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行政指導による価格設定に関する質問主意書
衆議院 第72回 第15号
質問本文
衆議院議長 前尾繁三郎 殿
行政指導による価格設定に関する質問主意書
政府は、物価抑制の見地から、行政指導によつて価格設定を行おうとしているが、その合法性についてはこれを否定せざるを得ないと考える。よつて、次の諸点につき、政府の見解をただしたい。
一 法治国家においては、「法治主義の原則」に従い、行政は法律に基づき、法に従つて行うのが原則である。すなわち、行政は法の下における国家活動であり、「法律による行政」とか、「行政における法律の支配」というのは、このことを意味している。
政府は、この「法治主義の原則」を厳守して行政運営に当たるべきであると考えるがどうか。
二 特に、国民の権利義務に関する行政権の発動、換言すれば国民に義務を課し、その自由を制限するなど、国民に基本的権利を制約する行政作用は、すべて法律にその根拠を有し、法律の定めるところに従つて行われなければならない。
従つて、行政指導によつて相手方たる国民に不利益を課することは違法であると考えるがどうか。
三 行政指導は、行政機関が一定の行政目的を達成するために、私人又は公私の団体に対して、勧告、警告、助言、指導などの非権力的、任意的手段をもつて働きかけ、相手方の任意の協力を得て、望ましいと考えられる一定の方向に相手方を誘導し、同調させる行為をさすものとみられ、行政機関の所管事務を定めた各省設置法にその根拠を求め得るものと解せられる。
しかしながら、行政指導は、各省設置法にその根拠を求め得るとしても、各省設置法は行政機関の所管事務の範囲及び権限を定めたものにすぎないから、各省設置法の規定を根拠として、行政指導によつて国民に不利益を課することは違法であると考えるがどうか。
四 行政指導はこれによつてなんら相手方を拘束する力を持つものではないから、行政指導によつて価格設定を行い、企業の価格設定の自由を制限しようとすることは、法治主義の原則に照らして違法である。
もし、このような行政運営が権力を背景に平然と行われ、国民が無理やりこれに従わなければならないとするならば、権威主義的行政処理を容認することとなり、官尊民卑、官僚独善の傾向を強め、「法治主義の原則」は空文化するのみならず、立法に対する行政の優位が横行することになると考えるがどうか。
五 内閣法制局の見解は、「行政指導による価格設定はやむを得ないものと考えられる。」としているが、これは法律を故意に曲解するものである。
従つて、正しい行政運営の在り方としては、行政によつて価格設定を行うためには、国民生活安定緊急措置法に基づき速やかに標準価格を設定すべきであると考えるがどうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
いわゆる「法治主義の原則」を行政運営の基本とすべきことは、当然であると考える。
二及び三について
いわゆる行政指導は、国民の権利を制限し、又は国民に対して義務を課するような法律上の強制力を有するものではなく、行政庁がそれぞれの設置法によつて与えられた任務を遂行するためにその範囲内で、相手方の任意の協力を得て行うものであるから、違法の問題は生じないと考える。
四及び五について
昭和四十九年三月十二日の衆議院予算委員会において発表した政府見解では、「価格に関する行政指導を行うことは必要やむを得ないものと考えられる」と述べているが、その趣旨は、貴質問主意書の三の第一段において述べておられるような意味の行政指導を価格に関して行うことが、物価抑制が現下の最大の国民的課題であることを考慮すれば、必要やむを得ないとしているのであつて、あくまでも相手方の任意の協力を前提とするものであるから、もとより違法でないばかりでなく、「法治主義の原則」にも反するものでないと考える。
なお、今回行われた石油製品の価格対策についていえば、原油価格、需要の動向等の価格決定要因が極めて流動的で今直ちに標準価格を定めることは困難なので、とりあえず行政指導によることとしたものであり、このうち国民生活に密接な関係を有する品目については、今後の情勢を見まもりつつ、適当な時期に標準価格に移行するよう努力することといたしたい。
右答弁する。
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