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教育の基本に関する質問主意書
参議院 第165回 第28号検討してまいりたい ×1
質問本文
今後日本の教育に関し数十年にわたって影響力を持つこととなる重要な法案である教育基本法改正案の審議が本院において行われている。しかしながら、政府案、民主党案ともに重要な視点が欠如していると思われる。次代を担う子どもたちに、よりよい教育環境を提供することは、私たち国会議員の党派を超えた使命であると考える。
そこで、以下質問する。
一 人生経験豊かな人が教育に携わる必要性について
今後、教員の大量退職時代を迎えることから、都道府県・指定都市の教育委員会においては、中長期的な視野から計画的な採用・人事を行うことが重要である。質・量両面で優れた教員を確保するためには、社会人経験者の登用促進や、採用選考の受験年齢制限の緩和・撤廃、退職教員を含む教職経験者の積極的な活用等、多様な人材を登用するための一層の改善・工夫を図ることが必要である。
1 今年度の教員採用試験において、年齢制限を完全に撤廃した自治体は七県市に留まる。全国的に年齢制限を撤廃すべく、国として制度的な措置を講ずるか、教育委員会を積極的に指導していく必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 学校現場の最高責任者である校長については、平成十二年四月から校長の資格要件が緩和されたところであるが、民間人校長は今年四月現在百二名に留まっている。今後、地域や学校の実情に応じ幅広く人材を確保する観点から、全国的に積極的登用を図る必要があると考えるが、今後の方針を含め、政府の見解を示されたい。
二 教育の寺子屋化について
明治期の日本が急速に近代化を達成しえた背景として、寺子屋による高水準の教育が庶民の間で広範に定着し、高い教育基盤を社会に与えていたことが指摘できる。地域の多くの人々が、師匠として、あるいは運営資金援助者として寺子屋を支えてきた。このような地域住民による学校への参画は、今後の教育にも必要な視点と考える。
1 各地域で学校を盛り立てていくためには、地域の多様な人材が積極的に学校に関わり、支援するとともに、その経験を子どもたちに伝えることができるような制度的仕組みが必要である。今後の方針を含め、政府の取組方針を示されたい。
2 現在の教育行政は、国と地方の責任分担、地方の中では首長と教育委員会の責任分担が不明確である。また、事件や事故の際、保護者や本人の責任が問われることは希である。このような場合、寺子屋の師匠のように権威を持って指導に当たる学校の責任者としての校長の役割が重要となる。国、地方、首長、教育委員会の責任分担の一層の明確化、保護者や本人の責任を問う体制及び校長の権限の拡大が必要と考えるが、今後の方針を含め、政府の見解を示されたい。
三 作文教育の充実について
作文は、思考をまとめ、表現する活動として重視すべきである。自分自身や、自分を取り巻く家族、友人等を見つめ、自分の生まれ育ったふるさとや社会、自国について考え、折に触れ見つめ直すことは、アイデンティティー形成の上から必要な作業であり、その手段として自分の言葉で書き表すことは重要なことである。しかし、近年、自分の言葉で主張できない子どもが増えている。この背景には、国語教育の軽視、とりわけ作文教育の軽視が大きな原因であると考えるが、作文教育の充実について、今後の方針を含め、政府の認識を示されたい。
四 学校の成績が人間の評価ではないとの視点の欠如について
先の履修漏れ問題に明らかなように、受験第一主義、点数主義がはびこっている。子どもをペーパーテストだけで評価するのではなく、多様な面から良い点を見つけてあげて評価することが本人の自信につながり、その可能性を伸ばすことになる。これが教育の基本と考えるが、残念ながら改正案には、この点が欠如している。子どもに自信と希望を与えるよう、多様な評価の視点を教育の基本に据え、明示すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
五 公平な教育の欠如について
政府案には、教育の機会均等や男女の平等などは盛り込まれているが、公平な教育、すなわち一方に偏らず、公正の観点から全てのものを同じように扱うとの視点がない。多くの子どもが私立中高一貫校に進学する地域がある一方、多くの家庭が就学援助を受けている地域があるなど、所得や地域により、実際に受ける教育の内容に大幅な格差を生じているのが現状である。機械的な平等ではなく、実質的に公平な教育を基本に据え、明示することが正義の実現という点からも必要と考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
文部科学省においては、教員に豊かな経験を有する多様な人材を確保するため、公立学校教員の採用選考を行う各都道府県教育委員会等に対し、受験年齢制限の緩和等を図るよう指導しているところである。
一の2について
校長の任用については、文部科学省において、教職員としての経験や教員免許状を有しないいわゆる民間人校長の任用状況に関する情報提供を行うこと等を通じて、民間人校長の積極的登用を含め、校長の適材確保に向けた取組に努めるよう、各都道府県教育委員会等に対し促してまいりたい。
二の1について
地域の多様な人材が学校に関わり、支援する仕組みとしては、学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第二十三条の三の規定等に基づく学校評議員制度や、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第四十七条の五の規定に基づく学校運営協議会制度等がある。また、学校の授業において地域の多様な人材を活用する仕組みとしては、教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)第三条の二の規定に基づくいわゆる特別非常勤講師制度や、同法第五条第二項の規定に基づく特別免許状制度等がある。今後とも、これらの仕組みやその活用の状況を周知すること等を通じて、学校の経営や教育活動における地域の人材の活用が進むよう努めてまいりたい。
二の2について
「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二○○六」(平成十八年七月七日閣議決定)において、「教育行政の仕組み、教育委員会制度については、抜本的な改革を行う」こととされており、今後、御指摘の国、地方、首長、教育委員会の責任分担の明確化、校長の権限の拡大を含め、教育行政の在り方について検討してまいりたい。
また、御指摘の保護者や本人の責任については、学校、家庭及び地域住民がそれぞれの役割と責任を自覚し、相互の連携協力に努めることが重要と考えており、今後、その促進に努めてまいりたい。
三について
学校における作文の指導については、国語科の「書くこと」についての指導の一環として行われているところである。
学習指導要領全体の見直しを検討している中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の審議経過報告(平成十八年二月十三日)においては、国語力の育成を重視するとの基本的な考え方に基づき、自分の考えをまとめて表現するなどの「書くこと」の指導を充実することが必要と指摘されている。今後、中央教育審議会において、作文教育を含めた国語教育の改善について更に具体的に検討していくこととしている。
四について
教育基本法案(以下「法案」という。)は、我が国の教育の目的及び理念並びに教育の実施に関する基本となる事項等を定めるものであり、教育における児童生徒の評価の在り方について直接規定していないが、御指摘の「学校の成績が人間の評価ではない」との点については、法案第一条において、教育は人格の完成を目指すものであること等を明示しており、また、御指摘の「多様な面から良い点を見つけてあげて評価する」という点については、学習指導要領において、児童生徒の「よい点や進歩の状況などを積極的に評価するとともに、指導の過程や成果を評価し、指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること」としている。
五について
御指摘の「公平な教育」の趣旨が必ずしも明らかでないが、法案第四条第一項において、すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、社会的身分、経済的地位等により教育上差別されない旨を規定し、同条第三項において、経済的理由によって修学が困難な者に対する奨学の措置についても規定している。また、法案第五条において、義務教育の機会の保障とその水準の確保のため、国及び地方公共団体が、その実施に責任を負うことを規定するとともに、法案第十六条においては、国は全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るための施策を実施し、地方公共団体は地域における教育の振興を図るための施策を実施すべき旨を規定している。
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