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人種差別撤廃条約の実施をめぐる諸問題に関する質問

参議院 第147回 第40号検討してまいりたい ×1

提出者
参議院
提出日
2000年5月26日
内閣転送 2000年5月31日
答弁書受領日
2000年7月14日
提出から49日
答弁の項目数
11
質問 2,688字/答弁 3,728字

質問本文

人種差別撤廃条約の実施をめぐる諸問題に関する質問主意書

一、「人種差別撤廃条約第一回・第二回定期報告書」について

1 政府は、本年一月一三日、「人種差別撤廃条約第一回・第二回定期報告書」を国際連合に提出した。同報告書第五七段落では、「一九九四年の春から夏にかけて、全国各地で、在日朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせや暴行等の事象が発生し……この関連の事案の検挙事例としては、例えば次のようなものがある」として(a)(b)二件を挙げている。この二件の処分結果を示されたい。また、この二件以外に検挙事例は何件あるか、その数とそれぞれの具体的内容及び処分結果を示されたい。

また、同段落で一九九八年八月以降、同年末までに、「警察は朝鮮学校又はその生徒に対する嫌がらせ事案を六件認知し……必要な調査を行っている」とあるが、その調査結果、及び容疑者の検挙、処分結果を示されたい。

2 啓発活動について

(一) 第五七段落で、法務省の人権擁護機関が、在日朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ等の発生を根絶するため、強力な啓発活動を展開した旨記されているが、在日朝鮮人児童・生徒が多数利用する通学路、利用機関等における街頭啓発は、いつ、どこで、どのように行われたのか。

(二) 私が取り寄せた資料によると、この時掲示された啓発ポスターは、朝鮮学校生徒への暴行、事件の廃絶を呼びかけたものではない。また、啓発冊子には、「外国人問題」という項目があるが、公衆浴場における入浴マナーやごみの出し方のトラブルが例示してあるとおり、一九八〇年代以降に新たに日本に入国してきた外国人の問題を指している。政府は、このようなポスターや冊子を目にした人達が、朝鮮学校の生徒に対する暴行や嫌がらせの防止や、朝鮮人差別、民族差別をなくす目的のものだと思うと考えているのか。

(三) そもそも、なぜ法務省が作った啓発冊子には、韓国・朝鮮人差別やアイヌ民族差別など、民族差別に関するものが入っていないのか。今後、啓発冊子の中に韓国・朝鮮人、民族差別に関する項目を取り入れたり、韓国・朝鮮人、民族差別の廃絶を訴える専門の啓発冊子を作る考えはあるか。

二、現在の帰化行政について

1 「人種差別撤廃条約第一回・第二回定期報告書」の第三三段落では「在日韓国・朝鮮人の中には、その本名を名乗ることによって起こる偏見や差別を恐れ、日常生活において日本名を通称として使用する場合もみられる。政府では、このような人類平等の精神に反する誤った偏見、差別意識が依然として一部に存在することを憂慮している」との認識を示し、被害者の救済に関する施策等の充実に努めるとともに、引き続き各省庁において関係機関や団体等に対する指導を行っていく旨記している。

法務省は従来「民族意識の発露としてことさらに外国人的な呼称の氏に固執するということになると、帰化により日本国民とするにふさわしい者とはいえない」(稲葉威雄「帰化と戸籍上の処理」『民事月報』一九七五年九月号)という方針の行政指導を行い、帰化許可申請書には一九八五年の国籍法及び戸籍法改正まで、作成上の注意として「(帰化後の)氏名は日本人としてふさわしいものにしてください」と記していた。

現在の政府の立場としては、これら従前の行政指導は、「人類平等の精神に反する誤った偏見、差別意識」による不適切な指導であったと認識しているのか。

2 政府は、私の質問に対する答弁書(内閣参質一四三第一号。以下「答弁書」という。)で、「帰化後の氏名については、日本人らしい氏名を使用するよう指導していた時期もあったが、昭和五八年から、そのような指導を行わないこととした」との答弁をしている。なぜそのような指導を行わないことにしたのか。それが昭和五八年であった理由は何か。また、答弁書で「この点については、部内担当者の会議等様々な機会を通じて国籍事務担当者に周知させ、また、帰化相談等の際に帰化許可申請希望者その他の照会者に対して周知を図っている」との答弁をしているが、具体的にどのような対応をしたのか。

3 帰化申請について

(一) 私が入手した各地方法務局が配布している近年の『帰化許可申請の手引』では、帰化許可申請書の記入例で、「帰化をしようとする者」の氏名欄に「通称名」を書く欄があり、「帰化後の氏名」の欄が、ことごとく「帰化をしようとする者」の欄と違い、日本人的氏名に変わっている。現在、『帰化許可申請の手引』の中で、「帰化をしようとする者」と「帰化後の氏名」の欄の氏名が同じであるものが存在するか。

(二) また、『帰化許可申請の手引』が(1)「通称名」を書く欄を設けていたり、「帰化後の氏名」の欄がことごとく日本人的氏名になっていること、(2)「帰化後の氏名の文字は、従前の通称名をそのまま用いても、任意に新しい氏名を用いても差し支えありません」(那覇地方法務局戸籍課『帰化申請の手引き』、一九九九年)などと従前の氏名の変更を促す記述があることは、「日本での戸籍の記載の際には日本名で記載しなければならないという規定はないし、当然に韓国名で記載することが認められている」(一九九八年五月、子どもの権利委員会での日本政府第一回報告書審議での答弁)とした政府の立場に反するのではないか。これは指導が行き渡っていないためか。

(三) 行政書士向けに書かれた、田中嗣久・甲斐順一『行政書士のための三日でわかる帰化・永住・在留許可申請業務』(法学書院、一九九九年)では、申請書類の書き方で、帰化後の氏名は「日本的(日本人として適当な)氏名であれば、これまでの通称名と異なっていてもかまいません」と説明している。政府が指導方針を変えたという一九八三年からすでに相当な年月が経過している今、八三年以前の指導方針に沿った書物が出回っていることに対し、政府はどのような見解を持っているのか。

三、人権啓発フィルム・ビデオ等について

政府(総務庁や法務省)が毎年作成している人権啓発フィルム・ビデオは、現在までに何本出されているのか。そのうち部落、女性、障害者、韓国・朝鮮人、在日外国人、アイヌ民族に関するものは、それぞれ何本あるか。また、人権啓発フィルム・ビデオのための予算はいくらか。

四、国勢調査の統計について

一九九五年国勢調査における失業率、職業分類、国民健康保険及び国民年金加入率について、全国及び都道府県レベルで、日本国籍者、韓国・朝鮮籍者及び外国籍者(全体)の統計を、それぞれ示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

御指摘のあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(平成七年条約第二十六号)第九条1に基づく第一回・第二回報告の第五十七段落(a)に掲げた事件については、平成六年五月、東京簡易裁判所において、罰金十万円に処するとの判決の宣告が、同段落(b)に掲げた事件については、同年十二月、千葉家庭裁判所松戸支部において、保護処分に付する必要がない旨の決定が、それぞれなされた。

これらの二件以外に平成六年中に発生した同種事件のうち検挙に至ったものは一件あり、その具体的内容は、同年七月、茨城県水戸市内において、登校のためスクールバスを待っていた朝鮮学校の女子生徒に対し、ベルトで数回殴り付けるなどして軽度の擦過傷を負わせた成人男性一人を、傷害の容疑で現行犯逮捕したというものであり、同事件については、同年九月、水戸区検察庁において、公訴を提起しない処分がなされた。

御指摘の平成十年八月から同年末までの間に認知した六件の事件については、早期検挙に努めたが、現時点ではいずれも検挙に至っていない。

一の2の(一)について

法務省の人権擁護機関においては、平成十年八月に北朝鮮によるミサイル発射を契機として在日朝鮮人の児童及び生徒に対する嫌がらせや暴行等が発生したことから、翌九月、法務省人権擁護局から、全国の法務局及び地方法務局(以下「法務局等」という。)に対し、在日韓国・朝鮮人の児童及び生徒が多数利用する通学路、利用交通機関等における差別の防止を呼び掛ける街頭啓発を始めとした啓発活動の取組を強化するよう指示したところである。

これを受けて、法務局等の職員や人権擁護委員が、在日韓国・朝鮮人の児童及び生徒が多数利用する通学路、利用交通機関等において、人権啓発のための冊子等を配布するとともに、拡声器等を利用して、在日韓国・朝鮮人の児童及び生徒に対する嫌がらせ等の事象の再発防止及びこのような嫌がらせ等を受けた場合における法務省の人権擁護機関への相談を呼び掛けるなどしたが、これらの街頭啓発の主な実施状況は、別表1のとおりである。

政府としては、今後とも、在日韓国・朝鮮人を含む外国人に対する差別や偏見をなくすため、積極的な啓発活動の推進を図ってまいりたい。

一の2の(二)について

法務省の人権擁護機関においては、あらゆる差別や偏見をなくすとの観点から、広く国民の間に人権尊重思想の普及高揚を図り、国民一人一人に人権を尊重することの重要性を認識していただくとともに、その認識が日常生活の中に根付くことを目的として様々な啓発活動を行っているところであり、啓発ポスターや啓発冊子についても、このような観点から、主に人権問題全般を扱った内容のものとしているところである。

一の2の(一)についてで述べた在日韓国・朝鮮人の児童及び生徒に対する嫌がらせ等の事象に対処するための啓発活動においても、その根底にある外国人に対する差別意識や偏見をなくすことを目的として、これらの啓発ポスターや啓発冊子を活用するとともに、拡声器等を利用して、在日韓国・朝鮮人の児童及び生徒に対する嫌がらせ等の事象の再発防止及びこのような嫌がらせ等を受けた場合における法務省の人権擁護機関への相談を呼び掛けており、さらに、東京法務局及び前橋地方法務局においては、「外国人への差別や嫌がらせをなくそう」あるいは「外国人への差別や嫌がらせをなくしましょう」と題する散らしを作成し、配布したものである。

一の2の(三)について

法務省の人権擁護機関が作成した啓発冊子は、あらゆる差別や偏見をなくすとの観点から、主に人権問題全般を扱った内容のものとなっているが、我が国における人権を取り巻く状況に応じ、これまでにも、在日韓国・朝鮮人の人権問題に関する事項をも啓発冊子の内容の一部として取り入れているほか、アイヌの人々の人権問題を個別に取り上げた啓発冊子も作成しているところである。また、在日韓国・朝鮮人に対する差別や嫌がらせ等の人権問題に関する啓発冊子を個別に作成することについては、人権に関する各種の情報や調査結果等も踏まえて検討してまいりたい。

二の1について

かつて、我が国の帰化行政において、帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用するよう指導していた時期もあったが、これは、日本人らしくない氏名を使用することにより、我が国社会に日本人として定着する上で支障が生ずるおそれがあるとの考えから、在日韓国・朝鮮人に限らず、帰化の許可の申請をする外国人一般に対して行われていたものであり、御指摘のような在日韓国・朝鮮人に対する人類平等の精神に反する誤った偏見、差別意識によるものではない。

二の2について

昭和五十九年に国籍法及び戸籍法の一部改正が行われたが、その改正作業の過程において、帰化事務における氏名の取扱いの在り方についても幅広く検討を行った結果、国際的な人的交流の活発化及びこれに伴う日本国民の氏名についての一般的な意識の変化等にかんがみると、日本人らしい氏名を使用しなくとも、必ずしも我が国社会に日本人として定着することが妨げられるものではないとの考えから、検討結果がまとまった昭和五十八年から、日本人らしい氏名を使用するよう指導することを行わないこととした。

これを受けて、具体的には、例えば、同年七月八日、実際に帰化許可申請についての相談を受け、その申請を受け付けて審査を行う法務局等に対し、これに関する通知を発出するとともに、法務局等の帰化申請窓口等に備え付けてある国籍関係提出書類様式集の中に、帰化後の氏名は自由に定めることができる旨を明記するなどして、その周知徹底を図っているところである。

二の3の(一)について

現在、御指摘のような「帰化をしようとする者」の欄と「帰化後の氏名」の欄の氏名が同じである帰化許可申請の手引は存在しない。

二の3の(二)について

帰化許可申請書の様式中に「通称名」を書く欄を設けて申請者にその申告を求めているのは、申請者の身分及び生活関係の調査を進める上で必要なためであり、一方、帰化許可申請の手引において、同様式中の「帰化後の氏名」の欄に日本人らしい氏名を例示しているのは、帰化許可申請者の大半が、帰化後の氏名として日本人らしい氏名を使用することを希望している実情を踏まえたことによるものである。

また、御指摘の那覇地方法務局戸籍課発行の「帰化許可申請の手びき」は、帰化後の氏名は自由に定めることができる旨を明記した上で、御指摘の記述部分において、その場合に使用できる文字についての注意事項を記載しているにすぎず、従前の氏名の変更を促しているものではない。

したがって、これらの記載が、平成十年五月二十七日に開催された、児童の権利に関する条約(平成六年条約第二号)第四十三条1に基づいて設置された児童の権利に関する委員会の会合において、戸籍への氏名の記載について我が国政府代表が行った説明に反するものとは考えていない。

二の3の(三)について

御指摘の出版物は私人の著作に係るものであり、政府としては、その内容について見解を述べることは適当でないと考えるが、今後とも、法務局等における帰化事務において、帰化許可申請者が帰化後の氏名を自由に定めることができることについて誤解を生じることがないよう努めてまいりたい。

三について

現在把握できる限りにおいては、政府は、昭和六十一年度から平成十一年度までの間に五十七本の人権啓発フィルム及び人権啓発ビデオを作成している。これらの中には、一つの作品の中で複数の人権課題を扱っているものもあり、御指摘の人権課題ごとに集計すると、同和問題に関するものが二十一本、女性に関するものが四本、障害者に関するものが三十一本、在日外国人に関するものが二本あるが、在日韓国・朝鮮人に関するもの及びアイヌの人々に関するものは存在しない。

平成十二年度における人権啓発フィルム及び人権啓発ビデオを作成するための政府の予算額は、九千九百万円である。

四について

平成七年国勢調査によれば、国籍別の労働力人口に占める完全失業者の割合及び職業大分類別就業者数は、それぞれ別表2及び別表3のとおりである。

なお、平成七年国勢調査では、国民健康保険及び国民年金への加入率については調査していない。

別表一 通学路等における街頭啓発の主な実施状況 1/4

別表一 通学路等における街頭啓発の主な実施状況 2/4

別表一 通学路等における街頭啓発の主な実施状況 3/4

別表一 通学路等における街頭啓発の主な実施状況 4/4

別紙一 「外国人への差別や嫌がらせをなくそう」

別紙二 外国人への差別や嫌がらせをなくしましょう

別表二 国籍別の労働力人口に占める完全失業者の割合-全国,都道府県(平成7年)

別表三 国籍別の職業大分類別就業者数-全国,都道府県(平成7年) 1/3

別表三 国籍別の職業大分類別就業者数-全国,都道府県(平成7年) 2/3

別表三 国籍別の職業大分類別就業者数-全国,都道府県(平成7年) 3/3

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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