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経常黒字国に財政支出の拡大を求める声が高まっている事に関する質問主意書
衆議院 第190回 第174号
質問本文
昨年後半から続く世界的な株安や、新興国からの資本流出など、金融市場の混乱で、世界経済の先行き不安が高まっている。中国・上海で開かれていたG20では二月二十七日に機動的な財政政策を実施するべきだとする共同声明が出された。
これに関連して質問する。
一 G20の共同声明では、「金融政策のみでは、均衡ある成長につながらない。機動的に財政政策を実施する。」と明記された。経常黒字国であり、しかも巨額の対外純資産を持つ日本は、世界経済発展に貢献する為にも、二〇一六年度補正予算を組んで景気対策をすべきではないか。
二 内閣衆質一九〇第一二三号(以下「答弁書」とよぶ)の「一及び二について」で、政府は平成二十六年四月の消費税増税により、日本経済は深刻な悪影響を受けたことを認めた。G20の共同声明でもあるように、経済成長率を確実に上げる方法は財政を拡大する事である。例えば平成二十七年度補正予算(三.三兆円)の経済効果は実質GDPの押し上げ効果が〇.六%であると内閣府より平成二十七年十二月二十二日に発表された。名目GDPも同様に押し上げられるとして、この押し上げ効果は国の債務のGDP比を約〇.六%押し下げる。これは千兆円の国の借金の〇.六%、つまり約六兆円に相当する借金を減らしたことに相当する。驚いたことに答弁書内の「一及び二について」では、財政支出が実質GDP成長率やインフレ率に与える影響については、内外経済など様々な要因に左右されるため、一概にお答えする事は困難であるなどと述べている。ということは、平成二十七年十二月二十二日に内閣府が発表した〇.六%の押し上げ効果は信頼できないと主張するのか。
三 日本には千兆円を超える国の借金があるから、これ以上は財政出動は無理と政府は主張するのだろうか。しかし僅か三.三兆円の財政支出でGDPが増加し、実質六兆円もの借金削減効果があることが示されている。計量モデルを使って求めた乗数は平成二十二年八月に内閣府計量分析室で発表されており、財政支出を拡大すれば、GDP成長率が上昇し、国の債務の対GDP比は減少し国の借金は事実上軽くなることが示された。「全国民が一生の間、懸命に働き続けても返済は不可能なほどの巨額の借金がある」と誰もが錯覚し、絶望の果て倹約に走るしかないと国民が思っている限り、消費の拡大がなければ、景気回復もない。しかし、財政を拡大すれば国の借金は実質的に減っていくことを国民が知れば、国民は自信を取り戻し、経済復活のきっかけになると考えるが、同意するか。
四 答弁書「七及び九について」で、「我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり」とある。そのような状況なら、日本円が国際的に安定資産とみなされる事はありえないはずであり、この矛盾をどのように説明するのか。また、財政が厳しければ金利は高騰しなければならないのではないか。財政が厳しければ、政府が国債を売りに出しても誰も買わないはずだが、実際はその逆で、国債が売り出されれば買いが殺到する。これも財政が厳しくない証拠ではないか。
五 G20では、不安定化した世界経済を正常化する為に協力して「機動的に財政政策を実施する」ということで一致している。このような時に、その流れに真っ向から逆らう形で消費税増税を強行して、もしリーマンショック並みの不況を招いてしまったら国の内外から厳しい批判を浴びるのではないか。
六 消費税収は社会保障の財源に充てるとされている。しかし、カネに色はついておらず、消費税増税により経済が停滞し、税収が落ち込んだら社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を放棄する事になるのではないか。
七 消費税増税は国際公約なのか。もしそうなら、どのような法的拘束力があると主張するのか。もし、公約違反の際には、どのような制裁を受けるというのか。リーマンショック並みの不況になって、消費税増税延期、又は中止となった場合も国際的な制裁を受けるのか。
八 答弁書「八について」では「財政規律が緩み財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において、ハイパーインフレーションが起こる」とある。一方、内閣衆質一九〇第三九号の「七について」では「戦争等を背景とした極端な物不足」の際にハイパーインフレーションが起きるとある。両答弁書の内容は明らかに異なっている。現在のような物余りの時代にハイパーインフレーションが起きるのかどうか政府の見解を示して頂きたい。
九 答弁書の「十について」で、「万が一、御指摘の「政府財政に対する信頼の喪失」が生じた場合には、金利が急激に上昇することなどにより、経済・財政・国民生活に重大な影響が及ぶと考えられる。」とある。政府財政に対する信頼の喪失が生じれば、金利が急激に上昇(国債価格が下落)するのだそうだが、国債価格は需要と供給のバランスにより決まる。日銀がどんなに買っても国債は下落するというのか。それではいったい誰が日銀の買いを大幅に上回るほどの売りを出せるというのか。現実には日銀はマイナス金利を導入した。日銀は国債を大量に購入しており、市場では国債は品薄状態になっており、これ以上国債購入のペースを上げても間もなく限界に達する。つまり国債を買い尽くす勢いなのである。もし日銀が国債を買えなくなったら、インフレ目標を達成する前に、金融政策が限界に達したと市場が判断し、市場に不安心理が台頭してくる。マイナス金利は、金融緩和には限界はない事を示したかったと思われる。国債購入には限界があり、遠くない将来限界に達する。つまり現状では国債の売り手よりも国債の買い手(日銀)のほうが圧倒しているのであり、近い将来金利が急上昇するなどということはあり得ないと考えるが同意するか。
十 政府は金利上昇は、経済・財政・国民生活に重大な影響を与えると考えているのか。例えば、一九六〇年代から一九八〇年代の日本では、金利は高かったが日本は奇跡の経済成長を成し遂げたのであり、「高金利=悪」というわけではない。最近の「失われた二十年」では低金利だが経済は停滞した。問題なのは、次のようにして政府が消費や投資を冷え込ませる原因を作り出したことにある。�@国の借金が千兆円を超えたという、特別問題にするべきでないことを、あたかも恐ろしいことであるかのごとく宣伝した。�A我が国の財政は極めて厳しいという事実に反する主張をした。�B二〇一四年の消費税増税。�C二〇一七年予定の消費税増税。クルーグマンの言うように、来年の消費税増税を中止し、大胆に財政支出を拡大するなら、人はインフレを予想するようになり、現金の目減りを恐れ、個人も企業も投資を始める。インフレの際には、タンス預金で目減りさせるより少々高い金利でも借りて投資したほうが利益になるわけで、まさにそのような経済状態になれば日本経済は復活すると考えるが同意するか。
右質問する。
政府答弁書
一について
平成二十八年二月二十七日の二十か国財務大臣・中央銀行総裁声明では、金融、財政及び構造政策の全ての政策手段を、個別にまた総合的に用いることに合意したところである。
政府としては、経済と財政双方の一体的な再生を目指しており、我が国の極めて厳しい財政状況を放置すれば、財政の持続可能性に対する疑念の高まりが経済成長自体を阻害するおそれがあるという認識の下に、それぞれの国が置かれた状況を踏まえながら、適切な財政運営を行っていくことが重要であると考えており、一般論としては、財政支出の拡大を行うべきか否かについては、御指摘の「経常黒字国であり、しかも巨額の対外純資産を持つ」という理由で判断されるべきではないと考えている。
日本経済のファンダメンタルズは確かなものと認識しており、現時点で補正予算による経済対策を策定することは考えていない。政府としては、平成二十七年度補正予算を迅速かつ着実に執行するとともに、現在審議中の平成二十八年度予算の早期成立に努めてまいりたい。
二について
内閣府においては、平成二十七年度補正予算について、一定の前提の下で予算額に基づいて試算した結果、実質GDPをおおむね〇・六パーセント程度押し上げる経済効果があると見込んでいる。ただし、一般論として、財政支出が実質GDP成長率に与える影響については、支出の内容や内外経済状況など様々な要因に左右されることに留意する必要がある。
三について
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、デフレ脱却・経済再生を図りつつ、その持続可能性を確保することが重要である。政府としては、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一五」(平成二十七年六月三十日閣議決定)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」(以下「経済・財政再生計画」という。)に基づき、平成三十二年度の財政健全化目標の達成に向けて、経済と財政双方の再生を目指す経済・財政一体改革に取り組むこととしている。
四について
為替レート及び国債金利は、様々な要因を背景に市場において決まるものであり、それらの動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、御指摘の為替レート及び金利水準の動向を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
また、我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの二倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれるなど、極めて厳しい状況にあり、政府としては、国債の安定的な消化を図るため、経済・財政再生計画に沿って引き続き財政健全化の取組を着実に進め、国債に対する信認を確保してまいりたい。
五について
平成二十九年四月の消費税率の十パーセントへの引上げは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。その上で、政府としては、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
六について
消費税率の五パーセントから十パーセントへの引上げによる増収分は全額、社会保障の充実・安定化に充てることとしている。その上で、消費税率の十パーセントへの引上げに当たって、政府としては、経済財政運営に万全を期してまいりたい。
七について
平成二十九年四月一日の消費税率の十パーセントへの引上げは、その実施が国際的に法的拘束を受けるといったものではなく、所得税法等の一部を改正する法律(平成二十七年法律第九号)第十八条の規定により改正された社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)に基づくものであり、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。
八について
ハイパーインフレーションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。
九について
国債金利は、需要と供給のバランスのみによって決まるものではなく、経済・財政の状況等の様々な要因を背景に市場において決まるものであり、その動向について言及することは市場に無用の混乱を生じさせかねないことから、国債金利の動向に関するお尋ねにお答えすることは差し控えたい。
十について
政府としては、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢からなる経済政策を一体的に推進してきたところであるが、同時に、財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなことがあれば、経済・財政及び国民生活に大きな影響が及ぶと考えている。
我が国の財政については、極めて厳しい状況にあり、引き続き、財政に対する市場の信認を確保できるよう、経済再生と財政健全化の両立を目指すことが重要である。
このため、平成二十九年四月の消費税率の十パーセントへの引上げは、社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、市場や国際社会における我が国の信認を確保するため、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施することとしている。
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