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吉野川第十堰改築事業に関する質問主意書
衆議院 第147回 第3号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
一月二十三日、徳島県徳島市で行われた建設省直轄事業「吉野川第十堰改築計画」に対する住民投票において、市民の過半数が同事業に対して反対の意を明らかにした。
平成七年に改正された「河川法」においては、河川事業における「環境保全」「住民参加」の拡充を進め、建設省は爾後の河川行政の方向性を明らかにしたが、今回の住民投票の結果はこの方向性に鑑み、重大な意味を持つものと考える。
従って、次の事項について質問する。
一 今回の住民投票の結果を内閣としてどう受け止めるのか。
二 吉野川において現堰を撤去し、新たに可動堰を設置するという現在政府が主張している計画は、何時、誰の責任において決定されたのか。また決定に至るまでの経過を示されたい。
三 平成七年度改正によって河川法に盛り込まれた「環境保全」「住民参加」は、本事業においてどう活かされているのか。
四 平成十一年十二月、中山建設大臣が徳島市長に対して花押付の信書を送付している。中山建設大臣はこの信書をどのような立場で、何を目的として送付したのか。現行機関委任事務における上級庁の責任者として或いは市に対する補助金を交付する権限を有する者として、政治的圧力と受けとめられることを考慮すべきと考えるが、如何か。また中山建設大臣はこの信書を公開したが、その目的は何か。
五 中山建設大臣は同住民投票について「民主主義の誤作動」と発言しているが、この真意は何か。「住民投票は民主主義にあるまじき行為」との意味とも受け取れるが、そのような意味で発言したのか。また小渕総理も同様の認識を有しているのか。
六 自民党の綿貫民輔衆議院議員は、一月二十二日徳島市において「住民投票などくそ食らえだ」と発言している。この発言は民主主義原理を完全にはき違えたものと考えるが、これは政府の正式な見解と一致するのか。
七 政府は吉野川第十堰改築問題は科学的・技術的問題であるとしている。しかし阪神大震災で見られるように、政府の言う科学的・技術的知見は必ずしも絶対ではないと考えるが、この知見が正当であることを一体誰の責任において言明できるのか。米国政府は治水におけるダムという手法を放棄しているが、政府はこの米国政府の選択を科学的に正当ではないと考えているのか。
また研究課程にある科学的・技術的知見が、投票という基本的な参政権の行使をもって示された民意を超越するものと考えるのか。
八 「住民投票」は議会制民主主義を侵害するものか或いは議会制民主主義を補完するものか。理由を付して政府の考えを問う。
九 公共事業について関係住民が意見を表明する場合、「住民投票」以上に明確な方法があると政府は考えるのか。また平成七年改正後の河川法における「住民意見の表明」には住民投票は含まれていないが、これ以上に民主主義を実現する上で適切な手法は無いと考えるが、政府の認識は如何か。
十 個別の公共事業に関しては、一般に政府部内のみによって事業の決定が行われ国会が関与することはない。毎年度数兆円にものぼる税金を投入する公共事業については、個別に議会の判断を仰ぐべきと考えるが、政府の考えは如何か。
十一 「ダム等事業審議委員会」は事業者が当該ダム・堰事業の目的・内容等について地域の意見を的確に聴取することを目的に設置されているが、結果的に本事業においては地域の意見を的確に反映し得なかったこととなる。この点について政府はどのように考えるか。
十二 公共事業の計画策定及び実施は、「公権力の行使」に該当するか。
十三 国直轄事業の実施によって不利益を被ると考える以下の者は、「行政不服審査法」に基づく審査請求、異議申立又は「行政事件訴訟法」に基づく出訴ができるか。
1 事業法上、関与権限のある地方公共団体
2 事業法上、関与権限のない地方公共団体
3 事業区域或いは事業区域に近接した区域に住む住民
4 国民
十四 十三に掲げる方法の他、国が行う公共事業に対して反対の意見を有する者が、当該事業の差し止めを求める方法にはどのようなものがあるか。
十五 徳島市の住民投票により関係住民の反対の意思が明確になっても、政府は従前どおり計画の推進を明言しているが、内閣の有する「行政権」が住民の個別具体的な意思表明を超越する理由は何か。
右質問する。
政府答弁書
一について
徳島市の住民投票の結果については、一級河川吉野川水系吉野川(以下「吉野川」という。)の流域の治水のために固定堰である現在の第十堰を放置しておけないことが十分に理解されていなかったことによるものと認識している。
また、第十堰の改築は、二市六町にわたる住民の生命及び財産の安全にかかわる事業であり、今後、関係住民との対話を積み重ねていくことが重要であると考えている。
二について
第十堰の改築については、河川法の一部を改正する法律(平成九年法律第六十九号)による改正前の河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第十六条第一項及び第四項の規定に基づき、河川審議会の意見を聴いた上で、河川管理者である建設大臣が昭和五十七年三月に吉野川水系工事実施基本計画を改定し、同計画において、吉野川の池田から下流部について、「既設固定堰の改築を行って、洪水の安全な流下を図る」ことと位置付けたものである。
第十堰を可動堰に改築する事業計画の原案(以下「事業計画の原案」という。)については、建設省四国地方建設局が、平成七年九月に「ダム等事業に係る事業評価方策の試行について」(平成七年七月十四日建設省河開発第九十八号建設省河川局長通達。以下「河川局長通達」という。)に基づき設置した吉野川第十堰建設事業審議委員会(以下「第十堰審議委員会」という。)に諮り、第十堰審議委員会において審議され、平成十年七月に第十堰審議委員会から「本事業を実施することが妥当である」旨の意見が提出されたものである。
現在、事業計画の原案を建設省として関係地方公共団体、住民等に示している段階にある。
三について
第十堰の改築に関しては、建設省四国地方建設局徳島工事事務所(以下「徳島工事事務所」という。)が、水域及び陸域の現況並びに生物の現況を把握して第十堰の改築に伴う周辺環境の保全対策について検討しこれらを事業に反映させるための提言及び助言を行うことを目的として平成四年十月に設置した第十堰環境調査委員会が、平成九年三月に中間報告を取りまとめたところであるが、今後も、徳島工事事務所においては、同委員会の意見を聴きながら環境に係る調査等を継続して実施し、必要な措置を講じていくこととしている。
また、関係住民の意見を反映させるため、徳島工事事務所においては、今日まで、対話集会、地区別説明会、模型実験の公開等の措置を実施してきたところである。今後も、住民の意見を反映させるための措置を従来にも増して積極的に講じていくこととしている。
なお、御指摘の河川法の改正は、平成九年に行われ、同法の目的に「河川環境の整備と保全」が追加されるとともに、河川管理者は、河川整備計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならないこと等とされたものである。
四について
御指摘の信書は、治水を担当する建設大臣及び防災を担当する国土庁長官として、詩に託した吉野川に対する自らの思い及び吉野川の流域全体で治水を考えることの重要性を市民の安全を守る立場にある徳島市長に理解していただくため、送付したものである。
また、同信書は、その内容を国民に広く理解していただくため、公開している。
五について
御指摘の「民主主義の誤作動」との建設大臣の発言は、今後の第十堰の改築の方向性については、徳島市の住民投票の結果のみによって建設大臣自らが見誤らないようにすべきであるとの考えを述べたものである。内閣総理大臣は、建設大臣がこのような趣旨で発言をしたとの報告を受けている。
六について
御指摘の発言については、一国会議員としての発言であり、政府としては、これに関する見解を述べる立場にはないものと考える。
七について
河川法第九条第一項の規定により、吉野川の管理は建設大臣が行うこととされている。したがって、第十堰の改築については、関係住民の意見も聴きながら科学的及び技術的知見等を踏まえて、建設大臣がその責任の下に総合的な判断を行うべきものであると考える。
また、建設省として、アメリカ合衆国政府において御指摘のような「治水におけるダムという手法を放棄している」という事実は確認していない。
八について
住民投票をどのように考えるかについては、既に第二十四次地方制度調査会専門小委員会報告(平成八年四月十六日)においても指摘されているように、地方行政への住民の参加の機会の拡大のための方策として、更には議会の活性化を図る観点からも住民投票制度の導入を検討するべきではないか等の意見が見られる一方、現行の代表民主制を基本とした地方自治制度の下で議会や長の本来の機能と責任との関係をどう考えるのか、住民投票に適する事項及び適さない事項は何であるか等について慎重に考える必要があるのではないか、等の意見が見られるところであり、更に引き続き検討する必要があるものと考えられる。
九について
公共事業について関係住民が意見を表明する方法として住民投票をどのように考えるかについては、八についてで述べたとおり、更に引き続き検討する必要があるものと考えられる。
また、河川事業については、公聴会の開催等により関係住民の多種多様な意見を集約することが適切であると考えている。
十について
公共事業に関しては、予算において所要額を計上し、国会の議決を経ているところである。
また、個別の公共事業については、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第三十四条の二第一項等に基づき支出負担行為の実施計画についての大蔵大臣の承認を経て事業を実施するとともに、支出負担行為の実施計画の概要については、予算成立後速やかに公表し、事業の透明性の向上に努めているところである。
したがって、今後とも、公共事業の適切な実施に努めてまいりたい。
十一について
河川局長通達に基づき設置されるダム等事業審議委員会は、その構成を審議対象事業に対する地域の意見が的確に反映されるものとするため、関係都道府県知事及びその推薦する者を委員としており、地域住民等からの意見聴取等を含む委員会の運営も同委員会自らの判断において行うこととし、当該事業の目的、内容等に対する地域の意見を反映し得る審議を行うこととしたものである。
第十堰審議委員会は、徳島県知事及びその推薦した委員により構成され、委員会を十四回、公聴会を三回及び技術評価報告会を二回開催し、約二年十か月にわたり審議を行い、意見を提出したものである。
十二について
御指摘の「公権力の行使」の意味が必ずしも明らかではないが、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号。以下「行服法」という。)第一条第一項及び行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号。以下「行訴法」という。)第三条第一項に規定する公権力の行使とは、法が認めた優越的な地位に基づき、行政庁が法の執行としてする権力的意思活動であり、その行為によって、国民に対し権利を設定し、義務を課しその他法律上の効果を発生させるものをいうと解されている。
したがって、公共事業の計画の策定及び実施は、一般的には、これらの法律に規定する公権力の行使には該当しないと考えられるが、公権力の行使に該当するか否かについては、当該公共事業の計画の策定及び実施がその根拠法規においていかなる性質のものと規定されているかに応じて、個々具体的に判断する必要があるものと考える。
十三について
御指摘の「国直轄事業の実施」が、行服法第三条第一項に規定する審査請求若しくは異議申立て(以下「不服申立て」という。)又は行訴法第三条第二項に規定する処分の取消しの訴えの対象となるためには、当該直轄事業の実施が公権力の行使に該当することが必要であり、その該当性については、十二についてで述べたとおり、個々具体的に判断する必要があるものと考える。
さらに、不服申立てをすることができる者及び処分の取消しの訴えを提起することができる者は、一般的には、当該処分その他公権力の行使に当たる行為により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者であると解されている。したがって、御指摘の1から4までに掲げる者で不利益を被ると考えるものが、これらの不服申立てをすることができる者又は処分の取消しの訴えを提起することができる者に該当するか否かについては、これらの者ごとに具体的に判断する必要があるものと考える。
十四について
御指摘の「当該事業の差し止めを求める方法」としては、民事訴訟において所有権等に基づき差止めを請求する方法等が考えられる。
十五について
七についてで述べたとおり、建設大臣は、関係住民の意見も聴きながら科学的及び技術的知見等を踏まえて、その責任の下に総合的な判断を行って吉野川の管理を行うべきものであると考える。
なお、建設省としては、第十堰について、今後、事業計画の原案以外の種々の代替案も議論の対象として、関係住民との対話を積み重ねていくこととしている。
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