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徳島県吉野川第十堰改築計画等に関する質問

参議院 第142回 第2号お答えすることは困難 ×8

提出者
参議院
提出日
1998年2月4日
内閣転送 1998年2月9日
答弁書受領日
1998年3月31日
提出から55日
答弁の項目数
46
質問 8,463字/答弁 13,240字

質問本文

徳島県吉野川第十堰改築計画等に関する質問主意書

徳島県吉野川第十堰改築計画に関しては、平成九年十月二十三日に「徳島県吉野川第十堰改築計画等に関する質問主意書」を提出し、政府から平成九年十二月十九日付で、内閣参質一四一第三号の答弁書(以下「答弁書第三号」という。)が寄せられたところである。その答弁内容については、未だ不明確な点も含まれており、事実関係のさらなる解明を行う必要があると考える。したがって、再度以下の質問をする。

一 吉野川における洪水について

1 答弁書第三号によれば、「明治二十一年七月に生起した洪水については、現第十堰の最も上流側の地点からわずか約二キロメートル上流の地点付近において同川の堤防が決壊したと推定されることから、洪水時における現第十堰による水位上昇も堤防の決壊の一つの原因として考えられるところである。」となっているが、わずか二キロメートル上流が決壊したことだけでは、現第十堰が原因であると結論づける根拠に乏しいと言わざるを得ない。現第十堰による水位上昇を当該洪水の原因の一つと考えた根拠を詳細に示されたい。また、決壊の原因は、当時の堤防が非常に貧弱であったためであると考えるがどうか。

2 答弁書第三号にある明治二十一年七月の時点では、第十堰付近の吉野川の流れは現在のそれとは異なり、旧吉野川の付け替えも行われていない状態であったと考えるがどうか。したがって、明治二十一年の洪水が、今回の吉野川第十堰改築の根拠にはならないと考えるがどうか。

3 吉野川下流部の流路が現在の形に固定されたとされる昭和二年以降で、現在の第十堰が直接の原因となって川が氾濫した例があるのか、簡潔に示されたい。

二  粗度係数について

1 答弁書第三号によれば、吉野川の「河川の幅、高水敷の幅等が流水の流下方向に対して 一定のものではないこと等から」、過去の洪水での低水路を流下した流量と高水敷を流下した流量、計画高水での低水路を流下する流量と高水敷を流下する流量を一律に示すことはできないとしているが、加重平均して粗度係数を〇・〇三八とした区間について、吉野川第十堰を起点として上流部の流量の各数値を一キロメートルごとに示されたい。

2 答弁書第三号によれば、「吉野川で洪水が生起した場合における粗度係数の値が、過去に現に生起した洪水における観測結果を用いて算出した値のうち最大のものとなる可能性を否定できる根拠を有しないことから」包括する値を採用したとしている。また、平成七年十一月に建設省四国地方建設局が作成した「第十堰改築事業に関する技術報告書」(以下「技術報告書」という。)によれば、「粗度係数の再現に用いた洪水の水位は高水敷部の水深が小さく大部分が低水路を流れているため、その水位はほとんど低水路の粗度によって支配されており、実績洪水の痕跡から求めた粗度係数は低水路の粗度係数と考えられる」としている。しかし、実績の洪水から求めた粗度係数は、あくまでも〇・〇三五であり、これは、高水敷も流下した場合における河川全体の粗度係数であることは答弁書第三号別表第一からも明らかである。なぜ、粗度係数〇・〇三五を低水路のみの値として採用したのかを、具体的かつ詳細に示されたい。

3 改訂新版建設省河川砂防技術基準(案)同解説(以下「河川砂防技術基準」という。)調査編百三十一ページによれば、「粗度係数の設定、設定した粗度係数を用いた水位計算結果の解釈と利用においては、粗度係数が含みうるこうした誤差、不確実性を十分考慮しなければならない」とされているところである。吉野川における水位計算の場合において、粗度係数が含みうる誤差や不確実性がどのように考慮されているのか。

4 答弁書第三号によれば、高水敷における粗度係数は、他の河川の粗度係数の観測によるとされているが、それが吉野川においても適用できると考えた根拠は何か。

5 答弁書第三号によれば、粗度係数の計算過程において低水路及び高水敷における粗度係数をそれぞれ求めた上で、流水の相互の干渉効果を加味しつつ求めたとあるが、具体的な干渉効果や径深の値など、粗度係数の計算に用いた数式や数式に代入した数値を具体的に示されたい。

三 市民団体の水位計算について

1 答弁書第三号によれば、「吉野川の河口から十六キロメートルの地点における「再現計算水位」の値から、それぞれの洪水において観測された同地点の左岸及び右岸における痕跡水位の値を減じた値のうち最大のもの及び最小のものは、それぞれ約一・四メートル及び約〇・六メートル」であるとされている。技術報告書の五十八ページに記載されている「過去の四洪水」の各洪水における痕跡水位と再現計算水位の差について、吉野川河口十四キロメートルを起点として二十四キロメートル地点まで、百メートルごとにそれぞれ示されたい。

2 痕跡水位と再現計算水位の差が、少なくとも〇・六メートルある計算結果に基づいて、「十六キロメートル地点においては計画高水位を四十二センチメートル超過する」とし、吉野川第十堰を改築する必要があると結論づけているが、現在でもこの結論が妥当であるとする根拠を示されたい。

3 痕跡水位と再現計算水位との差である一・四メートルないし〇・六メートル程度は、計算の際の誤差の範囲を超えるものであると考えるのが妥当ではないのか。誤差の範囲内とすればその理由を示されたい。また、これだけの差がありながら、「河口より十六キロメートル地点においては計画高水位を四十二センチメートル超過する」と断言することができる理由も併せて示されたい。

4 技術報告書によれば、「第十堰によるせき上げ区間については、第十堰が河道に対して斜めになっていることから、河道断面をそのまま計算に用いた場合には堰の影響が表現されないため、形状を十四・二キロメートル地点において河道に直角に投影した仮想断面を想定して水位計算」を行ったとしている。この場合に、「斜め固定堰の複雑な流れを忠実に再現するには限界がある」としており、一次元不等流計算の限界も明らかにされているところである。このように、流れに対して直角でない構造物については、計算断面に投影断面を設けることが余儀なくされることが一次元不等流計算の限界であると考える。したがって、このような問題点を抱える計算を用いるにあたっては、計算結果を実際の自然現象にできる限り近づけることが極めて重要であると考えるがいかがか。

5 建設省の水位計算と市民団体の水位計算を比較した場合、市民団体の水位計算の方がより痕跡水位に近い結果となっているが、この点についてはどのように考えているのか。

6 答弁書第三号によれば、「建設省において、御指摘の「水位計算資料」が「計画流量毎秒一万九千トンが流れたとしても計画高水位以下に収まることが明らかとなった」としていることが誤りであると判断したのは、水位計算資料において想定している吉野川の流水の状態が水位計算資料において用いたとされる「本間の式」の適用範囲を逸脱していると考えられること、水位計算資料等によれば上流における水理学上のエネルギー水頭が下流におけるそれを下回るという不合理が生じると考えられること等の理由によるものである。」とされているところである。

(1) 適用範囲を逸脱しているとされる「本間の式」の方が、実際の痕跡水位に近い計算結果を出しているのはなぜか。

(2) 市民団体の水位計算では、「本間の式」をそのまま適用しているわけではなく、適用にあたり痕跡水位をもとに修正を行っている。このような修正を行っても、市民団体の水位計算が「本間の式」の適用範囲を逸脱しているということが、誤りの根拠として位置づけられているのはなぜか。

(3) 「本間の式」を適用しなくても、建設省の行った計算方法で前提だけを変えて、堰の高さを五・一メートル、堰の長さを七百十五メートルとした場合には、十六キロメートル付近において計画高水位を約三十センチメートル下回るとの市民団体の指摘があるが事実か。

(4) 答弁書第三号によれば、エネルギー水頭の値が「水位計算資料に明記されている条件等に基づいて同地点についてほぼ一義的に算出することができるエネルギー水頭の値の理論上の最小値を更に下回ることといった不合理を有すると考えられる」とされているが、エネルギー水頭の値の理論上の最小値とは、建設省の計算モデルの中での理論上の最小値ではないのか。

(5) エネルギー水頭については、建設省の計算モデル中での理論上の最小値と、市民団体の計算モデル中での理論上の最小値は異ならないのか。異なるとすれば、建設省の計算モデルの中での最小値を下回ることが誤りと判断した理由の一つであるという主張は、理論的にどのような意味があるのか。

(6) 答弁書第三号によれば、「実際には現第十堰が流下方向に対して斜めに設置されている状況において観測された痕跡水位を基に算出されている」ことが誤りと判断した根拠の一つとされているが、直角に存在するものと仮定する理由は、あくまでも現実に存在しない架空の堰を設けて堰の影響が出るであろう上流部の水理現象を求めることにあるはずであるから、実際の自然現象がなるべく忠実に再現されることが計算モデルにおいては重要であると考えるがどうか。そのように考えない場合には、その理由を示されたい。

7 水位計算上の斜め堰の投影断面等について

(1) 斜め堰による水の流れの幅は、実際の川幅より長く堰長に近づくものと考えられるがどうか。

(2) 建設省の計算において、斜め堰の水の流れの幅が投影断面にどのように反映されているのか。しているとすれば反映した内容を、していないとすればその理由を示されたい。

(3) 吉野川シンポジウム実行委員会が平成九年五月に作成し、徳島工事事務所において受け取っている「水位計算の結果について」(以下「水位計算資料」という。)と、建設省における計算につき斜め堰の水の流れの幅及び投影断面の違いを示されたい。

(4) 吉野川第十堰は横断形状で左右岸の標高が異なり、堰の投影断面をどのようにするのかが問題となるが、建設省の計算において、堰の高さはどのようになっているのか示されたい。また、水位計算資料において投影している堰の高さと、建設省の計算において投影している堰の高さの違いについて示されたい。

(5) 建設省の投影の方法が水位計算資料のそれよりも優れていると考えるか。考えるとすればその根拠を示されたい。

四 計画降雨等について

1 答弁書第三号によれば、岩津のピーク流量が最大になる値を採用した理由は、計画降雨の数を限定したからとあるが、昭和五十一年降雨を除外したことが、計画降雨の数を限定したという意味か。

2 答弁書第三号によれば、「現行の吉野川水系工事実施基本計画において用いられている計画降雨量の値は合理的なものである」とされているが、河川砂防技術基準調査編六十六ページによれば、「試料のユラギを小さくし、解析結果の値の信頼度を高めるためには試料の大きさはできるだけ大きいことが望ましく、したがって、統計試料はできるだけ長期間のものをそろえる必要がある」とされている。よって、現在までの新しい試料も加味して計画降雨を算出する方がより合理的であると考えるがどうか。合理的でないと考えるならばその理由を示されたい。

3 平成九年に河川法が改正され、工事実施基本計画は河川整備基本方針と河川整備計画に分けられることとなった。河川整備基本方針においても基本高水や計画高水が定められることとなっているが、河川整備基本方針における基本高水や計画高水の計算は、現在までの新しい知見や降雨試料を用いた計算になるのか。また、吉野川における河川整備基本方針はいつ頃までに策定される予定なのか。

五 模型実験等について

1 答弁書第三号によれば、「吉野川で昭和四十九年九月に生起した洪水における時間の経過に伴う洪水の流量の変化の観測結果を基に流量を段階的に変化させたときの最大の水位を計測し、その値を同川の水位に換算したものが当該洪水において実際に観測された痕跡水位等とおおむね一致することをあらかじめ確認している」とあるが、実際に観測された水位のうち、昭和四十九年洪水の水位については、垂直航空写真の実体視から求めたものであるとされている。垂直航空写真の実体視から水位を求める方法につき示されたい。

2 垂直航空写真の実体視から洪水中の水位を求める場合、その精度や信頼性は、洪水後の痕跡水位と同程度のものであると考えているのか。考えている場合にはその根拠を示されたい。また、他の河川で航空写真により水位を求めた例があるか。ある場合には、その例を示されたい。ない場合には、なぜ吉野川だけでそのような方式を採用したのか、その理由を示されたい。

3 垂直航空写真の実体視から水位を求めた昭和四十九年洪水の場合、左岸と右岸で約一・二メートルの水位差が生じているが、なぜこのような差が生じているのか、その理由を示されたい。また、このような差が生じていても、求めた水位が信頼に足りると判断した理由も併せて示されたい。

4 建設省徳島工事事務所開発調査課発行の「吉野川第十堰水理模型実験 第十堰をもっとよく知っていただくために」によれば、昭和四十九年洪水中の水位のうち、右岸の水位が十五・二キロメートルと十五・四キロメートルの水位が他の水位に比べてかなり高くなっているが、その原因をどのように考えているのか。

5 水位計算資料によれば、「実際の洪水痕跡を用いて数値解析を行うほうが、模型実験の結果より精度が高いと考える。またこうした数値解析によるのは、一般的な河川改修工事で行われている既に確立された方法でもある」としているが、この点についてはどのように考えるか。

六 利水目的について

1 技術報告書四十九ページによれば、「現在の第十堰は、河口からの塩水の遡上をくい止めて、堰上流を真水に保つとともに、吉野川の水をせき上げて、旧吉野川へ導き込むことにより、旧吉野川沿川の水道用水、工業用水、農業用水を取水できるようにするほか、吉野川における徳島市の水道用水の取水を可能にするなど大切な役割を担っている。」「昭和三十六年と同程度の被害であったとしても、水位が第十樋門敷高以下となって分流できなくなり、地域の生活や産業、経済活動に与える影響は計りしれないものがある。このため、吉野川下流部における重要な施設である第十堰を万一にも損壊させないよう、対処していく必要がある。」とされているところである。一方、国営総合農地防災事業「吉野川下流域」地区事業が完成した場合、吉野川からの農業用水の取水の必要性はほとんどなくなり、その点では、万一第十堰が損壊した場合でも、農業に与える影響はほとんどないと考えられるがいかがか。

2 建設省四国地方建設局作成の「第十堰建設事業に関する質問へのお答え」によれば、第十堰の損壊によって第十樋門から取水できずに地域に被害が出た例として、大正十二年十二月二十一日付の新聞報道を挙げているが、その五日後の報道では、この損壊は人為的破壊が原因になっているとされているが、そのような事実関係に相違ないか。さらに取水障害の要因は、現在と違って旧吉野川の河床が高く水が流れにくかったことにあると考えるがどうか。

3 旧吉野川、今切川における、水道用水、工業用水及び農業用水の過去十年間の取水量を示されたい。

七 環境保全等について

1 平成九年十二月に徳島県自然保護協会が出版した「第十堰可動化の環境に与える影響について(見解)」(以下「見解」という。)において、資料や説明に示された問題点が指摘されているところである。まず、見解一ページにある、第二回環境調査委員会資料(平成五年六月十六日)の平成三、四年の調査結果にハクセンシオマネキ、ルイスハンミョウが記載されていないとの指摘は事実か。また、ハクセンシオマネキは、「非常に目立つ種であり、この種を知っている者が実地調査をすれば、その生息を見逃す筈はない」とも指摘しているが、その生息を見逃した理由を示されたい。

2 見解二ページによれば、イボウミニナ、シマヘナタリが第四回調査委員会資料に記載されているとあるが、事実か。また、この二種は環境調査報告書の中に「貴重種」である旨の記述があるべきであるとも指摘しているが、なぜそのような記述がなされていないのか。

3 環境調査は、いつ、誰が、どのような形で、どのような範囲を対象にして行ったものなのか。

4 可動堰建設後において、湛水量が大幅に増えるため、吉野川での重要な漁業資源であるアユの降下及び遡上に大きな影響があると考えるがどうか。

5 答弁書第三号によれば、新第十堰と河口から十五・六キロメートル地点の間の貯留量は約五百四十万立方メートルと見込んでいるとしている。一方、流況が平均的なものであったとされる昭和六十三年の渇水期の十三キロメートル付近における出現回数の多い流量は約二立方メートル毎秒となっている。この場合には、この区間を流水が通過するのに平均三十一・二日かかると推定されるが、そのように考えてよいか。

6 仔アユの絶食寿命は五から六日といわれているが、降海日数が大幅に増えると昭和六十三年の流況パターンでは絶滅する恐れはないのか。ないとすれば、その根拠は何か。

7 大幅に滞水時間が増加するにもかかわらず、環境に影響がないと考える理由を簡潔に示されたい。

八 異常深掘れについて

1 平成九年十月十六日に佐野塚第十堰を考える会が、吉野川第十堰建設事業審議委員会委員宛に、第十堰の「深掘れ」に対する意見書を提出している。

この意見書の中で、第十堰の深掘れの原因は、川の蛇行と異常な砂利採取による河床の低下、ブロック工事が原因であるとしているが、このような指摘についてどのように考えるか。

2 この意見書の中では、地元では斜め堰が深掘れの原因と考える者はいないと指摘しているが、この点についてはどのように考えるか。

3 この意見書の中で、「建設省は深掘れの原因が異常な砂利採取にあることを認め」たとしているが、事実か。また、佐野塚地区に提出した誓約書の内容につき示されたい。

4 この意見書では、昭和五十二年に深掘れ対策工事を実施して以降、異常な深掘れは発生していないとしているが事実か。

九 代替案について

1 堤防補強について

(1) 現第十堰の下流区間における洗掘対策について、なぜ根固めブロック等の追加投入はできないのか。また、今までの根固めブロックによる対策のどこが悪かったのか、併せて具体的に説明されたい。

(2) 答弁書第三号によれば、「昭和五十一年九月に生起した計画洪水と比べて規模の小さい洪水によっても通常時の水面から約二十メートルの深さに及ぶ河床の洗掘が発生した」とあるが、これはいつの洪水か。また、洗掘が発生した場所はブロックが投入されていた場所なのか。具体的に説明されたい。

(3) 「河床の洗掘が再び進行している」のであれば、根固めブロックの追加をとりあえず行うのが通常ではないのか。捨て石や根固めブロック等の投入で、洗掘対策が不可能である理由を、具体的な根拠を示して説明されたい。

(4) 「ケーソン及びコンクリート擁壁」以外の補強工法を比較検討したのか。したのであれば、比較検討結果を具体的数値も含めて示されたい。

2 第十樋門については、当該樋門は老朽化していること、道路幅が狭く通行の支障になっていることから、第十堰の改築にかかわらず、改築する必要があると考えるがどうか。

3 現位置固定堰改築案について、「護床工」の必要範囲が約十六万六千平方メートルとなった根拠を示されたい。また、河川砂防技術基準のどの項によってそのような判断を行ったのかについても、具体的な計算根拠を示して説明されたい。

4 政府から平成九年七月十一日付で寄せられた内閣参質一四〇第一二号の答弁書によれば、遮水工については、現位置固定堰改築案では約五万二千平方メートル、堤防補強案(現況断面)では約一万六千平方メートル、可動堰案では約二万八千平方メートルとなっているが、前二案では堤防を拡幅し、補強することになっている。さらには、内水に対してはポンプを増設し対策を行うにもかかわらず、遮水工を必要とする根拠を示されたい。また、なぜ現位置固定堰改築案で遮水工を施す面積が他に比べて多いのかについても具体的に説明されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

吉野川で明治二十一年七月に生起した洪水において、御指摘の「二キロメートル上流の地点付近」は第十堰による水位上昇が発生した区間に含まれていたものと推定されるが、一般に洪水時における河川の水位の上昇に従って堤防が決壊する危険性は高くなることから、御指摘の「答弁書第三号」では、第十堰による水位上昇も吉野川の堤防の決壊の一つの原因として考えられるとしたものである。

また、御指摘の「決壊の原因」については、明治二十一年当時の吉野川の堤防の大きさ等もその一つであったと考えられる。

一の2について

明治二十一年七月当時の第十堰付近における吉野川の河道の形状が現在のものと異なっていたことは事実と考えられるが、建設省においては、現在の吉野川における河道の状況等を基に、第十堰を改築する必要があると判断したものである。

一の3について

昭和二年以降、第十堰が洪水の挙動に影響を及ぼすと考えられる吉野川の区間で御指摘のように「川が氾濫した例」はないが、当該区間で堤防の決壊に至る可能性を有するような堤防からの漏水、堤防付近の大規模な河床の洗掘等の状況は発生している。

二の1について

御指摘の「区間」において吉野川の洪水時に同川の低水路及び高水敷を流下する流量をそれぞれ個別に求めることを目的とした観測はこれまで行われていないことから、実測に基づくこれらの概略値を示すことはできないが、同川の河口からの距離が十五キロメートルから二十四キロメートルまでの区間の一キロメートルごとの各地点について、昭和四十九年九月に生起した洪水(以下「昭和四十九年洪水」という。)において流量が最大となった場合の低水路及び高水敷を流下した流量について計算上得られている値をそれぞれ目安として示すと、別表第一のとおりである。

また、吉野川に計画高水流量が生起したものとした場合の御指摘の「低水路を流下する流量と高水敷を流下する流量」の計算上の値については、その算出のためには流水が流下する河川の横断面(以下「流下断面」という。)ごとに新たに膨大な計算を行う必要があること及び計算上想定する同川の河道の状況によっても異なるものとなることから、これを一律に示すことは困難である。

二の2について

平成七年十一月に建設省四国地方建設局が作成した「第十堰改築事業に関する技術報告書」(以下「技術報告書」という。)においては、「計画高水位に対応する粗度係数」である〇・〇三八を算出するための根拠となる低水路の粗度係数の値として、〇・〇三五を用いているところである。この〇・〇三五の値は、御指摘の「実績の洪水から求めた粗度係数」の数値をそのまま用いたものではなく、当該数値、過去に生起した洪水の痕跡から観測された水位(以下「痕跡水位」という。)の値等から別途算出した高水敷の粗度係数の値等を「改訂新版建設省河川砂防技術基準(案)同解説調査編」(建設省河川局監修)の百十ページ及び百十一ページに記載されている式(6-5)から式(6-9)まで(以下「平均流速関係式」という。)の数式に代入することにより吉野川の複数の流下断面について低水路の粗度係数を算出し、その結果を基に決定されたものである。

二の3について

技術報告書における「計画高水位に対応する粗度係数」の値を求める根拠となった主要実績洪水(技術報告書の五十八ページに記載されている吉野川において過去に生起した主要な四洪水をいう。以下同じ。)ごとの粗度係数は、吉野川の洪水による被害を未然に防止することを目的として治水計画を策定する観点から、当該粗度係数を用いて算出される第十堰の上流の区間の複数の地点の水位の値がそれぞれ同じ地点における痕跡水位の値をおおむね下回ることとならないような安全側の値となるように決定されており、御指摘の「粗度係数が含みうる誤差や不確実性」はこのような形で考慮されているものである。

二の4について

御指摘の「粗度係数の観測」が行われた河川の区間における河道状況と、吉野川の河口からの距離が零キロメートルから二十四キロメートルまでの区間における河道状況との間で、特に考慮すべき差異は存しないと考えられることから、吉野川の当該区間における高水敷の粗度係数を算出するに当たって御指摘の「他の河川の粗度係数の観測」から得られた結果を用いることは不合理ではないと考えたものである。

二の5について

御指摘の「数式」としては、平均流速関係式を用いたものである。

また、吉野川において洪水の水位が計画高水位となる場合の粗度係数を算出するに当たって平均流速関係式に代入した数値を示すと、別表第二のとおりである。

三の1について

吉野川の河口からの距離が十四キロメートルから二十四キロメートルまでの区間の二百メートルごとの各地点について、建設省が行った主要実績洪水に関する水位の計算(以下「建設省の実績再現計算」という。)によって得られた値からその地点の痕跡水位の値を減じた値を主要実績洪水ごとに示すと、それぞれ別表第三から別表第六までのとおりである。

なお、建設省の実績再現計算は、基本的に二百メートルごとの地点を対象として行われたものである。

三の2について

建設省においては、技術報告書において行われている吉野川の洪水時の水位の計算(以下「建設省の水位計算」という。)のうち同川に計画高水流量が生起したとした場合の水位の計算の結果のみでなく、第十堰の老朽化の状況、第十堰の下流側における吉野川の河床の洗掘の状況、建設省四国地方建設局徳島工事事務所(以下「徳島工事事務所」という。)が平成八年に行った模型実験(以下「模型実験」という。)の結果等をも勘案した結果として、第十堰を改築する必要があると考えているものである。

三の3について

建設省の実績再現計算は、第十堰に関し一定の条件を設定した上で水理学上の基礎的な理論式によって一義的に算出される吉野川の河口から十四・二キロメートルの地点(以下「十四・二キロメートル地点」という。)における水位の値を所与として、二の3についてで述べた手法によって同川の河口からの距離が十キロメートルから二十四キロメートルまでの区間を代表する一個の粗度係数の値を決定したものである。御指摘の「痕跡水位と再現計算水位との差」は、こうした計算の性質上結果的に生じ得るものである。

また、技術報告書においては、吉野川に計画高水流量が生起したとした場合の水位の値について、「一次元不等流の計算法は一般的な計算手法であるが、斜め固定堰の複雑な流れを忠実に再現するには限界がある」との留保を付した上で、「不等流計算によれば、(中略)河口より十六キロメートルの地点においては計画高水位を四十二センチメートル超過することとなり」という形で計算結果として記述しているに過ぎず、これを絶対的なものとして取り扱っているわけではない。

なお、技術報告書を作成した後に行った模型実験の結果等も併せて考慮すれば、吉野川に計画高水流量が生起したとした場合において、同川の河口から十六キロメートルの地点より上流の区間における同川の水位が建設省の水位計算から得られた値と同程度のものとなると予測することは、妥当であると考えている。

三の4について

数値計算の手法を用いる場合において、御指摘のように「計算結果を実際の自然現象にできる限り近づけること」は基本的には望ましいことであると考えているが、計画高水流量の生起といった実際に観測された自然現象の範囲を超える仮想の現象を取り扱うに当たっては、その適用範囲に関する十分な検証がされた手法によるべきものと考えている。

三の5及び6の(1)について

吉野川シンポジウム実行委員会が平成九年五月に作成した「水位計算の結果について」(以下「水位計算資料」という。)によれば、水位計算資料において行われている吉野川の洪水時の水位の計算(以下「市民団体の水位計算」という。)のうち主要実績洪水における水位を求めることを基本的な目的としたと考えられる計算(以下「市民団体の実績再現計算」という。)では、その性質上、当該水位が第十堰の形状に関する計算上の前提条件に応じて算出されるものとは言えないと考えられるが、一般に、第十堰のような堰の上流における水位の値は理論上堰の形状に応じて算出されることは明らかであるから、第十堰の存在を前提とした場合には、市民団体の実績再現計算は適切なものであるとは考えられない。

また、「本間の式」は、堰の形状、流水の流量等の相互の関係に関する数式であり、第十堰の上流における水位の値を第十堰の形状に関する計算上の前提条件に応じて算出したとは言えないと考えられる市民団体の実績再現計算は、「本間の式」を計算上の根拠としたものとは言えないと考えられる。

三の6の(2)について

「本間の式」に関する本間仁東京大学名誉教授の論文によれば、同式は、基本的には、堰の上流側の地点における水位の値から堰頂部の高さの値を減じた値(以下「堰上流側越流水深の値」という。)に対し当該地点における水理学上の速度水頭の値を無視できる状態において流水が堰を越流する流量の値を算出することを目的とする数式であり、堰上流側越流水深の値を堰の高さの値で除した値が〇・五程度以下である場合には同式を適用しても支障はないが、その値が大きくなるに従って同式における流量係数の値の誤差が大きくなるものとされているところである。

水位計算資料によれば、御指摘の「修正」は、昭和四十九年洪水の最大流量が流下した場合について、十四・二キロメートル地点における水位の値として、第十堰の形状に関する計算上の前提条件を用いることなく別途求められた水位の値とおおむね一致する値が「本間の式」の計算手法によっても算出されるように、同式の流量係数を求める数式に単純に一定の数値を乗じるということを行ったものに過ぎないと考えられる。こうしたことは「本間の式」の適用範囲に関する水理学上の理論的な背景に基づいたものとは考えられないことから、御指摘の「修正」により十分に信頼性のある数値が得られるとは言えないと考えたものである。

三の6の(3)について

御指摘の「市民団体の指摘」については承知しているが、平成九年八月十四日に吉野川シンポジウム実行委員会が作成した「建設省の水位計算に対する見解について」によれば、御指摘の「七百十五メートル」の数値は、十四・二キロメートル地点における水理学上のエネルギー水頭(以下「エネルギー水頭」という。)の値の理論上の最小値が、市民団体の実績再現計算において昭和四十九年洪水を対象に得られている同地点におけるエネルギー水頭の値とおおむね一致するような値となるように設定された第十堰の幅の値であると考えられる。しかしながら、三の5及び6の(1)についてで述べたように、第十堰の存在を前提とした場合には市民団体の実績再現計算において昭和四十九年洪水を対象に求められた十四・二キロメートル地点におけるエネルギー水頭の値は適切なものとは考えられないことから、当該エネルギー水頭の値を根拠として第十堰の幅の値を改めて設定し、吉野川に計画高水流量が生起したとした場合の水位の計算を行ったとしても、その計算から得られた結果が十分な信頼性を有するとは言えないと考えられる。

三の6の(4)及び(5)について

エネルギー水頭の理論上の最小値は計算上設定する流下断面の条件に応じて異なり得るものであるが、建設省においては、水位計算資料における計算結果から算出した十四・二キロメートル地点におけるエネルギー水頭の値が、水位計算資料に明記されている第十堰に関する計算上の条件、水理学上の基礎的な理論式等を基に算出したエネルギー水頭の理論上の最小値を下回るものと考えられるとの結果を得ているものである。

三の6の(6)について

御指摘の「計算モデル」を用いた計算の結果が御指摘のように「実際の自然現象がなるべく忠実に再現」されたものであることは基本的には望ましいことであると考えているが、仮にある計算のモデルを用いた計算の結果が実際に観測された事象をおおむね再現しているものであっても、そのモデルの適用範囲に関する十分な検証がされているとは言えない場合、そのモデルを構成している数式の適用範囲に関する理論上の背景が適切に考慮されていない場合、そのモデルを用いて得られた値が基礎的な理論式から得られる値との不整合を有する場合等においては、そのモデルは、実際に観測された自然現象の事象の範囲を超える仮想の現象を取り扱うための十分な信頼性を有するものとは言えないと考えており、吉野川に計画高水流量が生起したものとした場合における市民団体の水位計算において用いられている計算のモデルも、こうした観点から十分な信頼性を有するものとは言えないと考えている。

三の7の(1)について

流水の流下方向に対して斜めに設置されている堰を越流する流水の幅の値は、当該堰が当該流下方向に対して直角に存在するものと仮定した場合の仮想の堰を越流する流水の幅の値以上のものとなると考えられるが、河川の幅に対する堰の長さの割合、河川における流水の状況等によっては、必ずしも御指摘のように河川の幅より長く堰の長さに近づくとは言えないものと考えている。

三の7の(2)について

流水の二次元的な挙動を的確に反映することが可能な汎用性を有する一次元不等流計算の手法は確立されていないと考えられることから、建設省の水位計算においては、一般に用いられている一次元不等流計算の手法と同様に、吉野川の流水の幅を、一次元不等流計算でいう流水の流下方向に対して直角の方向に測った幅として取り扱っているものである。

三の7の(3)及び(4)について

水位計算資料等によれば、市民団体の水位計算においては、上流側及び下流側の二つの堰から構成される第十堰の下流側の堰のみを考慮し、その堰が基本的に十四・二キロメートル地点において流下方向に対して直角に存在するものと仮定して、流水の幅、堰の長さ及び堰頂部の高さの値をそれぞれ六百五十メートル、五百五十メートル及び阿波工事基準面(東京湾平均海面マイナス〇・八三三三メートル。以下同じ。)を基準とした高さ五・一メートルとしていると考えられる。

一方、建設省の水位計算においては、第十堰の上流側及び下流側の堰が共に十四・二キロメートル地点において流下方向に対して直角に存在するものと仮定して、同地点での流下断面については高水敷と第十堰とを区分せずに一体の河床部分として扱っており、吉野川に計画高水流量が生起しているものとした場合における流水の幅の値及び当該河床部分の平均的な高さの値は、それぞれ約六百十八メートル及び阿波工事基準面を基準とした高さ五・八七メートルである。

三の7の(5)について

水位計算資料等によれば、市民団体の水位計算及び建設省の水位計算においては、共に実際に測量された結果を基に第十堰に関する計算上の条件が設定されていると考えられるが、実測値に即して計算を行うという観点からは、三の7の(3)及び(4)についてで述べたように、上流側の堰が考慮されていない前者における第十堰に関する計算上の条件の設定と比較して、上流側の堰も考慮されている後者におけるものの方が適切であると考えている。

四の1について

御指摘の「計画降雨の数を限定した」こととは、多数の実績降雨の中から代表的なものとして十の実績降雨を選定したことを指すものである。

四の2について

降雨量のデータの数をより多くすることは、統計学上の観点からは計画降雨量に関する信頼度をより高めるものであると考えているが、建設省においては、長期間にわたり継続的に実施していく治水事業の性格上、降雨の状況等の治水計画に係る状況に大きな変化がないにもかかわらず計画降雨量等の値から定められる基本高水等について頻繁に小規模な見直しを行うことは必ずしも適切であるとは限らないと考えている。

こうした観点から、吉野川における基本高水等については、昭和五十七年に吉野川水系工事実施基本計画を定めるに当たって用いた計画降雨量を算出する根拠となった降雨量のデータ及び当該データに含まれていない昭和五十二年以降における吉野川流域の降雨の状況を勘案すると、仮に御指摘の「現在までの新しい試料」を加えても当該計画降雨量の値は大きく変化しないと考えられることから、御指摘のように「現在までの新しい試料も加味して計画降雨を算出」して見直すことはしていないものである。

四の3について

御指摘の「河川整備基本方針」の作成の時期、その作成に当たって用いる計算手法等については、現時点では未定である。

五の1について

御指摘の「垂直航空写真の実体視」による手法(以下「実体視手法」という。)は、地上の複数の測定点について、空中の二つの異なる場所から撮影された写真を両眼で見た場合に生じる視差等を利用して、当該測定点間の高さの値の差(以下「比高」という。)を求めるもので、測量の手法として一般的なものである。御指摘の「昭和四十九年洪水の水位」の値は、阿波工事基準面を基準とした高さの値が既知である地点における当該高さの値及び実体視手法を用いて得られた当該地点と流水が堤防に接している地点との比高の値から得られたものである。

五の2について

実体視手法を用いて得られた比高の値が航空写真を撮影する高度等に応じた誤差を含むとされているのに対し、痕跡水位の値が洪水時の水位の最大値の真値に対して有する誤差はその程度を理論上明らかにすることが困難な性格のものであることから、水位の観測の精度に関し、実体視手法と痕跡水位による手法とを一概に比較することは困難である。

また、これまでに那珂川水系涸沼川において、実体視手法の精度の向上を目的とする研究を行う観点から、実体視手法を用いて水位が算出されている。

五の3及び4について

昭和四十九年洪水において実体視手法を用いて得られた吉野川の河口から十五・二キロメートル及び十五・四キロメートルの地点における水位の値はあくまで測定の結果として得られたものであり、昭和四十九年洪水においてそれらの値に対応する水位の真値が得られていない以上、御指摘の「約一・二メートルの水位差」及び「他の水位に比べてかなり高くなっている」ことについて分析することは困難である。

なお、実体視手法を用いて得られたこれらの値については、五の2についてで述べた誤差を含み得るものであると考えており、絶対的なものであるとは考えていない。

五の5について

第十堰のように流下方向に対して斜めに設置されている構造物の存在が洪水時の水位に及ぼす影響を的確に予測するためには、水位の計算手法として一般に用いられている一次元不等流計算の手法では限界があることから、必要に応じ模型を用いた水理実験等を行った上で総合的な判断を行うことが適切であると考えている。

六の1について

国営吉野川下流域土地改良事業の実施に伴う水利使用については、同事業を所管する農林水産省と同事業に係る水利使用の許可を所管する建設省との間で現在予備的な協議が行われており、現時点では、吉野川の柿原取水口を改築すること及び同川に第十取水口を新設することにより、現在行われている旧吉野川及び今切川からの取水の大部分を吉野川からの取水に切り替えることが協議されているところである。

このことから、御指摘の「第十堰が損壊した場合」には、その損壊の程度によっては吉野川の水位が大きく低下するとともに、それに伴って旧吉野川の流量も大きく減少することが考えられるところであり、その場合、吉野川に新設されることが計画されている第十取水口からの取水並びに一部残される旧吉野川及び今切川からの取水が困難になる事態が発生する可能性もあることから、御指摘のように「農業に与える影響はほとんどない」とは言えないものと考えている。

六の2について

御指摘の大正十二年十二月二十六日付けの新聞の記事については承知しているが、同年初夏に生じたとされる第十堰の損壊の原因に人為的なものが含まれるか否かについては、現時点で確認することは困難である。

また、大正十二年当時においては吉野川の流水は基本的には、第十堰によってせき上げられ、旧吉野川に流下していたと考えられることから、御指摘の「取水障害」は同年の第十堰の損壊で第十堰の上流の区間における水位が低下し、それに伴って旧吉野川の流量が減少したことによって生じたと推測することが妥当であると考えている。なお、現時点で当時の旧吉野川の河床の状況を正確に把握することができないことから、当時の旧吉野川の河床の高さが御指摘の「取水障害」に関係しているか否かを確認することは困難である。

六の3について

昭和六十三年から平成九年までの十年間に、旧吉野川及び今切川から取水された水道用水の量の合計は約一億九千万立方メートル、これらの河川から取水された工業用水の量の合計は約五億七千万立方メートルである。

また、昭和六十三年から平成九年までの十年間に旧吉野川及び今切川から取水された農業用水については、取水量報告の義務がないいわゆる慣行水利権も含まれているため、取水量の全体は把握できていない。

七の1について

平成五年六月に徳島工事事務所が作成し第二回第十堰環境調査委員会で配布した資料には、ハクセンシオマネキ及びルイスハンミョウについては記載されていない。

ハクセンシオマネキについては、平成三年度及び平成四年度に実施した現地調査でその生息が確認されていないのはそれぞれ調査の手法及び時期によるものと考えているが、平成五年八月に実施した現地調査ではその生息は確認されており、その旨は、平成六年七月に徳島工事事務所が作成し第三回第十堰環境調査委員会で配布した資料中の「第十堰周辺自然環境の現状(参考資料)」(以下「第十堰自然環境資料」という。)に記載されている。

なお、ルイスハンミョウについては、平成五年度に行った文献調査でその生息が確認されており、その旨は第十堰自然環境資料に記載されている。

七の2について

平成八年一月に徳島工事事務所が作成し第四回第十堰環境調査委員会で配布した資料においては、イボウミニナは「吉野川下流域の自然環境調査~参考資料及び基礎データ~」中に記載されているが、シマヘナタリは記載されていない。

また、御指摘の「環境調査報告書」が平成八年六月に徳島工事事務所が作成した「第十堰環境調査報告書自然環境の現況編」(以下「環境調査報告書」という。)を指すものとすれば、環境調査報告書においてイボウミニナが貴重種として記載されていないのは、環境調査報告書が作成された時点では、イボウミニナを貴重種とする根拠となる資料を徳島工事事務所が有していなかったことによるものである。

さらに、シマヘナタリは、環境調査報告書が作成された平成八年六月の時点ではいまだ現地調査においてその生息が確認されていなかったことから、環境調査報告書には記載されていない。

七の3について

徳島工事事務所は、吉野川の河口部から柿原堰までの区間において生息する生物等に関する現地調査を平成二年度から実施するとともに、学識経験者等から構成される第十堰環境調査委員会を平成四年から設置して、当該現地調査の結果の検討、吉野川第十堰建設事業によってもたらされる周辺環境への影響に関する調査等を実施してきたところである。

七の4及び6について

現在の第十堰に代わる可動堰をその下流側に設置した場合の影響については、吉野川において仔アユが降下するとされるおおむねの期間(以下「降下期間」という。)における近年の同川の流水の状況からみて、降下期間においては第十堰を改築するか否かにかかわらず基本的に同川の流水の大部分は旧吉野川に流下し産卵場から降下してきた仔アユの大部分は旧吉野川を降下するものと考えられること、現状でも流水が第十堰の魚道を越流しない状況が頻繁に見られ旧吉野川が吉野川と分流する地点から下流側の貯水池(以下「下流側貯水池」という。)に流入する仔アユの多くは第十堰から降下することが困難であると考えられること等から、下流側貯水池の容量の増加に伴って流水が下流側貯水池を通過するために要する平均的な期間が長くなっても、産卵場から海へ降下する仔アユの量が現状と比較して大きく減少することにはならないと考えている。

また、吉野川において御指摘の「昭和六十三年の流況パターン」のような流水の状況を想定した場合には、現在の第十堰付近の流水の状況等からみて、降下期間に流水が現在の第十堰の魚道を越流しない状況が継続すると考えられることから、御指摘の「仔アユの絶食寿命」の多少の変動にかかわらず、下流側貯水池に流入した仔アユが第十堰から降下することは現在でも困難であると考えており、下流側貯水池の容量の増加に伴って流水が下流側貯水池を通過するために要する平均的な期間が長くなっても、下流側貯水池から海へ降下する仔アユの量が現状と比較して減少することにはならないと考えている。

さらに、第十堰を可動堰に改築するに当たっては、現在のものと比較して機能上より優れた魚道を設置することとしていること、魚道を流下する流量を増加させることとしていること等から、吉野川におけるアユの遡上状況については、下流側貯水池の容量の増加に伴って流水が下流側貯水池を通過するために要する平均的な期間が長くなるか否かにかかわらず、当該改築によって改善されるものと考えている。

七の5について

吉野川の河口から十五・六キロメートルより下流の区間における御指摘の「新第十堰」により生じる貯水池の容量を約五百四十万立方メートル、当該区間における流量を毎秒約二立方メートルとし、流水が流下断面の全体にわたって均等に流下するものと仮定した場合には、流水が下流側貯水池を通過するために要する期間は三十日程度となるものと考えられる。

七の7について

七の4及び6についてで述べた内容、数値計算の手法を用いた水質に関する予測の結果等から、第十堰を新たに可動堰に改築することに伴う御指摘の「滞水時間」の増加が自然環境に与える影響は軽微なものであると考えているものである。

八の1及び2について

御指摘の「意見書」の内容については承知しているが、吉野川において昭和五十一年九月に生起した洪水によって生じた通常時の水面から約二十メートルの深さに及ぶ河床の洗掘(以下「昭和五十一年の河床洗掘」という。)については、流下方向に対して斜めに設置されている堰付近における洪水時の流水及び土砂の挙動に関する特性、昭和五十一年の河床洗掘が生じた箇所も含む同川における河床の状況等から判断すると、御指摘の「川の蛇行」、「砂利採取による河床の低下」及び「ブロック工事」のみを原因として生じたものと推測することは困難であり、第十堰が流下方向に対して斜めに設置されていることがその大きな原因となっているものと考えられる。

八の3について

昭和五十一年十月二十五日に徳島工事事務所副所長から国府町佐野塚地区代表に提出された「砂利採取について」においては、「吉野川第十堰、名田橋間における低水路内の砂利採取は、昭和五十二年四月以降は許可しないことで対処する。尚河道に堆積し採取可能となったときは地区代表に協議します。」と記されているが、これが御指摘のように「深掘れの原因が異常な砂利採取にあることを認め」たものであるか否かについては、現時点で確認することができない。

八の4について

徳島工事事務所では、昭和五十一年から昭和五十二年にかけて御指摘の「深掘れ対策工事」を行っており、当該工事を行った箇所において当該工事以降現在までに河床の洗掘が進行していることは確認されているが、現時点での河床の深さは、昭和五十一年の河床洗掘と同程度にまでは至っていないと考えている。

九の1の(1)及び(3)について

河床の洗掘への対策として河床の洗掘が生じた場所に根固めブロック等を投入する対策は、これまでに施工された多くの事例から判断して、河床の洗掘の進行を緩和する効果を期待できるものの、その進行を完全に抑止する効果までを期待できるとは必ずしも言えないものである。昭和五十一年の河床洗掘が発生した箇所においても、昭和五十八年度に根固めブロックを追加的に投入したにもかかわらず当該箇所でその後再び河床の洗掘が進行していることが確認されていること等から、第十堰が流下方向に対して斜めに設置されている状況においては、当該箇所のように一回の洪水で大規模な河床の洗掘が生じたような箇所では、根固めブロック等の投入のみによっては堤防の決壊に至るような河床の洗掘が生じる可能性を除去することは困難であると考えている。

また、通常の河川工事においては、既に投入した根固めブロックの状況等に応じて御指摘の「根固めブロックの追加」が行われるものであり、これは吉野川においても同様である。

九の1の(2)について

御指摘の「洪水」は、昭和五十一年九月に生起した洪水であり、この洪水によって発生した大規模な河床の洗掘への対策として根固めブロック等の投入を行ったものであって、それ以前には、当該河床の洗掘が発生した箇所では低水護岸の基礎部を保護する目的で根固めブロック等の投入が行われていた。

九の1の(4)について

御指摘の「「ケーソン及びコンクリート擁壁」以外の補強工法」については、直接基礎を用いる工法、杭基礎を用いる工法等に関して予備的な検討を行っているが、基礎地盤の状況、施工の困難さ等の観点から定性的に検討した結果、ケーソン基礎及びコンクリート擁壁を用いた工法が有利であると判断したものである。

九の2について

第十樋門については、その建設された時期等を勘案するといずれは改築が必要となるものと考えているが、現時点においては、その老朽化の程度からみて改築を行う具体的な時期等を定めるには至っていない。

また、御指摘の「道路幅が狭く通行の支障になっていること」は、第十樋門を改築する直接的な理由にはならないものと考える。

九の3について

御指摘の「現位置固定堰改築案」において施工する必要があると考えた護床工については、「建設省河川砂防技術基準(案)設計編[I]」(建設省河川局監修)第一章第五節の「5・2・2水叩き」の記述等を参考に、概略的な検討として過去の事例を勘案して堰に直角な方向の上流側及び下流側の幅の合計の値を約二百十メートルとし、当該合計の値と堰の長さ等から御指摘の「約十六万六千平方メートル」を算出したものである。

九の4について

御指摘の「遮水工」は、堰の基礎部における土砂の流動等を防止すること等を目的として設ける必要があると考えたものであり、堤防の拡幅等及び内水対策とは無関係なものである。

また、御指摘の「現位置固定堰改築案」において御指摘のように「遮水工を施す面積が他に比べて多い」のは、堰を流下方向に対して斜めに設置することから堰を流下方向に対して直角に設置する案(以下「直堰案」という。)と比較して堰の長さが長くなること及び現在の堰の位置のまま改築するため直堰案と比較して施工期間の制約条件が厳しくなることにより直堰案における遮水工の深さよりも深くする必要のある仮設工の埋設部分をそのまま遮水工として利用することによるものである。

別表第一~別表第三 1/7

別表第二~別表第三 2/7

別表第二~別表第三 3/7

別表第二~別表第三 4/7

別表第二~別表第三 5/7

別表第二~別表第三 6/7

別表第二~別表第三 7/7

別表第四~別表第六 1/13

別表第四~別表第六 2/13

別表第四~別表第六 3/13

別表第四~別表第六 4/13

別表第四~別表第六 5/13

別表第四~別表第六 6/13

別表第四~別表第六 7/13

別表第四~別表第六 8/13

別表第四~別表第六 9/13

別表第四~別表第六 10/13

別表第四~別表第六 11/13

別表第四~別表第六 12/13

別表第四~別表第六 13/13

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×8

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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