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沖縄における軍用地問題に関する質問主意書

衆議院 第67回 第4号承知していない ×1

提出者
衆議院
提出日
1971年12月4日
内閣転送 1971年12月8日
答弁書受領日
1971年12月11日
提出から7日
答弁の項目数
0
質問 6,867字/答弁 6,085字

質問本文

衆議院議長 ※(注)田 中 殿

沖繩における軍用地問題に関する質問主意書

沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律案は現に委員会において審議されているところであるが、憲法上幾多の疑問が提起され、いまなお政府答弁は右疑問を解明するにいたつていない。憲法上の疑義ある限り本法案は当然撤回されてしかるべきものと考え以下各項にわたり政府の回答を求めたい。

一 期間等について

本法案は、「三万数千人に及ぶ多数の所有者及びその他の権利者が数えられ、しかもそのうちには相当数の所在不明者、海外移住者等も含まれている状況」(本法案提案理由)にあるので「暫定的に一定期間これらの土地などの使用権を設定」(本法案提案理由)しようとしているが、右期間が五年に及ぶことは借地法等の先例を引用するまでもなく、法律の解釈上「暫定使用」の期間を逸脱し、なんら適正の手続を経ることなく、強権をもつて使用権を設定するものとのそしりをまぬがれず、右は憲法第二十九条第三項及び第三十一条の違反がうかがわれ財産権を不当に侵害するものといわざるを得ない。

1 本法案第二条第一項第一号「この法律の施行の際沖繩においてアメリカ合衆国の軍隊の用に供されている土地又は工作物」とあるのは、まずアメリカ合衆国の用に供されている土地又は工作物は当然含まないと解されるが確認を求めたい。「用に供されている」とはもちろん法的根拠(権原)に基づいて「用に供されている」ことに限定されることと考えるがその確認を求めたい。政府は従来右法的根拠として布令第二十号(賃借権の取得について)、直接契約・許可(一九五八年十月二十八日特別委員会琉米両側委員間の同意事項について)によると答弁しているが、右以外に法的根拠は認めない趣旨と解すべきであるか、確認を求めたい。

2 そもそも許可とは法令による一般的禁止(不作為義務)を特定の場合に解除し、適法に特定の行為をなすことを得しめる行為である。しからば市町村が私有地について許可権限を有しないことは当然であり、かかる市町村の許可が「アメリカ合衆国の軍隊の用に供されている土地」としての法的根拠となり得ないと思われるがどうか。

政府は、右「許可」を「市町村長を代理人とする地主と米軍の間の土地使用に関する契約であると観念すべきもの」とし、「対価は補償金なる表現がとられているが法的には借料とみるべきもの」と述べ、右理由として「米軍に与えている土地使用許可証」において「関係地主に代わりまた彼らの代表として」米軍の土地使用に「同意し許可する」ものであると、見解を述べている。しかし右見解は到底首肯し得ない。すなわち、政府は、本法案の提案理由において前述のとおり「相当数の所在不明者等」の存在を暫定使用の理由としているが、そのことによつても地主(所有者)の市町村長に対する代理権の委任が適法に行なわれたとは到底考えられない。したがつて、いわゆる「演習地域」についての契約は代理権限なき部分は当然契約無効のものと考えざるを得ないがどうか。又適法な代理権限の委任と称するものは文書・口頭いずれによるものか実態を明らかにされたい。

3 「演習地域」についての「許可」は一年を限度とし、場合により更新を認めているにすぎない。本法案に基づく政令要綱によれば右暫定使用期間は三年ということであるが、米施政権下にあつて一年の期間のうちしかも限定された演習日数の使用にとどまるものが復帰後、三年という期間に延長されるのはまさしく法的安定性を破り暫定使用の名による私権侵害と思料されるがどうか。暫定使用である限り「従来の使用関係の範囲を超えるものではない」という提案理由と矛盾すると断ぜざるを得ないがどうか。米軍の「用に供する区域及び施設」については、いわゆる「安保条約第六条に基づく土地特別措置法」に特例措置を講じ、同法を適用することが唯一の本土なみの法的処理であると考えるがどうか。政府は右演習地域についての契約は米軍と地主との間の契約であると言明しているが、右契約は民法上いかなる契約にあたるか。また米国の不動産法においてかかる契約はどのような法的性格を有するのか。

4 かつて加藤一郎氏は「沖繩軍用地問題」で、「一九四五年三月から六月にかけての沖繩の戦闘が終わつたのち、米軍は沖繩本島の住民を各地の収容所に収容して、全島の土地をその管轄下においた。これが今日の軍用地の出発点である。このように沖繩では、はじめはいわばすべてが軍用地だつたのであり、不要な所が解除されて残つた所がほぼ現在の軍用地である。このことは、内地の基地と非常に異なる点である」と述べている。その後の軍用地問題の展開は布令第二十号にいたるまで法的形式をよそおいつつもその実態は一方において銃剣とブルドーザーによる収用・使用であり、他方において手続上の司法的救済手段を欠くものであつた。さらに詳述すれば右布令が要求告知、収用宣告等の一方的方法によつて土地を不定期又は五年の期間「独占的使用」し、場合によつては「立入又は占有する権利を直ちに与えるよう命令する緊急の必要がある場合において時間的に余裕がないときはかかる命令に先立つて折衝を行なうことを必要要件としない。」(布令第二十号二取得a)とあり、琉球政府の折衝手続を省略し「何時でも即時占有命令を発すること」ができるという点からもその適正手続の要件を欠いていることは言をまたない。

特に「土地裁判所」について右布令を中心とする布令布告には訴願等について煩雑な規定を設けているが、土地裁判所の権限は結局のところ、収用の適否(取消)を争いうるものでなく、単に補償の訴願にとどまつている。したがつて土地裁判所は司法的救済を保証する司法機関でなく単なる行政的機関であり、その権限は補償にとどまるのであるが、それすらも運用の実態において今日まで十数年間における訴願認容、わずかに二ケースという事実とあわせ考えるとき、大統領行政命令第十節の規定にもかかわらず、かかる手続はアメリカ合衆国憲法第五条、同修正第十四条、日本国憲法第三十一条、同第三十二条などの近代的民主的法制の観点からみるとき、明らかに適正手続を欠いたものと考えられる。このような歴史的経過の中で布令第二十号は適正な手続による土地収用の法的要件を欠くと考えられるが、回答を求めたい。

5 果たしてそうであるならば、右適正手続を欠く軍用地が復帰後も引き続き使用されることは沖繩返還協定及び国内法による違法手続の合法化であり許されないものと考えるがどうか。

二 告示について

本法案は告示・使用権の発生、通知という従来例をみない手続順序を定めている。したがつて右告示を中心として疑義の回答を求めたい。

1 行政処分の告知の方法は通知を原則として公示を補足的なものとすると考えられるが、本法案にいう告示の性格は何か。本法案第二条第三項の通知は全く法律上の効果を有しない事実行為であることの確認を求めたい。

告示は、行政機関の意思表示(法律行為)の形式としての告示(すなわち一般的処分または立法の性質を有する告示。行政規則の性質を有する告示)と通知行為の性質を有する告示とに区別されているが、本法案の告示の性格は必ずしも明確でないのでお尋ねしたい。

2 告示の効力はいつ発生するか。特に本法案の対象となる土地及び地主は沖繩にあることは明らかであるが、本土において告示の効力が告示の日に生ずるのは容易に理解できるが、沖繩に対し、告示の効力が生ずるのは復帰の日でしかないのではないか。沖繩は法律上法域を異にする地域であるとする政府の従来の見解からもそのように解せざるを得ないのではないか。政府の見解を求めたい。

もし復帰の日に告示の効力が生ずるとするならば使用権発生も同日であるから、沖繩在住の土地等の所有者等は行政不服審査法・行政事件訴訟法による事前救済を受けられないことになる。右は憲法第十四条、第三十一条及び第三十二条違反と考えられるが政府の見解はどうか。

3 告示は「区域と使用の方法を告示する」とあるが、かかる告示は所有権者を予想しての告示すなわち人に対するものではなく極言すれば物に対する告示とさえ言わざるを得ず、告示としての最少必要限度の要件を具備しないと考えるがどうか。付言するならば、かかる告示によつて所有者等は自己の土地が右区域に包含されるや否やを直ちに知り得ないと思われるからである。従来地主が地代を受領していた事実をもつて反論されることも考えられるが、そのことは告示の区域に自己の所有地が含まれることと直接的に一致するものではない。この点についての政府の見解を求めたい。

4 告示について具体的にはどのような内容範囲を告示するのか。いわゆる「小笠原暫定措置法」の告示とどの点が相違するか。告示において「使用しようとする土地等の所在・種類・数量及び使用期間」の特定は私権制限上最少限の要件と考えるがどうか。本法案附則第二項にいう「内容」には告示の内容通知を含むか。

5 右告示は仮に琉球政府においてこれを琉球政府公報に掲載し、あるいは図面の縦覧等の措置を行なつた場合、その法律上の性格、効力はどのように理解すべきか。また告示を行なう時期について回答せられたい。

三 不服申立及び原告適格について

仮に復帰前に不服申立が可能なりとする前提に立脚した場合、次の諸点につき回答を求める。

1 県有地について、復帰前訴訟は可能か。もし可能でないとするならば憲法上の疑義を生ずるおそれはないか。

いまなお本土よりの渡航は不法に制限される場合がある。また、資格ある代理人を選ぶ権利は憲法上の権利である。本土の弁護士が訴訟準備のため渡航することは訴えの提起にあたり必要不可欠と考えるが、右渡航が制限された場合出訴期間は不変期間として進行するか。そのような場合憲法上の疑義を生じないか。

2 本法案による不服申立は当然抗告訴訟と観念されるが、訴状添付別紙図面はどの程度の特定を必要とするか。

3 出訴期間の起算点について、沖繩県民については通知(使用権発生後)の日よりとなす国会答弁があるが、あらためてその真意をお尋ねしたい。

4 抗告訴訟とともに地主より自己所有地の確定(範囲を含む)を求める訴訟が提起され、また抗告訴訟とは別に境界確定の訴訟が提起されると考えられるが、訴訟提起前及び訴訟提起後立証準備のため米軍基地内への立入りは原告にとつて必要不可欠のことと思われるが、政府は米国と協議の意思があるか。

民事裁判管轄権に関する合意事項中検証に関し「これを許可し」とあるのは司令官の自由裁量とは到底考えられないが政府の見解を求める。

万一許可がなく検証を実施することができない場合裁判を受ける権利は事実上奪われることとなるが憲法上の疑義は生じないか。

暫定使用が適正かつ合理的であるか否かが抗告訴訟の争点となると思われる。右についての立証責任は被告国が負うとは従来政府が再三明確に答弁しているところであるが再確認したい。

5 本法案の暫定使用権はいわゆる「地位協定の実施に伴う特別措置法」、「土地収用法」、「公共用地の取得に関する特別措置法」に共通する適正かつ合理的の判断を後日にゆだねたものであり、抗告訴訟においてはまさにその点が前述三法の判断(手続)に先行して争われると解してよろしいか。

6 立証責任と合衆国軍隊の機密とは密接な関連があると思われるので以下の事項についてお尋ねしたい。

「安保条約第六条に基づく地位協定」第二十三条によつて、「日本国政府は、その領域において(中略)必要な立法を求め、及び必要なその他の措置を執ることに同意」しているが「必要なその他の措置」としていかなることがなされてきたか。

「地位協定」第二十五条により「相互間の協議を必要とするすべての事項に関する」協議機関として設けられた合同委員会で右について合意された事項があるか。

米国その他外国との間に、秘密情報・資料の交換について定めた取極が存在するか。

いわゆるMSA秘密保護法による秘密保全のため規範的命令としての訓令・達を示しその必要理由を明らかにせよ。

「地位協定の実施に伴う刑事特別措置法」上の合衆国軍隊の機密保全のための規範的命令たる訓令・通達・達等を示しその必要理由を明らかにせよ。

合衆国軍隊は「刑特法」別表一・二・三に掲げる事項のうち公にするものと秘匿するものとをいかなる基準により区分しているか、基準となつているすべての法令・規程に基づき答えられたい。

「刑特法」にいう部隊の編制・任務・配備・行動について政府は、合衆国が公にしていない情報の通告を受けているか。

7 原告適格とは行政事件訴訟法の第九条に明らかなとおり「法律上の利益」を有する者云々とあるが、当然のことながら復帰後の沖繩県及び同県下市町村は県有地・市町村有地が「区域」として提供されている限り右土地に関し原告適格を有することは自明の理であるが、確認したい。

地方自治法第二条によれば地方公共団体の事務として「地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」及び「法律の定めるところにより、地方公共の目的のために動産及び不動産を使用又は収用すること」などをあげている。久田栄正氏は、かつて「政府は公共の福祉を憲法の定めている基本的人権の尊重に対立させて住民の生命身体財産の危険に対しても一顧だにしない論理でつらぬいている。第三次防衛力整備計画を住民の「平和に生きる権利」に優先させて遂行しようとしているのである。」と論述している。

沖繩県及び同県下市町村においては地方公共団体の行政区域の主要部分が基地として使用され、地方公共団体本来の運営に重大な支障を生じていることはもはや公知の事実である。

かかる観点に立つとき沖繩県の特殊事情は平和経済開発を中心とする公共の福祉と、政府の主張する基地のいわれなき「公共性」が二律背反として争われるべき主要な課題であり、それは政治的、行政的課題であるとともに司法的救済の対象となり得ると考える。すなわち沖繩県及び同県下市町村は行政区域内における私有地についてもその処分の取消を求める法律上の利益すなわち原告適格を有するものと考えるが政府の見解を求めたい。

四 自衛隊及び米軍基地について

1 特に自衛隊の土地使用は基地機能の維持、治安対策にあることは国会における佐藤内閣総理大臣の答弁からも十分うかがえる。防衛庁提出資料による「自衛隊の予定訓練計画と米軍との協定」によれば陸上自衛隊は一般基礎訓練、各種射撃訓練、災害救済訓練、通信訓練等とあるが治安行動に関する訓練は一般基礎訓練の中に包含されているとの疑いをもたざるを得ない。これについて政府の見解を伺いたい。

2 米軍に提供される区域及び施設は「安保条約」、「地位協定」の範囲内においてのみ使用さるべきものであることはいうまでもない。仮に地位協定違反の土地使用ある場合には所有者及び関係人は損害賠償または土地明渡し請求訴訟の対象たり得ると思料するが政府の見解を求めたい。

3 自衛隊用地の暫定使用は本法案中最大の争点であり最も物議をかもしているところである。過去幾多の明白な否定論にもかかわらず、政府があえて自衛隊に「公共性」ありとする根拠と本法案による自衛隊の暫定使用の法的根拠を土地収用法改正経過、「公共用地の取得に関する特別措置法」制定経過との関係を含めて明確にされたい。

4 なおこの際、国防の空白は一日もゆるがせにできないとする政府が、自衛隊法第七十六条(防衛出動)の規定をうけた自衛隊法第百三条(防衛出動時における物資の収用等)に定める政令をいまなお制定していない理由を問いたい。政令の必要なしとするならば自衛隊の本法案による暫定使用は、その比較において緊急性の合理的説明を欠くものと思料するがどうか。

五 本法案の意図

本法案は米軍及び自衛隊の基地確保を唯一の目的とするものと断ぜざるを得ない。たとえば第二条第一項第七号の道路については復帰後、道路法第七条(都道府県道の意義及びその路線の認定)等または第十八条(道路の区域の決定及び供用の開始等)により認定後借用開始までの間は第九十一条(道路予定地)を適用することにより本法案がなくとも支障なしと考えるが、政府の見解を伺いたい。

果たしてしからば本法案の強権性と違憲性は帝国憲法下の国家総動員法・軍事特別措置法、さらにはナチス施政権下の土地収用法にさえ例をみない不法不当のものであると考えるが政府の見解を求める。

以上沖繩県に憲法違反の本法案を適用することは到底許容し得ないところである。強く撤回を求めるものであるが、政府にその意思があるか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一

1

(一) 沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律(案)(以下「暫定使用法(案)」という。)第二条第一項第一号の「アメリカ合衆国の軍隊の用に供されている土地又は工作物」には、アメリカ合衆国の軍隊以外のものの用に供されているものは、含まれない。

(二) また、同号の「用に供されている」とは、法的根拠(権原)に基づいて用に供されているという意味である。

(三) 現在、沖繩においてアメリカ合衆国軍隊が土地又は工作物を使用している法的根拠は、布令第二〇号、直接契約及び市町村長の許可の三者であると承知している。

2 市町村長の許可は、米国民政府からのアメリカ合衆国軍隊の演習のための土地使用の要請に対して行なわれるもので、「許可」という文字が用いられてはいるが、それは、法令による一般的な禁止を特定の場合に解除するいわゆる行政法上の許可とは異なり、地主の承認を得たうえで行なわれる使用の同意と解している。右の同意については、米国民政府から市町村長に支払われた使用料及び損失補償金が支払いを受けるべき個人に配付されているとのことであるから、市町村長と地主との間には代理関係が成立しているものと、承知している。したがつて、右許可は、十分、土地使用の法的根拠となり得るものと考える。

なお、「演習地域」についての市町村長の代理権限は、口頭により区長、部落長を通じて地主の承諾を得ているので、口頭によるものと承知している。

3

(一) 「演習地域」は、年度更新により使用されているとはいえ、その実態は、毎年継続して使用されているものである。「演習地域」は、復帰後においては地位協定に従い使用が許される施設・区域であり、関係土地の使用期間は、ある程度の安定性が必要であること及び契約又はいわゆる地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法により使用権を取得するまでの期間が必要であること等を勘案して、これにふさわしい期間とすることを予定している。

(二) 暫定使用法(案)は、沖繩の施政権返還という特殊な事態に対処するための措置であり、平和条約発効時の場合とは異なるので、新たな立法を必要としたものである。

(三) 「演習地域」についての契約は、民有地に関しては、賃貸借類似の無名契約と解される。かかる契約がアメリカ合衆国の不動産法においてどのような法的性格を有するのかは、つまびらかでない。

4・5 原則として布令第二〇号により土地等を「収用」するに際しては、事前に琉球政府が関係地主と折衝を行ない、折衝による取得ができなかつた土地等について所要の手続を経た後に適正補償を支払うとの前提で「収用」し得ることとなつており、また、「収用」された土地等の補償額について不服のある者は、琉球列島米国土地裁判所に訴願することができることとなつている。

右のような布令第二〇号の内容、土地裁判所の性格及び権限は、本土における法制度とはかなり異なる面を有し、土地所有者の権利保護という見地からは必ずしも十分なものであるとはいえないにしても、平和条約第三条に基づきアメリカ合衆国の施政権下にある沖繩の特殊な地位を考慮すれば、必要最小限度の法的要件はみたしているものと考える。

二

1

(一) 暫定使用法(案)第二条第二項の告示は、同条第一項の規定により使用権の設定される土地等を具体的に明らかにして、あらかじめ関係権利者に知らせる処分であるが、それは、沖繩にわが国の施政権が及ぶ前に沖繩にある土地等について公用使用権を設定するものではなく、沖繩復帰を停止条件として公用使用権を設定しようとするものである。

(二) 暫定使用法(案)第二条第三項の通知は、使用権発生の効力要件ではない。

2 告示の性格は、1(一)において述べたとおりであつて、その条件付き処分としての効力は、当該告示に係る土地等の所有者等が沖繩に居住していると否とを問わず、当該告示の日に発生する。したがつて、復帰前においても、これらの者が当該告示に関し不服を申し立て又は抗告訴訟を提起することができることは、いうまでもない。

かようなわけであるから、暫定使用法(案)は、憲法第一四条、第三一条及び第三二条に違反するものではない。

3 告示については、その対象となる土地の区域等を官報に掲載し、かつ、適当な場所において関係図書を縦覧に供することにより、関係者が自己に関係する土地等が暫定使用法(案)による使用権設定の対象となつているかどうかを判断することができるような方法をとる考えであるので、本件告示が、質問にあるように、告示としての要件を具備しないとは解されない。

4 告示の内容については、小笠原の場合と同様、土地等の所在地、区域等、使用の方法及び使用期間を官報に掲載するほか、土地の区域を明示した図面を縦覧に供することにしている。この告示の内容は、暫定使用法(案)附則第二項の「この法律の内容」には含まれないが、琉球政府行政主席に通知することとしている。

5 琉球政府において質問にあるような措置をとつたとしても、その措置は、本土法に基づくものではないから、事実上の措置にとどまり、本土法上の効力を有するものではない。

また、告示は、返還協定批准後なるべく早い時期に行ないたいと考えている。

三

1

(一) 質問が、沖繩にある従前の沖繩県有地について、琉球政府が復帰前に訴訟を提起することができるかという意味であれば、琉球政府は、右財産について管理権を有しない現在、訴訟を提起することはできないと考える。それは、平和条約第三条によりアメリカ合衆国が施政権を有することの結果としてやむを得ないところである。

(二) 質問の場合でも、出訴期間が進行することに変わりはないと考える。政府としては、訴訟準備のための渡航について制限されることがないよう努力したい。

2 質問の訴状添付別紙図面は、訴訟の対象たる土地が告示された区域内のいかなる部分に存在するかを識別し得るものであれば足りると考える。

3 質問の抗告訴訟については、行政事件訴訟法第一四条第一項の「処分があつたことを知つた日」とは、暫定使用法(案)第二条第二項の告示があつたことを知つた日と解されるが、沖繩に居住する関係権利者にとつては、通常、復帰後遅滞なく行なわれる同条第三項の通知が到達した日又はこれに代わる公示があつたことを知つた日がこれに該当すると思われる。

4

(一) 復帰後においては、土地所有者の境界確定等の訴訟に関連して、関係人の施設・区域への立入りが必要不可欠であると認められる場合には、政府として、右立入りの要請をアメリカ合衆国軍隊の関係当局に伝達する。

(二) 裁判所による検証が、司令官の恣意的な裁量により不許可となることはないが、アメリカ合衆国軍隊の軍事上の秘密保護の必要により、検証が制約される場合があり得る。

(三) 立証方法は、検証に限られるわけではないから、たとえ検証を実施することができなくても、直ちに憲法上の疑義が生ずるとは考えられない。

(四) 国の公用使用について、それが適正かつ合理的であるかどうかが訴訟上問題となる場合は、国がそのことについての立証責任を負うことになる。

5 およそ公用使用は、適正かつ合理的なものでなければならないことはいうまでもないが、暫定使用法(案)は、新たに使用を始めるというのではなく、沖繩の復帰に至るまで引き続き一定の公用又は公共の用に供されていた土地等について、従前と同一又は同種の用途のために、暫定的に一定の限られた期間内において、使用権を設定しようとするものであつて、適正かつ合理性との関係についていえば、同法(案)は、これによる個個の使用が同法(案)第二条に定める要件に該当する限り、類型として、適正かつ合理性の要件をみたしているものとしていると解すべきものと考える。したがつて、その暫定使用が同条に定める要件に該当している限り、そのうえにさらに適正かつ合理的であるかどうかが争点としてとり上げられるべき性質のものではないと考える。このことは、いわゆる地位協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法が、同法による土地等の使用等について適正かつ合理性の要件を定めているのにかかわらず、同法附則第二項による暫定使用については、その要件として特に適正かつ合理的であることを規定していないことに対比すればおのずから明らかであろう。

6

(一) アメリカ合衆国軍隊の安全及び保護の確保のための立法以外の措置としては、たとえば、アメリカ合衆国の軍用機の施設・区域外における墜落又は不時着の場合の財産保護及び危険防止のために、日本の公の機関により必要な措置がとられることとなつている。

(二) 地位協定第二三条の「措置」そのものに関する合同委員会合意は、存在しないが、刑事裁判権に関する合意(国会に提出済み)中に、関連のあるものがある。

(三) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定(昭和二九年条約第六号)第三条第一項、日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定(昭和二七年条約第二〇号)第七条及び日本国に対する合衆国艦艇の貸与に関する協定(昭和二九年条約第一三号)第六条にそれぞれ情報の秘密保護に関する規定がある。

また、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和三一年条約第一二号)中に秘密に保持されている特許出願等に関する規定がある。

(四) 日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法施行令第七条の規定に基づき、防衛庁において、防衛秘密の保護に関する訓令(昭和三三年防衛庁訓令第五一号)、防衛秘密の保護に関する達(昭和三九年陸上自衛隊達第四一―三号、昭和四三年海上自衛隊達第七五号及び昭和四三年航空自衛隊達第三四号)等が制定されている。これらは、防衛秘密の保護上必要な措置として定められたものである。

(五) いわゆる地位協定の実施に伴う刑事特別法上のアメリカ合衆国軍隊の機密保全に関し定めた訓令・通達・達等は、存在しない。

(六) いわゆる地位協定の実施に伴う刑事特別法別表一、二及び三に掲げる事項のうち、公にするものと秘匿するものとを区分するアメリカ合衆国軍隊の基準については、承知していない。

(七) 政府は、いわゆる地位協定の実施に伴う刑事特別法にいう部隊の編成・任務・配備・行動に関し公にされていない情報の通告を受けることもある。

7

(一) 復帰後の沖繩県又は同県下市町村は、告示された区域に属する土地の所有者として、当該区域について、原告適格を有するものと考える。

(二) 質問については、裁判所において判断されるべき事項と考えるが、政府としては、沖繩県及び同県下市町村は原告適格を有しないと考える。

四

1 治安出動は、自衛隊法(第七八条、第八一条)に定められた自衛隊の任務であつて、復帰後の沖繩に配備される予定の陸上自衛隊においても、一般基礎訓練のうちの教練、徒手、格技、野外衛生、救急法等が、治安出動のための訓練に活用されることとなる。

2 提供された施設・区域についてかりに地位協定に違反する使用があつたとした場合、合同委員会等において措置することができることはもちろんだが、当該施設・区域に係る土地等の所有者等がその違反について直接訴訟を提起することはできないと考える。

3

(一) 自衛隊は、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当る」(自衛隊法第三条第一項)べき任務を有し、具体的には、自衛隊法に定める防衛出動(第七六条)、治安出動(第七八条、第八一条)等の行動をとることとされているのであるから、このような自衛隊が公共性を有することはいうまでもない。

(二) 昭和二六年五月、現行土地収用法の国会審議の際、政府委員は、「国防、その他軍事に関する事業………(は)、新憲法の下におきまして、当然不適当であると考えられますので、これは廃止することにいたしております。」と答弁しているが、これは、その言葉から明らかなように、旧憲法の下におけるような国防ないしは軍事に関する事業が新憲法の下では考えられないという趣旨の答弁と解される。防衛庁設置法第五条第三号の規定によつて防衛庁が所掌事務の遂行に直接必要な施設として設置する自衛隊の施設が、現行土地収用法第三条第三一号の施設に含まれることは、同号の文理解釈上明らかである。

また、昭和三九年五月土地収用法等の一部を改正する法律の国会審議の際、当時の建設大臣は、「軍施設を「公共の」の範囲に入れるということは適当でない」と答弁しているが、

これは、特定公共事業の政令委任について定める公共用地の取得に関する特別措置法第二条第八号についての発言であり、自衛隊の施設に関する土地収用法の適用関係についてふれたものではない。

4 現在、自衛隊法第一〇三条(防衛出動時における物資の収用等)に基づく政令が制定されていないのは、さしあたつてこれを定めておく必要がないからである。ところで、沖繩の復帰により、わが国が沖繩における局地防衛、災害派遣、民生協力等を引き受けることは当然であり、このためには、自衛隊の配置に必要な施設に係る土地等の確保を要することもいうまでもないから、暫定使用法(案)は、その確保に必要、かつ、不可欠なものである。したがつて、自衛隊法第一〇三条に基づく政令が制定されていないからといつて、暫定使用法(案)制定の緊急性がないということにはならない。

五 暫定使用法(案)は、沖繩県民の生活に一日も欠くことのできない水道事業、電気事業、道路、飛行場、灯台等の用に供される土地をもその対象としており、アメリカ合衆国軍隊及び自衛隊の基地確保を唯一の目的としたものではない。なお、現に一般交通の用に供されている道路については、単なる道路の予定地としてではなく、復帰の日から道路法上の道路として供用する必要があるので、暫定使用法(案)がなくても支障がないということにはならない。

また、暫定使用法(案)は、沖繩の施政権がわが国に返還されるという特殊な事態に対処するため立案されたものであり、関係土地等を一定期間に限り暫定的に使用できるよう措置しようとするものであるが、これらの措置は、公共のためのやむを得ないものであり、小笠原についての先例もあり、なんら不法不当なものではないと考える。

以上述べたとおり、暫定使用法(案)は、沖繩の復帰と同時にこの区域の施政の権能と責任を引き受けることとなるわが国が、沖繩の復帰と同時になすべき措置の一について定めようとするものであるので、本法(案)を撤回するつもりはない。

右答弁する。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

承知していない ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

似た質問主意書

件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。

提出 1971年12月15日 中谷鉄也 答弁 1971年12月21日
衆議院 第67回 第5号
提出 1977年5月27日 喜屋武 眞榮 答弁 1977年6月21日
参議院 第80回 第24号検討してまいりたい ×2
提出 1976年5月24日 喜屋武 眞榮 答弁 1976年5月28日
参議院 第77回 第21号
提出 1980年11月29日 上原康助 答弁 1980年12月5日
衆議院 第93回 第19号
提出 1975年12月6日 喜屋武 眞榮 答弁 1975年12月19日
参議院 第76回 第26号

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