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革新的な新薬の承認及び保険適用の推進に関する質問主意書
衆議院 第198回 第93号趣旨が明らかではない ×4
質問本文
本年二月二十日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会は国内初のがん免疫療法キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR−T)療法であるチサゲンレクル(商品名キムリア)の承認を了承した。CAR−T細胞療法は、患者自身の免疫細胞を活用してがん細胞への攻撃を効率化するものであり、がん患者から免疫細胞を取り出し、遺伝子操作によってがん細胞を認識・接合する能力を高めて培養した上で患者の体内に戻し、体内に戻った免疫細胞ががん細胞の目印を巧みに探し当てて攻撃を行い、結果的にがん細胞を死滅に追い込むという画期的な治療法である。
すでにこのCAR−T細胞療法を承認している米国では患者一人あたり約五千万円の費用がかかると報告されており、わが国でも保険適用されれば非常に高い金額となることが予想できる。しかし、他の多くのがん治療と異なり一回の治療で「寛解」(症状が落ち着いて安定した状態)に至るという、劇的な効果を持つという研究結果がある。また、投与される患者数も最大で二百五十人程度と想定されており、医療保険財政に与える経済的な影響はそれほど大きくない。
このような新薬の承認に向けた動きに関連して、以下質問する。
一 安倍内閣が掲げる「医薬品産業強化総合戦略」(平成二十九年一部改訂)では「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換する」と記載されている。安倍内閣として、この方針は現在も継続しているという理解で良いか。
二 右の質問一に関連して、安倍内閣として、より高い創薬力を持つ製薬企業へインセンティブを与えることについて積極的という理解で良いか。
三 平成三十年の薬価改定において「新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度」(以下「新薬創出等加算」という)の対象が大幅に制限され、平成二十八年改定時には四百十六成分・八百二十三品目が対象だったが、平成三十年改定により三百十四成分・五百六十品目へと、約百成分・約三百品目が対象から外れた。革新的な医薬品がより多く創出されるための新薬創出等加算なのに、対象をしぼることで各製薬企業への新薬創出や適応外薬解消等のインセンティブを失わせたのは矛盾である。安倍政権は新薬創出等加算の縮小により、各製薬企業に「新薬創出に消極的」というシグナルを送っているが、「より高い創薬力を持つ産業構造に転換」させるには新薬創出等加算の拡大を検討すべきだ。新薬創出等加算の拡大に関する政府の見解を問う。
四 冒頭に述べた、がん免疫療法キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR−T)療法であるチサゲンレクル(商品名キムリア)の対象も患者数が千人以下の「ウルトラオーファン」と呼ばれる希少疾患の治療薬・治療法であるが、平成二十九年七月に承認された、脊髄性筋委縮症治療薬スピンラザ(成分名ヌシネルセンナトリウム)も想定患者数がピーク時でも四百十四人と少ない。確かにスピンラザは平成三十年四月現在の保険収載薬価で十二ミリグラム一瓶が九百三十二万四百二十四円と高額であるが、患者数が少ないゆえ製薬企業の採算の見通しが立ちにくく、何らかの誘因がなければ研究開発が進まず、これにより希少疾病の患者が不利益を受けることを防ぐためにも、高い薬価を承認しても何ら不思議ではない。
1 希少疾病用医薬品開発に関わる支援措置として「再審査期間の延長」「優先審査」「医薬品・医療機器機構による指導・助言」などの措置があるが、これらは今後も継続されるという理解で良いか。
2 希少疾病でない場合にも、治療効果の見込める患者対象のスクリーニングの技術開発を進めて治療対象を適切に絞りこむなど保険財政への影響も考慮しながら、革新的な新薬が承認された場合にはその開発費用を回収できるだけの適切な薬価が設定されるべきだと考えるが、政府の見解を問う。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの「方針」については、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一八」(平成三十年六月十五日閣議決定。以下「閣議決定」という。)において、「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換する」等とされている「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(平成二十八年十二月二十日内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、財務大臣及び厚生労働大臣決定)に基づき、医薬品産業を高い創薬力を持つ産業構造に転換することとされているとおり、お尋ねのように「現在も継続」しているところである。
二について
御指摘の「インセンティブを与えることについて積極的」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、閣議決定を踏まえ、我が国において革新的な医薬品の研究開発が行われるための環境整備を進めてまいりたい。
三について
お尋ねの「新薬創出等加算の拡大」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「新薬創出等加算」を含めた薬価制度については、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進を両立する観点から、平成三十年度薬価制度改革において見直しを行ったものであるが、平成三十年二月七日の中央社会保険医療協議会の答申の附帯意見(以下「平成三十年度附帯意見」という。)において「薬価制度の抜本改革による関係者への影響を検証した上で、必要な対応について引き続き検討すること」とされているところであり、政府としては、平成三十年度附帯意見を踏まえ、必要な検討を行ってまいりたい。
四の1について
御指摘の「再審査期間の延長」の意味するところが必ずしも明らかではないが、希少疾病用医薬品について、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「法」という。)第十四条第一項、同条第九項(法第十九条の二第五項において準用する場合を含む。)又は第十九条の二第一項の規定による厚生労働大臣による承認を受けた者は、法第十四条の四第一項第一号イ(法第十九条の四において準用する場合を含む。)の規定に基づき、その承認のあった日後六年を超え十年を超えない範囲内において厚生労働大臣の指定する期間を経過した日から起算して三月以内の期間内に申請して、厚生労働大臣の再審査を受けなければならないこととされている。
また、希少疾病用医薬品についての法第十四条第二項第三号(同条第九項及び法第十九条の二第五項において準用する場合を含む。)の規定による審査については、法第十四条第七項(同条第九項及び法第十九条の二第五項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、他の医薬品の審査に優先して行うことができることとされている。
さらに、独立行政法人医薬品医療機器総合機構は、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二十八条第一項の規定に基づき作成された独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査等業務及び安全対策業務関係業務方法書第五十五条の規定に基づき、希少疾病用医薬品について、他の医薬品に優先して、同業務方法書第五十三条に規定する指導及び助言を行っているものと承知している。
現時点において、希少疾病用医薬品に関するこれらの措置を変更する予定はない。
四の2について
お尋ねの「その開発費用を回収できるだけの適切な薬価」の意味するところが必ずしも明らかではないが、新薬の薬価を算定するに当たっては、真に画期的な新薬に限り算定される画期性加算、既存の医薬品に比して高い有効性又は安全性を有する医薬品について算定される有用性加算等の補正加算による評価等を行ってきているところである。また、補正加算も含めた薬価制度については、三についてで述べたように、国民皆保険の持続性とイノベーションの推進を両立する観点から、平成三十年度薬価制度改革において見直しを行ったものであるが、平成三十年度附帯意見において「薬価制度の抜本改革による関係者への影響を検証した上で、必要な対応について引き続き検討すること」とされているところであり、政府としては、平成三十年度附帯意見を踏まえ、必要な検討を行ってまいりたい。
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