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吉野川第十堰改築事業をめぐる中山正暉前建設大臣と建設省徳島工事事務所長の言動に関する質問
参議院 第149回 第1号
質問本文
吉野川第十堰改築事業をめぐる中山正暉前建設大臣と建設省徳島工事事務所長の言動に関する質問主意書
本年一月二十三日に徳島市で行われた吉野川可動堰建設に関する住民投票は、投票率五五・〇%、建設に反対が九一・六%、賛成が八・四%という結果となった。
これを受け、中山正暉前建設大臣(以下「建設大臣」という。)は、二月二日、建設大臣室を訪れた徳島市民に対し、初めに可動堰ありきではなく、どうすることが吉野川にとって最善であるのかをゼロから考えたい旨の発言をし、建設大臣自らが徳島を訪問して住民との間で話し合いを行うことを約束した。しかし、建設大臣は五月頃、「第十堰住民投票の会」の中心メンバー(以下「住民投票メンバー」という。)に逮捕歴があることを公言し、これを理由として住民との対話を拒否した。また、建設大臣は、五月二十三日の参議院国土・環境委員会において「私が欠陥議員だと言われて、最初にけんかを吹っかけられたんです」と答弁し、私怨を晴らすべく住民投票メンバーへの打撃を与える明確な意図をもって、過去の経歴を暴露したことを示した。
行政権は、内閣総理大臣と国務大臣(以下「大臣」という。)とで構成される内閣に属しているため、大臣の職にある者には、個人情報を含めて様々な行政情報が集中する。この事件のように、大臣が行政に批判的な立場にある私人の個人情報を公表することが日常化すれば、市民が行政に対して意見や批判を表明することが困難となり、日本国憲法の根幹を大きく揺るがすことになる。憲法九十九条は、大臣の憲法尊重擁護義務を定めており、大臣の日本国憲法に反するような発言を、同じく憲法尊重擁護義務を有する国会議員として看過することはできないと考える。
以上の観点から、次の事項について質問する。なお、同様の文言が並ぶ場合でも、各項目ごとに平易な文章で答弁されたい。
一 行政機関が逮捕歴の有無等を理由として、法令等の根拠や合理的な理由なく、特定の個人や団体に対して利益や不利益を与えたり、約束を不履行とすることは、憲法十四条で定める法の下の平等に照らして認められないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
二 最高裁判所判決(一九八一年四月十四日第三小法廷判決)によると、人の名誉、信用に関わる事項をみだりに公開されないことは法律上の保護に値する利益であるとして、公務員が個人の犯罪経歴等を第三者に漫然と報告することは違法な公権力の行使に当たると判示しており、判例としても確定している。政府は、このことを承知しているか。
三 二で示した最高裁判所判決から、建設大臣が「個人の犯罪経歴等を第三者に漫然と報告した」ことは、「違法な公権力の行使」に当たると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
四 大平一典建設省徳島工事事務所長(以下「徳島工事事務所長」という。)が、建設大臣の発言が発覚する以前から住民投票メンバーの過去の経歴について情報を取得し、これを各所で第三者に告げていたと聞いている。徳島工事事務所長は、その情報をどのようにして入手したのか、内閣の責任の下で厳正な調査の上、経緯を明らかにされたい。また、調査期間や体制など、調査形式の概要に関しても併せて示されたい。
五 徳島工事事務所長の行為が事実であれば、これも「違法な公権力の行使」に当たると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
六 政府は、国権の最高機関である国会において、常に万事遺漏のないよう誠実かつ慎重な姿勢で答弁していると認識しているが、どうか。
七 建設大臣は、住民投票メンバーの過去の経歴を大学の同窓会関係者から聞いたと五月二十三日の参議院国土・環境委員会で答弁している。この件に関して、建設大臣は、関係行政機関に事実関係を照会・確認したのか。照会・確認したのならば、照会の時期・内容や関係行政機関等の保有する個人情報提供の有無などの経緯を明らかにされたい。確認していないならば、国民の個人情報という行政として重大な取扱いを必要とすることに関して、不明確な伝聞情報に基づいて大臣が国会で答弁したことを認めることになり、国権の最高機関である国会を軽視するにも甚だしいと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
八 建設大臣は罪名や逮捕が二回にわたることなど住民投票メンバーの過去の経歴を詳細に把握しており、同窓会関係者からの伝聞で知ったという建設大臣の答弁は、非常に不自然である。むしろ、四で指摘した徳島工事事務所長の行為などから、行政機関等が組織的に同人の経歴を調査していたと強く疑わざるを得ない。建設大臣が住民投票メンバーの過去の経歴に関する情報の入手した経緯について、内閣の責任の下で厳正な調査の上、明らかにされたい。また、調査期間や体制など、調査形式の概要に関しても併せて示されたい。
九 国家公務員が、合理的な理由や法令等によらず、逮捕歴等の行政機関が専有する個人情報を第三者に対して明らかにすることは、国家公務員法百条に違反する行為であり、懲戒処分に該当し、同法百九条で定める「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」という罰則の適用もあり得ると考えるが、どうか。
右質問する。
政府答弁書
一について
憲法第十四条第一項は、国民に対し法の下の平等を保障した規定であって、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、差別的な取扱いを禁止する趣旨と解されるが、国の行政機関の行為が同項の規定に違反するか否かについては、事案に即して個別具体的に判断する必要があるものと考える。
二について
昭和五十六年四月十四日最高裁判所第三小法廷判決(最高裁判所民事判例集三十五巻三号六百二十ページ)において、「前科及び犯罪経歴(以下「前科等」という。)は人の名誉、信用に直接かかわる事項であり、前科等のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであって、(中略)市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず、前科等のすべてを報告することは、公権力の違法な行使に当たると解するのが相当である。」と判示されていることは承知している。
三について
お尋ねの中山正暉前建設大臣(以下「前建設大臣」という。)が「個人の犯罪経歴等を第三者に漫然と報告した」ことが具体的にいかなる行為を指すのかが明らかでないため、答弁を差し控えたい。なお、国が国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項に規定する賠償責任を負うのは、公権力の行使に当たる公務員がその職務執行に際して故意又は過失により違法に他人に損害を加えた場合であるとされている。
四及び五について
建設省河川局において、平成十二年八月十一日に大平一典建設省四国地方建設局徳島工事事務所長を呼んで事実関係について聴取を行ったところ、御指摘のような事実はないとのことである。
六について
政府としては、御指摘のとおり、国会において誠実かつ正確に答弁するよう最大限の努力をしているところである。
七について
建設省において前建設大臣に確認したところ、御指摘のような関係行政機関に対する事実関係の照会や確認は行わなかったとのことである。
また、御指摘の平成十二年五月二十三日の参議院国土・環境委員会における前建設大臣の答弁は、前建設大臣が「第十堰住民投票の会」の中心人物の過去の経歴を知った経緯についての質問に対するものであり、御指摘のような国会を軽視した答弁ではないと考える。
八について
建設省において平成十二年九月四日に前建設大臣に確認したところ、「第十堰住民投票の会」の中心人物の過去の経歴については大学の同窓会関係者から聞いたとのことであり、また、建設省等の国の行政機関が当該人物の過去の経歴を組織的に調査した事実はない。
九について
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第百条第一項は「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。」と規定しているが、個々の職員の行為が同項の規定に違反するか否かについては、事案に即して個別具体的に判断する必要があるものと考える。
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