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米国関税措置及び日米間の合意に基づく投資イニシアティブに関する質問主意書
衆議院 第219回 第120号お答えすることは困難 ×4趣旨が明らかではない ×1検討してまいりたい ×1仮定の質問 ×1
質問本文
令和七年(二〇二五年)九月四日、トランプ米国大統領は、我が国に対する関税の措置に関する大統領令に署名した。同日、赤澤亮正経済再生担当大臣は、ハワード・ラトニック米国商務長官との間で、日米間の合意に基づく投資イニシアティブの大枠について、日米の共通理解を確認するための「日本国政府及びアメリカ合衆国政府の戦略的投資に関する了解覚書」(以下「了解覚書」という。)に署名した。また、日米両政府は、「二〇二五年七月二十二日の日米間の枠組み合意についての共同声明」を発出した。
これに関連して、次の事項について質問する。
一 今般の戦略的投資における投資先の選定については、日本側が投資案件を決定するのではなく、米国大統領が決定する仕組みであると承知している。この点について、ラトニック商務長官もマスメディアによるインタビューにおいて、トランプ大統領が投資先について完全な裁量権を有している旨を明確に述べている。
戦略的投資に関しては、五千五百億米ドル(約八十五兆円)を米国に投資することになるが、その投資資金の調達に当たっては、株式会社国際協力銀行(以下「JBIC」という。)からの出融資や株式会社日本貿易保険(以下「NEXI」という。)による民間金融機関の融資に対して行う保証が活用されるとのことである。
五千五百億米ドル(約八十五兆円)という大規模な戦略的投資の実行により多額の損失が発生した場合には、JBICやNEXIも重大な負担が発生し得る。その場合、政府として公的資金の注入まで想定しているのか、見解を示されたい。
二 日本国憲法は、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立つとするとしている。また、JBIC及びNEXIは、全額政府出資の株式会社であり、日本国民の財産とも言える。そのJBIC及びNEXIによる出融資や融資保証を活用した米国向け投資案件の決定が米国大統領によって行われる状況は、宗主国と植民地の関係に近いのではないか。今般の了解覚書の内容は、憲法が示す各国の対等な関係からは程遠いと考える。政府は、投資先を米国大統領が選定し、我が国が資金を拠出する了解覚書の内容について、日米両国が対等な関係に立ったものであると考えているのか。政府の見解を示されたい。
三 了解覚書においては、二〇二九年一月十九日までの間、経済・国家安全保障上の利益を促進するため、日本が半導体、医薬品、金属鉱物、造船、エネルギー(パイプラインを含む)等の様々な分野において、五千五百億米ドル(約八十五兆円)を米国に投資することが記載されている。今後三年間で国家予算の約三分の二に匹敵する約八十五兆円もの巨額な投資を行うためには、一年当たりに換算すると約二十八兆円の投資を行う必要があるが、このような大規模な投資を期限までに組成できると考えるのか、政府の見解を示されたい。
また、戦略的投資のための資金の調達については、了解覚書には記載されていないが、JBICの出資・融資やNEXIの融資保証を活用するとされている。これに関し、JBICの二〇二五年三月末時点の出融資残高及び保証残高の合計は約十七兆円、NEXIの二〇二四年三月末時点の保険責任残高は約十五兆五千億円であるが、三年間で八十五兆円という両機関の出融資残高や保険責任残高を遥かに上回る大規模な投資案件に対応することができるのか、見解を示されたい。
四 戦略的投資に係る対米投資案件が失敗した場合、出資・融資、融資保証を行うJBICやNEXIの資金回収が困難となり、国家財政にも大きな影響を及ぼすものと考える。令和七年度補正予算においては、JBIC及びNEXIの財務基盤強化のため、それぞれ二千七百億円及び千億円が計上されている。同予算は国会の審議を経るが、国家予算の約三分の二に匹敵する約八十五兆円もの巨額な投資を行う戦略的投資についても、国会の審議及び承認を要すると考えるが、政府の見解を示されたい。
五 戦略的投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配については、日本が提供した資金の元利返済相当分(保証料含む)を確保するまでは、米国と日本が五割ずつ分配し、その後は米国が九割、日本が一割で分配するものと承知している。
しかし、金融リスクは日本側が負担するにもかかわらず、この投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配割合が、五割又は九割と米国側に多いのは、バランスを欠いているのではないか。米国側が提供する土地、水、電力等の負担は、日本側の負担と比較して偏った分配割合に見合うほどに大きいものなのか、政府の見解を示されたい。
また、この投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配割合は、いかなる根拠に基づいて決定されたものか明らかにされたい。
六 戦略的投資から生ずる利用可能なキャッシュフローの分配は、いつまで継続されるものなのか。事業が存続する限り当該分配比率が適用されるのか、あるいはトランプ政権の存続期間に限定されるのか、明らかにされたい。
七 戦略的投資については、JBICやNEXIといった公的金融機関の資金が米国の産業政策のために一方的に利用され、日本にリスクのみ残る「下請型」経済安全保障になる懸念がある。政府は、戦略的投資について、記者会見や国会における答弁においても、投資対象は日米が協調する経済安全保障分野としており、「国益に資する」「日本企業にメリットがある」と述べているが、「国益」や「日本企業のメリット」は何を意味するのか具体的に明らかにされたい。
また、戦略的投資について、日本が受ける利益について評価指標を示し、実績を公表する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
八 国家予算の約三分の二に匹敵する約八十五兆円もの巨額な戦略的投資を行うに当たっては、日本にとって収益性のある有益なプロジェクトを選定していくことが極めて重要であることから、透明性を確保した上で決定すべきと考える。日米で作る協議委員会や米国で組織する投資委員会の議事録や提出された資料は公開されるのか。公開される場合、いつ公開されるのか具体的に明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは困難である。
なお、御指摘の「了解覚書」のパラグラフ二十二において、「この覚書のいかなる内容も、日米両国のそれぞれの関係法令と矛盾してはならない」(仮訳)とされているとおり、株式会社国際協力銀行(以下「JBIC」という。)は、JBICの業務に係る各勘定の収入が支出を償うに足るよう貸付金の利率等を定めるものとする株式会社国際協力銀行法(平成二十三年法律第三十九号)第十三条第二項の規定等に従って、また、株式会社日本貿易保険(以下「NEXI」という。)は、貿易保険の事業の収入が支出を償うに足るよう保険料率を定めることを求める貿易保険法(昭和二十五年法律第六十七号)第四十条第二項の規定等に従って、それぞれ業務を行うこととなる。
二について
御指摘の「日米間の合意に基づく投資イニシアティブ」については、例えば、御指摘の「了解覚書」のパラグラフ九において、「米国は、米国連邦の土地のリース、交通アクセス、水、電力、エネルギーを投資に関するプロジェクトに可能な場合にアレンジする意思を有するとともに、オフテイク契約をアレンジするよう努める」(仮訳)とされているとおり、米国側による様々な貢献が見込まれるところ、日本側が一方的にJBIC及びNEXIによる出融資等を行うものではない。
また、御指摘の「了解覚書」のパラグラフ五において、「協議委員会は、とりわけ、それぞれの国の関連する戦略的及び法的な考慮事項について、投資委員会にインプットを提供する」(仮訳)とされているとおり、プロジェクトの選定に当たっては、我が国の政策の方針や法令が考慮されるものと考えている。加えて、御指摘の「了解覚書」のパラグラフ二十二において、「この覚書のいかなる内容も、日米両国のそれぞれの関係法令と矛盾してはならない」(仮訳)とされているとおり、JBIC及びNEXIは、それぞれ、我が国の利益に資する事業を行うことを前提とする、株式会社国際協力銀行法及び貿易保険法の枠組みの下、業務を行うこととなる。これらにより、我が国の利益に資するようプロジェクトが選定されることとなると考えている。
以上のことから、お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「対等な関係からは程遠いと考える」との御指摘は当たらないと考えている。
三について
御指摘の「大規模な投資」及び「大規模な投資案件」の規模については、プロジェクトの形成の動向によるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、政府として、民間企業等によるプロジェクトの形成を積極的に促すとともに、JBIC及びNEXIが、出融資等を迅速かつ円滑に行うことができるよう、令和七年度補正予算において、それらの財務基盤の強化等に要する経費を計上したところである。今後も、必要に応じて、適切な措置を検討してまいりたい。
四について
御指摘の「了解覚書」は法的拘束力のある国際約束ではなく、国会の承認を要するものではない。
また、個別のプロジェクトについても、JBIC及びNEXIの出融資等を活用して、民間企業等において形成されるものである。
五について
御指摘の「利用可能なキャッシュフローの分配割合」は、御指摘の「了解覚書」のパラグラフ九において、「米国連邦の土地のリース、交通アクセス、水、電力、エネルギーを投資に関するプロジェクトに可能な場合にアレンジする意思を有するとともに、オフテイク契約をアレンジするよう努める」(仮訳)とされているとおり、米国側による様々な貢献が見込まれることから、これを踏まえ、日米間の協議を通じて合意されたものであり、当該分配割合に見合った米国側の貢献が見込まれることを前提としている。
六について
お尋ねについては、御指摘の「了解覚書」のパラグラフ十二において、「投資による全てのフリーキャッシュフローをこの覚書に従って分配させるものとする」(仮訳)とされていることから、個別のプロジェクトの契約等に基づいて、当該プロジェクトの実施期間中、キャッシュフローが分配されることとなる。
七について
お尋ねの「国益」については、御指摘の「了解覚書」に記載されている「経済・国家安全保障上の利益」等について述べたものである。
お尋ねの「日本企業のメリット」については、個別のプロジェクトにより異なるものと考えられることから、一概にお答えすることは困難であるが、例えば、御指摘の「了解覚書」のパラグラフ十において、「投資及び投資に関連するプロジェクトに商品・サービスを提供するベンダー及びサプライヤーを選択するに当たり、投資委員会は、可能かつ利用できる場合には、比較可能な外国のベンダー及びサプライヤーの代わりに、日本のベンダー及びサプライヤーを選択する」(仮訳)とされていることから、「ベンダー及びサプライヤー」として、御指摘の「日本企業」が、プロジェクトに機器、設備及び原材料を供給することが想定される。
お尋ねの「日本が受ける利益」は、個別のプロジェクトの内容により異なるものと考えられるため、お尋ねのように「評価指標を示し、実績を公表する」ことは想定していない。
八について
JBIC及びNEXIが出融資等を行う、御指摘の「投資イニシアティブ」のプロジェクトについては、政府としては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)に基づく情報開示等を通じ、「透明性」の「確保」に努めてまいりたい。
その上で、御指摘の「協議委員会」は、「了解覚書」のパラグラフ五のとおり、我が国政府と米国政府の「両国から指名される者で構成される」ものであるが、お尋ねの「議事録や提出された資料」の「公開」については、個別企業の経営上の秘密に属する事項や、外交上のやり取りの詳細が含まれ得るため、現時点で一概にお答えすることは困難である。
また、御指摘の「投資委員会」は、「了解覚書」のパラグラフ四のとおり、「米国商務長官が議長を務め」る米国政府が設立する委員会であるため、お尋ねの「議事録や提出された資料」の「公開」について、我が国政府としてお答えする立場にない。
この答弁書に出てくる定型句
お答えすることは困難 ×4趣旨が明らかではない ×1検討してまいりたい ×1仮定の質問 ×1
語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。