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個人企業に対する税制に関する質問主意書
衆議院 第68回 第1号お答えすることは困難 ×1
質問本文
衆議院議長 ※(注)田 中 殿
個人企業に対する税制に関する質問主意書
中小企業団体は、企業課税の基本的なあり方として、経営近代化のために個人企業の事業主報酬を税制として制度化せよと、久しく要望している。この要望は、昭和四十四年いらい、全国規模の中小企業諸団体の統一要望となつている。政府は、これに対して、昭和四十六年度税制改正において「青色事業主特別経費準備金」を創設し、また昭和四十七年度税制改正においては、これを廃止し新規に「青色申告控除(年十万円)」を創設せんとしている。このような、二ヵ年度連続しての青色申告課税についての税制改正が、中小企業者の要望する企業課税のあり方の方向に合致するのかどうか。政府の税制改正は、この点がきわめて不明確なので、ここに、個人企業についての税制の基本的見解を政府に問うものである。
一 税制理論上、個人企業所得は、資産所得と勤労所得との共同所得と観念されているが、現行の所得税法においては、個人企業所得のうちの勤労所得部分は一括して事業所得とみなされており、地方税法においても、勤労所得部分についてまで個人事業税が課せられている。
わが国の現行税制の創設に際して、第一次シャウプ勧告は、「勤労控除は、個人の勤労年数の消耗に対する一種の減価償却の承認であること、また勤労による努力および余暇の犠牲に対する表彰であること」と指摘し、「所得の大部分が財産の所有に基因するのでなく個人の努力によつて得られたという点において、農業所得及び中小企業所得にも、勤労控除は同様に適用さるべきである」と述べている。政府は、勤労控除についての、かかる原理的な観念が、現在も農業個人所得及び中小企業所得全般につき適用するものと認めるかどうか。現行税制は、かかる税制の基本観念が不明確であると考えるがどうか。
二 同じ企業でありながら、看板を個人から法人に塗りかえれば税金が安くなるという理由から、いわゆる法人成りが激増している。このような不合理な現象は、法人企業では事業主報酬が役員報酬として損金算入がみとめられ、個人企業ではこれが必要経費として認められていないから起こつているのである。
企業が実質的に同一であるにもかかわらず、法人か個人かの企業形態上の形式的な差異によつて、課税上の不均衡が生じているのである。これを是正する必要からも、個人企業の事業主報酬についての税制は、根本的に再検討すべきではないか。
三 政府は、昭和四十六年三月三十一日の大蔵省告示第二十七号をもつて、青色申告の記帳要件を改正し、事業主貸については、月決め事業主貸とその他の事業主貸とに区分して記載できることにした。これにつき大蔵省も国税庁も、個人企業の近代化を図るために事業主報酬を区分経理する必要があることを考慮しそのような経理の仕方を税務執行上みとめるものと説明している。しかし、これはあくまで企業経理上の問題たるにとどまり、事業主報酬制度確立の要請にこたえるものではないと考えるが政府の見解はどうか。
四 さらに政府は、昭和四十六年度税制改正として「青色事業主特別経費準備金制度」を創設したが、これをわずか一ヵ年度をもつて廃止し、昭和四十七年度税制改正の一環として、新たに「青色申告控除(十万円)」を創設せんとしている。これは申告者、すなわち事業主に対する控除ではあるが、青色申告奨励のための税制措置の域にとどまつているものにすぎない。従つて個人企業の事業主報酬について、なんら根本的な解決をもたらすものではないと考えるがどうか。
五 個人企業は生業的色彩が強く、特に小規模企業においてそれが著しいが、個人企業全般について、可及的に経営の近代化合理化を促進するために、税制上の助成が望ましいのである。すなわち個人企業も正しい原価計算と損益計算をすることができるように、税法上も経営と家計の分離を促進すべきである。
ただし、この場合、青色申告者と、これ以外のいわゆる白色申告者を通じ、画一的な税制を適用することは適当ではない。正しい記帳を前提としている青色申告者には事業主報酬制度を採用し、正しい記帳を困難とする白色申告者に対しては、事業所得のうちの一定部分を勤労所得部分とみなし、この部分について特別勤労控除制度を創設し、給与所得控除に準じた控除を行なうべきである。この点についての政府の見解を伺いたい。
右質問する。
政府答弁書
一 まず、個人企業所得は、資産所得と勤労所得との共同所得と観念されているのに、現行税法はこれらが一括して事業所得とみなされているという点については、本来、事業所得は資産から生ずる部分と勤労から生ずる部分とが合計されたものと観念されているのではなく、資産と勤労とが一体となつて生じた所得であつて、これを区分することのできないものなのである。
次に、第一次シャウプ勧告における勤労控除についての考え方であるが、同勧告は、当時給与収入の二十五パーセントとして定められていた勤労控除について、御指摘のような根拠をもあげているが、そのほか「勤労に伴う経費に対する概算的な控除」という点を挙げ、結局、勤労控除の根拠としては、勤労に伴う経費の概算的控除という点に限つてその存在意義を認め、御指摘のような根拠に見合つていた部分については勤労控除から除外する趣旨で控除率の引下げを勧告したものである。
この勧告を受けて、政府は、昭和二十五年度の税制改正において、勤労控除の控除率の引下げを行なつているところであつて、シャウプ勧告における勤労控除の根拠についての考え方は現行の給与所得控除制度に引き継がれているものである。
二 個人企業と法人企業との税負担の均衡の問題については、政府としても常に配意してきているところであるが、現行税制は、一般法制における個人、法人の別に応じ個人については各種控除と累進税率との組合せによる所得税を、法人については比例税率による法人税を課税する仕組みをとつている以上、両者について全く同一の税負担を期することが困難であることはいわば当然の結果であると考えられる。
これを是正するために事業主報酬をという御趣旨であるが、事業主報酬といつても、事業の経理上事業主が自分に対して報酬を支払うことを想定するものであり、報酬を支払う者と受ける者とは同一人たる事業主であつて、経済的実態には何ら変わるところはないにもかかわらず、報酬を支払うという擬制をとることによつて税負担だけを変動させようというものに過ぎない。しかも事業主報酬の額のきめ方いかんによつて税負担は変動するというのも問題であろう。このような理論的難点はさておき、かりに事業主報酬の制度を導入するとしても、事業所得からその報酬を控除した残額に対してどのような課税を行なうのか、財産の帰属をどう考えるのか、それに関連して財産の移動の際の課税はどうするかといつた各種の困難な問題が生じてくる。
政府としては、従来から、大多数の個人事業所得者は年所得三百万円程度以下であるところからこれらの所得階層については、その総合税負担が法人形態の場合よりも軽減されることとなるよう常に配意してきたが、この際中小企業税制のあり方の問題についてあらゆる観点から根本的な検討を行なう必要があると考えており、今後税制調査会にも十分審議をお願いし、できるだけ早い機会に結論を得たいと考えている。
三 昭和四十六年三月三十一日大蔵省告示第二十七号による青色申告者の帳簿記載事項の改正は、御指摘のように月決め事業主貸とその他の事業主貸とを経理上区分して記帳することを認めたにとどまり、事業主報酬制度を認めたものではない。
四 青色事業主特別経費準備金にしろ青色申告控除にしろ、いずれも青色申告のより一層の普及を狙いとした制度である。
五 個人企業の経営の近代化、合理化を促進することは望ましいことと考える。しかしながら、そのような観点から原価計算と損益計算をすることと、税負担をどうするかということとは別問題であると考える。
右答弁する。
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