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外国船舶に対し入域の事前通報を求める制度に関する質問主意書
衆議院 第204回 第179号お答えすることは困難 ×6趣旨が明らかではない ×2
質問本文
いわゆる国連海洋法条約によって、すべての船舶は、外国領海において無害通航権を有し(同第十七条)、沿岸国は、領海における外国船舶の無害通航を妨害してはならない(同第二十四条1)と定められている。
他方、沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる(同第二十五条)とされ、我が国も「領海等における外国船舶の航行に関する法律」を制定して、無害でない外国船舶の通航の取り締まりを行っており、同法は、「外国船舶の船長等は、領海及び内水において停留等をする必要がある場合等は、その理由が明らかな場合を除き、あらかじめ、その理由等を最寄りの海上保安庁の事務所に通報しなければならない」旨定めている。
しかしながら、無害でない通航であるか無害通航であるかにかかわらず、世界には、少なからぬ国々が国内法で、外国船舶が領海や排他的経済水域等に入域するに際して、その旨を事前に沿岸国に通報するよう求めている。こうした事前通報制度は、海洋国家である我が国にとって極めて大きな影響を与えることは言うまでもない。
そこで、日本政府は、こうした事前通報制度が無害通航権を定める国際法との関係でどこまで許容されると判断してきたのか、また、問題があるとして当該国に対し外交的な対処を求めてきたのかを、以下の場合に分けて、質問する。
一 軍艦の通航について事前許可を必要とする国の場合
中国の領海及び接続水域法は、外国の軍用船舶が中国の領海に入る場合には中国政府の許可を必要とすると定めている。
同様に事前の許可を求める国には、アルバニア、アルジェリア、アンティグア・バーブーダ、バングラデシュ、バルバドス、カンボジア、カーボベルデ、オマーン、パキスタン、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、ソマリア、スリランカ、スーダン、シリア、ベトナムなどがあるが、こうした国の国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
また、中国等の領海を我が国の自衛艦が過去に通航した際、実際に事前の許可を得てきたのか否か、お答え願いたい。その際、南シナ海や尖閣諸島周辺海域など、我が国が中国の領海であると認めていない海域については、どのように対処してきたのか説明願いたい。
二 軍艦の通航について事前通報を必要とする国の場合
軍艦の通航について事前の許可までは求めていないが、事前通報を求めている国としては、エジプト、フィンランド、ガイアナ、韓国、インド、マルタ、モーリシャス、セーシェルなどがあるが、こうした国の国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
また、韓国の領海を我が国の自衛艦が過去に通航した際、実際に事前の通報を行なってきたのか否か、お答え願いたい。その際、竹島周辺の領海については、どのように対処してきたのか説明願いたい。
三 外国の民間船舶等の通航について事前許可を必要とする国の場合
軍艦以外の外国船舶で、原子力船、核物質・危険・有害物質運搬船の航行について事前の許可を求めている国としては、エジプト、イラン、オマーンの三国があるが、こうした国の国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
四 外国の民間船舶等の通航について事前通報を必要とする国の場合
中国では、二〇二一年四月二十九日の全国人民代表大会で可決された海上交通安全法の改正(同年九月一日施行)により、「海上交通の安全に危害を及ぼすおそれ」のある外国籍の船舶に対し、領海に入る際の事前報告が義務付けられた。そうした事前報告の対象となる船舶としては、(1)潜水機、(2)原子力船、(3)放射性物質又はその他の有毒・有害物質を輸送する船舶、(4)法律、行政法規又は国務院が規定する、中華人民共和国の海上交通の安全を脅かす可能性のあるその他船舶とされ、違反者に罰金を科すことができるとしている。
そこで、こうした中国国内法の規定は、国際法違反であるのか否か、また、違反と判断する場合であれ、違反とまでは言えないと判断する場合であれ、その理由も含め日本政府として、どのように考えているのか説明願いたい。
次に、二〇二一年四月三十日、加藤官房長官は、記者会見で、この中国の海上交通安全法の改正について、「政府としては、本法の施行によっては、わが国を含む関係国の正当な権益が損なわれることがないよう、関連する動向を含め、引き続き注視をしていく考えでありますが、中国側に対しては、こうした考え方について、昨日、外交ルートを通じてしっかりと申し入れを行ったところであります。」と述べているが、どのような場合に、「わが国を含む関係国の正当な権益が損なわれる」リスクがあると考えているのか、説明願いたい。
さらに、軍艦以外の外国船舶について、同様に事前の通報を求める国としては、原子力船についてジブチとイエメンが、また、原子力船、核物質、危険・有害物質運搬船について、パキスタンとアラブ首長国連邦があるが、こうした国の国内法についても、中国の海上交通安全法の改正と同じ評価であるのか否か、違う場合には理由も含め説明願いたい。
五 我が国が事前通報制度を活用する可否について
二〇一六年八月に、二百〜三百隻の中国漁船が尖閣海域に侵入するという事件が発生した。現在、フィリピンの排他的経済水域内にも多数の中国漁船が居座り続けるという事件が起こっているが、こうした事態に対処するための最も効果的な方法は、自国の領海や接続水域等にそうした漁船が入る前に、侵入を阻止することであると思われる。
そこで、カナダでは一定の水域を設けて、そこへの入域に際し、事前通報を義務付けていたり、米国、カナダ、ニュージーランドでは、外国漁船が自国の排他的経済水域に入域する際に、事前通報を義務付けているが、我が国も同様な事前通報制度を設けて、「沿岸国の平和、秩序、又は安全を害する」懸念がある漁船が領海等へ侵入するのを阻止するために活用すべきと考えるが、政府として、こうした考えをどう評価するのか説明願いたい。
六 海洋環境保護に事前通報制度を活用する可否について
オーストラリアは、国際海事機関(IMO)の特別敏感海域(PSSA)制度の指定を受けているグレートバリアリーフ海洋公園について、船舶に事前通報を義務付けているが、こうした海洋環境の保護のために、船舶に事前通報制度を義務付けることを、政府としてどのように評価するのか説明願いたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
前段のお尋ねについては、御指摘の「こうした国の国内法の規定」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、一般論として、外国の軍艦に対し、沿岸国が、当該国の領海に入域する場合に事前の許可を求めることについて、海洋法に関する国際連合条約(平成八年条約第六号。以下「国連海洋法条約」という。)上明文の規定はないと考えている。
後段のお尋ねについては、自衛隊の艦艇が他国の領海を通航する際、国連海洋法条約等の関連規則に従って、適切に対応してきている。
二について
前段のお尋ねについては、御指摘の「こうした国の国内法の規定」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、一般論として、外国の軍艦に対し、沿岸国が、当該国の領海に入域する場合に事前の通報を求めることについて、国連海洋法条約上明文の規定はないと考えている。
後段のお尋ねについては、自衛隊の艦艇が他国の領海を通航する際、国連海洋法条約等の関連規則に従って、適切に対応してきている。
なお、竹島は、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であり、こうした我が国の立場に基づき、適切に対応している。
三について
お尋ねの「こうした国の国内法の規定」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、一般論として、軍艦以外の外国の原子力船及び核物質又はその他の本質的に危険若しくは有害な物質を運搬する船舶に対し、沿岸国が、当該国の領海に入域する場合に事前の許可を求めることについて、国連海洋法条約上明文の規定はないと考えている。
四について
お尋ねの各国の国内法については、御指摘の「こうした中国国内法の規定」及び「こうした国の国内法についても、中国の海上交通安全法の改正と同じ評価」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。
また、お尋ねの加藤内閣官房長官の発言については、政府として、御指摘の改正後の「海上交通安全法」の施行により我が国を含む関係国の正当な権益が損なわれることがないよう関連する動向を注視していく考えを述べたものであるが、これ以上の詳細については、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
五について
お尋ねの「同様な事前通報制度」、「「沿岸国の平和、秩序、又は安全を害する」懸念がある漁船」及び「領海等へ侵入」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、排他的経済水域においては、沿岸国は、国連海洋法条約に基づき、海底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源(生物資源であるか非生物資源であるかを問わない。)の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利を有する一方、全ての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、国連海洋法条約の関連する規定の定めるところにより、国連海洋法条約第八十七条に定める航行の自由を有する。また、領海においては、沿岸国は、国連海洋法条約に基づき、国連海洋法条約及び国際法の他の規則に従い、沿岸国の漁業に関する法令の違反の防止等の事項について沿岸国の領海における無害通航に係る法令を制定することができる一方、沿岸国は、国連海洋法条約に定めるところによる場合を除くほか、自国の領海における外国船舶の無害通航を妨害してはならず、特に、国連海洋法条約又は国連海洋法条約に従って制定される法令の適用に当たり、外国船舶に対し無害通航権を否定し又は害する実際上の効果を有する要件を課してはならないとされている。
六について
お尋ねの「こうした海洋環境の保護のために、船舶に事前通報制度を義務付けること」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、一般論として申し上げれば、排他的経済水域においては、沿岸国は、国連海洋法条約に基づき、国連海洋法条約の関連する規定に基づく海洋環境の保護及び保全のための管轄権を有する一方、全ての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、国連海洋法条約の関連する規定の定めるところにより、国連海洋法条約第八十七条に定める航行の自由を有する。また、領海においては、沿岸国は、国連海洋法条約に基づき、国連海洋法条約及び国際法の他の規則に従い、沿岸国の環境の保全並びにその汚染の防止、軽減及び規制等の事項について沿岸国の領海における無害通航に係る法令を制定することができる一方、沿岸国は、国連海洋法条約に定めるところによる場合を除くほか、自国の領海における外国船舶の無害通航を妨害してはならず、特に、国連海洋法条約又は国連海洋法条約に従って制定される法令の適用に当たり、外国船舶に対し無害通航権を否定し又は害する実際上の効果を有する要件を課してはならないとされている。
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