十三時間であり、自己研修や休憩に充てた時間を除いて病院に滞在した時間としては、平均四十八時間であった。
一の6について
お尋ねについては、厚生労働省において「医師・歯科医師・薬剤師調査」を二年ごとに実施しており、その結果を同省のホームページに掲載している。なお、都道府県別の常勤・非常勤別の小児科の勤務医及び産科の勤務医の数については、把握していない。
一の7及び8について
お尋ねの小児科又は産科の閉鎖又は休止の件数については把握していないが、厚生労働省において三年ごとに実施している「医療施設静態調査」によれば、平成十一年以降の調査の結果を見ると、小児科又は産科を標榜する病院又は診療所は減少傾向にある。なお、同調査の結果は同省のホームページに掲載している。
また、「医師・歯科医師・薬剤師調査」によれば、平成十年以降の調査の結果を見ると、小児科については、医師総数及び小児数当たりの医師数は増加し、産科については、医師総数は減少傾向にあるが、出生数当たりの医師数は横ばいとなっている。
こうした傾向の原因については、病院の勤務医が厳しい勤務環境に置かれていること、産科医療における訴訟件数の増加が懸念されていること、出生数の減少による少子化等の様々なものが考えられる。
二の1及び3並びに三の4について
政府としては、医師の総数が毎年増加していること及び平成十八年七月に検討会が取りまとめた「医師の需給に関する検討会報告書」(以下「報告書」という。)を踏まえると、医師の需給の不均衡は解消の方向に向かうものと認識しているが、医師が地域間で偏在していることにより、一部の地域において医師の不足が深刻となっている現下の状況にかんがみ、新医師確保総合対策に基づき、医師の地域間の偏在に対応するための様々な対策を講じているところである。
二の2について
御指摘の報告書における見通しについては、医師の需要については、病院の勤務医の勤務時間の上限を週四十八時間とした上で過去からの変化を基礎として推計した将来の外来受療率等を用いて推計し、医師の供給については、現在の医学部入学定員を基礎として推計した結果に基づくものである。
二の4について
検討会においては、勤務状況調査の結果を踏まえて医師の需給の見通しを作成しており、勤務実態を踏まえた推計となっているものと考えている。
二の5及び6について
お尋ねの医師の不足数については、御指摘の推計が検討会の委員によりなされたものであり、政府として十分な資料を有していないため、その推計作業に膨大な時間を要すること等から、お答えすることは困難である。
三の1から3までについて
平成十六年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」に基づき、人口十万人当たりの医師数について都道府県別で比較すると、東北等では医師数が少ない県が相対的に多い一方で、四国、九州等では医師数が多い県が相対的に多い状況にあり、また、各都道府県内でみても、県庁所在地等を含む二次医療圏では医師数が相対的に多い一方で、山間部等を含む二次医療圏では医師数が相対的に少ない状況にある。厚生労働省としては、このような状況を踏まえ、地域間で医師が偏在している状況にあると認識しているものであり、御指摘のような「基準」を定めているものではない。
四の1及び4について
新医師確保総合対策は、医師の地域間及び診療科間の偏在に対応するため、緊急的に取り組む対策を中心に、制度創設等の中期的検討事項も併せて取りまとめたものである。政府としては、同対策に基づき、医師の偏在の問題に対応するため、一の1から3までについてで述べたような様々な対策を講ずるとともに、医療事故に係る死因究明制度の創設について検討を進める等、総合的な対策を講じているところである。
四の2及び3について
平成十九年三月三十一日時点において、御指摘の医療資源の集約化・重点化計画を策定しているのは、小児科については、秋田県、兵庫県、島根県、大分県及び宮崎県の五県であり、産科については、秋田県、兵庫県、島根県及び大分県の四県であると承知しているが、これらの県における当該計画に基づく集約化・重点化の実施状況及びその他の都道府県における集約化・重点化の取組状況については現時点では把握していない。
四の5について
新医師確保総合対策に基づく取組を推進するに当たっては、国と都道府県が協力して、地域の医療関係者の理解を得ながら、地域の実情に応じた対策を講じていくことが必要と考えている。このため、厚生労働省としては、医療関係団体の代表者等を構成員とする「地域医療支援中央会議」を同省に設置したところであり、同会議を通じて、地域医療の確保に関する好事例の紹介や、都道府県が抱える問題に対する改善策の提示等を行うこととしている。
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