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有明海の浄化と漁業環境の改善に関する第三回質問主意書
衆議院 第169回 第439号お答えすることは困難 ×1
質問本文
有明海の漁業環境の悪化と漁業被害は甚大であり、漁民の生活の窮状は想像を絶する深刻な事態にある。有明海の漁業者は、有明海の再生のために潮受け堤防の開放を求めている。
公共事業チェック議員の会(鳩山由紀夫幹事長、保坂展人事務局長)主催で、本年五月八日及び五月二十二日に、有明海再生のための諫早湾干拓潮受け堤防の開門に向けた農林水産省からのヒアリングが、衆参国会議員等の参加のもとに行われた。
ヒアリングにおいては、�@潮受け堤防を開門すれば、有明海が良くなることは、二〇〇二年に実施された堤防排水門の短期開門調査で効果が実証済みであり、漁民が、タイラギやアサリが獲れたということを実感している、�Aもぐり開門の方法によって、漁業被害や排水門の安全性の問題は生じないことが立証され、漁業被害等を理由に開門を拒否していた農林水産省の主張には合理性がない、�B農業用水確保の目的で貯水している調整池は、本明川河口の堰や溜池の設置等の代替水源の対策により、干拓地の営農に必要な農業用水が十分に確保できる−ことが浮き彫りにされた。
これまで、諫早湾干拓潮受け堤防を開門できないとの農林水産省の主張がことごとく科学的根拠のない非合理的なものであることが明白になった。
有明海再生のために堤防の開門は、農林水産大臣の政治的な決断によって早期に実施されるべきである。
私は、このヒアリングでの議論や観点を踏まえて、本年四月十七日に提出した「有明海の浄化と漁業改善に関する再質問主意書」(以下「再質問主意書」という。)に対する四月二十五日の政府答弁書(以下「答弁書」という。)に関して、以下の事項について質問したい。
一 タイラギ漁業について
1 諫早湾のタイラギ不漁に関してはすでに一九九四〜一九九六年に調査を実施し、それ以降すでに十年以上経ているのに、いまだに原因不明としている。漁民からは、「いつまでも調査をし続けるのか」と、調査に対する疑問が出されている。原因不明とした根拠を述べていただきたい。さらに、現在独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所が行っている「有明海におけるタイラギ資源の減少要因の解明に向けた調査」が、具体的に何を明らかにしようとしているのか伺いたい。
2 再質問主意書では、諫早湾の妥当と思われる底質の堆積速度を〇.五cm/年と仮定することによる農林水産省の泥試料の堆積年について質問した。これに対して答弁書は、「厚さ十二センチメートル程度の底泥」と答えているが、そうだとすれば堆積するのに約二十四年間経過したことになる。このような試料によって五〜十年程度の粒度組成の変化が明らかになると考えているのか、答えられたい。
二 二〇〇七年八月の諫早湾のアサリのへい死について
1 二〇〇七年八月二十四日にアサリへい死の聞き取り調査を行って、二十六日に一斉調査を実施したというが、なぜ八月二十五日正午以後の二十六日早朝の上層に顕著に示された貧酸素によるアサリのへい死を除外するのか、また大量のアサリのへい死が二十六日以前に起きたという根拠と理由を示されたい。
2 答弁書は、「赤潮を形成する植物プランクトンが死滅すると海底に沈降してバクテリアによって分解されるが、その際、海水中の溶存酸素が消費されて底層が貧酸素化し、アサリがへい死することがある」と答弁している。農林水産省は、赤潮がアサリのへい死の直接の原因ではなく、貧酸素にあると考えているのかどうか答えられたい。
三 再生事業について
1 答弁書は、下水道整備事業及び農業集落排水処理施設整備事業の事業評価の結果については、それぞれ『個別公共事業の評価書』及び『公共事業の事業評価書』に記述しており、関係省庁のホームページ等で公表している旨、答えているが、なんら説明はなされていない。これらの事業により、水質がどのように変化したのかなど、根拠を示して具体的に説明されたい。
2 漁業環境保全創造事業の事業評価の結果についても、漁業環境がどのように変化したかなど、根拠を示して具体的に説明されたい。
3 答弁書では、汚水処理人口普及率が向上すれば、河川等の公共用水域に流入する化学的酸素要求量(以下「COD」という。)の総量は減少する旨、答えているが、どの程度、CODが減少しているのか、根拠を示して具体的に説明されたい。
4 漁業環境保全創造事業の費用対効果について、答弁書は「農林水産省が行った事前評価において、事業の実施により見込まれる効果が事業の実施に要する費用を上回っていたところである」と答えている。その根拠と理由を明確に説明されたい。
5 答弁書では、漁業環境保全創造事業についての農林水産省の事前評価では、「福岡県及び熊本県の行う事業についてもアサリ等の漁獲量の増加が期待できること等を確認し、事業の実施は妥当であると判断した」と答えている。その根拠を示して具体的に説明されたい。
四 開門について
1 答弁書は、「開門により予測される濁りの分布」については、平成十六年五月十一日に農林水産省が公表した「有明海の漁業関係者の皆様へ」の補足説明の「中・長期開門調査を実施することによる海域への影響と有明海の再生への取組について」の「中・長期開門調査実施の検討結果」において示されている旨、答えている。この答弁は、おそらく農林水産省九州農政局ホームページの農村振興局−諫早湾干拓事業−中・長期開門調査の取扱いについて−排水門の常時開放によりガタ土が有明海に広がる様子(開門三十日後)の図をさしているものと思われる。この図では有明海湾口部の濁り:懸濁物質(SS)濃度は一〇〜三〇mg/Lとなっている。再質問主意書では、「諫早湾干拓事業以前の濁りと、開門により予測される濁りの分布を示し、その上で漁業被害の根拠と理由を明確にされたい」旨の質問をしたが、これに対する答弁はなされなかったので、改めて、明確に答弁されたい。
2 再質問主意書では、「(九州大学大学院総合理工学研究院)経塚教授の示した開門方法で成果が得られないというなら、その根拠と理由を具体的に示されたい」と質問した。これに対して答弁書は、「短期開門調査で得られた成果以上の知見は得られない」と答弁し、なんら具体的な根拠と理由を示していない。
また、再質問主意書では、短期開門調査において諫早湾内の流動も大きくなり、調整池内の水質も劇的に改善されたことも指摘した。これに対する政府の見解を含めて、経塚教授の示した開門方法では、成果が得られないと考えているならば、改めて、その根拠と理由を具体的に示されたい。
五 調整池の水質について
1 答弁書は、平成十六年度、十七年度、十八年度及び十九年度におけるCODの濃度をそれぞれ、九.四、八.七、七.九及び八.六mg/Lである旨答えているが、これは七十五%値(五十二週の場合、小さい値の順に並べて三十九番目の値)と思われる。
そこで、農林水産省の調整池のB1、B2、S11、P1及びP2地点の週一回のモニタリングデータを用いて、各年度のそれぞれの七十五%値を求め、それを平均すると、九.一、九.五、九.四及び一一.五mg/Lの濃度となった。
これらの値は、農林水産省が示した値と比べると、平成十六年度は農林水産省の値の方が大きいが、それ以降は小さい。何故、このような違いが生じるのか、答えられたい。
2 答弁書は「調整池に流入するCOD、窒素及びリンの総量についてのデータは採取していない」と答弁している。しかし、九州農政局に設置された諫早湾干拓調整池等水質委員会において、平成十九年度に行った水質シミュレーションモデルを用いた検討結果による、平成十五年の調整池のCODの量を明らかにしている。データがなければシミュレーションの妥当性が検証できず、水質シミュレーションは、信頼できないものと考えられるが、見解を伺いたい。
3 答弁書は、諫早湾干拓調整池等水質委員会が、平成十九年度に行った水質シミュレーションモデルによる検討結果によれば、平成十五年における、底泥の巻上げ、流入各種排水、植物プランクトンの発生による調整池のCODの量は一六,三九三kg/日となっていると答弁している。
また、同委員会は、潜堤による巻上げ抑制効果によってCODを二,九九六kg/日減少させると推測している。潜堤は平成十八年度に完成しており、平成十九年度には約二十%のCOD濃度減少が期待されたが、実際にはむしろCODは増加している。潜堤の効果はみられなかったと考えられるがどうか、見解を伺いたい。
4 答弁書は、「諫早湾干拓調整池等水質委員会が、調整池の水質シミュレーションモデルによる水質予測結果を検討したところ、中長期的には、水質保全目標値の達成は可能であると判断されている」と答弁している。しかし、これまで、何回も期限までに水質保全目標値の達成は可能としながら、達成されてこなかったことについて、どのように考えているのか。また、一九九七年の潮受け堤防の締め切り以後の水質予測とその結果に関する考察資料の概要を示して具体的に説明されたい。
5 答弁書は、調整池の水質については、中長期的には、水質保全目標値の達成は可能なので、岡山県の児島湖のようにはならないという趣旨の答弁をしている。先に指摘したように、これまで目標値を達成すると言いながら実際には達成されてこなかった。このようなことを繰り返していて、調整池が児島湖のようにならないという根拠はない。児島湖でCODが少し減少したのは、大規模な浚渫を行ったことによるものと考えられるが、児島湖のCODの減少の原因について、説明されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
諫早湾におけるタイラギ漁業の不漁については、タイラギ資源の減少によるものと考えているが、有明海・八代海総合調査評価委員会が取りまとめた委員会報告においても、長崎県海域におけるタイラギ資源の減少要因、大量へい死の発生メカニズムについては明らかにされておらず、今後解明していくべき課題とされたものである。現在、独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所が、関係県と連携して、有明海におけるタイラギ資源の減少要因の解明に向け、タイラギの大量へい死についての環境要因及び生理要因の関連に関する調査を行っているところである。
一の2について
農林水産省九州農政局が諫早湾内において行っている底質の泥分の長期モニタリングは、平成元年から継続して同一の調査地点において海底面から一定の深さまでの底泥を採取し粒度組成を求めているものであり、底質の経年的な変化の傾向を把握できる調査であると考えている。
二の1について
前回答弁書(平成二十年四月二十五日内閣衆質一六九第三〇三号。以下「前回答弁書」という。)二の1についてでお答えしたとおり、長崎県からは、平成十九年八月二十二日に漁業者から諫早湾内の小長井町地先におけるアサリのへい死情報が寄せられ、同月二十六日に一斉調査を実施し、その時点でのアサリのへい死状況を確認したと聞いている。
二の2について
前々回答弁書(平成二十年三月二十五日内閣衆質一六九第一八四号。以下「前々回答弁書」という。)二の1から3までについてでお答えしたとおり、平成十九年八月の諫早湾におけるアサリのへい死については、赤潮、貧酸素水塊を始めとする様々な要因が複合的に影響したものと考えている。
三の1について
一般的に、公共用水域の水質の変化には複合的な要因があり、下水道の整備に関する事業及び農業集落排水処理施設の整備に関する事業のみに起因する有明海及び八代海における水質の変化は測定できないため、お答えすることが困難である。
なお、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律(平成十四年法律第百二十号)第三条第一項に規定する指定地域(以下「指定地域」という。)を含む市町村における下水道に係る処理人口は、平成十四年度末時点の約百六十一万人から平成十八年度末現在で約百九十五万人に増加し、農業集落排水処理施設に係る処理人口は、平成十四年度末時点の約十三万人から平成十八年度末現在で約十七万人に増加しているところであり、これらの処理施設において削減される化学的酸素要求量(以下「COD」という。)の総量も増加しているものと考えられる。
三の2、4及び5について
漁場環境保全創造事業については、前々回答弁書三の1についての(4)でお答えしたとおり、平成十五年度から平成十八年度までの有明海における実施状況は、覆砂四百四十二ヘクタール、作れい十四・五キロメートル、耕うん五千四百七十七ヘクタールとなっているところであり、同答弁書三の2及び3についてでお答えしたとおり、同事業の実施により、例えば、福岡県や熊本県によれば、アサリの漁獲量が増加する等の漁場改善の成果がみられているところである。同事業の事前評価において、漁獲可能資源の維持・培養により、アサリの漁獲量の増加が期待できること等を確認したところである。同事業の実施により見込まれる漁獲可能資源の維持・培養等の効果を事業の実施に要する費用で除した費用便益比率は、一・二八から三・九一となっており、事業の実施により見込まれる効果が事業の実施に要する費用を上回っているところである。
三の3について
環境省が実施している「発生負荷量等算定調査」によれば、指定地域を対象に調査を開始した平成十三年度及び最新の調査年の平成十六年度の生活系排水の一日当たりのCODの発生負荷量は、それぞれ五十三・八トン及び四十六・七トンとなっており一日当たり七・一トン減少している。
四の1について
前回答弁書四の1及び2についてでお答えしたとおりである。
四の2について
短期開門調査における水質への影響については、衆議院議員小沢和秋君外一名提出諫早湾干拓事業の進行に伴う漁業被害と環境破壊拡大への対応に関する質問に対する答弁書(平成十五年八月二十九日内閣衆質一五六第一二五号)(十六)についてでお答えしたとおり、短期開門調査においては、海水導入によって調整池のCOD等の濃度は低下したが、一方で、海域への排水量は増加し、海域への負荷量は海水導入前に比べむしろ増加する結果となっている。
また、前回答弁書四の3及び4についてでお答えしたとおり、排水門付近で洗掘を生じさせない開門方法については、潮位や潮流などに与える変化が小さいため、短期開門調査で得られた成果以上の知見は得られないと考えている。
五の1について
前回答弁書五の1についてでお示ししたデータは、調整池の水質の適正な評価を目的として、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)に基づき都道府県が水質調査等を行う際の準拠すべき原則的な方法を示したものである水質調査方法により、降雨等の影響を受けない晴天時に行う月一回の調査によるものである。これに対して、御指摘の週一回の調査は、水質シミュレーションモデルの構築等を目的として気象条件に関係なく行うものであり、調査の条件が異なることから、これら二つの調査結果を単純に比較することは適当ではないと考えられる。
五の2について
農林水産省九州農政局により設けられた諫早湾干拓調整池等水質委員会において、平成十九年度に行った調整池の水質シミュレーションモデルを用いた検討の際には、平成四年度から平成十八年度までにおいて実施した生活系排水、農地等のCOD、窒素及びリンの発生負荷量の調査の結果等を活用し、平成十五年度から平成十七年度までにおいて調整池に流入した有機物によるCOD、窒素及びリンの総量を水質シミュレーションモデルにより試算しているところであり、水質シミュレーションモデルの妥当性は確保されていると考えている。
五の3について
調整池のCODの量は、底泥の巻上げだけでなく、他の様々な要因に左右されるものである。潜堤自体の効果については、諫早湾干拓調整池等水質委員会において、平成十九年度に行った調整池の水質シミュレーションモデルを用いた検討の結果により確認されているところである。
五の4について
前々回答弁書五の1についてでお答えしたとおり、調整池の水質については、調整池に流入する河川等からの有機物、窒素及びリンの削減が進んでいないこと等により、水質保全目標値に達しない状態が続いているものと考えている。
なお、潮受堤防の締切り以降に諫早湾干拓調整池水質委員会において行われた水質予測の検討結果について記した「諫早湾干拓調整池等水質委員会検討結果の取りまとめ」においても、水田及び畑からの負荷並びに生活系排出負荷の削減が進んでいないこと等が述べられているところである。
五の5について
岡山県が、湖沼水質保全特別措置法(昭和五十九年法律第六十一号)第四条第一項の規定に基づき策定した児島湖に係る第四期湖沼水質保全計画について平成十九年三月に公表した評価結果によれば、児島湖流域における下水道の整備等の水質汚濁発生源対策、流入河川等の浄化対策及び底泥のしゅんせつ等の湖内対策の効果が相まって児島湖のCODが低下したとされていると承知している。
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