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刑法の性犯罪規定の見直し等に関する質問主意書
衆議院 第198回 第136号お答えすることは困難 ×1個別の事案 ×1
質問本文
性犯罪の厳罰化等を内容として第百九十三回国会において成立した、刑法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第七十二号。以下「同法」という。)は、平成二十九年七月十三日の施行から間もなく二年となる。同法附則第九条は「政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」との検討条項を規定している。法務省では、同規定に基づき、平成三十年四月二十日に、「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」を設置し、性犯罪に関する総合的な施策検討に資するための性犯罪の実態に関する各種調査・研究を着実に実施することとし、目途とされる同法施行後三年より早期の段階から、性犯罪に関する施策検討に向けた各種調査や、研究を実施しているものと承知している。今後も、性犯罪規定の真の見直し議論に資する調査や研究が実施されることを強く期待するものである。
ところで、法制審議会が昭和四十九年に法務大臣に答申した、改正刑法草案(以下「草案」という。)においても、刑法の性犯罪規定の見直しに関する検討がなされており、当時、草案を反映した法律案が国会に提出されることはなかったものの、その検討については、今後の性犯罪規定の見直しの議論に資する部分も多くあるものと考えている。これらの点を踏まえ、刑法の性犯罪規定の見直し等に関する政府の見解について、以下質問する。
一 刑法第百七十七条は強制性交等罪を規定し、第百七十八条第二項は準強制性交等罪を規定しているが、法定刑は同じである。平成二十九年六月二日の本会議で、私が「強姦と準強姦を一つにして、暴行、脅迫を抗拒不能、心神喪失に陥らす行為の例示とし、強制性交等罪、準強制性交等罪の新たな構成要件として、抗拒不能を中心に一本化した規定をすることは十分検討に値する」と提案したことに対し、当時の金田法務大臣が「現行法における強姦罪と準強姦罪との区別は適切に機能しているものと考えられますので、直ちに御指摘のような改正が必要とは考えておりません。」と答弁しているが、適切に機能しているものと考える根拠を明らかにされたい。また、後者が「準」強制性交等罪という罪名から、前者よりも軽い罪のような誤解を与えているとの指摘が被害当事者から挙がっていることに対する政府の見解を伺う。
二 草案の第二百九十六条では、暴行又は脅迫による強姦(第一項)及び抗拒不能の状態にある女子に対する準強姦(第二項)を同一の条文に「強姦」として規定することとしていた。これは、それぞれの犯罪行為の性質からみると、暴行又は脅迫を用いる場合と抗拒不能状態を利用しあるいはその状態に陥れる場合とは共通する面が多いためであるとしているが、過去にこのような検討をしているのであれば、同法施行後三年を目途とした検討の機会に、強制性交等罪と準強制性交等罪を同一の条文に規定することも検討すべきではないか、政府の見解を伺う。
三 草案の第三百一条は被保護者の姦淫罪について、第一項では「身分、雇用、業務その他の関係に基づき、自己が保護し又は監督する十八歳未満の女子に対し、偽計又は威力を用いて、これを姦淫した者」を処罰することとしていた。改正刑法草案説明書によれば、同項における「身分、雇用、業務その他の関係に基づき自己が保護し又は監督する」とは、ある程度継続的な社会的関係に基づいて十八歳未満の女子を保護・監督し、その意思決定に影響を及ぼし得ると通常考えられるような立場に立っていることをいい、福祉施設の管理者や寄宿舎の監督者が自己の業務上年少者を保護・監督する場合、あるいは、徒弟、住込み等の形態で年少者を雇用する場合など、十八歳未満の女子に対して全人格的な生活上の保護・監督関係の生ずる場合がこれに当たると説明されている。このような場合は、刑法第百七十九条第二項の監護者性交等罪における「現に監護する」にも当たるのか、その解釈について政府の見解を伺う。
四 草案の第三百一条第二項は、精神障害の状態にある女子を保護し又は監督する者がその地位を利用して行う姦淫を処罰する規定となっていた。当時、当該規定を新設しようとした理由は何か。また、当該規定の新設は草案を反映した法律案が国会に提出されなかったため実現しなかったものであるが、同法律案が国会に提出されるに至らなかった理由は何か、政府の見解を伺う。
五 精神障害の状態にある者を保護し又は監督する者がその地位を利用して行う姦淫を処罰する規定の新設については、前回の性犯罪規定の見直しの際において検討されなかったのか、政府の見解を伺う。
六 草案において精神障害の状態にある女子を保護し又は監督する者がその地位を利用して行う姦淫を処罰する規定の新設を検討したのであれば、今回の同法施行後三年を目途とした検討の機会に、改めて検討すべきではないか、政府の見解を伺う。
右質問する。
政府答弁書
一について
御指摘の答弁については、刑法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第七十二号。以下「刑法改正法」という。)による改正前の刑法(明治四十年法律第四十五号。以下「改正前刑法」という。)第百七十七条の強姦罪は、暴行又は脅迫を用いて女子を姦淫した場合に成立する罪であり、同罪における「暴行又は脅迫」は、最高裁判所の判例において、「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであることを以て足りる。」(最高裁判所昭和二十四年五月十日第三小法廷判決、刑集三巻六号七百十一ページ)とされているとおり、反抗を抑圧する程度に達する必要はないと解されるのに対し、改正前刑法第百七十八条第二項の準強姦罪は、暴行又は脅迫を用いなくても、女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて姦淫した場合についても強姦罪と同様の処罰対象とする必要があることから、同罪を補足する犯罪類型として規定されたものである(この意味で「準強姦罪」と呼ばれていた。)ことを踏まえ、両罪の区別は適切に機能している旨答弁したところである。
刑法第百七十七条の強制性交等罪と同法第百七十八条第二項の準強制性交等罪との関係も、これと同様であり、両罪の法定刑は同一であって、これらの罪の間に軽重はない。
二及び六について
刑法改正法附則第九条において、「政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え」るものとされているところ、法務省においては、まずは、その検討に資するよう、「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」を設け、性犯罪の実態把握等を着実に進めているため、現時点でいかなる事項を検討の対象とするかについて、確たることをお答えすることはできない。
三について
改正刑法草案の第三百一条についての「改正刑法草案説明書」における説明が、そのまま刑法第百七十九条第二項の監護者性交等罪の解釈となるものではなく、また、犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事柄であるため、一概にお答えすることは困難であるが、一般論として、ある者が同罪にいう「現に監護する者」に該当するか否かは、個別具体的な事実関係の下で、その者と十八歳未満の者との間に、民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百二十条に規定する「監護」の概念に照らし、現に十八歳未満の者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点や生活上の指導・監督などの精神的な観点から、依存・被依存ないし保護・被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められるか否かにより決せられることとなるものと考えている。
四について
改正刑法草案は、昭和四十九年、法制審議会から法務大臣に対して答申されたものであるところ、同草案において、精神障害の状態にある女子を保護し又は監督する者が、その地位を利用して、その女子を姦淫することの処罰規定を設けるべきとした理由については、社会的関係の上から特に弱い立場にある女子に対する保護の強化を図ることにあるものと認識している。
また、同草案全体に対して、処罰の範囲を不当に拡大するとともに、全面的に刑罰を著しく重くしているなどの意見があり、それらを踏まえた検討・調整を終えることができなかったことなどから、同草案を踏まえた内容の法律案の提出に至らなかったものである。
五について
第百九十三回国会に提出した刑法の一部を改正する法律案については、お尋ねの点を含め、指摘されていた様々な事項について検討した上で立案したものである。
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