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合併特例債と地方の財政危機に関する質問主意書
参議院 第170回 第66号
質問本文
二〇〇〇年頃から始まったいわゆる「平成の大合併」の結果、約三二〇〇あった市町村は、現在一八〇〇市町村以下にまで減少した。この平成の大合併は、地方分権に向けて市町村の規模を大きくし、その地方財政基盤を強化すると同時に効率化することを目指す政策であると説明されている。そして、合併を促進するために市町村合併特例法が制定され、合併特例債や地方交付税に関する措置など財政措置がとられている。
この間、約六〇〇件に及ぶ合併がなされた一因には、この財政措置があったものと考えられる。しかしながら、他方で合併したにもかかわらず、新市(あるいは新町)が財政危機に見舞われているという指摘もなされている。特に合併特例債によって、新市(新町)の様々な施設整備が認められることで、必要性に疑問符が付されるような公共事業が数多く実施されている。このような合併特例債の「ムダ遣い」は、将来的な住民負担、あるいは地方自治体の財政危機、財政破綻に結びつきかねない危険性を孕んでいる。
「ムダ遣い」について身近な例を示すと、愛知県愛西市では、合併特例債を利用して、火葬場の建設を予定している。火葬場の建設自体については、愛西市の中で合意形成を図るべき問題であって、国が関与すべき問題ではない。しかし、火葬場の建設に付随して、セレモニーホールの建設を予定している。試算によると、火葬場だけであれば総事業費は約七億円から一〇億円であるが、セレモニーホールの建設費費用を含めると二五億円以上となる。当該地域には既に民間セレモニーホールが存在し、民業圧迫となる。また建設が予定されているセレモニーホールのランニングコストも考えると、将来的な財政負担となる可能性が大きく、住民からの不安の声や異論も出されている。
合併特例債は、新市(新町)のための施設整備等の事業費の九五%を借り入れによってまかなうことを認め、地方交付税によって元本の七〇%を補填する制度である。当然ながら、国の交付税負担は増大し、また交付税の交付金が本来目的ではなく、特例債の償還に回されることによって、本来必要な住民サービスの予算減につながる危険性がある。したがって、合併特例債による「ムダ遣い」を放置することは、国の財政、特に地方交付税の制度を危うくするものである。本来地方交付税は、戦後のシャウプ勧告に基づいて、地域間の格差を埋めるために採用された制度であり、交付税措置による元本の補填によって長期的に国と市町村の財政に危機をもたらすとすれば、それは本末転倒である。地方財政を健全化することは、短期的に実現できる課題ではないが、合併特例債のムダ遣いをなくすこと、地方交付税の制度を守りつつ適正に運用して地域間格差をなくしていくことは、各地域の住民の福祉に利することであり、国民のために働く国の責務である。
よって以下質問する。
一 合併特例債の年次別の総額と件数、および合併特例債の地方交付税による補填額の推移を示されたい。地方交付税による補填額については、今後三〇年間の将来予測についても示されたい。
二 合併特例債による自治体の事業の審査、認定基準等、合併特例債がいわゆる「税金のムダ遣い」とならないための対策を示されたい。例えば、「民間と競合する公的施設の改革について」(二〇〇〇年五月二六日閣議決定)に従えば、新市建設においても民と競合する施設建設については、合併特例債による建設については必要性と民業への影響の双方から厳しく審査される必要があると考えられるが、そのような措置とその内容の市町村への周知徹底、および審査はどの程度行われているのか説明されたい。具体的に、前述の愛西市の例について、合併特例債の起債申請時に、民間及び市が建設予定のセレモニーホールについての需要予測やランニングコストの試算を行ったのか、また愛西市にそれらの資料提出を求めたのか、また国としてどこまで必要性と将来的なリスクをチェックしたのかを示されたい。
三 合併特例債は、運用方法を間違えると、財政危機をもたらすリスクを抱えており、そのリスクは現実化しているという指摘もある。合併特例債は国の制度である以上、そのリスク管理も国の責務である。国としてどのようなリスクを想定し、また想定外のリスクが発生した場合にも対応する準備ができているのかについて明示されたい。さらに、それらリスクについて、市町村に周知徹底しているのか、確認したい。
四 合併特例債を含めた地方財政のチェック状況について説明されたい。今年度より、新たに四つの指標の国への報告が義務づけられ、特別会計や公営企業との連結決算についても、チェックが行われるようになった。これは一歩前進ではあるが、本来は、当該市町村の住民によるチェックが強化されるべきであると考える。しかし、この点については疑問が残る。例えば、市町村議会では、いわゆる「九月議会」において住民代表である地方議会議員の決算の審議が行われるが、九月議会の直前に決算カードや地方財政調査票等が公開されるケースも多く、各議員が財政をチェックする十分な時間が確保されていない。各地方議会における財政のチェック態勢の強化のためにも、国への財政報告の枠組みやスケジュールを工夫すべきと思われるが、国としてそのような問題意識を持って検討を行っているのか。また、直接住民が市町村の税の使途のチェックを行う市民オンブズパーソンの活動などボランタリーな活動も存在しているが、それらの活動を含めた住民による直接的な財政状況のチェックについて推進するつもりがあるのか。その場合は具体的な検討状況も示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
市町村の合併の特例に関する法律(昭和四十年法律第六号)第十一条の二第二項に規定する地方債(以下「合併特例事業債」という。)の年次別の発行件数及び総額について、総務省としては、平成十一年度は五件で約六億千七百万円、平成十二年度は八件で約四十九億七千三百万円、平成十三年度は三十九件で約百五十五億五千三百万円、平成十四年度は七十一件で約二百三十一億六千三百万円、平成十五年度は二百十三件で約五百二十四億二千万円、平成十六年度は五百六十七件で約千百五十億三千三百万円、平成十七年度は二千五百十九件で約四千三百三十五億六千二百万円、平成十八年度は四千七百二十四件で約六千六百三億九千八百万円、平成十九年度は五千百一件で約六千五百十七億円と承知している。
また、合併特例事業債の元利償還費に応じて地方交付税の基準財政需要額に算入する額については、平成十二年度は約六百万円、平成十三年度は約六千万円、平成十四年度は約四億五千七百万円、平成十五年度は約八億千七百万円、平成十六年度は約二十五億二千八百万円、平成十七年度は約六十二億百万円、平成十八年度は約百五十億四千二百万円、平成十九年度は約三百四十八億三千四百万円、平成二十年度は約六百二十八億千三百万円であるが、将来の地方交付税の基準財政需要額に算入する額については、今後の合併特例事業債の発行額が不明であるため、お答えすることができない。
二について
合併特例事業債について、総務大臣及び都道府県知事は、地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条の三第四項の規定による、同条第一項に規定する協議における同意等に当たり、当該合併市町村から提出を受けた事業計画等により、市町村の合併の特例に関する法律第十一条の二第一項に規定する「当該市町村の合併に伴い特に必要と認められるもの」に該当するかどうかについて確認を行っている。
御指摘の「民間と競合する公的施設の改革について」(平成十二年五月二十六日閣議決定)については、同閣議決定を踏まえ、同旨の自治事務次官通知「民間と競合する公的施設の改革について」が平成十二年六月九日付けで発出されている。また、同閣議決定を踏まえ、平成二十年度地方債同意等基準(平成二十年四月三十日総務省告示第二百六十四号)は「政府の方針において、地方公共団体においても国に準じて施設の新設及び増築の禁止等について措置するよう要請している場合等において、地方債を財源として実施しようとする事業等が、当該国の抑制措置の趣旨に抵触するようなものではないこと。」と定めており、総務大臣及び都道府県知事は、地方財政法第五条の三第四項の規定による、同条第一項に規定する協議における同意等に当たり、民間施設と競合しないことの確認を行っている。
お尋ねの愛西市のセレモニーホールについても、愛知県知事及び総務大臣において、民間施設と競合しない理由書の提出を受けて、この確認を行っている。
三について
合併特例事業債については、合併市町村において、その財政見通し等を踏まえつつ、適切な活用がなされるべきものである。
なお、地方財政法に基づく地方債協議制度は、各地方公共団体の財政の早期是正等の観点から、実質公債費比率が十八パーセント以上の団体等は、地方債の発行に総務大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならないこととしているところである。
四について
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十三条の規定においては、各地方公共団体の会計管理者は、毎会計年度、決算を調製し、出納の閉鎖後三箇月以内に地方公共団体の長に提出し、地方公共団体の長は、監査委員の審査に付した上で、次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付さなければならないものとされている。
また、総務省は、毎年度、御指摘の「決算カード」のほか、都道府県決算状況調、市町村別決算状況調等を地方公共団体の前年度の決算に基づき作成し、それらを年度末までに公表している。また、地方公共団体は、決算の状況、各種財政指標等を議会を始め住民に公表しているものと承知している。これらの取組は、地方公共団体の財政状況を広く国民が直接理解することに資するものと考えている。
地方公共団体の財政状況については、地方自治法第二百四十三条の三第一項の規定により、地方公共団体の長は、毎年二回以上歳入歳出予算の執行状況並びに財産、地方債及び一時借入金の現在高その他財政に関する事項を住民に公表しなければならないこととされている。また、同法第二百四十二条の規定により、地方公共団体の住民は、当該団体の執行機関又は職員の違法又は不当な公金の支出等について、監査委員に対し、当該行為の防止又は是正の請求ができることとされている。総務省としては、これらの制度が、今後とも有効に活用されることが重要であると考えている。
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