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ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問主意書

参議院 第153回 第3号

提出者
参議院
提出日
2001年10月18日
内閣転送 2001年10月22日
答弁書受領日
2001年11月13日
提出から26日
答弁の項目数
10
質問 2,009字/答弁 3,465字

質問本文

現在ケニア共和国西部で、日本の有償援助による、ソンドゥ・ミリウ水力発電事業が行われているが、この事業は多くの問題をはらむため、国会や質問主意書で何度も取り上げられてきた。しかし、当事業においては、依然として不透明なところが明確にされないままでいる。

そこで、以下質問をする。

一 ケニアの発展を真剣に考えているのなら、重債務貧困国であるケニアに政府はなぜ無償でなく新たな債務負担を強いる有償という形でこのプロジェクトに対し援助を行うのか。

二 政府はなぜ、地域住民の生活を向上させる事業でなく、このような地域住民にほとんど裨益しない大規模事業に対し援助を行うのか。

三 ソンドゥ川の水源地であるマウ森林は、政府計画による入植と樹木の違法伐採により、急速に破壊が進んでおり、現在では灌木が辛うじて生えている程度である。それにもかかわらず、ケニア政府は同森林に更なる入植計画を推し進めようとしている。このままでは同森林は水源地としての機能を失い、土砂堆積が進み、発電自体ができなくなるおそれがあるが、政府は事業を進める上で、この森林破壊の問題について現地調査や科学的な検討を専門家の手により行ったのか。行ったのであれば、当事業に対する影響は見い出されなかったのか、明確な数値的根拠に基づき回答されたい。

四 ソンドゥ川の取水地点より下流のソンドゥ川にも、わずかながら水がいくことになるようであるが、それは本来の流量の百分の一という話である。これでは漁業で暮らしていた人のみならず、川の水を使って生活を行ってきた人達の生活は間違いなく破壊される。にもかかわらず、これまでこうした住民へ事業に伴う生活への影響について十分に説明が行われてきたとは言えない。また、事業によって移住を余儀なくされたり生計手段である土地を失った人々への補償は、見知らぬ土地への移住か、貨幣経済に不慣れな人への現金給付である。今回の事業によって社会的影響を受ける住民への補償は今後どのような形で進められる予定なのか。

五 移住世帯及び生計手段を喪失した人々への生計手段確保のための支援は、国際協力銀行の「円借款における環境配慮のためのJBICガイドライン」があるにもかかわらずほとんど行われていない。なぜ支援が行われていないのか。また、支援が行われているかどうかこれまでに政府は確認作業を行ってこなかったのか。

六 ソンドゥ川の月別の平均降水量を調べると、発電に必要な流量が確保できるのは雨期の六か月間だけである。乾期の間はほとんど発電はできず、年間を通じた電力供給は極めて不安定になる。さらに、今後下流への放水量を見直すことになると、特に乾期の発電容量を大幅に見直さざるを得ないと考えられる。こうした発電容量の見直しを踏まえても本事業の経済性は再検討されたのか。

七 この発電により供給される電力はどのような産業に使われるのか。それらは年間六か月だけの電力で成り立っていくものなのか。また、生活用にはどれくらいの電力が配分されるのか。

八 現在の計画で発電設備の経済性に問題がないのであれば、毎月の発電計画と資金の返済計画について示されたい。

九 ケニアは重債務貧困国であり、債務輸出比率が二百四十二・四%、債務GDP比率が六十一・五%(いずれも一九九八年)で、一九九六年に世界銀行や国際通貨基金、各国政府の間で合意された重債務貧困国への債務問題への対策の中で、パリクラブでナポリタームを適用した場合のみ債務持続性があるとされている。つまり、三年から五年後に削減りスケジュールが行われることが予測され、すべての債務が返済できないことが相当程度予想されるからである。昨年十一月パリで開かれたケニアと関係債権国の協議で、債務削減に至らない条件で債務繰延べに合意したり、ケニアが債務削減を行わない方針を累次にわたり表明していることなど、ケニア側の主張を踏まえて検討することとされたことがあるにしても、政府はなぜケニア側のこのような主張のみで巨額の融資を行うのか。

十 技術委員会は、委員長をケニア電力公社の者が務め、各小委員会の専門家はケニア電力公社によって選出されているので、専門家は必然的に事業者側の意見に偏りがちである。これでは公正な議論が期待されるべくもない。何をもってこのような委員会の公正性を確保しようとしているのか。また、今後技術委員会の改善に向けて政府として働きかけをしていく予定はあるのか。

十一 政府は当事業の経費の内訳について、土木工事の一部に四十四億二千五百万円、コンサルタント会社に十八億七千六百万円としか明らかにしていない。これでは適切に政府開発援助が活用されているかどうかを国民に説明するのには十分と言えない。当事業に係るより詳しい会計資料を示されたい。示せないのであれば、その具体的で明確な根拠を述べられたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一及び九について

一般に、円借款の供与は被援助国からの要請を受けて実施するものであり、ソンドゥ・ミリウ水力発電計画(以下「本件計画」という。)についても、被援助国であるケニア共和国(以下「ケニア」という。)からの円借款供与の要請を受けて、我が国としてその必要性等を検討した結果、平成九年一月に本件計画の第一期分への円借款供与に係る交換公文を締結したものである。また、現在、ケニア側の環境、社会面での取組及び債務償還可能性について我が国として確認することを前提として、第二期分への円借款供与に係る交換公文につき署名の準備を進めているところである。

円借款は、被援助国からの返済を前提とする援助形態であり、被援助国の債務返済可能性を含む経済状況に配慮した上で供与を決定すべきことは当然である。一般に、ある国の将来の債務返済可能性を予測するには、当該国のマクロ経済動向や輸出入の推移、その前提になる世界経済等の動向等、様々な不確定要因を総合的に勘案することとしているほか、国際通貨基金や世界銀行といった政府や国際協力銀行以外の機関等が行った当該国の経済に関する分析等をも参考としている。ケニアの債務返済可能性に関しても同様であり、第二期分への円借款供与に際して、国際機関等の判断、すなわち、経済の安定化を図るための貧困削減成長措置を実施することについて国際通貨基金がケニアと合意していること、債務削減に至らない条件での債務繰延べについて債権国側がケニアと合意していること等も踏まえて検討することとしている。このように、我が国としては、ケニアの債務返済可能性について、様々な角度から総合的に判断しており、ケニア側の主張のみに依拠しているわけではない。

二について

ケニアにおいては、電力の供給不足のため計画停電が日常的に実施されている状況にある。本件計画は、ケニア西部のソンドゥ川から取水の上、流れ込み式発電所に導水し発電することにより、このような状況の改善に資するものであり、また、安定的電力供給の確保及び水力資源活用による石油購入外貨の節約等の効果が期待され、本件計画を実施する地域の住民を含め、広くケニア国民の利益になるものと考えている。

三について

マウ森林は、ケニアの国内法に基づき、同国の天然資源省森林局によって管理されており、御指摘の「森林破壊の問題について現地調査や科学的な検討」は、ケニア側において、実施の要否を含めた検討が行われるものと考えている。

なお、ソンドゥ川には複数の源流があり、マウ森林入植計画予定地を通過するのはそのうちの一部であること等から、現時点において、マウ森林における入植や樹木の伐採により本件計画に影響が及ぶ可能性が高いとの予測は有していない。また、マウ森林をめぐる状況については、今後、入植計画の帰趨も見つつ、関係機関において、調査及び検討が行われるものと考えているが、我が国としても、関連情報の収集に努めるとともに、必要に応じ、ケニア側に適切な対応を促す考えである。

四について

本件計画についての事業実施機関であるケニア電力公社は、土木工事の実施前から、本件計画の内容に加え、ソンドゥ川の水の発電所への転流や放水路を通じての復流による流量変化、住民の移転や一部の土地の収用に伴う住民の生活への影響、ソンドゥ川の渡し船事業への影響等に関する説明を地域住民に対して行ってきており、これらの影響に対しては、補償方法や補償内容等についての関係住民との協議及び交渉を経て、その補償手続はほぼ終了していると承知している。また、事業実施機関は、今後とも定期的に地域住民との対話を行っていく予定であり、住民の移転後の生活状況について、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、非政府組織(以下「NGO」という。)及び有識者から構成される本件計画に関する技術委員会(以下「技術委員会」という。)での議論等を踏まえ、モニタリング及び評価を実施していくものと承知しており、我が国としても事業実施機関に対して適切な対応を促していくこととしたい。

五について

国際協力銀行は、平成八年六月に本件計画の審査を行った際、本件計画が移転住民の移転後の生活や生活手段喪失者の生活にも配慮したものであることを確認したと承知している。そして、事業実施機関は、住民の移転や一部の土地の収用に伴う住民の生活への影響及びソンドゥ川の渡し船事業への影響に対し、補償方法や補償内容等についての関係住民との協議及び交渉を経て、補償手続をほぼ終えており、国際協力銀行としてもその過程を注視してきたものと承知している。

今後とも、国際協力銀行は、御指摘の「円借款における環境配慮のためのJBICガイドライン」の趣旨を踏まえ、事態の推移を注視しつつケニア側に対して適切な対応を促していくものと承知している。

六について

発電に必要な流量を確保できるのが「雨期の六か月間だけである」とする御指摘がいかなる根拠に基づくものか明らかではないが、本件計画は、発電のための転流によってソンドゥ川の河川維持が害されることのないよう必要な河川維持流量を確保しつつ、流量が少なくなる乾季も通じてソンドゥ川の季節的な流量変動に応じた発電を行うものである。

御指摘の「発電容量の見直し」とは、今後事業実施機関により河川維持流量の見直しが行われることに伴い、発電量にも影響が及ぶことを指すものと思われるが、仮に現在の計画上の河川維持流量が変更されたとしても、過去の季節的な流量変動等にかんがみれば、その程度が大幅なものになることは想定されず、発電量に与える影響は限定的であると見込まれるので、本件計画の経済性は確保し得るものと考えている。

七について

本件計画の完成後に発電される電力は、ケニアの全国送配電網を通じてケニア全国の産業及び生活用の電力として供給されることとなっており、特定の産業や生活用への電力配分量があらかじめ決められているわけではないと承知している。河川流量の変動に伴う発電量の変動がケニア全国の電力需給バランスに与える影響については、他の発電所の発電量を変化させること等により調整されるものと承知している。

八について

本件計画においては、過去約四十年間の日ごとの実測流量を基に年間発電可能量が算出されているが、月ごとの発電計画は策定されていないと承知している。

また、本件計画の第一期分に供与された円借款については、半年賦、金利二・三パーセント、償還期間三十年(十年の据置期間を含む。)での返済が予定されている。

十について

技術委員会は、平成十三年一月に現地の事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者が参加した対話集会における決議を受けて設立され、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成されていると承知している。技術委員会の現委員長は、事業実施機関から選出されているが、これは、事業実施機関が本件計画実施に係る責任主体であること等にかんがみ、最初の技術委員会において出席者の協議を経て決定されたものと承知している。また、その後も技術委員会の構成について検討が行われ、必要な構成員が追加されたと承知している。

我が国としても、技術委員会が本件計画の円滑な実施のための重要な討議の場であると認識しており、既にケニア側に対し、技術委員会の組織及び運営について、地域住民及びNGOの意見を十分に吸収するとともに本件計画の実施上の問題点に対応するとの観点から最も適切な形態のものとなるよう要請を行っており、また、第二期分への円借款供与に係る交換公文につき署名の準備を進めるに際しても、今後とも技術委員会の有効性及び公平性が確保されるよう要請を行ったところである。

十一について

御指摘の「より詳しい会計資料」が具体的にいかなるものを指すのか明らかではないが、円借款により実施される本件計画においては、契約企業が行う仕事の出来高等についての対価の支払請求に関し、契約発注元である事業実施機関が当該支払請求の内容を精査し、国際協力銀行がその結果を確認するところ、その過程における支払請求書類等については、支払日や支払金額といった契約企業の事業上の信用に係る情報、工事や調達の単価など契約企業の競争力に係る情報等が含まれており、このような情報を公にすることは当該企業の正当な利益を害するおそれがあることから答弁を差し控えたい。

参議院の原文

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