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高松塚古墳壁画保存等に関する質問主意書

参議院 第164回 第33号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×1

提出者
参議院
提出日
2006年3月8日
内閣転送 2006年3月13日
答弁書受領日
2006年3月17日
提出から9日
答弁の項目数
20
質問 2,769字/答弁 3,818字

質問本文

昭和四七(一九七二)年三月、高松塚古墳が発掘され、極彩色の壁画(以下「本件壁画」という。)が発見された。世界的遺産と言うべき本件壁画を保存するために、石室は直ちに閉鎖され、爾後文化庁の責任において保存されてきた。

その後、本件壁画は国民にも、研究者にも公開されることはなく、ただ文化庁のみが観察することができる立場にあった。その上で、平成一六年三月、河合隼雄文化庁長官自らが、文化庁監修の『国宝高松塚古墳壁画』において「幸い三〇年を経ても壁画は大きな損傷あるいは褪色もなく保存されています」と述べていた。ところが、皮肉にもこの『国宝高松塚古墳壁画』に収録された写真によって、本件壁画の劣化が明らかになった。

高松塚古墳の壁画は正に我が国の「宝」であり、現在を生きる我々だけでなく、後世にも伝えなければならないはずであった。それにもかかわらず、本件壁画を劣化させてしまった文化庁の責任は大きく、また、それ以上に、三〇年にわたって劣化を隠匿し続けた責任は重大である。

そこで、以下質問する。

一 本件壁画発見当時の認識について

1 昭和四七年に本件壁画が発見されたとき、公開しないと決定した理由は何か。また、公開しなかったことが、壁画の保存にとって、当時としては最善の選択であったと考えるか。

2 発見当時、本件壁画の美術的・文化的・歴史的価値をどのように認識していたのか。単に「絵が美しい」というだけであれば、発見直後に高松塚古墳を解体して保存すればよかったのではないか。

二 本件壁画の保存措置について

1 本件壁画は、公開しないと決定した後今日に至るまで、どのように保存されていたのか。保存のために講じた措置及び各措置に費やした費用を年度別に個別に明らかにされたい。

2 本件壁画の状態は、継続的かつ科学的に観察されていたのか。観察されていたのであれば、観察日ごとの観察結果をどのように把握しているのか明らかにされたい。

三 本件壁画の現状について

1 現時点の本件壁画の状態を、詳細に明らかにされたい。

2 一三〇〇年間も極彩色を保っていた本件壁画が、発見からわずか三〇年間で劣化してしまったのはなぜか。

3 本件壁画が劣化し、色褪せた原因はもっぱらカビの発生にあるのか。そうであれば、いつから、どのような理由でカビが発生していたのか、詳細に明らかにされたい。

4 本件壁画におけるカビの発生は予見できたのではないかと考えられるが、カビ発生を防止するために具体的な措置は講じていなかったのか。講じていたのであればそれにもかかわらずカビが発生した原因、講じていなかったのであればその理由も併せて示されたい。

5 最初にカビの発生に気づいたのはだれか。また、この発見者から、どのような報告経路を経て、最終的には、いつ、だれにまでカビ発生の報告がなされたか。

四 カビ発生・本件壁画劣化の公表について

1 三の5で質問した最初にカビが発見された時点で、直ちにカビの発生が公表されたのか。この時点で公表された場合は公表方法と公表範囲を、公表されていない場合はその理由、公表しないと決定した最終責任者、カビ発生を公表した時期及びその時期に公表した理由を明らかにされたい。

2 朝日新聞の報道では、文化庁は昭和五四年には本件壁画の劣化に気付いていたが、何ら対策を講じていなかったという。この報道は事実か。事実であれば、なぜ今日まで本件壁画の劣化を隠匿していたのか。

3 最初にカビが発見されたときに直ちに公表していたとしても、解体しか保存方法はなかったか。

五 文化庁の責任について

1 本件壁画の状況に関して、いつ、だれが、どのように河合長官に説明したのか。また、河合長官が『国宝高松塚古墳壁画』に「幸い三〇年を経ても壁画は大きな損傷あるいは褪色もなく保存されています」と書いた理由を示されたい。

2 本件壁画に関して文化庁が今なすべきことは、「いつからカビが発生したか」「なぜカビが生えたか」「どうして、今まで国民に知らせなかったのか」という三点について国民が納得できる説明を尽くすとともに、今後の保存に万全の措置を講ずることはもとより、「カビ発生と、その隠匿に関して、責任の所在を明らかにすること」にあると考える。文化庁は、これらに関して十分な説明を尽くし、責任を明確に示していると考えるのか。説明を尽くし責任を明確に示しているというのであれば、その具体的な根拠(説明方法、説明内容、責任の所在、責任者の処分)を明らかにされたい。未だ十分な説明が尽くされず、又は未だ責任の所在が明らかになっていないと考える場合、今後採るべき対応を明らかにされたい。

3 文化庁は、本件壁画の劣化に関して、報道等の照会に対し「落ち度はない」と回答したことがあるか。

仮に「落ち度はない」と回答したならば、かくも壁画が劣化していながら、なぜ本件壁画を管理していた文化庁に落ち度はないと判断したのか、その判断根拠について示されたい。

六 本件壁画の修復・保存について

1 今後、本件壁画をどのように修復し、保存していくのか。その方法及びそれに要する予算について明らかにされたい。

2 報道によると、今後、本件壁画の修復・保存には一〇年以上を要するとのことであるが、それは事実か。事実であるならば、長期間を要する理由及びその期間中における本件壁画の劣化の進行についての見通しを示されたい。

3 本件壁画の修復・保存に当たり、修復・保存技術や石室解体技術は確立しているのか。また、解体に伴って、本件壁画が破壊されたり損傷したりするリスクはないのか。

4 キトラ古墳においては、本件壁画同様に劣化した壁画を保存するために、石室を解体する方法を採用していない。なぜ、キトラ古墳においては、石室を解体する方法を採用していないのか。また、これに対して、本件壁画に関しては、石室を解体するのはなぜか。

5 文化庁の説明によれば、石室の解体は平成一八年の冬を予定しているが、それまでの間に本件壁画の劣化は進行しないのか。平成一八年の冬まで、本件壁画を劣化させることなく保存できるのであれば、そもそも石室の解体は不必要ではないのか。

6 特別史跡に指定されている高松塚古墳(墳丘)自体には文化的・歴史的価値は存在しないのか。解体は真にやむを得ないものと考えるのか。

七 本件壁画修復後の公開等について

本件壁画は、修復・保存作業終了後、どのように取り扱うのか。再び高松塚古墳に戻すのか、それとも他の場所に移動させるのか、仮に他の場所に移動させる場合、明日香村村内に留まるのかを明らかにされたい。また、その際には公開するのか、非公開のままとするのかも明らかにされたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

高松塚古墳壁画(以下「壁画」という。)の保存方法については、昭和四十七年十二月十八日に文化庁に置かれた「高松塚古墳保存対策調査会」において、考古学、歴史学、美術史学、保存科学等の専門家によって検討した結果、壁画は歴史上、芸術上の価値が高く、発見当時の石室内の密閉された環境で現地で保存すること(以下「現地保存」という。)が適切であると判断されたことを踏まえ、文化庁において現地保存の方針を決定したものである。この保存方法については、当時、壁画の発見に伴う石室の開封によって石室内の温湿度の急激な変化、二酸化炭素濃度の上昇及びカビ等の微生物の繁殖等の状況が生じていることが指摘されており、文化庁としては、まずはこれらを安定させる等の対処が必要であったことから、石室内に与える環境変化を最小限に抑えることを最優先して保存方法を決定したものと考える。

二について

文化庁においては、現地保存の方針を踏まえ、昭和五十一年度から昭和六十年度までの三次にわたる壁画の剥落の防止及びカビの処置等の保存措置を含め、発見当時から現在に至るまで継続的に点検・管理を行ってきている。壁画の状態については、点検日誌及び写真等により記録保存してきている。具体的な保存措置の経緯等については、文化庁のホームページに掲載している。また、これらに係る予算額は、昭和四十八年度は約二千九百万円、昭和四十九年度は約八百万円、昭和五十年度は約六千六百万円、昭和五十一年度は約六百万円、昭和五十二年度は約千二百万円、昭和五十三年度は約千万円、昭和五十四年度は約千万円、昭和五十五年度は約千万円、昭和五十六年度は約七百万円、昭和五十七年度は約六百万円、昭和五十八年度は約五百万円、昭和五十九年度は約五百万円、昭和六十年度は約五百万円、昭和六十一年度から平成十五年度までの各年度は約千万円、平成十六年度は約七千九百万円、平成十七年度は約一億八千五百万円である。

三の1について

発見当時と比較すると、壁画のうち白虎を描いた線の薄れ、石室の西壁に描かれた女子群像の顔の部分の染み等が見られる状況である。これらについては、「国宝高松塚古墳壁画」(平成十六年文化庁監修。以下「平成十六年刊行の写真集」という。)及び文化庁のホームページに掲載している。

三の2について

漆喰層の剥離、亀裂及び陥没については、昭和四十七年の石室の開封以前から長い年月をかけて進行したものと考えられる。壁面の汚れや線の薄れについては、石室の開封によって、長期にわたって安定していた石室内の環境を変化させたことが大きな原因であると考えられるが、原因のすべてについては十分に解明されていないところである。

三の3について

壁画の劣化の主な原因は、カビ等の微生物による影響が大きいと考えているが、現時点においては、原因のすべてについて十分に解明されておらず、今後とも保存措置を講じつつ、その究明に努めることとしている。カビの発生については、壁画の発見直後から確認されており、石室の開封による環境の変化によるものと考えている。

三の4について

カビの発生については、壁画の発見直後から確認されていたものであり、それ以降現在に至るまで滅菌処置等を継続して講じてきている。しかしながら、古墳周辺の温度が上昇したこと、微生物に薬剤に対する耐性が生じたこと等により、カビの発生を完全に抑制するには至っていない。平成十七年九月から緊急保存対策として墳丘部の冷却、日射及び雨水の浸入の防止等の措置を講じており、現時点においては、カビ等の微生物の繁殖は抑制されているが、これらの対策では、長期的に抑制することは困難であることが専門家から指摘されている。

三の5について

カビの発生については、壁画の発見直後の昭和四十七年四月六日に文化庁に置かれた「高松塚応急保存対策調査会」(以下「応急調査会」という。)による現地調査が実施されており、同年七月二十九日に応急調査会から文化庁に対して菌の増加が顕著である旨の報告(以下「応急調査会の報告」という。)が行われている。

四の1について

カビの発生を初めて公表した時期については、文化庁において保管されている資料からは、必ずしも明らかではないが、応急調査会の報告が「国宝高松塚古墳壁画―保存と修理―」(昭和六十二年文化庁刊行。以下「昭和六十二年刊行の報告書」という。)に収録され、公表されている。

四の2について

文化庁は、カビの発生を当初から認識しており、それを踏まえた壁画の保存措置を講じてきたところである。壁画のうち白虎を描いた線の薄れについては、昭和五十六年一月の壁画の点検・管理の際に認識しており、保存措置を講じてきたところである。これらの保存措置については、昭和六十二年刊行の報告書及び文化庁のホームページに掲載している。

四の3について

カビの発生の公表については、四の1についてで述べたとおりであるが、文化庁は、カビの発生を当初から認識しており、それを踏まえた壁画の保存措置を講じてきたところである。壁画の置かれている現状について平成十六年四月二十六日に文化庁に置かれた「国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会」(以下「検討会」という。)において多様な保存方法を検討した結果、石室を取り出し、壁画の修理及び保存措置を適切な施設で行うことを決定したものである。

五の1について

壁画の状況については、遅くとも、平成十五年三月十二日に文化庁に置かれた「国宝高松塚古墳壁画緊急保存対策検討会」を開催する際に、文化庁文化財部美術学芸課から河合文化庁長官に説明している。

また、平成十六年刊行の写真集は、壁画全体についてありのままの写真を公開することにより、広く壁画の状況について国民の理解を得ることを目的として刊行したものであり、御指摘の記述を含む「序言」については、全体としては、壁画の保存事業は厳しい環境の下で壁画の保存・管理を行うことが前例のない困難な作業であることを述べる趣旨であったものと承知している。

五の2について

壁画の状況については、昭和六十二年刊行の報告書、平成九年における現状写真の公開、平成十六年刊行の写真集等によって明らかにしている。また、壁画に関する発見当時から現在までのすべての保存措置の経緯等については、平成十六年八月に公開で開催された検討会において、関係資料を配布するとともに、文化庁のホームページにおいて同資料を掲載している。今後、情報公開については、より一層適切な対応に努めてまいりたいと考えている。

五の3について

壁画の劣化の原因は特定されていないため、その責任については現段階では明確に判断することはできない。しかしながら、文化庁としては、結果として壁画の劣化を招いた事実については厳粛に受け止めている。

六の1について

平成十七年六月に開催された検討会において、恒久的な保存の方法として、石室を取り出し、壁画の修理及び保存措置を適切な施設で行うことを決定した。平成十九年二月には石室を取り出す作業を行うことを予定しており、平成十八年度予算案に当該作業に関する経費として約七億円を計上している。

六の2について

壁画の修理及び保存措置を行う期間は、修理の状況等に応じて変化し得るものであるが、現在の文化財の保存修理技術や通常の場合の修理期間等を踏まえ、現時点では十年程度かかるものと予測されている。当該期間中に壁画の修理及び保存を行う施設では、温湿度調整を始め、適切な環境を確保した上で修理等を行うことを予定している。

六の3について

文化庁においては、石室の取り出しに関する実験を繰り返し行い、より安全で確実な作業の実施に向けて準備をしているところである。また、壁画の修理及び保存措置については、キトラ古墳等で培った修理技術等を活用することを予定している。

六の4について

キトラ古墳については、漆喰が石材から剥離した部分があることから、専門家による慎重な検討の結果を踏まえ、平成十六年九月に、壁画を剥ぎ取った上で修理及び保存を行う方針を決定し、現在剥ぎ取り作業を進めているところである。一方、高松塚古墳については、漆喰の状態が悪く、壁画を剥ぎ取ることが極めて困難であることが判明しており、検討会において多様な保存方法を検討した結果、石室を取り出し、壁画の修理及び保存措置を適切な施設で行うことを決定したものである。

六の5について

カビ等の微生物の繁殖を抑制することを目的として、平成十七年九月から、墳丘部の冷却、日射及び雨水の浸入の防止等の措置を講じているが、これらの対策によっても、長期的に抑制することは困難であると考えている。

六の6について

高松塚古墳については、壁画を有する終末期古墳として、我が国において他に類例を見ない古墳であることから特別史跡に指定するとともに、壁画は国宝に指定している。

石室の取り出しについては、現状のまま現地で壁画の修理及び保存を行うことが極めて困難であり、やむを得ないものと考えている。

七について

壁画の修理後の取扱いについては、カビ等の微生物の影響を受けない環境を確保した上で、石室を現地に戻すこととしているが、具体的には、公開することも含め、今後検討が必要となると考えている。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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