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有明海漁業と干拓地農業の共存・有明海再生に関する質問主意書
衆議院 第171回 第111号お答えすることは困難 ×2承知していない ×1
質問本文
有明海漁業と干拓農地における営農を真に両立させ、国営諫早湾干拓事業によって、「死の海」と化す危機に瀕している、「宝の海」有明海を再生させるために可及的速やかに潮受堤防の南北の排水門を開門することは喫緊の課題である。
しかるに、有明海異変の原因を不明のままに終わらせたい農林水産省は、何としても潮受堤防の排水門を開門させまいと様々な口実を挙げているが、その一つとして、開門した場合、潮受堤防の防災機能が発揮できなくなる旨、主張している。
従って、ここでは防災問題について以下質問したい。
一 農林水産省は潮受堤防の南北の排水門を常時開門した場合、潮受堤防の防災機能が十分に発揮できなくなると考えているようであるが、ここでいう潮受堤防の防災機能の中身を具体的に明らかにされたい。
二 農林水産省は、おそらく、潮受堤防の排水門を常時開門すると調整池の水位を標高マイナス一メートルに保つことが不可能になるため、�@諫早市街地の河川洪水防止効果に支障をきたす、�A諫早湾周辺低平地(背後地)の常時の自然排水ができなくなるとともに、洪水時の湛水被害も防止することができなくなる、�B海水が入るため潮受堤防内側にガタ土が堆積して周辺地域からの排水の支障となり、ちょっとした雨でも一帯が水浸しとなるので、以前のように人力でガタ土を排除しなければならなくなると考えていると思われるが、上記以外に、常時開門により発揮できなくなる防災機能はあるのか。あるとすれば具体的に明らかにされたい。
三 農林水産省は、潮受堤防の排水門を常時開門すると、上記�@に挙げたように、諫早市街地の河川洪水防止効果に支障をきたすと主張するが、調整池の水位を標高マイナス一メートルとなるように管理することにより、本明川河口から三.五キロメートル以上上流の諫早市街地における洪水対策としても機能すると考える根拠と理由を明らかにされたい。
四 諫早市役所が発行した『諫早水害誌』では、「河口潮位を色々に変えてQ=一四五〇m3/secを使用し、不等流計算により洪水面を追跡したところ、いずれの場合も大体二キロメートル付近で一定の水位に収斂することが分った」とされている。つまり、本明川河口が満潮でも干潮でも、河口から二キロメートルさかのぼると、洪水の水位は潮位と無関係になるという計算結果が出ているが、農林水産省は、この『諫早水害誌』の記述についてはどのように考えているのか。この計算結果等が正しくないと考えるのであれば、その具体的な根拠と理由を明らかにされたい。
五 国土交通省は、調整池のマイナス一メートル管理には諫早市街地の河川洪水防止効果があると考えているのか。効果があるというのであれば、具体的根拠と理由を明らかにされたい。
また、効果がないというのであれば、諫早市街地の河川洪水を防止するためには何が必要であると考えているのか明らかにされたい。
六 農林水産省は、潮受堤防の排水門を常時開門すると、上記�Aに挙げたように、諫早湾周辺低平地(背後地)の常時の自然排水ができなくなると考えていると思われるが、そのように考える根拠と理由を明らかにされたい。
常時、つまり降雨が日常的なもの程度であれば、農作物の湛水被害もないはずであるから、これを急いで排水する必要はないと考えられる。常時(平常時)においても背後地のための調整池のマイナス一メートル管理をしなければならないとする具体的根拠と理由を明らかにされたい。
七 農林水産省は、潮受堤防の排水門を常時開門すると、上記�Aに挙げたように、諫早湾周辺低平地(背後地)の洪水時の湛水被害も防止することができなくなると主張するが、潮受堤防の閉め切り後も、諫早湾周辺低平地においては以下のような湛水被害が発生している。
具体的には、一九九七年五月(浸水面積は一五七ヘクタール)、同年六月(九八ヘクタール)、同年七月(一二〇〇ヘクタール)、同年八月(五六〇ヘクタール)、同年一一月(一一三ヘクタール)、一九九九年六月(五〇ヘクタール)、同年七月(四三五ヘクタール)、同年八月(二二ヘクタール)、同年九月(一一五九ヘクタール)、同年九月(七三ヘクタール)、二〇〇一年七月(一一三一ヘクタール)、二〇〇四年五月(四一ヘクタール)、二〇〇五年九月(六ヘクタール)、二〇〇六年四月(一〇四ヘクタール)、同年六月(五九九ヘクタール)、同年八月(一ヘクタール)、二〇〇七年七月(二五〇ヘクタール)という状況である。
農林水産省は、この事実について把握しているのか。
八 潮受堤防の閉め切り前の一九八二年から一九九六年の一五年間の湛水被害は七回であったにもかかわらず、潮受堤防の閉め切り後の一九九七年と一九九九年には各々五回の湛水被害が発生し、実に一一年間に一七回の湛水被害が発生している。
農林水産省は、潮受堤防閉め切り後に、これだけの湛水被害が生じたのは何が原因であると考えているのか。
九 諫早湾周辺低平地(背後地)において、現在、排水機場はどのくらい設置されているのか。各排水機場が設置された時期、場所(設置箇所)、排水能力について明らかにされたい。
十 現在のように、調整池のマイナス一メートルを管理する場合、農林水産省は、常時(平常時)には、背後地の排水のために全く排水ポンプは必要ないと考えているのか。もし、その場合でも排水ポンプは必要であるとすれば、どの程度のポンプ容量の排水ポンプが必要であると考えているのか、具体的な根拠を示して答えられたい。
十一 潮受堤防の排水門を常時開門した場合、農林水産省は、常時排水のために、どの程度のポンプ容量の排水ポンプが新たに必要になると考えているのか、具体的な根拠を示して答えられたい。
十二 現在のように、調整池のマイナス一メートル管理をする場合、農林水産省は、非常時(諫早大水害級の降雨量を前提とした場合)の背後地の湛水被害を防止するために、今後、背後地に排水機場を設置する予定はあるのか。あるとすれば、どの場所(設置箇所)に、どのくらいの排水能力を備えた排水機場を何台くらい設置する予定であるのか、また、どのような根拠に基づいて、そのような算定をしたのか具体的に明らかにされたい。
十三 潮受堤防の排水門を常時開門した場合、農林水産省は、非常時(諫早大水害級の降雨量を前提とした場合)における背後地の湛水被害を防止するために、どの程度のポンプ容量の排水ポンプが新たに必要になると考えているのか。普段、調整池のマイナス一メートル管理をする場合(十二項の場合)と比較して、排水ポンプ容量を増やさなければならないと考えているのか。そのように考えているのであれば、その具体的な根拠を示して答えられたい。
十四 潮受堤防閉め切り前の一五年間には七回だった湛水被害が、潮受堤防閉め切り後には、一一年間に一七回も湛水被害が発生したことからすると、潮受堤防の存在(開門したとしても南北排水門からしか排水できない)が、背後地の常時排水不良対策としてはマイナスに作用したとも考えられる。最近こそ湛水被害は少なくなったが、それは排水路の整備や排水ポンプの増設の効果であると考えられることから、結局、潮受堤防の存在を前提とした背後地の湛水被害対策としては、豪雨が調整池に流れ込んでいて、かつ、満潮に向かって海側の潮位が調整池よりも高くなると予想される場合は閉門するなど開門操作をしつつ、排水機場を増設して強制排水するほかないのではないか、つまり、前述したような一定の例外的場合以外は、潮受堤防を常時開門しても何ら支障はないと考えられるがどうか。
このような考えに対して、農林水産省の見解を伺いたい。この考えに異論があるとすれば、その根拠を明確に示して答えられたい。
十五 農林水産省は、潮受堤防を常時開門すると、上記�Bに挙げたように、潮受堤防内側にガタ土が堆積して周辺地域からの排水の支障になると主張するが、佐賀県を始めとして全国どこでも行なわれているように、定期的に重機によって排除すれば容易に解決すると考える。このような考えに対して、農林水産省の見解を伺いたい。この考えに異論があるとすれば、具体的な根拠を明確に示して答えられたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
潮受堤防の防災機能については、主に、台風等による高潮を遮断すること、潮汐の影響に関係なく調整池の水位を一定に管理し、大雨時の調整池への排水を速やかに行うことにより、洪水被害の軽減を図ること及び調整池を淡水化することによって背後低平地にある潮遊池等への塩水の進入を防止し、潮風による背後低平地にある農地に対する塩害が抑制されることであると考えている。
二について
一についてでお答えしたとおり、潮受堤防の防災機能については、御指摘の項目以外には、調整池を淡水化することによって背後低平地にある潮遊池等への塩水の進入を防止し、潮風による背後低平地にある農地に対する塩害が抑制されることがあると考えている。
三について
諫早湾の一部を潮受堤防で締め切り高潮を防止するとともに、調整池の水位を標高マイナス一メートルとなるように管理して、潮汐の直接的な影響を受けることなく河川、排水路等から調整池への排水が速やかに行われることにより、大雨時でも洪水被害の軽減が図られるなど、諫早市街地の一部を含む諫早湾周辺地域では、これまでに防災効果が発揮されているところである。
四について
御指摘の「諫早水害誌」の記述については、その計算の根拠となる前提条件が明らかでないことから、お答えすることは困難である。
五について
三についてでお答えしたとおり、潮受堤防を締め切ることにより諫早市街地の一部を含む諫早湾周辺地域に対する防災効果は既に発揮されているところであるが、国土交通省としては、農林水産大臣が決定した調整池の管理水位を基に、平成十七年三月に本明川水系河川整備計画を策定し、これに基づき河川改修の実施、洪水調節施設の建設により、一級河川本明川水系本明川の治水対策を進めているところである。
六について
潮受堤防の排水門を常時開門すれば、調整池の水位が外海の潮位に連動し、調整池への排水が制限されることとなる。
また、潮汐の影響に関係なく調整池への排水が速やかに行われるようにするためには、三についてでお答えしたとおり、調整池の水位を標高マイナス一メートルとなるように管理する必要があると考えている。
七について
御指摘の湛水状況については、平成十八年八月のデータ以外について、長崎県からの聞き取りにより把握している。
八について
昭和五十七年から平成八年までの十五年間に湛水が生じた際、農業関連被害総額が三億円程度以上であったことが七回あったと承知している。
一方、潮受堤防締切り後の平成九年以降は十七回の湛水を確認しているが、農業関連被害総額が同程度以上であったことは三回であると承知している。
また、潮受堤防締切り前の昭和五十七年七月二十三日の日最大一時間降水量九十九ミリメートルの豪雨の際には、農地崩壊が百ヘクタール、床上浸水被害が九百三十戸に及んだが、締切り後、これに匹敵する日最大一時間降水量百一ミリメートルを記録した平成十一年七月二十三日の豪雨の際は、床上浸水被害は大幅に減少し、低平地の水田で一時的に湛水したものの、同日中に湛水が解消しており、このことからも、潮受堤防の締切りにより、湛水の程度は確実に軽減されていると考えている。
九について
現時点における諫早湾周辺地域のすべての排水機場の設置状況は把握しておらず、お答えすることは困難である。
十について
一についてでお答えしたとおり、潮受堤防締切りにより、潮汐の影響に関係なく調整池の水位を一定に管理することが可能となり調整池への排水が速やかに行われるようになるものと承知しているが、水田の汎用化等の観点から、更なる排水改良の強化のため、ポンプの設置を行うこともあるものと考えている。
十一について
平成十五年度に農林水産省九州農政局諫早湾干拓事務所が一定の条件下で検討した結果によれば、潮受堤防の排水門を常時開門するとすれば、吐出量が毎秒〇・一三立方メートルから二・七〇立方メートルまでのポンプが背後低平地の十四地域に合計十五台、吐出量の合計で毎秒十一・五四立方メートル分が必要となるとされている。
十二について
八についてでお答えしたとおり、潮受堤防締切りによる防災効果は既に発揮されていると考えており、現時点では、防災目的で排水機場を設置する予定はない。
十三について
平成十五年度に農林水産省九州農政局諫早湾干拓事務所が一定の条件下で検討した結果によれば、潮受堤防の排水門を常時開門するとすれば、十一についてでお答えした十五台のポンプに加えて、吐出量が毎秒〇・九〇立方メートルから五・八八立方メートルまでのポンプが背後低平地の十四地域に合計三十四台、吐出量の合計で毎秒百四十四・一四立方メートル分が必要となるとされている。
十四について
八についてでお答えしたとおり、潮受堤防締切りによる防災効果は既に発揮されていると考えており、潮受堤防の排水門を常時開門するとすれば、このような効果が失われると考えている。
十五について
潮受堤防の排水門の常時開門については、既に発揮されている防災効果の維持の観点からも、ガタ土の堆積による排水不良の防止の観点からも、適当ではないと考えている。
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