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ケニア共和国ソンドゥ・ミリウ水力発電事業に関する質問主意書
衆議院 第151回 第71号検討してまいりたい ×2
質問本文
プロジェクトの概要
ケニア共和国ビクトリア湖に注ぐソンドゥ・ミリウ川において、現在水力発電事業(60MW、30MW×2基、流れ込み式発電所)が進行中であり、このプロジェクトに日本政府は総額181億5500万円もの円借款供与を行なう予定である。
しかしながら、本事業に対して、経済的な事業可能性(フィージビリティースタディー)、環境、社会・文化的側面から様々な問題があるとして、地域住民およびNGOから強い懸念の声が出されており、国際社会でも問題視され始めている。今まさに公正で詳細な分析を行った上で、「受益者としての地域住民」という視点に基づき事業への融資を再検討することが求められている。プロジェクト決定の経緯や、重債務国であるケニアに対する新規円借款供与の意味という面からも考慮すべき点があると考えられるため、以下質問する。
一 円借款を供与する根拠について
ケニア政府の財政は危機的状況にあり、2000年11月に債務返済繰り延べを要請、合意したが、旱魃の影響もあり経済状況は悪化している。2000年から2004年まで789百万ドルのファイナンシング・ギャップが生じると予想され、ドナーからの資金流入がなければ再度の債務返済繰り延べは避けられない見通しである。IMFの見込みでは、我が国に対しても2009年まで毎年80億円以上の債務返済が予定されている。
1 このような財政状況を踏まえた上で、本事業を円借款で実施する根拠、資金回収の見込を示されたい。
2 本事業には1989年10月には技術協力の所要資金として6億6800万円(金利2・5%)、1997年3月には、第一期の調達資金として69億3300万円(金利2・3%)の借款契約が調印されたが、これまで具体的にどのように使われたのか、項目ごとに支払い相手、および金額を示されたい。
3 フェーズ2に対する105億5400万円の借款供与(金利2・3%)は具体的にどのように使われる予定なのか、項目ごとに支払い相手および金額を示されたい。
4 上記のような厳しい財政状況の中で、ケニア政府の債務返済可能性についてどのように考えているか、政府の見解を示されたい。
5 本件の工事は鴻池組が受注したが、その経緯や理由について詳細説明を示されたい。
二 環境への影響について
流量変化に関する問題
1985年12月国際協力事業団によって行なわれた『ソンドゥ川水力発電開発計画調査書 主報告書』によると、ソンドゥ川の1946年から1983年までの1JG1測水所における月平均流量の平均値は41・59立方メートル毎秒となっている。ソンドゥ・ミリウ水力発電に必要な水量は40立方メートル毎秒であり、流量の大半は発電用に使われることになる。特に1月から3月にかけての乾季および10月から12月にかけての少雨季の間、6ヶ月間は川の流量が大幅に減少することになり、周辺の砂漠化など環境への影響は避けられない。
1 1991年7月に日本工営株式会社によって行われた「環境アセスメント報告書」によると、ケニア水資源開発省(The Ministry of Water Development)の基準により流域住民の水利用のために4・0立方メートル毎秒の水を取水堰の下流に流す必要があるとのことだ。乾季において4・0立方メートルの水を流すことができるのか。また、この程度の流量では水が土壌に吸収されてしまう可能性が極めて高いと懸念されるが、政府はどのように考えているのか。詳細な見解を示されたい。
2 川の流量が大幅に減少する乾季、少雨季の環境保全、および耕地のため、どのような対策が講じられているのか。具体的な説明を詳細に頂きたい。
三 地域の合意について
1 地域住民への情報提供の欠如について
ソンドゥ川の流域の住民は、環境影響評価書の策定時、川の流量変化など事業に伴う社会・環境影響について十分な説明を受けていなかったが、工事が始まって2年以上たった今も流量変化について知らされていない。
この状況は適切とされる環境アセスメント手続きが取られていないことを示している。地域の住民に十分な情報が与えられていないのはなぜか。また、今後はどのような対応を考えているのか。政府の対応策を示されたい。
2 対話集会について
2001年1月24日・26日、ケニア側実施機関、住民、NGOが参加する対話集会が現地で開催された。外務省によると、本事業の継続支持、早期の第二期借款の供与要望が表明され、事業実施の過程で懸念が示された諸点については第二期事業の過程で定期的な協議を実施することが決議されたとのことである。しかしながら、NGO側からは事業継続支持を表明した事実はないと議事録の記述内容について強い疑念の声が挙がっている。
現在、政府に対し対話集会の議事録の内容提示を求めている。当初は在ケニア日本大使館が管理しており、テープ起こしのために時間がかかるとの説明を受けていたが、その後、対話集会を主催したケニア電力公社が管理しているため、早期内容提示はできないと説明された。このように説明が変化したのは何故か。また、議事録の提示に多大な時間を要する理由は何か。明確な説明を求めたい。
3 技術委員会について
2001年1月26日、当事業の再検討を行う技術委員会が設置された。しかし、現在の技術委員会は、計画を推進する側のケニア電力公社の職員中心に構成されており、公正ではない上に、専門知識を持っているメンバーが十分ではないとの指摘がNGO連合から出されている。
�@ 技術委員会のメンバーが公正な検討を行うには再構成が必要であり、法律家や地質学者、水利技術者、土地測量士など、適切な専門知識を持った外部の専門家が参加するべきだと思われる。現状を解決するために具体的な行動を起こす予定はあるのか否か。政府の見解を示されたい。
�A NGO連合は、技術委員会はケニア電力公社と地域住民の法的拘束力のある合意書に基づいた機関になるべきであると強く求めている。これは本事業が内外から信頼を得るためには必要な措置だと思われるが、政府はどのように考えているのか、説明を求めたい。
�B NGO連合は、技術委員会の委員長は、ダム建設による利害から超越した、人々に広く受け入れられる人が適任であるとの見解を示している。ところが技術委員会の現委員長はケニア電力公社により選出され、ダム建設者の利益のみを優先する態度を続けてきた。この点について政府はどのように考えているのか。また現状を解決するために具体的な行動を起こす予定はあるのか否か。政府の見解を示されたい。
�C 本事業執行の第一期において、重大な汚職、人権侵害が指摘されていることを踏まえ、事業への支援金や機材についての監査は、事業に対する利害関係がなく国際的に信頼度の高い監査人が行うべきとの提案がNGO連合より出されている。今後、このような対応を行う予定があるか否か。政府の見解を示されたい。
4 環境社会調査ミッションについて
国際協力銀行では、2001年2月26日から3月2日までの日程で環境社会調査ミッションを派遣し、本件事業の批判に対する現地調査を行ったとのことである。下記について説明を伺いたい。
�@ 住民の多くは本件事業の継続を求める一方、雇用の拡大等を要望したとあるが、住民の多くとは、現地のどのような住民を対象としたのか、またどのような方法で意見を聞いたのか、具体的な方法、対象地域、対象人数などについて説明を伺いたい。また、雇用拡大の要望についてはどのような対応を考えているのか、政府の見解を伺いたい。
�A 現地では、工事の開始に伴って従業員向けの商店や飲食店が増加しており、全体として地域が貧困化しているとは考えられないとの報告がなされている。しかし、漁業や農業に従事している住民は経済的に負の影響を受けており、受益者は地元有力者など地域住民の一部であるとのNGO等からの指摘もある。新しく営業を開始した商店や飲食店の数は具体的にはどの程度なのか。また商店等の経営者は地域におけるどのような立場の人なのか。また、立ち退きによって影響を受けた地域住民の自立に向けて、地域ビジネスの起業支援など何らかの対策がなされているのか。説明を伺いたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
ソンドゥ・ミリウ水力発電計画(以下「本件計画」という。)については、ケニアとの間で、平成元年六月に事業実施に先立つ調査、設計等(環境影響評価、事業規模、事業費及び事業期間の調査等)に対し六億六千八百万円までの円借款を供与することを内容とする交換公文の締結を行った。この円借款については、同年十月の借款契約締結の後、当該調査、設計等を日本工営株式会社が受注し、約六億六千六百万円が本件円借款の対象となっている。
平成九年一月には、本件計画の第一期分として土木工事の一部(取水設備、導水路、アクセス道路等の整備)及びコンサルティングサービスの実施に対し六十九億三千三百万円までの円借款を供与することを内容とする交換公文の締結を行った。この円借款については、同年三月の借款契約締結の後、土木工事部分につき、国際競争入札の結果、株式会社鴻池組、ベデッカ、マーレーアンドロバーツ共同企業体が受注し、約四十四億二千五百万円が本件円借款の対象となっており、また、コンサルティングサービス部分につき、日本工営株式会社が受注し、約十八億七千六百万円が本件円借款の対象となっており、いずれも現在工事及び業務が進ちょく中である。
また、本件計画の第二期分として残りの土木工事(放水路、発電所、変電所等の整備)及び発電機等の調達に対する追加の円借款の供与については、平成十一年九月にケニア側に事前通報を行ったが、いまだ交換公文及び借款契約の締結に至っておらず、現在、慎重に検討を行っている。
なお、この第二期分については、ケニア側が、既に第一期分の工事が進ちょく中であり、工事の円滑な実施の確保の観点から第二期分の準備を進める必要があること、第二期分の円借款について平成十一年九月に日本側から事前通報がなされていること等から、第二期に対する円借款の実現可能性につき相当程度の見通しが得られたとの判断の下に、自らの責任により、平成十二年一月に入札手続を開始し、同年四月に受注企業を決定し、同年六月に国際協力銀行に対し入札評価結果に係る同意申請を提出したと承知している。国際協力銀行は、第二期分の供与については現在政府において検討中であるため、この入札評価結果に係る同意については、第二期分の供与についての結論が出た段階で対応を判断することとなる旨ケニア側に伝達していると承知している。
円借款は、被援助国からの返済を前提とする援助形態であり、被援助国の債務返済可能性を含む経済状況に配慮した上で供与を決定すべきことは当然である。一般に、ある国の将来の債務返済可能性を予測するには、当該国のマクロ経済動向や輸出入の推移、その前提になる世界経済等の動向等、様々な不確定要因を総合的に勘案する必要がある。ケニアの債務返済可能性に関しても同様であり、今後も引き続き慎重に推移を見守る必要はあるが、我が国としては、ケニア側が国際通貨基金と経済の安定化を図るため貧困削減成長措置を実施することに合意していること、平成十二年十一月にパリで開催されたケニア政府代表者と関係債権国政府の代表者との間の協議において、債権国側がケニアに対し債務削減に至らない条件での債務繰延に合意したこと、ケニア側がこれまで累次にわたり債務削減を求めない方針を明確に示していること等を踏まえつつ、ケニアに対し本件円借款の供与を慎重に検討しているところである。
二について
本件計画に関連し、平成十三年一月、現地において事業実施機関であるケニア電力公社、事業実施業者、地域住民、本件計画について今まで問題点を指摘してきた者を含む非政府組織(以下「NGO」という。)及び有識者が参加した対話集会(以下「対話集会」という。)が行われ、本件計画の継続支持、第二期分の円借款の早期供与の要望及び関係者による定期的な協議の場の設立が決議されたと承知している。これを受けて、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成される本件計画に関する技術委員会(以下「技術委員会」という。)が設立されており、本件計画の実施上の諸問題については技術委員会の場において改善に向けた議論が行われると承知している。
本件計画による発電所が完成し、導水路にソンドゥ川の水を転流する際には、転流に伴うソンドゥ川の流量の減少による生態系等への影響に配慮し、乾季においても必要な河川維持流量を確保することとなっていると承知している。河川維持流量については、技術委員会において必要に応じ調整を行うことを検討していると承知しており、具体的には、現地の水供給プロジェクトの改善や、乾季において流量が少なくなった場合に発電所の操業を抑制すること等が検討されていると承知している。ソンドゥ川の月平均流量の平均値は毎秒四十一・五九立方メートルであり、発電のために必要な水量は毎秒四十立方メートルであるとの御指摘であるが、これは発電所を最大稼働した際の水量であり、実際には河川の状態に応じ、発電所の操業抑制等が検討されることとなっており、流量が少なくなる乾季を含めて発電のための転流によってソンドゥ川の河川維持が害されることのないよう必要な河川維持流量が確保されるものと承知している。いずれにせよ、転流に伴うソンドゥ川の流量減少により問題が生じる場合には、技術委員会における協議を踏まえ、必要に応じ事業実施機関等において適切な措置が講じられるものと承知している。具体的には、平成十三年六月中旬に技術委員会から本件計画に係る環境社会問題について報告書が提示される予定であると承知しており、我が国としては、報告書の内容を精査するとともに現地の状況を注視し、引き続きケニア側に対し、適切な対応を行うよう要請を行っていく考えである。
なお、現在、本件計画による水量の変化に伴い影響を受ける区間においては、ソンドゥ川の水は灌漑に使用されていないものと承知している。
三の1について
平成三年に作成された環境影響評価書は、事業実施機関により既に公表されていると承知している。さらに、事業実施機関は地域住民に対し、土木工事の実施前から本件計画の内容に関する説明を行ってきており、ソンドゥ川の水の発電所への転流や放水路を通じての復流による流量変化についても既に説明済みであると承知している。また、事業実施機関は、今後とも定期的に地域住民との対話を行っていく予定であり、その中で更に本件計画の内容に関する説明を行うこととしていると承知している。我が国としても、この点につき現地の状況を注視していく考えであり、また、既にケニア側に対し、適切な対応を行うよう要請を行っているところである。
三の2について
対話集会において事業継続支持を表明した事実はないとして対話集会の議事内容に疑念を示している御指摘のNGOがいかなる組織か、また、現地住民をどの程度代表するものか明らかでないが、対話集会では、そこでの議論を踏まえて本件計画の事業継続支持等を内容とする決議文が作成され、議長が読み上げた後に挙手により採決がなされ、反対する者なく同決議文が採択されたと承知している。
なお、対話集会の討議の記録については、日本側参加者において非公式な記録を作成した経緯はあるが、対話集会はケニア側により開催されたものであり、公式な記録はケニア側の責任で作成され、公表されるべきものと考えているが、政府としては、対話集会における討議の模様を把握するための文書及び電磁的記録として、日本側参加者の責任において作成した対話集会の討議の概要、ケニア側作成の対話集会の討議の概要、対話集会における決議内容を記したケニア側議長作成の決議書及び対話集会を収録したビデオテープを求めに応じ提示することとしている。
三の3について
技術委員会は、対話集会における決議を受けて設立され、事業実施機関、事業実施業者、地域住民、NGO及び有識者から構成されており、本件計画の実施上の諸問題について改善に向けた議論が行われていると承知している。また、これまで技術委員会においてその構成について討議が行われ、必要な構成員の追加も行っていると承知している。御指摘のNGO連合が、具体的にいかなるNGOから構成されているのか、また、現地住民をどの程度代表する組織であるのか明らかでないが、御指摘の問題は、技術委員会の組織及び運営に係る事項であり、技術委員会において検討及び判断が行われることになっているものと承知している。しかしながら、我が国としても、技術委員会が本件計画の円滑な実施のための重要な討議の場との認識の下、既にケニア側に対し、技術委員会の組織及び運営について地域住民及びNGOの意見を十分に吸収し、本件計画実施上の問題点に対応するとの観点から最も適切な形態のものとされるよう要請を行っているところであり、また、技術委員会で討議された改善案が適切に実行に移されていくような体制が整備されることが重要であることについても指摘を行っている。
なお、技術委員会の現委員長は、事業実施機関から選出されているが、これは事業実施機関が本件計画実施に係る責任主体であること等にかんがみ、最初の技術委員会において協議を経て決定されたものと承知しており、現委員長が本件計画実施者の利益のみを優先する態度を続けてきたとの御指摘のような事実は確認されていないと承知している。また、御指摘の本件計画の第一期において重大な汚職、人権侵害が指摘されている事項のうち、汚職の問題に関しては、技術委員会において事実関係を調査中であると承知しており、我が国としても、既にケニア側に対し、十分な実態調査が行われるよう促しているところである。また、人権侵害の問題については、今後ケニア側の司法手続等の中で事実関係等が明らかにされるものと考えられるが、我が国としては、同様にケニア側に対し、十分な実態調査が行われるよう促しているところである。
三の4の�@について
国際協力銀行の環境社会調査団による現地調査においては、対話集会における住民の意向等を確認することを目的とし、時間的な制約の問題はあったが、地域住民、NGO及び技術委員会の構成員から意見聴取を実施したとの報告を受けている。具体的には、補償対象者の一覧表から当該調査団員が無作為に選んだ住民及びNGO側が指定する住民合わせて約十名を対象とし、これらの住民を訪問の上、意見を聴取したと承知している。雇用の拡大等については、現在、技術委員会において検討されていると承知しているが、我が国としても、既にケニア側に対し、本件事業実施地域からの雇用の拡大等について指摘があることに言及の上、適切な対応がなされるよう要請を行っているところである。なお、対話集会においても、多くの住民が本件計画の継続、雇用の拡大等を要望したことが、在ケニア日本国大使館及び国際協力銀行の報告により確認されている。
三の4の�Aについて
本件計画の開始に伴って新しく営業を開始した商店や飲食店については、国際協力銀行の環境社会調査団による現地視察等により、具体的な数の把握までは至っていないものの、増加していることが確認されている。事業実施機関により実施されている環境社会モニタリングに基づく抽出調査の結果によれば、補償対象者の約半数が補償金を用いて宿泊所や商店などの経営を行っていることが確認されている。また、立ち退きによって影響を受けた地域住民の生活水準等の状況については、事業実施機関によるモニタリングが実施されており、問題があれば技術委員会の議論を踏まえ、改善に向けた検討がなされることと承知しているが、我が国としても、既にケニア側に対し、適切な対応がなされるよう要請を行っているところである。
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