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病弱・肢体虚弱児教育に関する質問
参議院 第126回 第11号検討してまいりたい ×1
質問本文
病弱・肢体虚弱児教育に関する質問主意書
「国連・障害者の一〇年」が終了し、今後の政府の対応が国民的に注目されている。また、発達過程にある闘病中の小児に対する教育の機会均等を保障するため、病院内学級の設置を求める要望も高まっている。
病弱・肢体虚弱児と父母の多様な教育要求にこたえ、すべての病弱児に、その病状と発達に見合ったゆきとどいた教育を行うことによって、病気を克服し、基礎的な知識や技術、判断力を身に付けさせることは、国民教育の重要な課題である。それは憲法、教育基本法における「教育を受ける権利」「教育の機会均等」を保障する教育の具体化でもある。
一九七九年度から養護学校教育が義務化され、さらに就学指導体制の整備充実や障害児学級等の定数もある程度改善されてきたとはいえ、いまだ病弱・肢体虚弱児の発達を保障するための教育条件の整備は不十分であり、多くの改善すべき問題点が残されている。
この三月、政府は、今後一〇年間にわたる新しい施策として「障害者対策に関する新長期計画」(以下「新長期計画」という。)を発表し、「教育・育成施策の推進に当たっては、心身障害児の成長のあらゆる段階において、一人一人の障害の特性等に応じた多様な教育・育成の展開を図ることにより、最も適切な教育・育成の場を確保するという基本的な視点に立ち、そのために必要な諸条件の整備に努める」と明記した。また、厚生省の「これからの母子医療に関する検討会最終報告の概要」では、「長期にわたる入院、療養生活を続ける子どもへの対策は、学習体験を基にした成長過程という重要な時期にある子どもたちへの対応としては、必ずしも十分なものとはなっていない」とし「入院児対策の推進」をうたっている。
こうした政府の方針に関連して、以下質問する。
一、病院内学級の位置付けについて
病弱・肢体虚弱児に対する教育の機会均等を保障する病院内学級の役割と現状をどう認識しているか。
二、病院内学級の設置基準について
学校教育法施行令における「六月以上の医療又は生活規則を必要とする程度のもの」及び「教育上特別な取扱いを要する児童・生徒の教育措置について」(昭和五三年、文部省初等教育局長通達)における「病院などにおいて療養中の者は、特殊学級を設けて教育することは差し支えない」との規定にもかかわらず、病弱・身体虚弱学級の設置が極めて不十分であることから、療養六カ月未満の児童・生徒の教育が見放される事態にあるといわれる。そこで、以下質問する。
(1) 療養六カ月未満の児童・生徒の実態を把握しているか。また、文部省及び厚生省の所管にある病院の小児科における平均入院期間は何日か。
(2) 病気療養児の疾病構造の変化、医療技術や薬学等の進歩により、入院期間が短期化、断続化しているといわれている。政府はすべての病弱・肢体虚弱児の教育の機会均等を完全に保障するため、抜本的な対策をとる必要があると思うが、見解を伺いたい。
三、国立大学病院における病院内学級の体制整備について
(1) 文部省及び厚生省の所管にある国立病院及び国立療養所において、小児病床を持つ病院がそれぞれいくつあり、その中で、教育を制度的に保障している病院内学級又は訪問教育を実施している病院及び療養所はいくつあるか。
(2) 国は本来、病弱・肢体虚弱児の教育の機会均等を保障し推進するため、国立病院及び国立療養所において、積極的に病院内学級を設置すべきである。
一九八二年、第九六回国会、参議院文教委員会における病院内学級にかかわる審議で、小川平二文部大臣(当時)は「文部省として努力しなければならない余地が相当大幅に残っておると考えざるを得ませんので、いずれにいたしましても事態を十分検討いたしまして善処したい」と述べ、ほぼ一〇年後の第一二二回国会、参議院予算委員会における鳩山邦夫文部大臣(当時)の答弁でも「お子さんの教育の機会が保障されないということは文部行政の基本に反することでございますので、全力をつくしていきたい」と述べている。しかし、文部省、厚生省の所管にある国立病院及び国立療養所において、病院内学級の設置数は、ここ一〇年間で微増にとどまっているのが実態である。とりわけ文部省には、入院児に対する教育的保障を積極的に推進する本来的な責任があるわけで、すべての国立大学病院において、病院内学級を日常的に設置できる体制を整える必要があると考えるが、見解を伺いたい。
四、病弱・身体虚弱児の後期中等教育について
病弱養護学校の中学部に学んでいる児童生徒は、養護学校内に、高等部が設置されていないために、病状の再発・悪化の不安を抱きながら地元の高校に通学するなどしており、休学や中途退学も多く出ている状況にある。学校を欠席する児童・生徒に対して、義務教育を保障する体制を充実させるとともに、病弱児養護学校の高等部の設置についても、希望する者であれば、受け入れられるように高等部を作るように指導すべきだと思うが、実態は各県に一校あればいいほうで、高等部を設置していない都県さえ多く残されている。また、学校教育法第七五条は「小学校、中学校及び高等学校には、特殊学級を置くことができる」となっているにもかかわらず、高等学校に特殊学校を設置している学校は、全国的にひとつもない。そこで、以下質問をする。
(1) 病弱・身体虚弱児における後期中等教育の現状をどう認識しているか。
(2) 国立大学病院において、都道府県から養護学校の高等部及び特殊学級を設置する旨の申請があれば、積極的に設置する意思はあるか。
五、就学手続の弾力的運用について
入院している児童・生徒にとって、友人関係は病気に立ち向かう力になり、それを支える学校教育や教師の役割が重要になっている。また回復後、居住地域に戻った時のために、地元の学校との連携も重要になっている。しかし、学籍を移すことによって支障が多く生まれていることから、二重学籍を求める要望が高まっている。
文部省は今年度から、小中学校の特殊教育の新しい形態として「通級による指導」を実施している。また、政府の「新長期計画」では、「通常の学級に在籍する軽度心身障害児に対する通級による指導について、その制度面の整備充実を図る」と述べているが、行政区を越えた病院に入院している児童生徒に対しても通級による指導を行う等、就学手続を弾力的に運用する必要があると考えるが、見解を伺いたい。
六、病院内学級の啓発活動について
政府は児童・生徒が有する教育を受ける権利を保障するため、病気入院中の児童・生徒に対して、病院内学級や訪問教育の存在を知らせ、もれなく教育の場が保障されるよう啓発、宣伝する責任があるが、方針を伺いたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
病弱者(身体虚弱者を含む。)である児童若しくは生徒(以下「病弱児」という。)を教育する養護学校(以下「病弱養護学校」という。)の学級又は小学校若しくは中学校の病弱児のための特殊学級のうち、病院内にある学級は、病院に入院している病弱児に対する教育の機会を保障する上で重要な役割を果たしているものと考えている。
病院内にある学級は、平成四年五月一日現在、養護学校の小学部及び中学部の学級については、学級数が百九十七学級、在籍している児童及び生徒の数が五百六人、また、小学校及び中学校の特殊学級については、学級数が二百四十八学級、在籍している児童及び生徒の数が八百二十三人であるが、病院に入院している病弱児に対する教育は、病院内にある学級、病院に隣接している学校又は教員の病院への訪問により適切に行われているものと考えている。
二の(1)について
学齢児童又は学齢生徒で慢性疾患又は身体虚弱の状態が六月未満の医療又は生活規制を必要とする程度のものについては、その状態に応じて、療養に専念する場合、小学校若しくは中学校の病弱児のための特殊学級で教育する場合又は小学校若しくは中学校の特殊学級以外の学級で慢性疾患若しくは身体虚弱の状態に留意して指導する場合がある。このうち、小学校及び中学校の病弱児のための特殊学級は、病院内にあるものを含め、平成四年五月一日現在、学級数は五百四十学級であり、在籍している児童及び生徒の数は千七百一人である。
また、病院の小児科における平均在院期間は、厚生省の平成二年患者調査によると、十六・八日となっている。
二の(2)について
病気療養児の疾患の種類の変化、医療技術の進歩等に伴う入院期間の短期化、継続化など病気療養児をめぐる医療の状況の変化に対応するため、平成五年六月から、文部省において病気療養児の教育に関する調査研究を開始したところであり、その中で病気療養児に対する教育の充実方策について検討しているところである。
三の(1)について
平成五年四月一日現在、小児科に係る患者が入院している国立の医療機関は、文部省所管の国立大学附属病院では四十六病院、厚生省所管の国立病院及び国立療養所では百七十七施設あり、このうち、平成五年五月一日現在、病院内にある学級や病院に隣接している学校で教育を行ったり、又は、教員が病院を訪問するなどの教育上の措置が採られているものは、文部省所管の国立大学附属病院で十八病院、厚生省所管の国立病院等で百十六施設となっている。
三の(2)について
義務教育段階の児童又は生徒を就学させる学校の設置義務は、都道府県又は市町村にあり、また、病院内の学級は、都道府県又は市町村の教育委員会の管轄下の学校に置かれるものである。このため、政府においては、病院内の学級の設置等について各教育委員会を指導するとともに、附属病院を置く国立大学に対しては、教育委員会から要請があった場合に協力を行うよう指導しているところである。
なお、病院内の学級の一層の充実を図るための方策については、文部省で行っている病気療養児の教育に関する調査研究の中で、今後、検討する予定である。
四の(1)について
病弱児に対する後期中等教育については、高等学校と病弱養護学校の高等部を中心に行われており、平成四年三月の病弱養護学校中学部卒業者七百九十二人のうち、三百七十八人(約四十八パーセント)が高等学校等へ、また、二百三十六人(約三十パーセント)が高等部へ進学し、後期中等教育への進学率は約七十八パーセントとなっている。
病弱児を含めた心身障害児の義務教育修了後の進路については、その能力、適性や障害の状態等に応じて、高等学校若しくは盲学校、聾学校若しくは養護学校の高等部等への進学又は就職のほか、労働、福祉、医療関係機関への入所等の中から最も適切な進路を選択することが大切であると考えている。
四の(2)について
附属病院を置く国立大学に対しては、教育委員会から病弱養護学校の学級又は小学校若しくは中学校の病弱児のための特殊学級の病院内への設置等に関して要請があった場合に協力を行うよう指導しているところである。
なお、高等学校における特殊学級の設置については、後期中等教育が義務教育ではないことから、国として特段の措置を講ずることは考えていない。
五について
病院に入院し、病院内にある学級等で教育を受ける児童又は生徒について、入院前に在学していた学校との連携、協力に配慮する必要はあるが、そのために学籍に関する現行制度を変更する必要があるとは考えていない。
なお、小学校又は中学校の特殊学級以外の学級に在籍している軽度の心身障害児に対して、各教科等の指導は在籍学級で行いながら、心身の障害に応じた特別の指導を特別の指導の場で行う、いわゆる通級による指導が既に制度化されているが、これは、二重学籍を認めたり、単に学籍を残すための措置ではなく、趣旨が異なるものである。
六について
政府においては、都道府県及び市町村の教育委員会に対して、病院に入院している病弱児に対する教育の機会を保障するため、管轄下の学校に対する指導及び保護者等に対する啓発を適切に行うよう、これまでも指導を行ってきたところであり、今後ともこれらの指導を充実してまいりたい。
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