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経済産業事務次官の発言に関する質問主意書
参議院 第169回 第23号お答えすることは困難 ×1
質問本文
北畑隆生経済産業事務次官(以下、「経産次官」という)は、一月二十五日に行った財団法人経済産業調査会主催の講演会「企業は株主のものか?│企業買収防衛策・外為法改正・企業のかたち研究会│」(以下、「講演会」という)で、株主や社外取締役を批判したと伝えられている。これが事実であるとすれば、日本の経済及び産業への投資環境に大きな悪影響を及ぼしかねないと懸念する。
よって、以下の質問をする。
一 この講演会での経産次官の発言内容及び質疑応答の内容を全て明らかにされたい。
二 経産次官は講演会で、一般もしくは特定の株主について「危ない表現をすると」しつつ、「能力がない」「配当を要求する強欲な方」などと述べたと伝えられている。これは事実であるか、明らかにされたい。事実であるとすれば、「能力がない」と判断した根拠を明らかにするとともに、これが政府の見解と同一であるか、明らかにされたい。さらに、株式の保有期間の長短に関わらず、株主が配当を要求することは会社法で定められた当然の権利であるから、これを「強欲」とする価値判断には疑問があるが、政府の見解を示されたい。加えて、経産次官の発言が政府の見解と同一であるとすれば、会社法で定められている株主の能力及び配当の要求に対する疑問であるから、政府は同法について、一般もしくは特定の株主の権利等を制限する方向及び配当の要求を不可とする方向で改正することを視野に入れていると理解してよいか、併せて見解を示されたい。
三 経産次官は講演会で、社外取締役について「役に立たない」などと否定的見解を述べたと伝えられている。これは事実であるか、明らかにされたい。事実であるとすれば、これは政府の見解と同一であるか、明らかにされたい。なお、政府の見解と同一であるとすれば、会社法で定められている社外取締役に対する疑問であるから、政府は同法について、社外取締役に関する規定を削除もしくは役割を限定する方向で改正することを視野に入れていると理解してよいか、併せて見解を示されたい。
四 経産次官の講演内容は、「関係者によって尊重され、企業社会の行動規範となる」ことを期待したものと考えてよいか、政府の見解を示されたい。
五 日本は言論の自由が保障された民主主義社会であるから、行政府の高官といえども個人的意見を述べる自由が存在すること自体に何ら疑いはない。しかし、職務内容に密接に関連した分野の場合は、個人的意見であっても、それが政府全体もしくは所属する省庁の公式見解であると誤認せしめる可能性が高いため、自ずと制限があると考える。これに対する政府の見解を示されたい。
六 行政府の高官が政府の見解と明らかに異なったり、激しく誇張されたりした内容の発言を行った場合、国家公務員法第八十二条その他の法令による懲戒処分等を行うことは可能か、明らかにされたい。
七 経産次官は、昨年二月十九日に行われた記者会見で、「企業価値研究会でまとめたルール」について述べている。これは、平成十七年五月二十七日に公表された「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」のことか、明らかにされたい。なお、経産次官は、同記者会見で「基本的にはいまの経営者と買収者が日本ではこれがルールなんだということを認識をして議論してもらえばいい」と述べているが、これはどのような効果を期待しての発言か、明らかにされたい。併せて、この発言は行政手続法第三十二条に定める行政指導もしくはそれに類する行為と捉えてよいか、政府の見解を示されたい。なお、なんらかの効果を期待しての発言ではないとすれば、なぜ記者会見でそのような意味のない発言を行ったのかについて、理由を明らかにされたい。
八 経産次官は、昨年六月十四日に行われた記者会見で、「法廷闘争になっているので、個別の案件について、今どうこういうのは少し適切でない」としつつ、特定の投資ファンドを名指しして「手がけた案件で企業価値向上につながった部分があるかといったら、私はそこの部分はないのではないか」とし、否定的見解を述べている。同日は、当該ファンドによるブルドックソース食品株式会社に対する株式公開買い付けの期間中であった。この行為に、証券取引法(現・金融商品取引法)その他の法令上問題はないか、明らかにされたい。また、行政府の高官が、法律に従って行動している投資ファンドについて確たる法的根拠もなしに批判することは、特に海外からの投資を萎縮させかねないと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
御指摘の講演会における発言内容については、経済産業省及び主催者である財団法人経済産業調査会のホームページに掲載されているところである。また、当日の質疑応答はなかったものと承知している。なお、これらのホームページに掲載されている発言内容は、同調査会が、その会員その他の者に配付するために、同調査会において作成した記録を基に必要な加筆、修正、削除、補充等を行い、作成したものである。
二について
御指摘の講演会において、「危ない表現をすると」と断った上で、株主のすべてがそうではなく、株主が多様化しているという趣旨を併せて述べつつ、一部の株主について「能力がない」、「配当を要求する強欲な方」などとする発言がなされたことは事実である。「能力がない」との発言は、株式会社制度が所有と経営の分離を前提としている以上、株主には経営者に比して経営的専門能力が備わっていない場合もあるという趣旨でなされたものと認識している。また、「強欲」との発言については、適切でないものであったと考えている。これらの発言は、自分の発言は少数説であるとあらかじめ前置きした上でなされたものであり、政府として、御指摘の「一般もしくは特定の株主の権利等を制限する方向及び配当の要求を不可とする方向」で会社法(平成十七年法律第八十六号)を改正することは考えていない。
三について
御指摘の発言は、米国の企業との意見交換を踏まえ、社外取締役について日頃の細かな業務執行の監視の役割までを期待するには限界がある場合が少なくなく、むしろ社外取締役に対しては大きな見地からのマネジメントについて責任あるアドバイザーとしての役割が期待されるという趣旨でなされたものであると認識している。こうした発言は、自分の発言は少数説であるとあらかじめ前置きした上でなされたものであり、政府として、御指摘の「社外取締役に関する規定を削除もしくは役割を限定する方向」で会社法を改正することは考えていない。
四について
御指摘の講演会は、基本的に、主催者である財団法人経済産業調査会の会員に対して、政策を分かりやすく説明することを目的として行われたものと承知している。
五について
行政機関の幹部職員がその職務内容に密接に関連した分野に関して個人的意見を述べる場合には、当該意見が政府全体又は所属する省庁の公式見解であると誤認されることのないよう、当該意見が個人的意見である旨を明らかにすることが適切であると考えている。御指摘の講演会においては、講演者は、その意見が政府全体又は経済産業省の公式見解ではないことを明らかにする趣旨で、自分の発言は少数説であり、多数の者に受け入れられているものではない旨を述べたものと認識している。
六について
一般に、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十二条第一項に規定する懲戒処分を行うかどうかについては、任命権者が、個別具体の事案に即して判断することとなる。
七について
経済産業事務次官が昨年二月十九日に行った記者会見で述べた「企業価値研究会でまとめたルール」とは、平成十七年五月二十七日に経済産業省及び法務省が策定した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」のことである。
御指摘の発言は、特定の者に一定の作為又は不作為を求める趣旨でなされたものではなく、この指針の考え方が、スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピーによるサッポロホールディングス株式会社に対する買収提案の関係者によって共有され、尊重されることを期待してなされたものであり、行政手続法(平成五年法律第八十八号)に規定する行政指導には当たらないと考えている。
八について
御指摘の発言は、特定のファンドについての感想を述べたものであり、直ちに法令上の問題を生じさせるとは認識していない。
また、御指摘の発言と海外からの投資の萎縮との関係については、その具体的根拠が明らかではなく、お答えすることは困難である。
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